問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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神明裁判 ③
ヤシロは、一人でアジ・ダカーハの分身体と戦っていた。
一輝が立ち去ってから、とりあえずの方針としては原作キャラは原作通りに動き、一輝に隷属している三人はヤシロは一人で、音央と鳴央は二人で動くということになっている。
だからヤシロは一人で戦っている。
「ふぅ・・・こんなもん、かな。」
ある程度分身体が集まるまでは、百詩編で戦っていたのだが、集まると同時に口を止め、唱えていた百詩編を終了する。
そしてギフトカードを取り出し・・・今ではすっかり懐かしい、“ノストラダムスの預言書”を取り出す。
「“主催者権限”までは戻ってないけど、」
そう言いながら分身体の攻撃を避け、魔導書を広げる。
そのまま念じて・・・自分の物語、破滅の物語を召喚して分身体に向かわせる。
「よし、召喚できるようになった。皆、久しぶり~。」
ヤシロの陽気な挨拶に対して、破滅軍団は一切の返答をしない。
ただ無言で、分身体に破滅を与えていくのみだ。
「ぶぅ・・・」
ヤシロが拗ねて見せるが、一切の反応がない。
破滅の物語が、そんな事を気にするとも思えないが。
「・・・いいもん。他の子達を呼ぶから。」
そう言いながらヤシロは再び魔導所を開き、新たに破滅の物語を召喚する。
ただでさえ一方的なのに、そこに投入することがかなり酷いことのように見える。
まあ、相手が相手だし問題はないと思うが。
「・・・あれ?出てきてくれないかな~、って思ってたんだけど?」
ヤシロは自分で召喚しておきながらそんな事を言っている。
まあ、それも仕方のないことだろう。
これまでに一度も召喚に応じてくれたことのない人たちを召喚してみて、それに成功したのだから。
「そう?今のあなたなら、協力するのもやぶさかじゃないけど。破滅を与える、ではないんだし。」
これまで出てこなかった理由は、破滅サイドとして動くつもりがなかったからだ。
とはいえ、これで全員、というわけでもない。
まだ出てきていないのも、何人かいる。
「一応、我々も恐怖を与える側なのですが・・・」
「恐怖推進活動、だよね~。」
「燃えてくぜ!」
まず出てきたのは、三人の少女と一人の青年。
そして、その次に出てきたのは・・・
「あの・・・私は、そっちじゃないんだけど・・・」
そう言って、控えめに手を上げている少女。
「まあまあ、灯花。細かいことは気にしない。」
「全然細かくないよ、アーリさん!?」
「そう?まあでも、気にしなくていいと思う。いっそこの機会に、灯花も六皇魔竜にはいる?」
「はいらないよ!」
無表情に本気かどうか分からないテンションが組み合わさった勧誘を受け、灯花が必死になって突っ込む。
「さすがはアーリ様。どさくさに紛れて灯花さんを引き込もうとするその技量、感服いたします。」
「ラスティちゃん、多分あれは違うと思うよ?それに、勧誘にも成功してないし。」
「おっしゃー!ガンガン料理してやるぜー!!」
「計都くんも勝手に戦いに行っちゃうし・・・」
「大変そうだねぇ、リヴィアちゃんも。」
「あははっ。それでも楽しいよ?」
と、ここまでこれば分かる人には分かるだろうが、かなりの援軍を、ヤシロは召喚して見せた。
四体の魔竜に、一振りの聖剣。
世界を恐怖に陥れ、破滅へと導く魔竜、という破滅の物語に、世界を三度焼き尽くすという破滅の物語。
かなりレベルの高い破滅の物語が、一気に戦場に現れた。
「さて、それじゃあ・・・よろしく、でいいのかな?」
「うん、問題ない。」
そう言いながらアーリは両手を広げ、左目に刻印が現れると・・・
「おいで。私の魔竜―――『究極の悪竜・ザッハーク』」
その瞬間に、銀色の巨大な龍と、それに巻きつく大小さまざまな龍。
龍によって作られる一つの城が、アーリの背後に現れた。
「とりあえず、最初から全力でいく。」
アーリがその宣言をすると同時に、魔竜の城を更生する魔竜の全てが『魔竜祝福』を放ち、殲滅していく。
もう、ただひたすらに圧倒的だ。
「それでは、私も・・・我が魔竜よ吼えろ―――『金色の牙竜ラドン』!!『覇竜裂牙』!!」
「じゃあわたしも。おいで!わたしの『蒼銀の滅竜・リヴァイアサン』!『禍竜潮流』!!」
「おっしゃ!来い『真紅の炎神・燭竜』!『北天光炎《アウローラ・アングイス》』!!」
さらに、残りの三人も一斉に『魔竜祝福』を放ち、分身体という名のザコどもを殲滅していく。
いや、本来はザコなどではないのだが、今の状況ではザコといって問題ないだろう。
「おー、やっぱり皆を呼んで正解だったよ!」
「あの・・・私、いる必要ある?」
「もっちろん!」
ヤシロは、満面の笑みで答えた。
「どうせやるなら徹底的に、それがお兄さんのスタイルだもん!じゃあ、そう言うわけで」
「あっ・・・」
ヤシロはそう言いながら灯花の胸の少し上部分に手を当て、真名を唱える。
「来て、『咎人の王の魔剣』、レーヴァ・テイン!」
その瞬間に灯花の体は漆黒の炎に包まれる。
そして、触れているヤシロの腕も燃え上がるが、そこに熱さは存在しない。
「んっ・・・ぁ、あああっ!」
切なげな灯花の声とともにその体は輝き、やがて人の輪郭を失って―――。
ボワッ!と一際強い炎が立ち上がると。
ヤシロの手には、その体には不釣合いな、刃渡り約一・五メートル、全長一・八メートルの大剣が現れる。
「じゃあ、いっくよー!」
『あ、レーヴァ・テインの黒炎を使えるのは、』
「三回だけ、でしょ?大丈夫!これ以降は調整して使うから!」
つまり、一回目は何にも考えずに使う、ということだ。
「じゃあ、せーの!」
ヤシロはレーヴァ・テインを大きく振りかぶり、
「『九世終炎剣』―――!!」
振り下ろした瞬間に、黒炎は衝撃となって分身体を消し飛ばしていく。
そのまま、ヤシロはその不釣合いな剣を自分の体の一部であるかのように扱い、分身体を倒していく。
同時に、魔竜たちも分身体を蹴散らす。
その光景は、圧倒的強者による弱者の殲滅でしかなかった。
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