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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第54話 セーブはこまめにしておこう

 
前書き
【前回のあらすじ】

 深夜に流れていたテレビCMを見て、燃えるゴミの日にジャンプを出してしまった銀時は愚図る神楽と直立不動のまま寝てるなのはを引き連れて夜中にジャンプ回収に乗り出した。その際に見つけた生首【からくり家政婦悦子ちゃん】を入手し、高値で売れると踏み源外の元へと持っていく。が、ボディがないのでそのボディの型を取ろうと偶々近くを巡回していたシグナムを脱がそうとして彼女の怒りを買い追い掛け回されてしまうのであった。 

 
 源外の工房から命かながら逃げ延びてきた銀時達万事屋ご一行は、結局元の鞘に納まったかの如く自宅に辿り着いていた。ボディのない生首状態のからくり家政婦を机の上に置き、揃って意気消沈している四人。
 まぁ、その原因は自分達にあるのだから仕方がないと言えば仕方がないのだが―――

「やれやれ、折角金なるかと思ったのに、これじゃまるで殺人者の気分だぜ」

 笑えもしないジョークを交えながら銀時は目の前に置かれているからくり家政婦の頭部を見つめていた。幾ら人気のからくり家政婦と言えども頭だけでは売り物にならない。それに、新八の夢も実現出来ない。結局神楽の自称卵割り機にしか使えない代物になってしまった。

「結局ただのゴミか……苦労したのに損した気分だなぁ」
「でも、源外さんから聞いた話だと、このからくりは家事手伝い能力よりも事務処理能力に特化したからくりらしいですよ。だから、前の持ち主も専らコンピューターとして用いていたみたいですからもしかしたらこれだけでも使い物にはなるんじゃないんですか?」

 新八は源外から聞かされた説明を要点だけ掻い摘んでだが覚えていた。このからくりは内部構造的に家事手伝いには向かないが、その代わりに事務処理などのデスクワークに特化した作りになっているそうだ。そうとなれば別の用途でならもしかしたら結構な値がつくかも知れない。

「冗談じゃないネ! これは私の卵割り機アルよ!」
「まだ其処にこだわってんのかよてめぇは……ま、それよりもだ―――」

 無造作にからくりの頭部を持ち上げて銀時は眺めた。
 このからくり、どうやったら起動するんだ?
 さっきから色々と試しているのだが一向に起動する兆しが見られない。これではただの木偶の棒同然だ。

「何処かに起動スイッチとかないのかなぁ?」

 そう言ってなのはがからくりの頭部のあちこちを見ながら触って確かめていた。頭皮の裏側とか口元とか、鼻とか、とにかくあちこち触れていた。
 が、一向に目覚めない。どうしたものか。

「ったく、これだったらゴミ捨て場にそのままにしてても良かったんじゃねぇのか? これじゃ邪魔でしょうがねぇぜ。明日の燃えないゴミの日にでも出しちまうか?」
「駄目ネ! これは私の卵割り機として未来永劫使用し続けるネ! これは定められた運命アル!」
「そんな運命要らんわ!」

 口うるさい神楽の講義を跳ね除けるかの様に銀時は手を払う。何時までも神楽の愚痴を聞いていられないからだ。
 自分の特徴でもある銀髪の天然パーマを右手で乱暴に掻き毟りながら眠たそうな目で再度からくりを見た。一見するとそれなりに顔の整った女性の顔だ。細く楕円を描いた顎にキリッと整っている顔のパーツ。見るからに美形とはこの事だと思わせた。
 こいつが喋ったらどんな感じになるんだろうな―――
 などと下らない考えを頭の中で思い描いていた。そんな自分自身に思わず笑いが込み上げてきた。こんな妄想をする事自体が下らない事なのだから。

