鬼灯の冷徹―地獄で内定いただきました。―
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四_犬猿の仲
三話
前書き
作者の一言:感想などいただけるとありがたいです^^
あと、「このキャラこんなんじゃないで!」とかアドバイスもどんどん。
白澤は腕を頭の後ろで組み、椅子に座ったまま背後の机にもたれかかってそう言った。
突発的に浮かんだ、それほど重要にはならない助言だと思って発言したのだろう。
「なんちゃってね。普通の人間には無理か!」
「そ、そうですよ。大体、こんなところから現世に飛び降りるなんて、臨死体験どころかほんまに死にますよ。すぐまたここに戻ってきてしまいますよ」
ミヤコは苦笑いを浮かべて言った。桃太郎もぶんぶんと首を縦に振る。
「神獣の白澤様だから、言ったり来たりできるんでしょ」
「・・・・・・いえ、ちょっと待ってください」
ただの冗談で終わろうとしていた場が、鬼灯の一言で固まった。
鬼灯は立ち上がり、顎に手をやりながら考える。
「試してみる価値はあるのでは?」
「お前、正気か!?どこまでドS鬼神なんだよ、全く」
白澤も立ち上がり、猛抗議だ。そもそも事の発端は彼自身の発言であったことを忘れている。
鬼灯はそんな彼を制すと、チラリとミヤコに目をやった。
「わずかでも可能性があるなら、それに賭けてみるものでしょう!ドラマみたいでカッコいいし!!」
「どんだけ現世のテレビ番組、チェックしてんだ!」
「なかなかおもしろいですよ」
「・・・・・・あー、でも僕も刑事ものは好きかも」
「ほら。あなただってちゃっかり見てる」
「ちょ、ちょっと二人とも~」
刑事ものドラマと医療系のドラマの話で盛り上がり始めた、というか揉め始めた鬼灯と白澤を見かねて、桃太郎が割って入る。
ミヤコ自身は、こんな成功するかしないか全く予想のできない賭けで動くのは不安だし、いくら鬼灯の言うことでも反対したかった。
それに、現世に戻ることをそれほど急がない理由もまだあった。
これは本当は思ってはいけないことだということはわかっている。だって、ここにいるということは、いくら自分は臨死体験中とはいえ死んでいるということなのだから。
「まあ、今日これからやってみようというわけにはいかないのですが」
「そりゃそうだろ」
「思わぬところから現世に帰ることができる方法が見つかるかも知れないですね」
「・・・・・・はい」
ミヤコは頷く。それを横目に見ながら、鬼灯は彼女の態度に違和感を覚えた。
しかし、今はそれをとやかく聞く必要はない。彼はパンッと手を一回叩くと、場を仕切り直す。
「さて、ではミヤコさん、そろそろ閻魔庁へ帰りましょうか」
「あっ、はい」
鬼灯は受け取った薬の瓶を着物の袖へ仕舞うと、軽く頭を下げて挨拶し、極楽満月を出る。
ミヤコもそれに続いた。
「えーっ、帰るのはその朴念仁だけでいいよ。ミヤコちゃんはここにいれば?」
白澤が不満気に口を尖らせる。そんな彼に、鬼灯の鋭い視線が刺さった。
「ひえっ、怖い奴」
「また遊びに来てください。おいしい薬膳鍋でも作って待ってますので」
桃太郎が場を和ませるように丁寧に言った。
「はい。では」
前を歩いていく鬼灯を、ミヤコは追った。
何となく、二人の間に今までになかった空気が流れる。ミヤコは気まずかった。
もしかすると、彼はわかっているのかも知れない。わたしの気持ちを。
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