魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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Ep40悲しみの砲光は冬空を照らして~Celestial Birds~
前書き
あー今さらですけど何かコールサインとか面倒になってきた。もう名前でいいですよね・・・?
マルフィール隊最終戦イメージBGM
ACE COMBAT 5 THE UNSUNG WAR『Winter Storm』
http://youtu.be/FYadkOQQwt0
†††Sideなのは†††
“オムニシエンス”を護る障壁の発生を司る施設を制圧するため、私とレヴィは第9管理世界エストバキアに赴き、件の施設のある離島が臨める防波堤に居る。
「島・・・か。厄介なところにあるなぁ・・・」
応援部隊としてのエストバキア航空部隊には離れた位置で待機してもらっている。いくら何でも防波堤にずらりと武装隊が並んでいたら、「今から攻撃に行きますのでよろしく!」と言っているようなものだからだ。ちなみに地上部隊も借りられたけど、施設が海上だと文字通り手も足も出ないため待機してもらっている。
「勝敗を決するファクターは空戦能力、ということになるね、これは。念のためにもわたしとなのはさんも出た方がいいんじゃ・・・?」
「そうだね。シャルちゃんには幹部が出てくるまで魔力を温存するように言われたけど、そこは注意していればおそらく大丈夫だとは思う」
私の右隣りに居るレヴィの話にそう答える。するとレヴィは「わたしが可能な限りフォローするから、安心して」なんて心強いことを言ってくれた。私はレヴィに「お願いね」と微笑んで返す。それから数分して、“ヴォルフラム”のはやてちゃんから通信が入った。
『なのはちゃん、レヴィ。今から5分後、1430時に制圧開始でお願いするわ』
『なのは、レヴィ。そっちの拠点は海上らしいから、地上部隊は期待できないと思う。だから2人とも、“幹部が出てくるまで魔力を温存するように言われたけど、そこは注意していればおそらく大丈夫だとは思う”って考えてるだろうから、今の内に言っとく。2人が制圧戦に参加することは許す。だけど幹部が来るのは間違いないから、それまでに魔力と体力を消費し過ぎないように。以上!』
一言一句間違えてないシャルちゃんに少し引きながら(盗聴とかしてるんじゃ?)も、拠点制圧戦への参加を認めてくれたのは素直に感謝。というか、完全にシャルちゃんが仕切っちゃってるよ・・・まぁいいけど。通信も切れて、今度は私が待機してもらっている航空・地上両部隊に1430時に制圧開始との連絡を入れて、時間までひっそりと待つ。
「レイジングハート!」
「アストライアー!」
「「セットアップ!」」
≪All right. Barrier Jacket, Exceed Mode≫
防護服を着用して、航空部隊に「お願いします!」と通信を入れると同時に、施設のある離島を目指して一直線に飛ぶ。エストバキアの航空部隊、総勢60名が私とレヴィに続いて施設を目指す。そして結果として奇襲は成功。島にギリギリまで近付くまで動きを示さなかった施設要員。
「先頭の女2人を落とせ! 六課の局員だ!」
管理局が来たと知ると急いで銃による迎撃に移ったけど、余程飛行が苦手な魔導師じゃないと当たらないような攻撃ばかり。それを察した構成員たちは、次の手段として自動魔力砲台による対空砲火を行ってきた。
これはかなりの精密さで、私とレヴィを除くエストバキア航空隊が被害を受け始めた。そこで私とレヴィが砲台制圧を買って出て、早速制圧に動き出す。
「前から思ってたけど、レヴィってなんて言うか・・・魔“砲”少女って言葉が似合うね・・・!」
≪Photon Smasher≫
高速砲の連射で施設周辺に設置されている砲台を破壊していく。「魔法少女?」と首を傾げるレヴィに、「魔法じゃなくて、砲撃の砲で魔砲少女。どう?」って説明すると、レヴィは少し考える素振りをした。
「なのはさん・・・・。うん、そっくりそのままお返し♪」
――紫光掃破――
満面の笑みを浮かべる “モード・バスター”形態のレヴィが放つ特大砲撃。私の破壊した砲台は砲身が折れる程度だったけど、レヴィが破壊した砲台は紙屑のように弾き飛んでいく。レヴィの砲撃を見たエストバキア航空隊は若干引いて、レヴィの浮かべる笑みで顔を赤くしたり青くしていた。
「知ってるよ、なのはさん。幼少時は元より今でも個人砲台としては最強らしいって」
――紫光連砲――
レヴィの四肢からの4連砲撃。それで2基の砲台を沈黙させて、航空隊の道を作り出した。航空隊は島へと降り立って、“テスタメント”構成員の逮捕と障壁発生装置破壊に乗り出す。それを援護するレヴィ。これは私も負けていられない。
「それは買いかぶり過ぎだと思うけど・・・!」
――エクセリオンバスター――
エクセリオンバスターで砲台1基を沈黙させることに成功。
「それにレヴィの方が派手で威力も凄まじいし。さっきのドライヴとか、ルシル君を一撃のもとに下したムーンライトとか」
ヴィヴィオと組んでルシル君と闘った時のムーンライト・ブレイカー。その場に居る魔導師によって威力は異なるけど、弱体化しているとはいえルシル君を、ヴィヴィオと2人で倒したことには正直驚いていた。
≪Load cartridge≫
シャルちゃんのカートリッジとは別の、局から支給されている通常カートリッジを2発ロード。
「それを言ったら、なのはさんのスターライトもとんでもないじゃないですか。それにバスター2種、スターズ、クラスター、どれを見てもなのはさんの方が魔砲しょ――・・・」
レヴィがハッとした表情になって口をつぐんだ。
「・・・どうせもう少女じゃないですよ~、もう24歳ですよ~」
少女の“しょ”で口をつぐんだレヴィに、少し不機嫌そうに言うと、
「ち、違う! 少女、なんて言ったらかえって失礼かなと思ったの! だ、だから、その、ね、なのはさんは素晴らしくて優しくて温かくて綺麗で! いつかわたしもそうなりたいなぁ、なんて、そう目標にしている大人なお姉さんで! だから、“少女じゃねぇだろ、もう”なんてこれっぽっちも思ってないから!」
――紫光掃破――
慌てふためくレヴィが私に背を向けて、別の砲台に砲撃を撃ち込みながらそう返してくる。明らかに最後のやつの方が本音っぽいのは気のせいかな?
