いつか必ず、かめはめ波を撃つことを夢見て
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第14話 強襲!ピッコロ大魔王との戦い
ナシゴが、いつもの日課であるカリン塔を下りる修行をしている間、カリンもいつもの日課の外界を眺める日々を過ごしていた。
「なんじゃと! これは大変じゃ」
カリンはある物を発見して、慌て出す。ナシゴがいつもの様に、塔を登ってくるまでの間、そわそわと待っていた。やっと、ナシゴが戻ってきた時、すぐに捕まえて話しだした。
「ナシゴ、よく聞くのじゃ」
「はい、カリン様」
ナシゴが日課を終えて、カリン塔のてっぺんまで戻ってきた時、カリンは言った。
「どうやら、ピッコロ大魔王が生まれてしまったらしい。お主の、原作知識の通り地上で暴れまわっているみたいだ。すまない、発見するのが遅れてしまった。ワシは、このカリン塔を離れることが出来ん。ナシゴ、すまぬが、お主が止めてくれるか」
「分かりました。今すぐ、出発します。方向は、どちらですか?」
はやる気持ちを抑えて、ピッコロ大魔王を見つけた場所を聞き出す。
「武泰斗の道場じゃ」
「そんな……」
まさか、見つけた
「急ぐのじゃナシゴ!」
「觔斗雲――!」
返事もせず、急いで筋斗雲を呼び出すナシゴ。その筋斗雲に飛び乗り、カリン塔から一気に急降下して、武泰斗の道場へと向かう。
ピッコロ大魔王が現れたという場所へと筋斗雲の乗って来たナシゴ。既に、武泰斗とピッコロ大魔王がにらみ合っていた。武泰斗は、ボロボロの身体で、何とか立ち上がっている状態だった。対して、ピッコロ大魔王は余裕で武泰斗を睨みつけている。
「武泰斗! 無事ですか?」
筋斗雲から武泰斗のそばへと飛び降りるナシゴ。そして、武泰斗に声を掛ける。
「ナシゴ様。私は大丈夫です」
数十年ぶりの再会であったが、喜び合う余裕もない。ボロボロにやられた武泰斗は、空元気を出して見せたが、ナシゴは武泰斗の姿から深刻なダメージを受けていることを見抜いていた。
「また一人、命知らずが来たようだ」
ニヤリと笑い、余裕のピッコロ大魔王。どうやら本当に、原作通り神様は悪の精神を分離してピッコロ大魔王を産んでしまったようだ。
「命知らずかどうか、試してみないとわからないさ」
ナシゴはピッコロ大魔王へと視線を合わす。向かい合う二人。身長百八十センチのナシゴに対して、二メートルを超える身長を持つピッコロ大魔王。リーチでは勝ち目はないとナシゴは考え、スピードで勝負することにした。
「武泰斗、離れていてください」
ナシゴの言葉を聞き、武泰斗はそのとおりに離れる。
ピッコロ大魔王とナシゴは互いに睨み合う。どちらも、動くキッカケを待っていた。
「どうした、恐怖で動けなくなったか?」
ピッコロ大魔王の台詞を聞いて、ナシゴは動いた。怒ったわけではない。相手を見くびって警戒心が無い今が、最大のチャンスだと感じたからだ。一気に勝負を決めるつもりで、一歩で相手へと近づき、一撃の拳をピッコロ大魔王の腹めがけて放つ。
「ぐうっ」
油断しきっていたピッコロ大魔王は、一瞬ナシゴの姿を見失い、次の瞬間強烈なボディーブローによって身体をくの字に曲げさせられていた。
「が、かはっ」
胃液がこみ上げるのを、腹を抱えて何とか堪えたピッコロ大魔王。一発でピッコロ大魔王を気絶させるつもりだったが、さすがにそれは叶わなかった。一撃で仕留めさせられなかったナシゴは、次なる作戦を進める。
