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戦国†恋姫 外史に飛ばされし者

作者:藤吉
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第11話

 
前書き
大変お待たせしましたああああああああああああああああああああああああ!!

今回から幕間劇に入ります。

ではどうぞ 

 
戦国†恋姫 外史に飛ばされし者



第11話 幕間劇1



 墨俣一夜城築城の戦いから数日、久遠からある提案を投げかけらた。
その提案というのが…


久遠「今回の一戦で蜂須賀小六も加わり、貴様の部隊も拡大したようだな。して竜司よ。貴様、長屋に住む気はないか?」


 というものだった。
聞くに、自分の衆や部隊を持つ者は、須く屋敷や長屋を宛てがわれるとのこと。
今回の戦で転子や蜂須賀衆も何名か加わったので、俺にも長屋をくれるそうだ。
俺もこれ以上久遠や帰蝶夫婦の家に厄介になるのも忍びないと思い、その提案を受け入れることにした。


竜司「そうだな。これ以上ここに厄介になるのもあれだしな…わかった。引っ越そう」

久遠「むっ…貴様は我らといるのが嫌なのか…?」

竜司「いや別に嫌ではないが…このまま久遠と帰蝶の中を邪魔するのはな…」

久遠「貴様だって我の夫であろうが…寂しければいつでも寄って良いのだぞ?」


 何とも素直になれない久遠である。


 そしていよいよ引越しの日。
荷物を纏め、屋敷の入口に出た俺に、帰蝶と久遠も見送りに出てきた。


帰蝶「…ねぇ、本当に一人で大丈夫なの?」

竜司「帰蝶か…何とかなるだろう。まぁ最初はこちらの料理の仕方などに慣れないかも知れんが、慣れてしまえば後は自分でやるしな…」

帰蝶「その慣れるまで…が心配なんだけど…」


 確かにこちらの文明レベルは高いわけではない。
火をおこすのもガスコンロや電気ではなく、薪を汲み、火打石や火打金などで火をおこす。
普通なら、現代から来た俺ができるはずがない。帰蝶もそう思っているのだろう。


竜司「まぁ最初は転子やひよに手伝ってもらうことになるだろうけど、最初だけだ」


 元々、久遠の夫にならなければ、一人でやっていくつもりだったし、その術も心得ている。


帰蝶「だからじゃないの…ひよところにあまり迷惑かけんじゃないわよ…」

久遠「まぁあの二人がいるなら問題はあるまい」

帰蝶「久遠…」


 もしかしたら、この二人は俺が生活力がない人間だと思っているのだろうか。


竜司「あのな…一応俺だって料理の心得はある。ただこの時代の火加減とかの調整が難しいだけだ…」

久遠「そうなのか?」


 やはり思っていたようだ。
そんな会話をしていると、ひよ子と転子が何人かの竜司隊を連れてやってきた。


ひよ子「久遠様ー!お頭ー!」

転子「結菜様もこんにちは!」

竜司「二人ともご苦労さん」

転子「いえいえ。お迎えに上がりました。お頭」

久遠「うむ。二人とも、苦労」

竜司「それにしてもすごい人数だな。そんなにいらなかったんじゃないか?」


 見てみると、竜司隊の何人かが二人の後ろに控えていた。


ひよ子「えっと…竜司隊の長屋、ちょっとわかりにくい所にありますし、それに荷物なんかもあるかと思って…」


 まぁ…普通なら引越しにこれだけいるのは分かる。
それはすごく有難い…有難いんだが…。


転子「それでお頭、ほかの荷物は…?」


 そう言って、俺の周辺を見回すが荷物らしい荷物はどこにもない。
強いて言えば、書簡が少々ある程度。
だがその書簡の量も大したことはなく2,3人居れば運べる程である。


竜司「実質荷物といえば…ここにある書簡くらいだ…」

ひよ子「……」

転子「………」

竜司「ん?おい、どうした?おーい…二人ともー」


 あまりの荷物の少なさに驚きを隠せない様子の二人。
竜司がいくら手を振って気付かせようとしても全く反応しない。
その後数秒の沈黙の後深い溜息と共に、二人の意識が覚醒する。