「フフ、そう」
「ヒィッ! お助け!」
笑ったらレヴィが怯え始めた。そこでどうして怯えられるのかが解からない私は少しへこんだ。その間にこちらに砲口を向けてきた砲台が1基。
≪Accel Shooter≫
気を取り直してシューターを発射間近の砲口の中にピンポイントシュート。当然砲身は内から破裂して使い物にならなくなった。それを見たレヴィが「精確過ぎて感動だ!」っていう褒め言葉を贈ってくれた。うん、もう怯えていないようで良かった。でもまだ少し引っかかるよ。
「ありがとう、レヴィ。さ、油断せずにこのまま全基潰すよ」
「了解ですッ!・・・ハチの巣にされるかと思った」
それから空に残っている10名ばかりの航空隊員と一緒に全ての砲台を破壊した。
「制圧開始から30分・・・。一向に現れる気配がない、おかしい」
空での仕事を終え、施設内制圧の報を待つ私とレヴィ。すみれ色のベルカ魔法陣の上で女の子座りしているレヴィが、幹部が現れないことに疑念を抱いている。もちろん私もそう。幹部だけなら転移でもすれば数分と掛からずに来れるはずだ。
何せエストバキアこそがどの拠点よりも “オムニシエンス”に一番近いのだから。だから他の拠点よりこちらの拠点の方が最も早く状況が変わるはず。そしてそれは突然に起きた。全身に悪寒が走る。それと同時に“ヴォルフラム”から通信が入った。
『エストバキアに強大な魔力反応が転移してきます! 気を付けてください!!』
私はシャルちゃんのカートリッジとマガジンを用意。レヴィも立ち上がって、気合を入れるためか両頬をパチンと叩いている。
――風雅なる赫沫の散々華――
空が一瞬だけ赤く光ったのを感じとった私とレヴィは、すぐさまその場から離れる。私たち2人だけを狙ってきた、無数の赤い羽根が遅れて降り注いできた。
自主的に私たちから離れてくれていく航空隊を横目に確認しつつ広く澄み渡る青空を見上げると、赤い光で構成された羽根がひらひら舞っていた。そして“ソレ”は私たちの目の前にまで降りてきて、絶句する。
『まさかピンポイントで施設を制圧しに来るとは・・・。どこで情報を得た、高町・・・?』
私の目の前に居る“ソレ”の頭の1つからアレッタ三佐の念話による声が聞こえてきた。
VS・―・―・―・―・―・―・―・
其は悲しき復讐者マルフィール隊
・―・―・―・―・―・―・―・VS
(まさか目の前に居る“コレ”が・・・アレッタ三佐率いるマルフィール隊・・・?)
