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SAO-銀ノ月-

作者:蓮夜
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第十話


テスト、終了…

色々と、終了…
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第十話

パンとシチュー、デザートにチーズケーキの夕食を食べ終わり、俺とシリカは二階の客室に向かった。

廊下の両側にズラリと客室が並ぶ。

明日は47層の攻略をしにいく。

…ロザリオたち、《タイタンズハンド》は恐らくはついて来るだろう。

いや、来てくれなくては困る。

シリカを囮にしているようで心苦しいが、ピナを生き返らせることも出来るので、一石二鳥と思うことにする。

「シリカは、泊まるとこ何号室だ?」

「ええっと…四号室です。」

「そいつは偶然。」

俺は自分の今回の宿である、五号室の前で止まる。

シリカは当然、隣の四号室。

シリカと顔を合わせ、二人とも微笑み合う。

「そんじゃ、お休み。」

「おやすみなさい。」

中はシンプルな構造だった。

右手のベッド。

奧には、ティーテーブルと椅子が一脚。

ま、ダンジョンの中で寝泊まりするより遥かにマシだ。

攻略組…俺は違うが…にとっては、ダンジョンの中で他のプレイヤーと共に寝泊まりするのも日常茶飯事。

それに比べれば、ベッドがあって一人で寝られる中層プレイヤーが羨ましい。

俺も、仕事柄で、レアアイテム探してダンジョンで寝泊まりも珍しくない。

黒コートと和服を脱ぎ、簡素な浴衣姿になる。

さて、ホランドに過程の報告でもするかね。

フレンド登録をしているプレイヤー、《ホランド》に対してメールを打つ。

過程の報告をするため、依頼人とはほとんどフレンド登録をしている。

一部例外はあるが…

そういえば、シリカとまだフレンド登録してないな。

正確には依頼人ではないからなのだが、面白い奴だしな。

明日言ってみるか…

コン、コン

そんな事を考えていると、部屋のドアがノックされた。

…誰だ?

「はい?」

「あ、あの、シリカですけど…」

シリカ?

何の用かな?

「鍵なら開いてるから、なんか用があるなら入って来てくれ。」

「し、失礼します。」

ドアを開けて入って来たシリカは、俺のように簡素な格好ではなく、どこかデートに行くような格好…女の子の服は良く分からないが…をしていた。

むしろ、女の子の服装を正確に描写出来た方が変だって。

「どうした?」

何の用か聞いたのだが、何故か慌てだすシリカ。

「ええと、あの、その…よ、47層のことを教えてもらおうと思って!」

…明らかに今思いついたよな、おい。

「ま、いいか…んじゃ、下行こうぜ。」

浴衣姿だが、防御力が低いだけで外に出れない格好ではない。

「いえ!あの…出来れば…お部屋で…」

最後の方は、ほとんど『もごもご』としか聞こえなかったが、肝心なところは聞こえた。

「あっ、あの…貴重な情報を、誰かに聞かれたら大変ですし!」

シリカは慌てて理由を付け足した。

「はいはい、それじゃ、入ってきなよ。」

失礼します…と、部屋の中に入って来るシリカをベッドの上に座らせ、俺は机を持ってきて椅子に座る。

「さて、本来ならここで、シリカが知らないレアアイテムとかを使って「すごい!」とか言われるシーンだろうが、残念ながら、俺はそんなん持ってないからな。ただの地図だ。」

