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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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憎悪との対峙
  19 孤高の怪物

 
前書き
前回、負け?という状況で終わりました。
でも今回、意外な展開?になります。
最後までお付き合いください! 

 
WARNING!!WARNING!!

Loading Unknown Program … ok
Rebooting System … ok
Connecting to Satellite Server System ... ok
Downloading ... completed.

Noise Change!!

スターダストの一言を引き金にトランサーから警告音が響き渡った。
そしてあらゆるプログラムを自動実行し始めた。
同時にスターダストを紫色の禍々しいオーラが覆い、周囲のジャミンガーを弾き飛ばす。

「何だよ...こりゃ...」

ナイトメアも今まで見たことのない光景だった。
これまで何人もの人間からスターダスト同様に悪夢を吸い取ってきた。
そして全員が周囲のものや人間問わずに恐怖心を抱き、社会からドロップアウトした廃人同然に陥る姿だけを見てきた。
だが目の前の光景はどう考えても、それとは全く違った。
オーラの中でスターダストは立ち上がり睨みつけている。

『死にぞこないがぁぁ!!ナイトメア・ブラスト!!』

ただならぬ光景にナイトメア=安食は危機を覚え、棍棒の持ち方を変えてスターダストに向けるとスナイパーライフルのように衝撃波を3発放つ。
だがそれがスターダストを覆うオーラを突破することはなかった。

「何だと!?」

衝撃波はオーラに直撃することもなく消滅した。
直撃する直前に”何か”が防いだのだ。
それはムーの紋章が刻印された電波の壁、『電波障壁』に相違なかった。

『あぁぁぁぁぁ!!!!』

スターダストの叫び声を堺に、やがてオーラは徐々に消滅する。
しかしそこに立っていたのは先程までのスターダストとは違った。

「.....」

「お前は...」

黒いスーツに紫色のラインが走り、胸部とヘルメットにムーのエンブレム、禍々しく変化したバイザー。
スターダストの時のように全身に兵器を装備している様子は無いが、むしろそれによって身軽になったようにも思える。
そんな姿に驚きもせず、ジャミンガーたちは襲い掛かった。

「この野郎!!」
「うりゃぁぁ!!!」

「....っ!」

ロックマンは両方向から襲ってくるジャミンガーの攻撃を肘で防ぐと、膝蹴り、回し蹴り、頭突きへと転じ、3人のジャミンガーのHPを一瞬にして0へと削り去ってしまった。

『......あぁぁぁぁ!!!!!』

黒いロックマンはナイトメアの方を向いて叫んだ。
その姿はまるで狂戦士だった。
憎しみ、孤独に支配され、そんな自分を苦しめるものを叩き潰すために必要な能力を劇的に向上させ、自分に害を加えようとするものは敵味方を問わずに排除する。
スターダストの能力など比ではない。
スターダストのシステムが彩斗の負の感情にシンクロした結果、彩斗のムーの力が暴走し生み出された怪物『スターダスト・ロックマン・ブライノイズ』だった。

「殺れ!!」

ナイトメアはジャミンガーたちに指示を出し、ブライノイズを襲わせた。
数は先程よりも増え、30人近い電波人間の群れが一度に襲い掛かる。
しかしブライノイズは全く苦戦することはなかった。
先程、ビルの中から弾き出され落下していたウイング・ブレードを拾い上げると一瞬にして原子分解され、ムーの紋章があしらわれた大剣へと再構成された。

「ヤァァ!!」
「グアァ!?」

大剣を軽々と振り回して襲いかかっている敵を次から次へと切り刻んでいく。
もはやジャミンガーたちも近づいても全く攻撃に及ぶことができず、大ダメージを受けて弾き飛ばされていくばかりだ。
接近できたとしても顔面に肘打ちを喰らい、腹部に蹴りを受けて電波変換が強制解除されてしまう。
既に勝負とは言いがたい状態だった。
食物連鎖の中で小型の草食動物の群れが巨大な肉食動物に食い殺されていく大虐殺の光景としか表現のしようがない。