戸惑う。だけど、そうなんだと理解するしかない。目の前に居る三つ首・六枚翼へと変わってしまっている“赫羽の荒鳥ファノ”が、今のマルフィール隊の姿なんだと。
「敵に教えるとでも思っているの?」
『敵、か。そうだな。管理局は今や俺たちテスタメントの敵。ならば早速お前たちを撃墜させてもらおうか・・・!』
レヴィの言葉にそう返したアレッタ三佐、ファノが中と下、二対の翼を大きく羽ばたかせた。途轍もない突風が起きる。何とか耐えようとしたけど、この風圧には耐えきれないと判断して、身を任せて吹き飛ばされる。
吹き飛ばされる中、風の流れを肌で感じて自分の機動に利用する。レヴィも同様に上手い具合に突風の中を泳ぐように飛んで、施設から大きく距離を取ろうとする。私たちと幹部の闘いに航空隊員たちを巻き込まないようにするために。
――翔け抜ける速攻の陽虚鳥――
そんな私たちに突撃してくる巨大な赤い砲弾と化しているファノ。今のマルフィール隊は全長5m近いファノの姿となっていることで、翼を広げたらさらに大きく見えるから威圧感が普通じゃない。風の流れに逆らわないように、だけどしっかりと回避できるように飛ぶ。ギリギリ回避の所為で、すれ違いざまに叩きつけられた衝撃波によってまた吹き飛ばされる。
「レイジングハート!」
≪Load Cartridge. Blaster set≫
シャルちゃんのカートリッジをロードし、ブラスター1を発動。“レイジングハート”と共に意識を対幹部戦用へと切り替える。少し離れた位置で過ぎ去ったファノを見据えるレヴィに視線を送る。レヴィは私の視線に気付いて、念話を送ってきた。
『接近戦じゃ話にならないと思うから、わたしはモード・バスターのままで戦闘を続行するね』
『了解』
レヴィとそう話して、上空へと軌道を変えたファノへと意識を向ける。
「アレッタ三佐、話があります」
上空を遊泳するファノに話しかける。レヴィが私を見て戸惑っているのが判る。だけど、まずは誤解を解いておきたかった。セレスさんの逮捕未遂の一件は、全てがディアマンテの仕組んだことだと。はやてちゃんや私たちはセレスさんを裏切ってなんかいないと。
『話? 今さら貴様ら偽善者の話を聞く耳など持ち合わせていない』
『大人しくここで終焉を迎えなさい、エースオブエース』
――生死繰り返す永劫円環――
私に答えたのは、デレチョのマルシーダ二尉とイスキエルドのオデッセイ二尉。左右の頭から発せられる念話だった。そして私だけに標的を絞って、急降下してきた。さらに「アレッタ三佐!」って呼びかける。
『敵を何かを語りたければ、まずは圧倒的な力で、相手をねじ伏せてからにしろ、高町!』
返答は敵意に満ちた拒絶の言葉。
≪Master !≫ 「なのはさん!」
聞く耳を持たないアレッタ三佐たちマルフィール隊。話が出来ないなら、聞いてくれないなら、戦ってでも話を出来るようにする。結局はこうなるんだろうな、と少し思っていた自分が居る。そう、いつもと同じだ。だから私は、マルフィール隊に勝って、話を聞いてもらう。
――エクセリオンバスター――
頭上から迫るファノに“レイジングハート”を向けて、砲撃を撃つ。エクセリオンバスターは真っ直ぐファノに向かっていく。自信からなのかファノは防御も回避もせずにそのまま突っ込んでくる。もしかしたら私と相討つことが目的なのかもしれない。“レイジングハート”はそれを察してくれて、高速移動魔法のアクセルフィンを発動。私をファノの軌道上から退避させてくれる。
『ぅぐ・・・!』『きゃ・・・!』『ぐお・・・!』
そして私の砲撃に真っ向から挑んだファノは、胴体に穴を開けて、赤い光粒子をまき散らしながら海に落ちていく。3人の苦悶の声が頭の中に響いてくる。これは予想外だった。まさかこんなにも簡単にダメージを与えられるなんて思いもしなかった。視界に入ったレヴィも私と同じことを思っているのか驚いた顔をしている。
「このまま倒します!」
だけど今がチャンスだと思ったみたいで、レヴィは両手をファノの方に突き出して前面にベルカ魔法陣を展開。周囲の魔力が集束していく。私は無意識にそれを止めるために口を開こうとした。あまりにも早く終わり過ぎる。もう少し話が出来ないか、お互いが理解できないまま、本当にこれで終わってしまっていいのか。
「レヴィ! 待っ――」
――紫光掃破・昇華――
止めに入る前に放たれる、レヴィのすみれ色の集束砲エクステンド。ハッキリと目視できるほどのソニックブームを生みだしながら直進していく。落下を続けるファノまでもう少しというところで、ファノの3つの頭部が迫る砲撃に向いた。
だけどファノは何もせずにレヴィの砲撃を受け入れた。ファノを飲み込んだ砲撃はそのまま海面に着弾して、炸裂。足元に拡がるすみれ色の半球上の衝撃波。威力はさっき私が撃った砲撃よりずっと上。私の砲撃で胴体に穴が開くんなら、レヴィの砲撃だと間違いなく原形を留めないほどのダメージのはず。
「・・・アレッタ三佐」
衝撃波も治まりつつあって、足元の様子を窺うことが出来る。見えたのは海にポッカリ空いた大穴。そこに海水が流れ込んで、大きな渦を作り出し始めた。まさかこんなにもあっさり終わってしまうなんて。結局、誤解を解くことも満足に話すことさえ出来なかった。