「どうした? 命知らずに、そんなにやられて」
「貴様、図に乗るな!」
ナシゴはあえて、逆上するような口調でピッコロ大魔王をあおった。
冷静さを欠いたピッコロ大魔王は、大ぶりで拳や蹴りを放つためナシゴに攻撃が全く当たらない。スピードと反応速度ではピッコロ大魔王に対して、ナシゴが数倍も勝っていた。更に怒りで我を忘れたピッコロ大魔王は、攻撃を繰り返すがナシゴには一度も当たらない。冷静に対処するナシゴはスピードとフェイントを駆使して、ピッコロ大魔王を手球に取る。
ピッコロ大魔王は、攻撃が当たらないナシゴに対して切れた。切れて、全開パワーを放つ。それは、寿命が縮むほどのパワーを引き出す技だ。しかし、冷静に攻撃を見切るナシゴには、攻撃がまったく当たらない。
大ぶりで攻撃を放つピッコロ大魔王は、先ほどのダメージに加えて、限界パワーを出していたために、次第に体力を削られて肩で息をするまでになった。
「はぁ、はぁ、はぁ、き、貴様!」
最小限で見切っていたナシゴは、体力たっぷりで、まだまだ余裕である。ピッコロ大魔王は、ナシゴに敵わないという事を感じ、正攻法で攻める事をやめて、別の作戦を取る。
「爆力魔波!」
避けようとするナシゴ、しかしピッコロ大魔王の目標はナシゴではなかった。地面に爆力魔波が当たり、周りは塵埃で見えなくなる。地面がえぐれ、目眩ましで上げられた砂が、土色のけむりになってあたりに漂う。ピッコロ大魔王の気配を探るナシゴは、戦いの場から逃げ出すように走るピッコロ大魔王を見つける。いや、逃げるんじゃない。目的は……。
「……武泰斗!くそっ」
ピッコロ大魔王の目的を掴んだナシゴは、急いでピッコロ大魔王の後を追う。しかし、ナシゴは一足遅く、武泰斗はピッコロ大魔王に捕まってしまった。
「ピッコロ大魔王! お前の相手は俺だ! 武泰斗を離せ!」
ナシゴは無駄だと分かっていたが、言わずにはいられない。苦しそうにうめく武泰斗を前に、手が出せない。
「どうやら貴様は俺の予想以上の力を持っているらしい。だが、こうしたらどうだ? 手は出せまい」
勝ち誇りながら、台詞を言うピッコロ大魔王。その通り、ナシゴは手が出せなかった。
図らずも、原作の悟空対ピッコロ大魔王戦の天津飯のように人質に取られてしまう武泰斗。そして、悟空のように手を出せないナシゴ。
「こうしたらどうだ? 動けまい」
ピッコロ大魔王は、目から怪光線を出し、ナシゴの両足を破壊した。
「っ、くぅぅぅ」
ナシゴは、痛みによってうめいた。両足で身体を支えられず、膝をつく。
「な、ナシゴ様、ワシに構わず、ピッコロ大魔王を……」
切れ切れに、そう言う武泰斗を鬱陶しそうに見るピッコロ大魔王。
「貴様は、もう用なしだ。死ねっ」
「武泰斗――!」
辺りに、ゴキッという音が響く。それは、武泰斗の首が折られる音だった。そのまま、ピッコロ大魔王は、武泰斗の身体を放り投げるとナシゴに向き直った。
「貴様の、自慢のスピードはもう出せないだろう」
言いながら、ナシゴの左頬を殴りつける。ナシゴは、左腕で攻撃を受けるが、上手く身体を両足で支えられなく、吹き飛ばされる。
吹き飛ばされたナシゴは、こうなったら一か八か、あの技を使ってみるしか無いと考えついた。思いつきで、ナシゴはある技を使うことを決意したのだ。
ナシゴは、痛む足で何とか立ち上がり、両手を右の腰辺りに引き絞った。
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