「ウラァァァ!!!」

「ぎゃぁぁ!!?」
「アァァ!?」

「何だ...何なんだ!?コイツは!?」

ナイトメアは上から見ているだけで頭が目の前で起きている現実について行けなくなっていた。
戦闘不能になるどころか、先程よりも数段強化された身体能力で大量のジャミンガーを圧倒している。
そんな者は初めてだった。
恐怖すら覚えた。
悪夢を吸収され、憎悪に侵され廃人同然の状態で戦闘を続けている。
普通の人間では絶対にありえない。
まさに怪物、ムーの力を以って常人を超越した『ロキの子』であったとしても納得のいかない芸当だった。
そんなことを考えている間にもジャミンガーは残り数体にまで減っていた。

「アァァァァ!!!」
恐怖を打ち消さんばかりに大声を上げて、ブライノイズに襲い掛かろうものなら斬り殺されるだけではない。

「グッ!?」
「ガァァァ!!!」

拳を交わされ、肩をブロックされるとそのまま酷い音を立てて肩骨砕かれた。
そして更に左足を前に踏み出し、ターンして遠心力を帯びた右の踵が顔面に炸裂して顔面の骨も砕ける。

「...バケモノか....」

ナイトメアは攻撃することも忘れ、その光景をただただ直視していた。
空模様は悪化の一途を辿り、視界もぼやけ始める。
だがそんな時、転機が訪れた。

「!?う....あぁぁ....」

ブライノイズが急に左手で頭を抑えて苦しみだしたのだ。
足元は先程までの暴れるような荒々しいステップではなく、千鳥足のような弱々しいものへと変わる。
ブライノイズ=彩斗の体に限界が暴走する自分自身について行けなくなったのだ。
既に窓から落ちた段階で力尽きていたというのに、感情の暴走によってシステムが再起動し、彩斗の肉体を強制的に動かしている。
しかしその肉体が悲鳴を上げ、システムの挙動の足を引っ張る。

「ん?どうしたんだ!?」

ナイトメアも薄れ行く視界の中、ブライノイズの動きが鈍ったことに気づいた。
だがすぐに察しがついた。

「ハッ...アイツの体の方が限界ってわけか」

ナイトメアは内心、安心していた。
今まで自分の攻撃を受けて倒れなかったものはいない。
その自分の中で作り上げたルール通りになった。
いくら強い能力を持つ電波体と融合して誕生した電波人間といえども、ベースとなる肉体は所詮は人間、ましてやせ細った体で頭脳と技だけを武器に戦ってきた子供だ。
ここまでやっただけでも驚くべきことだった。
しかしブライノイズはそこで終わらなかった。

「あぁ....ガァアァァ!!!!」

「何!?」

急に再び動き出し、一瞬にして周囲のジャミンガーを斬り倒すとナイトメアの方を向いた。

「ハァァァ.....」

「なっ、マズイ!?」

大剣が紫色の波動に包まれ、周囲から電波エネルギーを集め始めたのだ。
ナイトメアはそれだけで体が逃げ腰になり、すぐさま退避するべく足に力を込めた。
ブライノイズの目は暴走しているというのに、先程のスターダストがナイトメアを睨む目とよく似ていた。
暴走していてもナイトメア=安食への憎しみは消えなかったのだ。
それどころか確実に強まっている。
ナイトメアは窓枠に足を掛ける。
ブライノイズは間違いなくこの廃ビルごと自分のことを潰すつもりだということが見て取れたのだ。
しかしナイトメアの巨体は僅かながらブライノイズの速度に遅れを取り、予想が現実のものとなった。

『ウラァァァァァ!!!!』

ブライノイズは大剣を力いっぱいに振りかざし、ナイトメア目掛けて巨大なエネルギー波を放った。
それは紫色と青の絡みあう光線だった。
その光はプライムタウンを覆い尽くす。
無気力に路上に寝ていた浮浪者から活気に溢れ仕事の最中だった売春婦、薬物の取引中だった売人までそれを目撃した。
ビルを貫通し、空に向かって伸びていった光。
それは数日前にデンサン港の方で見えた雷のような光と同じ様相を呈していた。
だが禍々しさが圧倒的に違っていた。
まさに全てを破壊する、自分以外を全て拒絶するかのような冷たさと恐怖に溢れていた。


