「・・・まだ、なのはさん。まだ、いる・・・!」
「え・・・?」
神妙な面持ちで足元に拡がる海を見渡しながらレヴィはそう私に告げてきた。あの集束砲をまともに受けて無事なんて、正直信じられない。
「なのはさんは感じ取れないかもしれないけど、わたしにはハッキリと判るの。ファノという魔族が放つ神秘の脈動が――ぁが・・・っ!?」
――天壌翔けし赫羽の魔鳥――
今まで以上の疾さで海面から飛び出してきたファノの体当たり攻撃。胴体じゃなく大きく広げられた翼をまともに受けたレヴィは、身体をくの字に折って空高く吹き飛ばされた。
「っ・・・!? レヴィーーーーーーッ!!」
私はすぐさま空を舞うレヴィの元に飛んで受け止める。
「レヴィ!? しっかりして、レヴィ!!」
口元から流れる血を袖口で拭いながら何度も呼びかける。
『まずは1人だな。次はエースオブエースを撃墜する』
『『了解』』
――英雄墜とせし滅天の三つ首――
ファノの3つのくちばしから放たれる赤い3発の集束砲。レヴィを右腕で抱えながら、アクセルフィンで射線上から高速離脱する。
≪Excellion Buster≫
離脱し終えたと同時にファノへと“レイジングハート”を向けて、砲撃を撃った。だけど、確かにさっきはダメージを与えられたはずなのに、今度は穴を開けるどころか傷ひとつ付けることなく弾き返された。驚いていると、アレッタ三佐の念話が頭の中に響いてきた。
『どうした、高町。この程度で動きを止めているようじゃ生き残れないぞ』
――英雄墜とせし散華の三つ首――
くちばしから、今度は扇状に拡散してくる無数の光線を放ってきた。レヴィを抱えながらの回避が出来るほど甘くない攻撃。
――プロテクションEX――
私はカートリッジを1発ロードして、効果を高めたバリアを前面に展開、防御に徹する。
「ごふっ、げほっげほっ・・・なの・・・はさん・・?・・??・・・げふっ、わたし・・・あ、ごめん!」
なかなか止まない攻撃に耐えていると、私の腕の中で気を失っていたレヴィが目を覚ましたと思えば、すぐに謝りながら私から離れようと身体を捻る。
「ちょっ、動いて大丈夫なの!?」
「も、もう大丈夫・・・。戦闘中、ダメージにより気を失った場合、魔力を全て治癒に回すように設定しるから。もう戦闘続行できるまで回復した」
「・・・そう。それならいいんだけど・・・。もし辛かったら遠慮なく言って。ヴォルフラムで待機してるシャルちゃんかフェイトちゃんを呼ぶから」
ここはレヴィの言葉を信じて、彼女を支える腕を解く。レヴィは「ご心配なく」って笑みを浮かべてすぐ・・・
「痛かっただろうがっ、このやろぉぉぉーーーーーッ!!」
――紫光掃破――
まるでシャルちゃんやヴィータちゃんみたいなことを叫んで、特大砲撃をバリアの脇から撃った。レヴィの砲撃の方がファノの光線より威力が上なのか、光線を蹴散らしながらファノに向かって突き進んでいく。ファノは攻撃をやめて、だけどその場から動こうとしなかった。直撃。左サイドの真ん中の翼が吹き飛んだ。
「「・・・っ!?」」
やっぱりおかしい。まるでわざと攻撃を受けている感じだ。レヴィもファノを疑問の視線で睨みつけている。そんな私たちの戸惑いを余所に、ファノは両サイドの上と下だけの翼を大きく羽ばたかせて先端をこちらに向けた。
――風雅なる赫沫の散々華――
4枚の翼の先端をこちらに向け、無数の羽根を撃ってきた。私はアクセルフィンで、レヴィは瞬走弐式でそれぞれ射線上より退避する。
「ディバイン・・・バスタァァァーーーーッ!」
「紫光・・・掃破!」
退避し終えたところで、私とレヴィはファノへと同時に砲撃を撃った。攻撃直後で動けないファノへと直撃。だけど右サイドの中と下の翼を吹き飛ばしたのは私の砲撃だけで、レヴィの砲撃はさっきのエクセリオンバスターのように弾かれた。ここである推測が立った。
「シュート!」
それの確証を得るために、たった今通用したディバインバスターを、修復された右サイドの翼に向けて撃った。案の定、私のディバインバスターは弾かれた。確定だ。
『レヴィ、今の見てどう思う?』
――英雄墜とせし散華の三つ首――
扇状に拡散してくる光線群を回避しつつ、同様に回避を行っているレヴィに尋ねる。するとレヴィはもう1度掃破を撃って、弾かれたのを見てコクリと頷いた。
『・・・どうやら1度受けた攻撃に耐性が付くみたい。これは下手に威力の高い攻撃を撃つと、わたし達の打つ手がなくなる。厄介』
そう、これはかなり厄介な状況だ。1度受けた攻撃の耐性をつくり、2度と決定打にならないようにする。どうしてファノが私たちの攻撃を避けなかったのか、これでハッキリした。私たちの攻撃手段を完全に無くし、ファノへの対抗手段を潰すためだ。
『さすがに気付いたようだな、高町、お嬢さん。犠牲の果てに手に入れた力だ。どうする? 攻撃すればするほどお前たちの打つ手が無くなるぞ』
アレッタ三佐の念話。その通りだ。低威力の攻撃だと決定打にならない。高威力の攻撃だと一撃で決めないと耐性をつくられる。一撃でファノを撃墜するほどの魔法じゃないと意味がない。それと気になったのが、犠牲、という言葉。一体何を犠牲したんだろう・・・?