ひよ子、転子「「はっ……!」」

竜司「あっ…気がついた」

ひよ子「えっと…」

転子「じゃあ…その、荷物…それだけですか?他にもないんですか?食器とか、お布団とか…」

ひよ子「そうですよ!そのために隊の皆さんにも来てもらったんですよ?」

竜司「ん~…そこらへんは久遠の家のを借りてたし、食器や衣類だって久遠のお父上のをお借りしてたからな…なぁ?帰蝶、久遠」

帰蝶「えぇ、家事は全部私がやってたから…」

久遠「そういう訳だから、必要なものはそちらで揃えてやってくれ」

転子「はぁ…承知いたしました」

竜司隊1「あの…木下様、蜂須賀様?」

竜司隊2「では我々は解散…ということでよろしいですか?」

ひよ子「えっと…」

転子「そうですね…あっそこの書簡を運ぶ人だけ割けば後は解散でいいかと」

竜司「そうだな。そうしてくれ。皆も済まないな、折角来てくれたのに」

竜司隊「いいえ…おーい!皆解散だ!解散!書簡を運ぶ奴らだけ残ってそれを運び入れろ!」

竜司隊「「「へい…」」」


 その一声で、書簡を運ぶ者とさっさと解散する者に分けられ、それぞれ行動に移す。
その様子を見て、ひよ子、転子、帰蝶は溜息を吐き、久遠と俺は苦笑いをしながら見送った。


転子「そ…それじゃ、私たちも行きましょうか、お頭」

竜司「そうだな。いつまでもここに居るのもあれだし…じゃあ久遠、帰蝶、俺たちはこれで失礼する」

久遠「何だか、もう来ぬみたいだな」

竜司「ん?そうか?じゃあ…またな」

久遠「うむ。またな」

帰蝶「たまには顔を出しなさいよ」


 こうして俺達竜司隊は久遠の屋敷を後にした。


帰蝶「行っちゃったわね…」

久遠「やれやれ…あぁは言っていたが…本当に大丈夫なのか?あいつは」

帰蝶「まぁ、ひよもころもいるし、なんとかなるでしょう。あいつ自身しっかりしているし」

久遠「だといいのだが…」

帰蝶「寂しい?」

久遠「うむ…そうだな」

帰蝶「………」

久遠「ひとりいるのといないとでは、屋敷の賑やかさも随分違っていたからな」

帰蝶「……まぁ、騒いでたのは主に私達のような気もするけどね」

久遠「ふふ、違いない」




 久遠の屋敷を後にした俺達竜司隊は、清洲の街をのんびり歩いていた。
転子に聞けば、久遠から正式に竜司隊への入隊の沙汰があったあと、すぐにこれから向かう屋敷に移ったらしい。


竜司「そうか。ならこれからまた賑やかになるな」

転子「はい!改めて、これからお世話になります!竜司様!」

竜司「こちらこそな。まぁ、気楽にやれよ。いつも肩肘張ってちゃ世話ないからな」

転子「はぁ…」

ひよ子「それでは竜司様、これからどうします?」

竜司「そうだな。生活に必要なものを一通り揃えたいところだが、まずは新居の方に行ってみるか…。道順も覚える必要があるし、そのあと夕飯の買い物がてら市に出ようか」

ひよ子「はーい!わっかりましたー!」

転子「承知しました!じゃあまずは長屋に案内しますね」

竜司「よろしく頼む」

ひよ子「あっそうだ。お頭ーお金はあるんですか?」

竜司「あぁ、一応久遠からはこの間の墨俣一夜城築城の功績を認められて給金が出たからな。ひよ、これはお前に渡しておくから管理を頼んでいいか?」

ひよ子「はーい!」

転子「そ、そんな簡単に渡しちゃってもいいんですか?自分のお金を…」

竜司「まぁひよなら大丈夫だろう。ひよなら金銭の管理は安心して任せられる」

転子「えぇ!ひよってこういうの得意だっけ?」

ひよ子「ぶー…ころちゃんその反応はないんじゃないかな?」

竜司「実のところ、今回墨俣一夜城築城の経費を割り出したのはほかでもない、ひよだからな。適材適所というところだろう」

ひよ子「へへぇ…お頭に褒められちゃった」

転子「むぅ…ひよずるい…」

竜司「まぁ、そんな訳だから、金の管理は任せるぞひよ」

ひよ子「はい!お任せ下さい!」

竜司「さて、そうと決まればまずは長屋だな。行くぞ」


ひよ子「竜司様、こっちです。こっち」


 そう言いながら、ひよ子に道案内される俺達。
人の往来が激しい本道…ではなく、そこから少し離れた裏道だった。
その道は何本かに枝分かれして、目印でもないと迷いそうな道である。
これなら確かにわかりにくいのも無理はない。先にこちらを選んで正解だったようだ。