「あっ!」

 その刹那、からくりの頭部を弄繰り回していたなのはが一言声を挙げた。どうしたのかと皆の視線が集まる中、なのははからくりの額にある小さなホクロに触れていたのだ。すると、カチッと言う音と共に内部から微かにだがパソコン特有の起動音が聞こえてきた。
 どうやら額のホクロが起動スイッチだったのだろう。分かりやすくて助かるが、同時にこんな見え透いたスイッチを今の今まで見つけられなかった自分達のアホさ加減に笑いが込み上げてくる思いがした。
 何はともあれこうして無事に起動が出来たのだから良しとしよう。さて、第一声はどんな美声を奏でてくれるのか?
 期待を胸に皆の視線がからくりの頭部に注がれる。

「ドゥルルルル、ドゥルルル、ドゥルルル、ドゥ~~ウン」

 起動してからの第一声がこれであった。何処かで聞いた事のある音声をそのまま口で奏でた音だった。何故か耳に残る、絶対に聞きたくない音。
 例えるなら、今までの苦労が水の泡になった時の音―――

「お気の毒ですが、冒険の書1、2、3は消えてしまいました」

 なんのこっちゃ?
 言ってる事が正にチンプンカンプンだった。まぁ、要するに内部に記憶されていたデータの類が消去したと言っているのだろうが、どの道どんなデータが残っていたとしても銀時達には一銭の値打ちもない。今銀時達に必要なのはデータではなく本体なのだから。

「データは消し飛んだって言ってるが、まぁ中身は無事みたいだな?」
「って言うか、前の持ち主これ使ってどうやってゲームしてたんですか?」
「あれだろう? ボディの何処かにカセット差し込む箇所があったんだよ。股の間とかにさぁ」
「一々そんなネタ挟まないとボケられないのかあんたはぁ!」

 頭部が女性型だからって卑猥なボケをかます銀時に新八の怒りのツッコミが木霊する。まぁ、確かにどうやってゲームをしてたか疑問に感じるが、まぁ分からないのならばそれでも良いだろう。無理に詮索して時間を潰すよりはマシだ。

「もう一度ゲームを再開する為に、まずは名前を決めて下さい」
「名前だって! どんな名前にしようかなぁ?」

 楽しそうな表情で頭の中で幾つもの名前を模索しだすなのはを他所に銀時は面倒臭そうな表情を浮かべていた。人によって千差万別だが、ゲームの冒頭で名前を決めるのに10秒足らずで出来る人間も居れば3時間も掛かる人間も居たりする。
 が、中には適当な名前をつけたりする輩も居り、当然銀時はその部類に入っていた。

「面倒臭ぇから【ああああ】で良いだろう? どうせゲームなんだから適当で良いじゃねぇか」
「え~、そんな名前私嫌だよ! ラスボスとの戦いの際にそんな気の抜ける名前呼ばれたんじゃテンション下がっちゃうじゃない」

 なのはの言ってる事は一理あった。古今東西RPGの見せ場と言えばラストバトルに限る。その際に必ずと言って良い程ラスボスは主人公の名前を言ったり叫んだりしている。だが、その際に主人公の名前が【ああああ】等と言う適当な名前ではそれこそやる気が削がれてしまう。そうなっては勝てる戦いも勝てなくなってしまうのは火を見るより明らかな事であった。

「んじゃどんな名前が良いんだ? 悪いが俺面倒だから名前考える気ねぇぞ」
「って、どんだけ他人任せなんですかあんたは!」

 相変わらずやる気の欠片も見受けられない銀時の言動に新八が呆れながらツッコミを入れる。まぁ、この男のやる気が常に最低値なのは何時もの事なのでさほど珍しくないのだが。

「それじゃ、【たま】で!」
「たま? 何でたまなの神楽ちゃん」
「卵割り機にかけてたまアル」

 このチャイナ娘、どんだけ卵割り機に拘っているのやら。まさか名前にまで卵割り機を持ち出してきたとは。余りにも安直かつしつこい命名に呆れるツッコミ担当の新八を他所にからくり家政婦は了解の意を述べた。

「皆様、始めまして。私の名前は【祝福の風、リィンフォース】と申します」
「サラッとたまって名前否定してるよ! 嫌だったんだたまって名前! ってかその名前今出すと滅茶苦茶不味い気がするんですけど! 近い内に同じ名前の人が出そうなんですけど!」