『大人しく引け。今こそ管理局は変わらねばならない』
続いてマルシーダ二尉の念話が響いてくる。それと同時に私に向かって突撃してくるファノ。“レイジングハート”を向けるけど、すぐさま降ろして軌道上より退避。
『そうよ。復讐を成し遂げた今、あとは管理局というシステムをリセットし、次代のために新たな・・・シス・・テムを・・下・・切り捨・・ない組織・・・を・・・つく・・・り・・・』
オデッセイ二尉の念話が入るけど、後半は途切れ途切れで上手く聞きとれない。ファノも完全に動きを止めて、左の頭部がゆっくりと項垂れ始める。マルフィールの左手。あの項垂れた左の頭部はオデッセイ二尉なのかもしれない。
『アレッタ・・長・・・先に・・・逝って・・・』
『ああ、先に逝っていてくれ、ヴィオラ』
『・・・カローラ・・・サフィー・・・ロ・・・未来を・・・』
項垂れていた左の頭部の天辺、そこから赤い光粒子が出てきて、天へと昇っていった。オデッセイ二尉の声はそれっきり聞こえなくなった。項垂れていた頭が上がる。だけどその目はさっきまで光沢を放っていたモノと違って、明らかに暗くて深い、生物としての目じゃなくなっていた。
「犠牲・・・。それは、あなた達の自身そのものが犠牲になる、と捉えてもいいんだね・・・?」
レヴィが天に昇っていった光粒子を見送った後、ファノへと視線を向けてそう言った。私は「え?」と、ほとんど無意識にそう漏らしていた。
『そうだ。元より俺たちは未練、想いというモノをボスの力によって集約、固定された不確かな存在だ。それが魔族と呼ばれる超存在と融合すれば、薄れ欠けて行くのは必然。今回の俺たちマルフィール隊とファノ3体の完全融合。しばらくすれば、俺という存在も完全に消えるだろう。だが後悔はしていない。3人同意の上での結末だからな』
「・・・どうして・・・どうして・・・?」
『俺たちの復讐はすでに果たされた。もうこの生の世界に未練はない。が、俺たちに再び身体を与えてくれたボスへの礼がまだだ。ゆえに、この身を心を犠牲にしてでも彼女の願いを果たすために、俺たちは戦う。だから彼女の邪魔をするお前たちを、何としてもこの場で墜とす・・・!』
私の問いにアレッタ三佐はそう答え、大きく翼を羽ばたかせて鳴いた。
――秘奥なる禁断の御光――
3つのくちばしと三対の翼を大きく広げて、計9本の砲撃を撃ってきた。しかも一瞬じゃなく持続する砲撃。こちらも連続で大きく避けないといけなくなった。防戦一方。一撃でファノを倒せる魔法はどれも発射まで時間が必要だ。だから常にこっちに向いてくる砲撃の中、チャージするのは至難。
『解かるな、高町。戦いに慈悲などありはしない。そう、死闘において二等賞の席など無い。そこにあるのは敗北、死、という結果のみだ』
「アレッタ三佐!」
『迷うな。道は1つだ。己の信念に従い行動する、それだけだ。だからこそ、俺も教え子であるお前を討とう。それが俺の意志だからだ』
どれだけの魔力がこの砲撃に次ぎ込まれているのか。放たれてから1度も途切れずに掃射され続ける9発の砲撃。私とレヴィはひたすら避けて避けて避け続ける。そんな中、レヴィから念話が入る。
『なのはさん! スターライトの準備をして!』
『スターライトって・・・。そんな集束している時間なんて・・・。それに、レヴィのエクステンドでも倒せなかったのに、私のブレイカーで倒せるとは限らない・・・!』
『それはたぶん、わたしの込めた神秘が弱かった所為。でもシャルロッテの神秘を扱えるなのはさんの集束砲ならいける!』
そう提案してくる。
『チャージ時間はわたしが稼ぐから、なのはさんは集束に力を注いで』
レヴィの言う通り、もうそれしかないのかもしれない。アレッタ三佐たちはもう私たちを倒すべき障害としか見ていない。
『・・・判った。時間を稼いで、レヴィ』
『了解。お任せて!』
なら、もうこちらも本気で、手加減無用で行くしかない。集束砲スターライトブレイカーの準備に入るために、レヴィとファノから大きく距離をとる。ファノの右の頭部がこちらに向こうとしたとき、レヴィが急接近して頭部に一撃入れて、射線を上にずらしてくれた。
「レイジングハート。ブラスター2。ブラスタービット展開」
≪All right. Blaster 2nd, Ignition≫
“ブラスタービット”4基起動。レヴィとファノの周囲に射出、展開する。私は“レイジングハート”を構えて、チャージに入る。
†††Sideなのは⇒レヴィ†††
なのはさんはアレッタ三佐ともっと話がしたかったと思う。だけど、もうこれ以上の防戦はこっちの身が持たない。だからこそ集束砲を撃つように勧めて、なのはさんは賛成してくれた。あとは、ファノの姿になってるマルフィール隊を一撃で倒せるほどの威力までチャージする時間を、わたしが稼げばいいだけ。わたし達から距離を取ろうとしたなのはさんへと右の頭が動く。
