悪い悪戯
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第四章
「そうした悪戯をしてそれでいて憎めないところが」
「破天荒でしたけれどね」
「あの人もあれだったけれどね」
ここでだ、こうも言ったKさんでした。
「無茶ばかりだったけれど」
「無頼ですね」
「うん、それだよ」
もっと言えば破滅型だ。横山やすしや太宰治がそうであった様に。
「実際浮き沈みの多い、スキャンダルにも事欠かなかった人だしね」
「そうですね、そうした人でしたね」
「けれど僕は好きだったよ」
Kさんは懐かしみ、そして温かい感じの笑顔でこうも言った。
「勝さんもやっさんもね」
「そうした無頼の人達がですね」
「そうだったよ、今はもうそうした人はいないけれどね」
「皆真面目になったんですかね」
「そうだろうね。スケールが小さくなったっていう人もいるけれど」
それでもだというのだ。
「確かに皆真面目になったね」
「そうですよね、今は」
「時代が変わったんだよ」
もうそうした無頼の人がいる時代ではなくなった、そうしたことも昭和までのことだったということであろうか。
そしてだ、そうした話をしていると。
僕もKさんも気付いた、二人共お好み焼きもビールも食べて飲み終えていた。だが僕はここでこうKさんに言った。
「まだまだこれからですよね」
「うん、お好み焼きもビールもね」
二人共大ジョッキを空けていた、鉄板の上にはもう何もない。
それでだ、僕はこうKさんに言ったのだった。
「じゃあもう一枚」
「もう一杯だね」
「いきますか」
「そうだね、ただね」
「ただ?」
「僕もやってみようかな」
くすりと笑ってだ、Kさんは僕にこんなことを言って来たのだった。
「この店はってね」
「やってみます?」
「うん、勝さんみたいにね」
そんなことを話して次に注文するものを決めてからお店の人を呼んだ。そうしてKさんは自分で焼いたお好み焼きを一口食べて。
それから言おうとする、だがだった。
Kさんは首を左右に振ってこう言うのだった。
「僕には出来ないね、どうも」
「抵抗がありますか」
「僕も大人なのかな、どうしてもね」
勝新さんみたいにだ、そうした悪戯をすることはだというのだ。
「出来ないよ」
「ですか、じゃあ今はですね」
「うん、普通に真面目に楽しもうね」
飲んで食べてだ、そうすることにしてだった。
僕達は真面目に、二人で騒ぐことなくお好み焼きとビールを楽しんだ。勝新さん達の話をしたがあの人達みたいには出来なかった。
悪い悪戯 完
2013・12・24
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