アイテムストレージから、47層の地図を取りだす。

「代わりと言っちゃあ何だけど、林檎ジュースって好きかい?」

「え?…好きですけど…」

それがどうしたんですか?って顔をされた。

再び、アイテムストレージを操作し、今度は林檎ジュースとコップを二杯。

「えっ!まさか、本物の林檎ジュースですか!?」

シリカの目が輝く。

ここ、アインクラッドでは、現実と同じ食べ物というのは無い。

まあ、コーヒーぐらいならあるが、だいたいは…例えばラーメン…は、『ラーメンっぽい何か』だ。

だから本来なら、林檎ジュースといっても、林檎ジュースっぽい何かだが、俺は独自の政策で『更に林檎ジュースに近づいた何か』に出来た。

…原材料は秘密。

てか、知らない方が良いと思うよ。

「ダンジョンに籠もってる時には、美味しい飲み物が飲みたくてね。いつも常備してるんだよ。」

「ふふ。確かに、それはありますね。それじゃ、いただきます。」

最初は、シリカも遠慮がちに口に含んだが、一口飲んだ後はぐいぐいと飲み干した。

「…美味しい…本物の林檎ジュースみたい…」

「ちょっとだけ料理スキル上げててね。ま、飲み物ぐらいしか作れないけど。」

スキル熟練度が低い為らしい。

「そんじゃ、…あ、おかわりいる?」

凄く物欲しそうに俺を見ないでくれ、シリカ。

「…それじゃ、いただきます。」

まあ、ここ、アインクラッドでの娯楽は食べ物ぐらいしか無いから、仕方ないと言えば仕方ないのだが…

「そんじゃ、話を戻すけど、47層のサブダンジョン、《思い出の丘》は、ここが主街区なんだけど、この道を通る。…でも、ちょっと女の子にとって厄介なモンスターが…」

俺はそこで言葉を切る。

システム外スキルが俺に、ドアの前にいる人物のことを告げる。

「…おい、あんた。」

ドアに向かって喋ると、ドタドタと階段を下りる音が響いた。

「…聞かれてたな。」

「え…で、でも、ドア越しじゃ声は聞こえないんじゃ…?」

確かに、普通ならそうだが…

「ちょっと待ってくれ。」

アイテムストレージから、今度はメモ帳を出す。

50層以上もある、色々な層の情報やら何やらなんぞ、メモとってなきゃ普通忘れるって。

ただでさえ、専門用語っぽいのにさ。

「ええっと…スキルの中にある、《聞き耳》スキルを上げてると、ドア越しでも声が聞こえるらしい。…そんなん上げてる奴いんのか。」

悪趣味な奴だな、誰だか知らんが。

「な、何でそんな事を…」

そりゃ、盗み聞きされてたら不安になるよな。

「さぁな。アイドルの密会でも調べたかったんじゃないか?」

「密会って…!」

何故か顔を赤らめるシリカを放っておき、俺は今のプレイヤーを、オレンジギルド|《タイタンズハンド》と当たりをつける。

…来てくれる、みたいだな…

「あ、悪い。フレンドにメールすんの忘れてたから、ちょっと待ってくれ。」

打ちかけであった、ホランドへのメールを思い出し、
『出来れば、明日中には終わらせる』
というメールを送る。

「…これでよし。じゃ、話を戻すけど…」

後ろを見ると、シリカは俺のベッドで小さな寝息をたてながら、眠っていた。

「…おいおい。」

ピナを失って、見ず知らずの男と一緒にいたのだ。

疲れるのは分かるが、その見ず知らずの男の前で寝るのはいかがなものか。

「ここがSAOであったことと、俺が変態じゃなかったことに感謝しろよ…」

さて、どうしよう。

さっき言った通り、まだフレンド登録をしていないので、仕様上、本来シリカの泊まる部屋のドアを開けることは俺には出来ない。

ならば、シリカを起こして、自分の足で帰ってもらうのが一番良いのだが…

「起こせねぇよ…」

なんだか、可愛らしい猫のような錯覚を思わせる寝顔を見てるいると、起こす気が失せるのだ。

「…はあ。」

アイテムストレージから、毛布を取り出し…本来なら、ダンジョン用なのだが…床に横になる。

こういう時は、男が床で寝なければならないのだろうか。

…なんだかそう考えると、理不尽極まりないが…

そんなくだらない事を考えながら、俺もシリカと同じく眠りに入った。



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そろそろシリカ編もクライマックスですね。

…実は、まだヒロインは決まらず。

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