日付が変わり、10月28日午前0時21分。
WAXAニホン支部は静寂に包まれていた。

「交代の時間です」
「あ、どうも。お疲れ様です」

夜勤の職員たちは携帯食とミネラルウォーターで夜を明かす。
ここは消防署や自衛隊以上の24時間体勢、才葉シティの外れにある不夜城だ。
まして現在、ニホンの中枢を担うインターネットシステムが停止している以上、ネットワークや電波通信に頼りきりだった国民の生活は危機に陥っていると言っても過言ではない。
それどころか捜査にまでネットワークに依存していたWAXAからすると今はテロリスト、アナキスト、海外のスパイが入り込み反社会的行動に走るには絶好の機会だ。
誰も口にはしないが、尋常でない緊張に包まれている。
ここにいるのは警視庁、自衛隊、レスキュー隊、公安調査庁のエリート達の集団だ。
状況だけですぐに理解できる。
そんな中、暁シドウは自室で捜査報告書を読みながら、テーブルの形をしたタブレットにあらゆる資料を表示していた。

「昨日...いや2日前の大量殺人、謎の怪電波の観測、クレーターのない隕石の落下の目撃証言、空に向かって落ちた謎の雷、...Valkyrieの暗躍、インターネットシステムのダウン。偶然なわけがない、これらの意味するもの...」

情報のタグをあらゆるキーワードでフィルタリングし、連想ゲームのように共通性を見つけ出そうとかれこれ既に2時間、文字の羅列と勝負している。
どう考えても偶然の事態ではない。
デンサン港の廃工場で殺された中学生たちが全員銃火器を持っていただけでなく、廃工場の外ではValkyrieの人間が殺されていた。
更にその場所から電波人間の抗争と思われる怪電波が観測された。
捜索を進めると新たな事実が次々と明らかになる。
近隣住人たちは怪電波の観測された時間の数分前に空から落下してきた隕石らしきものを目撃していた。
だが落下したと思われる場所、廃工場の周辺を捜索したが落下時のクレーターすら無い。
そして更にその数分後、通常の物理法則を無視した現象が目撃されている。
地面から空に落ちた雷。
2日前は確かに天気は雨模様だった。
しかし雷は落ちていない、それは気象庁に問い合わせてみても同じ結果だ。
この怪電波、大量殺人犯、そしてValkyrieは何処かで繋がっているのは間違いなかった。

「...そしてヨイリー博士のPCから送信されたデータ。それの送信先もここだった...」

リサにローカルネットワーク経由で送ってもらったデータを表示する。

「送信先の端末の情報はアンノウン、契約者の情報も参照できない?それどころか...かなりのサイズのデータだ。それでこそウィザード1体分以上か...」
『シドウ、そろそろお休みになるべきでは?』
「いやもう少しだけ。データが送信された理由は?この厳重なWAXAのシステムを破って?いや手口が鮮やか過ぎる....」

リサのまとめた資料によれば、ネットからの侵入の形跡は無し、侵入のログが削除されている可能性もあるらしいが仮にそうならば復元は難しいらしい。
だがシドウの興味はヨイリーのデータの方に向いていた。

「ヨイリー博士の送信されたデータ。これの詳細がサイズ以外分からないんだ。アシッド、データの詳細は?」
『リサ・ホープスタウン分析官の資料からは分かりません。あくまで送信歴だけですから、データの詳細までは恐らくホープスタウン分析官自身も知らされていないのでは?』
「....となると...現段階で一番の手がかりはヨイリー博士だな。あまり身内を疑いたくないが...これしか手がかりといえるものがない。Valkyrieが名乗りでてくれでもすれば、話は別だが...」

シドウは深呼吸をしてワーキングチェアに腰掛け、マグカップに手を伸ばした。
しかし既にさっきから少しづつ飲み続けていたコーヒーは無くなっていた。

「あれ?もう無いか...って、コーヒーサーバーも空か...」

今思えば自室のコーヒーサーバーもさっき最後の1杯だと分かって使った覚えがある。
仕方なくシドウは自室のドアを開け、廊下のコーヒーサーバーへと向かった。

「あ、お疲れです」
「ああ、お疲れ」

シドウは同じくコーヒーサーバーにやってきていた笹塚分析官と出くわした。
身長は165cmと小柄で金髪がハネていて少しチャラそうに見えるが、一応、リサとマヤの次くらいに優秀な分析官だった。