 からくりなのに以外と自己主張の激しい輩のようだ。まぁ、どの道そんな長ったらしい名前など一々言ってられないのでたまで固定なのは間違いないのだが。

「因みに私の仇名は【ホクロビーム】と言います。でも、あんまり好きな仇名じゃありません」
「ホクロビームって、それ明らかに額のホクロの事言われてますよ!」

 新八が言わずともホクロビームの由来が額のホクロ型スイッチを指している事は明らかだった。しかしとことん人間臭いからくりだった。

「酷い事言うんだねぇ、一体誰がそんな事言って来るの?」
「きっとぶとう家とか戦士ネ!」
「どうして? ぶとう家とか戦士って脳筋タイプだよ?」
「あいつら肉体派の癖に根暗なんだヨ! 陰険に決まってるアルよ!」

 神楽の説明になのはが「なるほど!」と納得していた。それで良いのかとツッコミを入れたくなるが、まぁ別に否定する事も詮索する必要もないのでそのままにしておく事にした。一々ボケを拾っていてはこの先やっていけないのだから。

「あ~、嫌な仇名を言ったせいでやる気が削げて来た。冒険の書にデータを記録します」
「おいおい、まだ何もやってねぇだろうが! 冒険どころか冒頭のムービーすら流れてねぇぞ!」
「復活の呪文を言いますのでメモしてください。【ぼろろろおべべけくさればろむ】」
「おいコラ! お前冒険の書とかあるのに何で復活の呪文が必要なんだよ!」

 額に青筋を浮かべて怒鳴る銀時を他所に、たまは目を閉じて機能を停止させてしまった。まだ何もしてないのに勝手に電源を切ってしまった。
 ゲームで良い所だと言うのに親に無理やりゲームの電源を切られた気分だった。

「あ、切れちゃった……復活の呪文なんて言ってたっけ?」
「っつぅかさっき冒険の書が消えたって言ってた癖して何でパスワードが必要なんだよ! こいつただ働きたくなくて嘘ぶっこいてるだけじゃねぇかふざけやがってぇ!」

 額に青筋を浮かべた銀時がたまの額のボタンを押す。しかしからくりは一向に反応を示さない。
 一回で駄目なら何度でも押してやる! さながら何処かの連射名人の如くボタンを連続して押しまくる。
 ペッ!
 からくりの口から何かが飛び出し、そのまま銀時の口回りにこびりついた。色はないが独特の臭いが漂う。何処か油臭い臭いがする。
 って言うか、これ確実にオイルだった。

「何だこいつ! ご主人様に向ってオイルかけるメイドがあるか!」
「案外居たりして、そんなメイド」
「居て溜まるか! さり気に男の純情な夢をぶち壊すなクソガキ!」

 隣で指を立てて進言したなのはの言葉を一蹴し、銀時は再度自分にオイルを吹き掛けた不届きな輩を見た。

「てっめ、からくり家政婦の癖して何ご主人様に楯突いてんだぁゴラァ! 仕舞いにゃばらすぞ」
「セーブ中は電源又はコントローラーに触らないで下さい。故障の原因になります」
「何が故障だ! 初めからぶっ壊れてるだろうが! 大体てめぇセーブ機能ないって豪語してんだろうが!」
「もう一度復活の呪文を言いますので良く聞いてて下さい。【诅咒梳,如果倾销库萨-SA腐金枪鱼等】」
「おい! 何だその理解不能な言語は! てめぇ復活させる気ねぇだろう!」

 銀時とのやり取りを終えた後、再び強制的に電源を切ってしまった。何処までもご主人に歯向かうとはとんだからくり家政婦である。

「完全に壊れてるねぇ、これ」
「ちっ、一旦カセット抜いて埃取れ。そうすりゃ電源もつく筈だろう」
「でもお父さん、それしちゃうとカセットの寿命縮むんだよ」
「良いんだよ。そうでもしないとつかないんだからしょうがねぇだろ?」