「どこを見てるのっ!」
――瞬走弐式――
砲撃群をスレスレで避けながら急接近。ゼロ距離で砲撃を撃って、無理矢理くちばしを上に逸らせる。
「アストライアー。モード・コンバット」
そしてまた瞬走弐式で距離をとって、ポニーテールにロングコートとハーフズボンという中遠距離戦用“モード・バスター”の防護服から、ツインテールにセーラー服とミニスカート、スパッツという近接格闘用の“モード・コンバット”の防護服へと変更する。近接攻撃力と瞬間機動力重視の戦闘モード。それで時間を稼ぐ。
『アレッタ三佐、マルシーダ二尉。私は、私たちは、アレッタ三佐たちを討ちます』
『『やってみるがいい』』
――風雅なる赫沫の散々華――
砲撃を止めた左右上下の翼をなのはさんの居る場所へと向ける。もちろん当てさせるつもりはない。
――斬裂爪閃・断絶――
両手から魔力爪を発生させる。その長さは大体2m弱。付加効果は魔力結合分断。大きく腕を広げて、それを思いっきり振り下ろしてファノの両翼を全て斬り落とす。すぐさま回転して胴体に一撃入れようかと思ったけど、やっぱり耐性がついていて簡単に弾かれて魔力爪は粉砕された。
(本当に厄介。もしなのはさんの集束砲でも生き残られたら・・・)
次はわたしのムーンライトを仕掛ける。それでダメなら、シャルロッテに出張ってもらうしかなくなる。それはなんだか情けないから嫌なんだけど・・・。そんな子とを考えていると、ファノの翼が修復されていくのが見えた。
「もうこの空を飛ばせない!」
――紫光連砲――
修復されていく三対の翼をもう1度中距離砲で散らす。通じたところを見ると、少しでも効果や術式が変わると同種の魔法でも効くみたいだ。
(それなら・・・!)
――英雄墜とせし滅天の三つ首――
落下していくファノは3つのくちばしが開けて、その中から集束砲を撃ってきた。わたしは瞬走弐式で回避。ファノの胴体へと降り立って、「斬裂爪閃!!」もう1度魔力爪を生み出す。効果は断絶と違って何も無い。腕をクロスさせるように振るって、胴体を斬り付ける。結果は推測通り。少し術式をずらして変えるだけで通用した。ファノの胴体に、わたしが振るった10本の爪の傷痕が刻み込まれた。
『おのれ・・・!』
『レヴィ!!』
なのはさんからの合図が来た。最後にもう1発。
――瞬閃 牙衝撃――
魔力を纏わせて強化した拳打を叩きこむ。ファノは魔力で構成された魔族。右の拳が胴体の表面を砕いて穴を開けた。そしてすぐさま瞬走弐式でファノからずっと上空へと遠ざかる。
――スターライトブレイカー・マルチレイド――
なのはさんの“レイジングハート”と“ブラスタービット”から放たれた、冗談じゃ済まされない桜色の集束砲。眼下を染める桜色の閃光に少し眩みながらも、ファノがどうなっているかを確認するために視線を逸らさないでおく。
するとなのはさんが来て「終わった・・・?」そう聞いてきた。正直、あんな集束砲を受けて無事でいる方がおかしい。だけど、次第に晴れてきた光の中、うっすらと影が見えた。
「なのはさん・・・」
「・・・レヴィ。次、お願い」
わたしは両腕を構えて、なのはさんは“レイジングハート”を構える。完全にファノを覆う光が無くなって、わたし達の視界に入ったのは2つの人型だった。赤い甲冑に身を包み、マントを靡かせるマルフィール。そしてもう1人、甲冑を着こんだマルフィール・デレチョ。
「まさか・・・強制的に融合が解かれるような事態になろうとは・・・」
「隊長。こkokaらは、一対いtiのtatakaいを・・・Eースオbuエースha、隊ちょUが・・・」
「っ!・・・マルシーダ。・・・・判った。お嬢さんの方は任せたぞ」
「ryoukaい」
フルフェイスの兜から覗く輝く目がわたしとなのはさんに向けられる。なのはさんを見ると目が合って・・・。言葉を交わさなくても判る。頷き合って、それぞれが闘うべき相手の元へと翔ける。
「アレッタ三佐!」
「高町っ!」
なのはさんとアレッタ三佐は高速機動で衝突しながら、わたしとデレチョから離れていく。そしてわたしは、少し様子がおかしいデレチョと対峙する。見据えるは己が倒すべき敵ただ1人。1対1なら、わたしは負けない。
「これで決着だ、マルフィール隊!」
――瞬走弐式――
「終わるnOはお前Tatiの方だ。古きシステムYo!」
――翔け抜ける速攻の陽虚鳥――
真正面からぶつかる。肩上でガシッと両手を組み合って拮抗。体格差は向こうの方が上。こうして両手の組み合いを続ければ押し負けるのはわたしだ。
――崩山嵐蹴牙――
「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」
