不老不死の暴君
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第五十三話 イヴァリースの外
ソトートスは聖ヲルバ騎士団国で最大の港町。
故にこの港による商人たちの為に宿泊施設が多くある。
表通りの宿屋は連日貸しきり状態でセア達はわき道にある安宿しか確保できなかった。
「あんな部屋に200ギルとかぼったくりだろ」
ホコリだらけで天井にくもの巣がたくさんあるというすばらしい部屋だった。
おまけに借りた部屋の硬いベットのひとつに赤紫色のキノコが生えていた。
だからセアがそのベットで寝るのを強引にヴァンにしようとした。
勿論ヴァンはセアに反論したがセアに勝てるわけが無く本決まりとなった。
だからヴァンは頬を膨らませながら愚痴を言っているのである。
「でも仕方ないよ。あそこ以外に部屋がなかったんだし」
パンネロがヴァンを宥めるようにそう言う。
ヴァンを弟子にしてからというものセアは凄まじい特訓と理不尽なことをヴァンに課していたのでヴァンをパンネロが宥めるのが日常茶飯事となったのでこんなことは慣れっこだ。
「武器商船が入港してるらしいからなんか欲しいのあったら買っとけよ」
セアはそう言って港の方に歩いていく。
港では大きいガレオン船が武器の売買を行っていた。
そしてその船の乗り組員である肌が黒い男に話しかける。
「武器を見せてくれないか」
黒い肌の男は自分の口を指差すと首を横に振った。
そして船の方に向かって叫ぶ。
「מישהו, פרשנות! 」
聞いたこともない言葉だった。
恐らくイヴァリースの言語ではないのだろう。
「מה! ? 」
船から下りてきた赤毛の男が黒い肌の男に言った。
「זה לקוחות, בעברית של של」
黒い肌の男の言葉に赤毛の男はこう言った。
「נמצא. אתה שואל את הניקוי של הספינה הייתי צריך להשאיר אותו לי שירות」
黒い肌の男は頷くと船に戻っていった。
そして赤毛の男がセアに話しかける。
「私はヘブライと申します。先程のことは失礼。なにせ遠くから来たものでまだイヴァ・ルース語を話せない人もいらっしゃるのですよ」
「イヴァ・ルースじゃなくてイヴァリースだけどな」
ヴァンが突っ込む。
「おや、すいません。私はまだ間違えていらっしゃるようで」
どこかおかしな感じのする言い方だ。
「それはそうとイヴァリースじゃないところとなるとどの辺りから来たのですか?」
「イヴァリースに来るまじぇは南にある大国、バロン王国って所にいらしました。そこから幾つかの島を経由しながら北上しとうてアルカディアの植民都市に立ち寄りなぎゃらこのソトートスに参りました」
ヘブライの言葉がところどころおかしい。
おまけにアルケイディアをアルカディアと言い間違えている。
「なぁ、ケルオン大陸にバロンなんて国ってあったけ?」
ヴァンが首を傾げる。
「バロンってのはケルオン大陸より更に南にある軍事大国のことだ馬鹿弟子。世界最強の飛空挺師団【赤の翼】を保有してるって噂で有名だ」
「世界最強!?で、でもそんな国聞いた事無いぞ!!?」
「そりゃバロン王国はイヴァリースにある国じゃないし、ケルオン大陸の南にある大陸との間はヤクトだから交通手段が船しかないからあまりイヴァリースに干渉できないんだろ」
「え?イヴァリースの他に大陸ってあるの?」
勘違いしている人も多いがヒュムにとってイヴァリースとはこの世界全体を指す言葉ではない。
バレンディア・オーダリア・ケルオンの三つの大陸とその周辺からなる地域を指す言葉だ。
何時からその地域がイヴァリースと呼ばれるようになったかは定かではない。
神話の時代に、本当にあったのか疑わしい伝説のロンカ王朝の時代に、レイスウォールがガルテア連邦を打ち立てたときに、その他諸々と説は沢山あるがどれが真実なのかは不明だ。
因みにガルテア連邦が成立したとき云々は絶対に間違いだとセアは思っている。