 古いゲームを遊んだ人たちならわかると思うが、カセットタイプのゲームの場合何度やってもゲームが起動しない際にはカセットを吹いて無理やり起動させる場合が多々あると思う。が、あれを行うとカセットが傷んでしまい最悪一生つかなくなってしまうので余りお勧めは出来なかったりする。
 とりあえずたまの首部分に息を吹き掛けて再度起動ボタンを押してみた。今度はちゃんとプレイ出来れば良いのだが。

「おめでとうございます。たまはレベル2になりました!」
「何時の間にかレベルアップしてますよ! 何時冒険してたんですか? そして何時モンスターと戦ってたんですかこの短時間でぇ!」

 長々と新八の疑問+ツッコミが入る。が、そんな事をたまは無視しつつ延々と言葉を並べて行った。

「たまのパラメーターが上昇した! 力+1、はやさ+2、だるさ+5、やる気のなさ+6、ストレス+7、スキル【虚無感】を覚えた」
「ちょっと、何で途中から負のパラメーター上がってるの? それレベルアップした意味ないじゃないですか!」
「駄目だこりゃ、これじゃ一銭の価値もねぇな。やっぱ今度燃えないゴミで捨てて来るか」

 すっかり諦めた銀時がテレビのリモコンを持ちボタンを押す。こちらはちゃんとご主人様に忠実なようで銀時のボタンに合わせて画像が映し出された。
 それは丁度ニュース番組だったらしく銀時の大好きなお天気お姉さんこと結野アナがリポートをしていた。

「おぉっ! 結野アナだ。やったぁラッキー!」
「けっ、でもどりがいけしゃぁしゃぁとテレビに顔出しやがって!」
「黙れ酢昆布娘。俺の結野アナを侮辱すると只じゃおかねぇぞ!」
「嫌、何時結野アナはあんたの物になったんですか? って、あれ―――」

 ふと、新八はニュースの内容を見た。其処にはでかでかと内容を纏めるタイトルが記載されていた。

【からくり家政婦開発者殺害される。犯人は未だ逃走中!】

 と書かれていた。

「からくり家政婦?」
「銀さん、これたまさんを作ってた所ですよ!」
「マジか!?」

 驚きながらも四人はニュースに目をやる。殺害されたのはこれらからくり家政婦の産みの親でもある【林 流山】博士であり、その博士を殺害したのは何と【芙蓉伊―零號試作機】と報道されていた。そして、その芙蓉と呼ばれるからくりの顔はたまと瓜二つ、と言うか本人であった。

「間違いないですよ。このニュースで言ってる芙蓉って、たまさんの事ですよ!」
「って事はあれか? こいつはてめぇの産みの親を殺して此処まで逃げてきたってのか? 首だけでぇ!」

 言葉を並べてみたが、どうも信憑性に欠ける。第一首だけでどうやって殺人を犯すのか。まさか何処ぞの磁石ロボみたいに空中浮遊をして体当たりをかますとか? 実際にそうだったらかなり怖いがまず有り得ないだろう。

「ないない、一体どうやって首だけで人殺せるんだ? 呪いとかを使ったってのかぁ? からくりがぁ? とんだお笑い種だぜ」
「何も初めから首だけだとは限りません。逃亡中に何者かに破壊され、首だけになったと言う可能性もあると思われます」
「!!!」

 突如、銀時の言葉を遮るかの様に横入りの如く言葉が浴びせられた。その言葉に皆が驚いた。驚くのも無理はない。
 何故なら、その言葉を放ったのはさっきまで機能を停止していたたまだったのだから。

「たまさん、どう言う事?」
「残念ながら、首だけになる前のデータの大半が消去されており、過去のデータが残っていません。ですが、伊―零號の型番は私のそれと一致します」
「それじゃ、たまさんが殺人を犯したの?」
「先ほども申しました通り、データがない為断言は出来ません」

