戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百五十七話 延暦寺その二
「だからじゃ」
「比叡山もですか」
「どんな家にも鼠がおる」
それと同じだというのだ。
「だからじゃ」
「比叡山にも妖僧がいますか」
「腐った坊主もいかんが妖僧はな」
「尚更ですな」
「捨て置けぬ、ましてや久政殿をたぶらかしたことはな」
それにより織田家と浅井家は戦になった、それが為にというのだ。
「余計に許せぬわ」
「それに殿のお命も狙いましたし」
「比叡山に引き渡してもらう」
絶対にというのだ。
「僧兵共の解散と全ての荘園を手放すことも求めるがな」
「それもですな」
「受け入れなければな」
その時はというと。
「戦も止むを得ぬな」
「延暦寺ともですか」
「そうじゃ、その時はな」
「しかしそれは」
「わかっておる、わしも義教公にはなりとうない」
大悪とまで言われたあの将軍の様にはというのだ。
「あの方はあまりにも酷かった」
「はい、人の道を踏み外しておりました」
「ああなるつもりはない」
それは毛頭だというのだ。
「だからじゃ」
「ここは出来る限りですか」
「穏便に済ませる、ではな」
「はい、それでは」
平手は信長のその言葉に頷いた、こうした話をしてだった。
延暦寺からの使者である僧達を迎える、信長は本陣においてその僧侶達に確かな声でこう告げたのだった。
「わしが延暦寺に求めることは三つじゃ」
「三つですか」
「それだけですか」
「まずは僧兵の解散じゃ」
最初に告げたのはこのことだった。
「そして荘園を手放すこと、それにじゃ」
「あの二人のことですか」
「杉谷殿と無明殿のことですか」
「二人を引き渡すのじゃ」
織田家、信長にだというのだ。
「よいな」
「はい、その三つですか」
「我等に求めることは」
「この三つを受け入れるならよい」
それならというのだ。
「荘園での実入りの代わりに檀家をやるからな」
「檀家ですか」
「今織田家が進めている」
「そうじゃ、それじゃ」
まさにその檀家をだというのだ。
「それで身入りとせよ」
「はい、それでは」
「そのことを大僧正様にお伝えします」
「そうしますので」
「一日待つ」
信長は刻限も告げた。
「よいな、一日じゃ」
「一日で答えよというのですか」
「その様に」
「そうじゃ」
その通りだというのだ。
「わかったな、一日じゃ」
「わかりました、それでは」
「すぐに大僧正様に」
僧侶達は応えてすぐにだった、一旦山に戻った。
ページ上へ戻る