向こうが動く前に先制攻撃をとらせてもらう。身体を折って、デレチョの胸部へと踏み蹴りを連続で入れる。デレチョがわたしと組んでいる両手を離そうとするけど、わたしはそれを離さない。このまま至近距離で攻撃を続け、反撃に転じられる前に落とす。蹴って蹴って蹴って蹴って蹴り続ける。すると甲冑からピキッとひび割れる音がした。
「調子niノるなよっ!!」
「うわっ!?」
両手を無理やり下に引かれて、デレチョに背を向ける形での逆さ状態になってしまった。直後に背中に奔る衝撃と激痛。硬い脚甲による膝蹴りが背中に打ち込まれた。「かふ・・!」息が詰まる。唯一の救いは両手を放してくれたこと。さっきのわたしのように掴み続けて何度も攻撃を入れられたら、背骨を折られて負けてた。
――風雅なる赫沫の散々華――
距離が空いたところでデレチョは背にある一対の翼を向けてきて、無数の羽根の弾丸を撃ってきた。何度も見ているから瞬走弐式で紙一重で避けていく。するとデレチョは羽根を撃ち続けながら突撃してきた。何発かの羽根を受けながらも軌道上から退避。
――紫光破――
すぐさま通り過ぎて反転してきたデレチョに近接用砲撃を撃ち込む。デレチョはロールしながら回避して、そのまま再度突撃してきた。残像を引きながらの複雑な機動。わたしはそれをじっと観察しつつ連続砲撃連砲を放つ。1発目と2発目は避けられた。そして3発目が掠って、4発目が直撃した。デレチョの動きが一瞬停止する。その一瞬を見逃さず、無駄になんてしない。
「紫光瞬条!」
デレチョの背面にベルカ魔法陣を展開。そこからいくつもの帯が出てデレチョを魔法陣に拘束する。すぐさま“モード・バスター”へと移行。両手をファノへと突き出して前面にベルカ魔法陣を展開。周囲の魔力を魔法陣へと集束させていく。
「これで・・・・最後だッ!」
――紫光掃破・昇華――
ムーンライト・ブレイカーに次ぐ集束砲をもう1度放つ。ファノと違う今、耐性を受け継いでいるとは思えないから通用するはずだ。
「先に逝っています。隊長・・・!」
――破濤なる赫羽の真煌――
デレチョは最期の置き土産とでも言うように翼の先端をこちらに向けて、その間に発生させた魔力スフィアを砲撃として発射した。
わたしの撃った集束砲エクステンドと激突。僅かな拮抗のあと、わたしの砲撃に飲み込まれた。デレチョの砲撃もろともエクステンドがデレチョを飲み込んで、とんでもない魔力爆発が発生。それはわたしをも飲み込むほどの巨大さで、慌ててシールドを展開。魔力全てをシールドに回す。
「耐えろぉぉぉーーーーッ!!」
ひび割れたシールドをこれ以上破壊されないように維持する。そしてようやく爆発は収まって、わたしは大きく安堵の息を吐いた。
「はぁはぁはぁ・・・勝っても、はぁはぁ・・・何も嬉しくないな・・・」
目の前に広がる空と海を見ながら、嬉しさより悲しさが満ちる胸に手を添えて、小さく溜息を吐いた。
†††Sideレヴィ⇒なのは†††
≪Accel Shooter≫
アレッタ三佐へと15発のシューターを、様々な軌道から狙い撃つ。迫るシューターを悠々と回避して、私に左手を翳すと同時に砲撃を撃ってきた。私も余裕を持って回避。今度は高速砲のフォトンスマッシャーを連続で撃つ。
「アレッタ三佐!!」
「これがエースオブエースの翔る空、か。何とも言えない緊張感だな」
アレッタ三佐の翼から赤い羽根が数十枚、複雑な軌道で飛んできた。シューターを操作していくつかを迎撃。残りはエクセリオンバスターで一掃する。
――翔け抜ける速攻の陽虚鳥――
その最中に赤い砲弾となって突撃してくるアレッタ三佐。
――セイクリッド・クラスター――
私は迎撃を終えてすぐに拡散攻撃を撃つ。放たれたスフィアがアレッタ三佐へと向かい、周囲で炸裂。無数の魔力弾の包囲網となって、アレッタ三佐を全方位から襲撃する。だけどアレッタ三佐はそれに構うことなく突撃を止めないで一直線に向かってきた。
――ラウンドシールド――
回避するには遅すぎたことでシールドを張って防御。衝突。でもアレッタ三佐は距離をとることなく、そのままシールドを突き破ろうと翼を羽ばたかせた。フルフェイスの兜の奥に輝くアレッタ三佐の目と合う。言い知れない恐怖が全身を襲う。人としての目じゃないような気がしたかだ。“ブラスタービット”4基を操作して、アレッタ三佐へと4方から砲撃を撃つ。アレッタ三佐は私から距離をとることで回避。
――破濤なる赫羽の真煌――
そしてすぐに翼を広げて、翼の前面から赤い砲撃を撃ってきた。威力は高い。だけど一直線過ぎてアクセルフィンで簡単に回避できた。
「忘れるな、高町・・・歴史の・・・変わRi目・・・時代が動くtOき・・・何かsiらの・・・犠牲・・・が・・・生mAれ・・・る・・・」
「アレッタ三佐・・・?」
「・・・ボス・・・先に・・・逝って・・・」
アレッタ三佐はダラリと項垂れたまま動かなくなった。何度も「アレッタ三佐」と呼びかけ、何度目かの呼びかけで項垂れていた顔を上げた。