ひよ子「もうすぐですから、竜司様」


 ひよ子に教わりながら、しばらくその道を歩いていると、一件の長屋が見えてきた。
その長屋はどこにでもありそうな、ごく普通の長屋…いや…おかしい箇所があったな…。


竜司「うわぁ…分かりやす…」


 そう、そこにはある家紋が入った旗が井戸やら廊下の柱やらにくくり付けられていた。
『丸に釘抜紋』。
釘抜きは打ち込んだ釘を抜くための工具。釘抜は座金そのものを図案化したものが多い。
また、釘抜きは「九城を抜く」といわれ、九つの城を陥落させるという戦勝の縁起もかついでいる。


竜司「間違いなく…俺の家の家紋だな…あそこか…俺達の住む場所」

ひよ子「はい!」


 わかりやすい目印のお陰で付くには着いた。だが…


竜司「陣地にしか見えん…」

ひよ子「あはは…一応歓迎ってことで…」

転子「私は一応止めたんですけど、目立つようにってひよが…」

ひよ子「あーっころちゃんひどーい!」

竜司「まぁ…お陰で着くには着いたけどな…少し恥ずかしいけど…」

ひよ子「そ、そうですか?えへへ、よかったです!」


 そんなことを話していると、長屋の奥から竜司隊の兵がワラワラと顔を出してくる。


竜司隊「竜司様!お待ちしておりました」

竜司隊「これからよろしくお願いします」

竜司「おう。出迎えご苦労様。世話になるぞ」

竜司隊「はい!あっお荷物は届いておりますよ。お頭のお部屋に入れておきましたので」

竜司「すまないな。じゃあ各自このあとは自由に休んでくれ」

竜司隊「はっ!」


 隊の皆に礼を言いつつ、俺たちは来た道を戻り、再び清洲の街に繰り出す。
荷物と言っても書簡だけあっても意味がないので、必要なものを買い漁る。


竜司「なんかすまんな。これでは二度手間だな…」

ひよ子「いえいえ。気にしないでください。元々はころちゃんを案内する予定だったので」

転子「私も、こっちに来てから足りないものがいくつかあったので…ちょうど良かったです」

竜司「そう言ってくれると助かる…そう言えば、あの長屋はいつの間に用意されたんだ?」

ひよ子「えっと、確かころちゃんがくる少し前だったと思います。私も、竜司様の隊に入ってからあそこに移ったので。あっでも前の長屋もすぐ近くなので、この辺の地理には詳しいですよ」

竜司「そうか。それは頼もしい」

ひよ子「えへへ…」

竜司「ご機嫌だな…ひよ」

ひよ子「それはそうですよ!こうやって、竜司様の部下としてちゃんと武士になって、ころちゃんとも一緒に働けるんですから!」

転子「私もやっと仕官できましたし」

ひよ子「これからみんなで、沢山手柄を立てましょうね!」

竜司「そうだな。まぁ織田軍には勇将猛将が多いし、さして先鋒にはならないだろうがな」

転子「まぁ、できたばかりの部隊ですし、人数も限られてきますもんね」

竜司「そういうことだ。まぁ、他にも出来ることはあるだろうが、まずは出来ることからコツコツとやっていけばいい」

ひよ子「そうですよね~。うぅでもやっぱり…手柄は欲しいですぅ」

転子「手柄は良いけど…ひよ、頸なんて取れるの?」

ひよ子「え、あ……あぅぅ…」


 頸と聞くや、青ざめた顔になるひよ子。
ひよ子は今まで人の命を刈り取ったことがないらしく、以前仕えていた松下嘉平からは「あなたは武士には向いていない。国に帰りなさい」と言われたそうだ。
だがこの時代、手柄を立てるとは即ち、敵将の頸を刎ね、首級を上げることが一番の近道だ。
俺や転子ならともかく、臆病なひよ子に首級をあげることは…