 なのはの問いに一辺倒な回答をたまはしてきた。全くイベントが進展していない。まるで村の入り口に立っているモブキャラAと会話している気分だった。

「何もしない内から無いとかって決め付けてんじゃねぇよ! 案外探してれば見つかるだろ? タンスの裏とかさぁ、もちっと探ってみろよ」
「了解しました。検索を試みます」

 銀時に言われるがままにたまは脳内にある記憶の海へとダイブしてみた。

「たまは記憶を探った………なんと、ねこのかりんとうを見つけた!」
「ねぇ、ねこのかりんとうって何?」

 ただ一人ねこのかりんとうが何なのか理解出来なかったなのはが銀時に尋ねてみた。そんななのはの問いに対し銀時は目元が真っ黒になっていった。どうやら銀時はそれが何なのか分かっているようだ。

「申し訳有りません、どうやら初期起動の際のバグが残っていたようでした」
「【いた】じゃなくて【いる】じゃないのか? どう見ても未だにバグが出っ放しじゃねぇか」

 額を掻きながら銀時は溜息を吐いていた。本人はバグだとか言っているが側から見るとバグまみれとしか言い様がない。

「どうします? このままじゃ碌な情報もらえませんよ」
「しゃぁねぇ。こうなりゃもう一度源外のじじいんところに連れてくか。ま、どうせこいつの言ってる事なんてバグから派生した嘘の塗り合わせみたいなもんだろうし―――」

 銀時のその言葉を言い終える前に、入り口の戸を数回叩かれる音がした。その音がした途端、四人の視線が一斉に入り口に向けられる。其処には三人の人影が見えた。
 真ん中に恰幅の良い小太りな人影を囲むように左右に長身の人影が見える。影だけなのでそれが女性なのか男性なのか判別はつけられなかったが、どう考えても自分達にとって良くない代物だと言うのが本能的に察知できた。

「すいませぇん、奉行所の者ですが。此処におかしなからくりが持ち込まれたと報告が入りました。捜査にご協力頂けませんか?」

 女性の声がした。それから更に数回入り口を叩く音がする。戸を叩く音がする度に銀時と新八の心臓がキュッと握られるような感覚に見舞われる。
 徐々に顔が青ざめて行き、本能の赴くままに二人は急ぎ居間の横の部屋にある窓から逃げ出そうとする。

「ぎ、銀さぁぁん! 落ち着いて! まだ僕達が犯人だって決まった訳じゃないんですから!」
「ふざけんな! そもそもこんな生首を拾ったせいでやっぱり面倒毎に巻き込まれちまったじゃねぇか! こうなりゃ大事に巻き込まれる前にこの生首を捨てちまうだけだ!」
 
 そう言うなり銀時は咄嗟に持っていたたまを窓の外から放り捨てようとした。だが、その腕に何かが巻きついているのに気付き、見てみるとたまの三つ編みの髪が銀時の腕に絡み付いて手を離した位じゃ離れない状態になっていた。

「おいぃぃぃ! 何でてめぇ俺の腕に絡み付いてんだ! 放れろゴラァ!」
「この装備は呪われています。装備をはずすでははずれません」
「誰がてめぇみたいな気持ち悪い代物を装備するか! ってか放れろ気持ち悪い!」
「装備をはずすには教会に行って呪いを解いて貰うかATMにて私名義で300万円入金して下さい」
「どんな呪いの解き方だよ! しかも何だよその中途半端な額!? あれか、通常の3倍の早さで動く奴に憧れを感じてるのか? 無駄に赤い奴に憧れてんのか? 坊やなのか?」

 と、銀時の長々なツッコミが木霊するが、たまは相変わらずシレッとして銀時の腕にその三つ編みを絡みつかせていた。
 その間も入り口を叩く音は次第に強さを増してきている。気のせいか外で聞こえて来る声色にも若干苛立ちが増してきているようにも聞こえて来る。このままだと強制捜査に踏み込まれてしまう危険性すらある。