何故なら古代ガルテア時代にセアが国王してたころからイヴァリースという言葉はあったからだ。
勿論イヴァリースの外にも大陸や島があり、国家もある。
だがイヴァリースに割拠する諸国が外に存在する国家と関係を持っていることは少ない。
何故ならオーダリアの西を除いてイヴァリースを囲むようにヤクトが存在し、飛空挺による交通ができないからだ。
となると交通手段は船ということになるがこの世界の航海術は読者の世界でいう中世レベルだ。
更に海にも魔物は当然生息しており、難破の可能性は中世より遥かに高い。
それ故イヴァリースとその他の地域との交流はあまりされていない。
精々神聖ユードラ帝国やロザリア帝国が西方のユトランドと交易をしているくらいだ。
「まぁ、それはそれとしておきましょうて、どのような武器をお探しでおられるのですか?」
「銃が欲しい」
バルフレアは呟くように言った。
先の神都での戦闘で帝国兵を銃で殴ってたので弾道が悪くなったので買い換えたいと思ってたのだ。
「おおお得意様ぁ、銃ですね? イヴァリースでは銃はあまり普及しちょらないと聞いて沢山仕入れております。予算は?」
「5000ギルだ」
「そうですかい」
バルフレアの注文を受けたヘブライは船に向かって叫ぶ。
「תן לי להביא ארקטורוס ופומאלהוט」
すると船から二丁の銃を抱えたシークが出てきた。
シークは二丁の銃をヘブライに渡すとのしのしと船に戻っていく。
「これはアルクトゥルスという銃です。バロンの銃兵部隊ではこれが採用されておりられます。値段は4700ギル」
ヘブライは左手で持った銃を持ち上げてそう言った。
「そうか、でもう片方の手で持ってるのは何だ?」
バルフレアはヘブライの右手に握られている銃を見ながら言う。
「よくぞ聞いてくれやがりました!こちらはバロンで最新式の銃であるフォーマルファウト。お値段がお高くなりますがアルクトゥスの1.5倍はよい性能になっちょります」
「値段は?」
「予算をオーバーしますが8900ギルとなってます」
「そうか、じゃあ少しその銃見させてくれるか?」
「かまいやせんが、壊さないでくだしゃいね」
バルフレアはヘブライからフォーマルファウトを受け取ると銃を見る。
長年銃を愛用してきたバルフレアから見てもすばらしい出来だった。
おまけに近接戦闘をしても弾道がそれないよう補強がなさせれてある。
「少し高いがこれは買いだな」
「ありがとおおございああーす」
ヘブライはそう言って手を差し出す。
バルフレアが金を渡すとヘブライは嬉しそうに勘定をする。
「なぁ、オレもなんか買っていいか?」
ヴァンが少し興奮した声でセアに聞く。
「ああ、予算は3000ギルな」
「おっしゃー、なんかいい剣ない?3000ギルで」
「さ、3000ギルでございますか?」
「ああ」
「デスブリンガー位しかありませんよ?」
「じゃあそれってこのミスリルの剣よりいいのか?」
「ミスリルで出来た武具はメンテナンスが少なくて済むことを除けばあまりよいところが無い武器ですからーね。間違いなくその剣よりよい剣でしょう。よければその剣を下取りしましょうか?お高くしやすよ」
「あーこれ兄さんの形見だからいい」
「あ、これは失礼しました」
ヘブライは丁寧にお辞儀すると近くの樽の蓋を開ける。
そこから剣を一本取るとヴァンに運んでくる。
「デルブリンガー、2900ギル」
「セア、金」
セアが金をヘブライに渡す。
「あれ?そういや皆は?」
いつの間にかヴァンはセアとパンネロと自分しかいなくなっているのに気づいて言った。
セアは嬉しそうに勘定しているヘブライを見ながら答える。
「王女様とバッシュはラバナスタで武器を新調してたから宿に残ってる。バルフレアとフランは銃を買ったら酒場にむかった」
ヴァンはバルフレア達はともかく、なんでアーシェ達が宿から出てなかったのに気づかなかったのだろうかと自分が心配になった。
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