竜司「まぁ、前線て戦うことが全てではないだろう。これからの戦いにおいては、武力も必要だがそれを楽にこなすための下準備が出来る部隊が必要になる」

ひよ子「下準備…ですか?」

竜司「そう。調略、補給、工作部隊…出来ることは山ほどある。そういうところで役に立てれば、久遠も認めてくれるはずだ。あいつは、あぁ見えて、褒めることを惜しまない子だからな」

ひよ子「さすが竜司様!そうですよね!首級を刎ねるだけが手柄って訳じゃないですよね!」

竜司「ころはどうだ?」

転子「あはは…野武士って首級を取るのが仕事じゃなかったんで…私も正直あまり…」

ひよ子「んもー!ころちゃんも人のこと言えないじゃない!」

転子「え、別に私が頸取るの得意なんて一言も言ってないでしょ?」

竜司「喧嘩をするなみっともない…」

ひよ子「りゅ、竜司様ぁ~…」

転子「あぅぅ…怒られちゃった…」


 全く…人の往来でなにやってんだか…。
これはこれで和むとは思うが和みすぎな気もする竜司。
そう思っていると、道の先から織田家の三若がやってきた。


和奏「あっ竜司じゃねぇか」

雛「竜司君やっほー」

竜司「三若そろい踏みか、何やってるんだ?こんなところで」

犬子「ちょっとお買い物なんです!」

和奏「猿達も買い物か?」


 名前を交換してもひよ子を猿と呼ぶのを変えないんだな。和奏。


ひよ子「はい!竜司様ところちゃんが長屋に引っ越してきたので、足りないものを買いに…」


 斯く言うひよ子は特に気にしていない様子。


和奏「あぁ、猿の長屋の方に竜司隊の幟が山ほど立ってたのって、それか」

竜司「見てたのか…お前ら…」

雛「あー、そう言えば竜司くん。久遠様に追い出されたんだっけ。かわいそー」

竜司「あのなぁ…まぁ形式上では夫婦ではあるが、あくまで表面上でだ。だからそこまで居座るわけにはいかんだろ」

犬子「そうなんですか?竜司様可哀想…」

竜司「犬子…お前なんか勘違いしてないか?」

和奏「え?ボクは久遠様に手を出して追い出されたって聞いたぞ?」

犬子「そうなんですか、竜司様!?」

竜司「誰から聞いたんだそんなこと…言った奴出せ!説教してやる!」

雛「竜司くんサイテー…」

ひよ子「竜司様…」

竜司「お前らな…」


 どこまで信用ないんだ俺はとため息が漏れる。
すると、雛がやけにニヤついた顔をしているのが見える。


竜司「おい…和奏。お前が聞いたのは誰からだ?」

和奏「え?そりゃあ雛から…」

竜司「やっぱりてめぇか雛ぁああああああああああああ!」

雛「わー!怒った!逃げろー!」


 と、全速力で逃げようとする雛。


竜司「待てこら!」


 竜司も負けじと追いかけ、捕まえる。


雛「あうぅ…軽い冗談なのにぃ…」

竜司「お前が言うと洒落にならんからやめろ…」

雛「ぶぅ…竜司君のいけずー」

竜司「お仕置きが必要か…ひーなー…」

雛「じょ、冗談だよ…」

竜司「全く…和奏、君も一々乗っかるんじゃない…」

和奏「いやぁ…あははは…」

犬子「え?冗談だったの?」

竜司「おい…」


 犬子は本気で信じてたようだ。


竜司「全く…あぁそうだ。三人に聞きたいんだが…」

和奏「ん?なんだ?」

雛「話題の変え方が白々しい…」

竜司「うっさい…軍で手柄を立てるのに必要なのはなんだ?」

和奏「首級」

犬子「首級」

雛「首級」


 やはり首級をとらないといけないらしい…。
まぁ武闘派の多い織田軍らしいが…。


ひよ子「あぅぅ…」

犬子「武士は戦で首級を挙げてこそですよ!」

竜司「まぁそうだよなやっぱり…」

和奏「当たり前だろ。なんで今更そんな事聞くんだ?」