「∵ΩЖ∬ΣЯ∀!」
「っ・・・!?」
アレッタ三佐が聞き取れない言葉で叫んだ。それと同時に私に向かって突進を仕掛けてきて、私は無意識に“レイジングハート”を向けてエクセリオンバスターを撃っていた。直撃。晴れていく煙幕の中から姿を現すアレッタ三佐の兜は砕け落ちて、その素顔を晒していた。
「・・・どうして・・・こんなことに・・・」
その目は虚ろで、何も映していないのが判った。表情からは何も感じられない。死人と同じ、アレッタ三佐の姿はあってもはそこにはもういない。結局、誤解も解けず、アレッタ三佐のまま逝かせてあげることも出来なかった。
「∵ΩЖ∬ΣЯ∀!」
吼えるアレッタ三佐だったモノ。真っ直ぐな軌道で私の元へと再度向かってくる。ただ少し身体をずらすだけで回避できて、ソレはそのまま通り過ぎて反転。また突進してきた。そしてまた避ける。突進。避ける。突進。避ける。視界が涙で滲んで揺らぐ。もう見ていられない。こんなアレッタ三佐の顔を、動きを。
「レイジングハート、ディバインバスター・・・行くよ」
≪All right. Load cartridge≫
シャルちゃんのカートリッジを2発ロード。せめて、私が幼少の頃より共に歩んできたディバインバスターで、アレッタ三佐を送り出す。それが教え子が師に送る最後の手向け。ソレは大きく私から離れて停止。大きく羽ばたいて突撃を再開。私は“レイジングハート”を向かってくるソレに向けて砲撃の準備に入った。
「∵ΩЖ∬ΣЯ∀aaaaaaaaa!」
翼を身体に巻きつけて回転。ドリルのような状態になって速度を速めてきた。
「・・・さようなら、アレッタ三佐・・・。ディバイン・・・バスタァァァーーーッ!!」
撃った。一直線に進む砲撃は、そのまま直進してくるソレを呑み込んで、そのまま海上へと着弾。大きな爆発が起きて、空に弾けた海水が雨のように降ってくる。着弾点から目を逸らさずに佇んでいると、レヴィがいつの間にか側に来ていて、「大丈夫?」と少し悲しそうな表情で尋ねてきた。
「・・・うん。私は、大丈夫。レヴィ、何か感じる?」
「・・・ううん。もう、何も感じない」
「そ・・っか。私たち、勝ったんだ・・・」
「うん。わたし達の勝ち。わたし達は、勝った・・・のに・・・」
しばらく無言でその場に留まっていると、施設の方からエストバキア航空隊の人が来た。施設制圧を完了し終え、航空隊は防波堤のところで待機しているとのことだった。3人で防波堤へと降り立つ。私たちの前で整列した航空隊の人数は、制圧開始時から見て半数近くに減っていた。
そこで改めて報告を受ける。施設の制圧を完了して、そして障壁発生システムの破壊に成功。死者はゼロ。負傷者が多かったけど、命に関わる怪我だけは負っていないとのことだった。私は“六課”を代表して、今集まってもらっている航空隊に礼を告げ、任務を達成したことを告げる。湧き上がる歓声。そんな中、私は“ヴォルフラム”へと通信を繋ぐ。
「こちらエストバキア拠点制圧チームの高町です。拠点制圧及び障壁システムの破壊に成功しました。それと、ここで対峙したマルフィール隊を撃破しました」
『了解や。お疲れ様、なのはちゃん、レヴィ。これですべての拠点を落としたことになるんやな』
はやてちゃんはそう神妙な面持ちで返してきた。どうやら私とレヴィが任されたエストバキア施設制圧が1番遅かったみたい。
「幹部たちの現状はどうなっているの、はやてちゃん」
『えーっとな、それはなのはちゃんとレヴィが戻ってきたら詳しく話すけど、倒せた幹部はグラナードとマルフィール隊だけなんや』
「え? スバルやティアナ、それにシグナムさん達は・・・?」
はやてちゃんの口にした名前の中に無かった幹部、カルド隊とクイント准尉とティーダ一尉。担当はシグナムさんとヴィータちゃん、そしてスバルとティアナだ。一体何があったんだろう・・・?
『なのはちゃん、レヴィ。まずはヴォルフラムに戻ってきてくれるか? そこで治療と、完了した全拠点制圧の詳細、そして今後のことを話すわ』
私とレヴィは顔を見合してから、「「了解」」と応えた。
後書き
すぅ・・・・・・難産ッッッッ!!!(マイク片手に咆える)
幹部最終戦の前半、その最後の相手はマルフィール隊となりました。が! 何だこれ!? マルフィール隊戦がもうメチャクチャな気がしてなりません(泣)
他の幹部達の戦いの様子、そして結末はずいぶん前から決定しているというのに、マルフィール隊だけは投稿寸前まで悩みに悩んでいました。
何か書き辛いよ、マルフィール隊(泣)。動かしにくいよ、マルフィー(略)
一体どれだけ書き直させれば気が済むんだよ、マルフィー・・・。
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