「とにかく、僕が応対して時間を稼ぎますから、その間にたまさんを何処かに隠しておいて下さい」
 
 新八が玄関に向おうとしたそんな刹那の事だった。

「待って下さい。先ほど玄関に居る人たちをサーチしてみました。玄関に立っている人間は三名居ますが―――」
「が? どうかしたんですか、たまさん」
「内二名に体温、脈拍、血流、欲望、3年後の夢、他多数が感知されません」
「いや、最初の二つ三つ以外どうでも良いよね。激しくどうでも良いよね。ってか、何が言いたいの?」

 じれったさを表に出しつつ新八は尋ねた。そんな新八を見てたまはこれぐらい普通に気付く筈だろ? と言わんばりに溜息を吐き、口を開いた。

「結論から言いますと、彼等は役人どころか人間ですらないと言う事です。こう言えば貴方の様なババロア脳みそでも理解出来ました―――」

 言い終わるよりも前に二人は窓から外へと飛び出した。その後に続いて神楽となのはもまた同様に窓から飛び出す。
 その時と同じくして、入り口が凄まじい音を立てて破壊された。中に入って来たのは二人の若い男女と中年で幕府の高官と思わしき井出達をしたおっさんだった。

「ふむ、どうやら勘付かれたようだな」
「もぬけの殻です。どう致しますか? ご主人様」

 メイド姿をした若い女性が中年男に尋ねてきた。その問いを受け、中年男は指示を送る。

「まだ遠くへは行ってない筈だ。手筈どおりに動け」
「了解しました。これよりホクロビームの追跡に向かいます」
「頼むぞ、芙蓉さえ手に入れば他はどうでも良い。最悪殺してしまっても構わん」
「分かりました。行って参ります」

 女性は丁寧に会釈を済ませ、空いていた窓から外へと飛び出した。その光景を見送った後、若い男性と中年男もまた万事屋を後にした。

「私も芙蓉追跡に同行した方が宜しいのでは?」
「構わん、どの道只の侍では奴等を倒す事など出来ん。暫くは高みの見物をしようではないか」
「了解しました。戦闘データの収集に当たります」
「好きにしろ」

 一連の会話を交え、二人はそのまま階段を降り、道を歩いて行った。男の顔にドス黒い笑みが浮かび上がっていたが、その笑みを見た者は誰も居なかった。
 隣を歩く若い男以外―――


     ***


「う~む、一体どうしたんだぁこりゃぁ?」

 頭を掻き毟りながら源外は転移用小型ターミナルを点検していた。
 しかし、どうも顔色や愚痴り方からして思うように行っていないようだ。

「参ったなぁ、完全に壊れちまったかぁ。転移ボタンを押しても逆転移ボタンを押してもうんともすんとも言わねぇなぁ。やっぱり騙し騙しで使ってたから限界が来やがったかぁ。さて、どうにもなりそうにねぇし、そろそろ飯でも食うとすっかぁ」

 すっかり匙を投げ、昼飯に取り掛かろうとする源外。が、その直後であった。突如として装置のエンジンが駆動する音が聞こえてきた。
 驚き、源外が振り返ると、其処には一人でに装置が起動し、カプセル内に光が収束している光景が映し出されていた。

「な、何があったんだ? まさか………」

 驚きの眼差しを向ける源外。果たして、転移装置に起こった異変とは何か? そして、謎の一派に目をつけられてしまった銀時達の運命は?
 それは、次回のお話で。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

なのは
「ガマタ君の協力もあり遂に魔女っ娘へと昇格した羅漢仁王堂とと子。しかし、そんな彼女の身に迫る悪の軍団ヒビビンガー帝国。彼等の放つ悪の怪人に果たしてとと子はどう挑む?」

新八
「え? 何その予告! ガマタ君って何? ヒビビンガー帝国って何!?」

次回、【不思議魔女っ娘とと子ちゃん】第2話
 【激突! ヒビビンガー帝国、とと子初バトルの予感!?】
見てくれないと、君も食材にしちゃうぞ♪」

新八
「タイトルが全然違うぅぅ!」
  
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