雛「まぁ、雛はそう言うのめんどくさいけど…もっと楽で褒められる手柄がいいなー」

竜司「あのなぁ…手柄を立てるのに、苦も楽もないだろうに…じゃあ雛はどうやったら手柄を立てられると思う?」

雛「んー。よくわかんないけど…久遠様や麦穂様に褒められればなんでもいいんじゃないかなー?」

和奏「まぁ、お前らはこの間の墨俣の築城で手柄立ててるんだからいいじゃないか?首級はボク達に任せておけよ」

犬子「そうそう!」

竜司「そうだな。んじゃあ敵将の首級はお前らに任せるわ…今の所、うちの隊じゃどうにもならんしな」

和奏「任せとけ!」

雛「雛は任されたくないなぁ…」

犬子「けど、竜司様はこんなこと聞きたかったんです?」

和奏「こんな当たり前のこと聞いて、変な奴だな」

竜司「少し気になっただけだ。ありがとな。参考になった」

雛「まぁなんでもいいや…それじゃ、そろそろ雛達は行くねー」

犬子「竜司様、またー!」

竜司「あぁ、気をつけてな」


 そんなこんなで、三若は去っていった。


竜司「だそうだ…」

ひよ子「やっぱり武士の一番の手柄は首級なんですね」

転子「うーん…仕官するのも大変だったけど、この先はもっと大変そうだなぁ…」

竜司「まぁ…確かにな、でもさっき言ったとおり、敵を倒すことだけが手柄って訳じゃない。それは和奏も言っていただろう?俺たちはこの間の墨俣一夜城築城で一役買って、十分手柄をとったんだから」

ひよ子「でもあの時は…他にも沢山の人が戦ってくれていましたし…」

転子「これからはあの時以上の軍と戦うことにもなるんですよね…」

竜司「そうだな。久遠が天下統一を目指す限り、敵を倒さなければならない。けど、ただ倒すだけが戦いってわけじゃない。その方法はこれから見つければいいんじゃないかと思っているが」

転子「え……」

竜司「とりあえず方針というか…俺達の軍の役割というか。俺達竜司隊は前衛では戦わない」

ひよ子「えぇー!どういうことですか!」

転子「首級…狙わないんですか?」

竜司「まぁな。まぁ俺が直々に前衛に出て道を作ることにはなるだろうが基本的には作戦を実行しやすくする。搦め手の部隊をつくろうと思う」

ひよ子「あ…」

転子「だからさっき、和奏さんたちに首級を挙げるのは任せるって…?」

竜司「そういうことだ。織田軍は武闘派が多く、調略、計略に長けた部隊は少ない。強いて言えば、雛の滝川衆、麦穂の丹羽衆がいるが…麦穂は家老だからいざとなれば、前線にたって三若を率いることにもなるだろう。そして雛はもう2人の手綱を引く役目だからこっちも下手には動けない。だからこその俺達という訳だ」

ひよ子「なるほどー!それなら手柄も立て放題ですね!ううー!何だかこれなら首級を挙げなくても大丈夫な気がしてきた!やるぞー!」

転子「わ、私も頑張ります!」


 これなら大丈夫そうだ。
二人ともこれで少しは自信につながるだろうと確信し、安堵する。


竜司「そう言えば、ひよはいつから猿なんて呼ばれてるんだ?」


 歴史上の豊臣秀吉は、猿回しの猿のように、ご機嫌取りがうまかったということだらしい。
だから猿と呼ばれていた説がある。
だがひよ子から聞いた話では、最初に仕えていた時からもう猿と呼ばれていたようだ。
すると、転子が何故か笑いを堪えている。

ひよ子「あ、ころちゃん。なんで笑ってるの!」

転子「いや…だってさ…」

竜司「…?」


 どうやら転子は何か知ってるようだ。


転子「実はちっちゃい頃…」

ひよ子「あーっ!ちょっと、ころちゃん!?」


 どうやらひよ子は子供の頃は結構やんちゃな子だったようで、木の上に勝手に登ったり、アケビや桃を採ったり、木の上で昼寝をしたりしていたようで、元気な子供…と言うより、野生児という感じだ。