「ふぅ、暁さん。随分と夜まで起きてるっすねぇ?もしかして夜の営みでも楽しんでるんすか?」
「生憎、相手がいねぇよ」
「ウッソ!暁さん、メチャメチャルックス良いし、部下の女とか毎晩部屋に連れ込んでたりするんじゃないの!?」
「悲しいことにルックスとモテるかどうかは別問題だ。オレはあれだよ...残念なイケメンってやつ」
「ハァ...」

「それに...相手はアイツ以外考えられないからな...」

シドウはサーバーからコーヒーを注ぎながら、ため息をついた。

「お!?暁さん、これすか!?これすか!?」
「やめろって」

シドウは正直なところ愛しの相手のことより何より事件のことを考えていた。
ヨイリーは世界有数の科学者だけあって賢い。
恐らくはデータのことは語らないだろうと読んでいた。
聞き出す手段、それを頭の中で模索していた。
笹塚が立てた小指を叩き、砂糖とミルクを加えた。

「いてぇ!!いてぇよ!!暁さぁぁん...」
「そんなに力入れてないんだが...」
「暁さんは常人とは違うキン肉マンなんすから気をつけてくださいよぉ...」
「あぁ...スマナイ」

シドウは確かに常人を超える身体能力を持っていた。
身長178cm、体重68kg、握力右左ともに80kg、50メートル走5秒28、柔道剣道、テコンドー、ジークンドー、カンフーなどあらゆる格闘技を習得している。
シドウにとっての普通は普通ではなかった。

「ところで!今度新しくニホン支部の課長が警察庁の方から来るそうっすよ!」
「あぁ、聞いてる。でも新体制には期待できない。さっき読んだ書類によれば、この課長の提唱する新体制が公になれば信頼はガタ落ちだろう」
「え?」
「容疑者は徹底的に絞り上げる。それも暴力を使って。その他、どう考えても違反になるような労働規律ばかりだ。これじゃニホン支部の隊員の殆どはオレも含めて半年以内に病院送りか過労死になりかねない職場に変貌する」
「うわぁ...」

笹塚は顔をひきつらせながらコーヒーに砂糖を入れる。

「この体制になった場合、検挙率は大幅に向上する。だが冤罪率はそれを上回る勢いで上昇する」
「冤罪?暴力使って無理やり嘘の自白させるってことすか!?」
「そうなるな」
「え~ヤダ。暁さん、どうにかして!!」
「どうにかしてって言われてもなぁ...」
「さっさと偉くなって暁さんが課長やってくださいよ!!まずは週休3日、1日6時間労働の理想を実現してください!!後は職員1人ひとりの部屋にプールとメイドさんを...」
「却下だ。でもどうにかしなきゃならんのは確かだ」

シドウは深呼吸してから部屋へと戻ろうとする。
そんなことよりも考えなければならないことがあった。
そんな時、口に含んだコーヒーを吐き出しかねない程に大きな音が耳を射抜いた。



第一種警戒発令!!第一種警戒発令!!!

「!?」
「笹塚!!」

シドウは館内は宿舎内に響き渡ったサイレンに反射的にマグカップをその場の窓枠に置き、笹塚と共に走りだした。
この警戒発令は滅多なことでは起こらない。
それでこそテロリストがビルを爆破したくらいの大事件が起こった場合に発令されるコード、『コンディションレッド』への突入命令だ。
シドウと笹塚は管制室へと滑り込んだ。

「状況は!?」

シドウの指令に笹塚は自分のデスクに座り、マイマシンのHP・ENVY700を操作して警報の詳細を管制室のメインモニタに表示した。

「デンサンシティの外れの廃棄区画で強力な怪電波を補足しました!!」
「怪電波...まさか」
「間違いないっす。先日の大量殺人の現場で観測されたのと同じ怪電波です!」