竜司「猿…だな。確かに…」

ひよ子「いやー!竜司様までー!」

転子「あと、ちっちゃい子の面倒見るときでも、子供を抱きかかえたままそのへん走り回ってて…」

竜司「なるほどな…でもそういう子は街中でも結構いるものだが」

転子「まぁそうですけど、その格好が何とも猿みたいなんですよねー」

竜司「そういうことか…」

転子「だからさ、そういうすばしっこい所が、久遠様にも猿みたいだって思われてたんじゃないの?」

ひよ子「ころちゃんひどーい!」

転子「あ、そうだ。隣村の悪ガキと合戦をした時なんか、気に登ってまだ青い柿の実を投げつけたりして…あれはどう見てもさるかに合戦だったよねー」

ひよ子「そういうころちゃんだって…あの合戦の時には牛の糞を…」

転子「ちょっと!だからってその話までする!?」

ひよ子「ふふん。お返しだよーだ!竜司様も聞きたいですよね?」

竜司「勝手にしてくれ…」

転子「竜司様ぁーーーーーーー!」


 その後、暴露大会は白熱していき、買い物のことも忘れ、ついには日が傾くまで続いた。


転子「はぁ…はぁ…はぁ…」

ひよ子「はぁ…はぁ…」

転子「ひよ…この話は、もうなかったことに…」

ひよ子「うん…そうしよう…キリがないや…」

竜司「終わったか?二人とも…」

ひよ子「あ、竜司様…」

転子「えっと…なんとか…」

竜司「そう…ところでさぁ、お前ら…」

ひよ子、転子「「はい?」」

竜司「もう…日が沈んで来てるんだが…」

ひよ子、転子「「あっ…」」


 今更気付いたようだ。


ひよ子「す、すみません…」

竜司「まぁいいさ、今日はどこかで食べて帰ろう。買い物の続きは…また明日だな」

ひよ子「はい。だったらその辺もご案内しますね!」

竜司「頼む…と、あっ…」

ひよ子「どうしました?竜司様」

竜司「いや、そう言えば俺、君らに給料ってあげてなかったよな…」

ひよ子「あっ…」

転子「そうでしたね」


 一応久遠からは給料の銭と米をもらってはいるが、それは俺一人が使うものではなく、その中から差し引いて隊の者に分ける。それがひよ子や転子たちの給料になる。
その辺りも一応は勉強してあるが、すっかり忘れていた。


竜司「気がついてよかった…もしも忘れてたら路頭に迷わせることになってたな…」

ひよ子「あはは…そうですね。私たちも気付いてもらえてよかったです」

転子「当面は、私とひよで知行地の管理は出来ると思います。余裕ができれば、信頼できる役人を雇って任せてもいいでしょうけど…」

竜司「まぁその辺りは任せるよ。俺じゃ…どういうことに使えばいいかはわかるけどそのへんは面倒でな…はぁ…これは一度、麦穂辺りに相談しないとダメかな…」

ひよ子「その方がいいかも知れませんね」


 とりあえず、当面はやりくりしつつ、知行のことは改めて麦穂に聞いていくことにした。
金の管理はひよ子が適当だと今までで判断できるので任せることとなった。
しばらく歩いていると、一件の食堂に足を止める。


ひよ子「あ、竜司様!このお店です!一発屋!」

竜司「じゃあ今日はここで食べるか…」

転子「そうだ竜司様!竜司様の小さい頃の話も聞かせてください!」

ひよ子「あっそれ私も聞きたいです!」

竜司「俺の子供の頃の話か…ん~…」

ひよ子「どうしました?竜司様」

竜司「いや…正直な話…今話してもいいものかと…」

転子「えぇ…気になりますぅ!」

竜司「まぁそのへんは追々話そう…というか、今話したら後で久遠と帰蝶辺りががっついてきそうだしな…」

ひよ子「あぁ…確かに…」

転子「私達だけが聞くのは勿体無いですもんね」

竜司「いや…そういうことじゃないんだが…」

ひよ子「じゃあ久遠様がいる時に聞きますね?」

竜司「まぁ…いずれ…な」


 今はまだ俺の過去を話すべきではない…あの忌まわしい過去を…。
それを話すのは本当に大事な時だけ…そう思った。
そんなことを考えながら、俺達は一発屋に入っていった。 
 

 
後書き
そんなわけでこんな感じです!
遅くなったこと大変申し訳ありません! 
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