リサとマヤがいない状態で笹塚を中心に分析官たちは事態の詳細を解析すべく動き始めた。
管制室中がキーボードを叩く音と互いに処理を任せ合うコミュニケーションの声で溢れる。

「メインサーバーのデータベースからファイルの33を!」
「近隣で待機しているWAXA所属の部隊を検索中....現場から12キロの位置に宮田班、19キロの位置に朝永班が待機しています!」
「宮田班、朝永班に支給連絡!!現場に向かって事態の確認を開始させろ!」

『こちら宮田班!現場の座標を転送されたし!インターネットシステムがダウンしている状態ではマップデータの受信ができない!!』
『こちら朝永班!了解!現場に急行する!』

「衛星からの映像に切り替えろ!」


インターネットが使えない状態では無線の連絡以外の情報のやりとりは難しい。
アナログなものに頼るしか無いのだった。
笹塚の指示でメインモニタに衛星からのリアルタイム映像が表示された。
するとそこに映っていたのは黒煙を上げる瓦礫の山だった。

「これは...ビルが消し飛んだ跡です...」

周囲の建物ほぼ崩壊していると言っても過言ではないが、特にその中心にあったビルは跡形もなく消え去っていた。
まるで大空襲でもあったかのようだった。
シドウは絶句した。
ビルが吹っ飛んだ場所から怪電波が検出されたということは先日の殺人事件と関係があるだけではなく、犯人、もしくはその関係者が電波人間である可能性が高まった。
ますます繋がっていく事件の因果関係にまるで誰かが書いた悪意に満ちたシナリオのようなものを感じた。

「恐らく電波人間同士の抗争があったものと思われます!!」

「電波人間同士の...抗争...」

つまりぶつかっている勢力は最低でも2つ以上、そしてどちらも電波人間、片方の勢力はValkyrie、そしてもう片方の勢力はValkyrieと敵対する理由がある者。
最悪の事態が思い浮かんだ。
デンサンシティにはWAXAが追っているディーラーの施設が幾つかある。

もしディーラーとValkyrieの抗争なら...
いや、待て。
なぜディーラーがValkyrieと対立する?
自身の縄張りであるデンサンシティで商売をしたから?
だとすればValkyrieの顧客だった殺された子供たちはディーラーに?

シドウは少しづつまとまっていく事態を考察しながら、自分の中で出つつある解答を否定しようとしていた。














「クソ....あのガキ...バケモノか」

安食はプライムタウンから約1キロ程離れたビルの上で左腕と脇腹をかばいながら腰を下ろした。
なんとかブライノイズの攻撃が直撃する前に廃ビルの窓から脱出することが出来たが、完全に逃れることは出来なかった。
左腕に関しては恐らく折れている。
脇腹は6センチほど裂け、血が流れている。
安食自身、状況の整理がついていなかった。
『エンドレス・ナイトメア』を受けて、倒れるどころか暴走してビルの半径50メートルを瓦礫の山に変えた。
そんな人間がいるわけがない。
安食はイレギュラーな事態を受け入れられずにいた。
そしてそれと同時に1つの大きなダメージに気づいた。

「!?しまった!あのビルには....!!」

ブライノイズによって自分たちの計画に必要不可欠な機材がビルごと破壊されてしまった。
安食は拳で屋上のタイルを殴った。
既にスターダスト=彩斗のせいで、自身の計画に大きな狂いが発生させられている。
それも人間のクズとも思える子供、社会的弱者に。
傷口の痛みで顔を歪めながら、ポケットからLumiaを取り出し、ダイアルした。

「ロックマンがまだ...プライムタウンにいる...見つけ次第、殺せ...ぶち殺せ!!!!!」

通話相手の耳の鼓膜が破れそうな程に大きな声で叫び、それでも収まらぬ怒りと痛みでLumiaを屋上から投げ捨てた。










 
 

 
後書き
今回はまさかのブライノイズ登場でした。
シドウの推理とかラストで敵の計画に若干の支障が出ているところなど焦りとか緊迫感とかを出したかったのですが、うまくいっているのかよくわかりませんが、感想や意見等良かったら残していって頂けると嬉しいです! 
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