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アザミの花

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第二章

「アザミってギザギザしてるでしょ」
「刺があるっていうかね」
「そんなのよ。花だけ見たらいいのに」
 その茎とか歯がギザギザしていてどうにも突っ張る、そのアザミとだというのだ。
「あんたはまさにそれよ」
「言ってくれるわね」
「言われたくなかったらよ」
 それならとだ、聡美は負けずに返す。
「もっと女の子らしくよ」
「おしとやかに」
「そう、レディーになるのよ。若しくは大和撫子よ」
 それになれというのだ、聡美は。
「いいわね」
「大和撫子ねえ」
「おしとやかで菖蒲か杜若みたいな」
「随分綺麗なお花ね」
「なってみたら?一度」
「じゃあ得意料理のジャーマンポテトやピザとか焼きそばとかたこ焼きは」
「全部居酒屋で出るものじゃない」
 まさにその通りだった。
「飲む時に作るのよね」
「そうそう、味は濃くしてね」
「男の料理じゃない」
 少なくともこれも女子大生の作るものではなかった。
「そこも変えていったら?」
「大和撫子ね」
「そう、なるのよ」
「何か柄じゃないわね、うちだって由緒正しいお好み焼き屋だし」
「ひょっとしてそれで鮎莉ちゃんの性格が形成されたのかしら」
「かもね、お店はいつもおっさんか男子学生で一杯だし」
 お好み焼きだからだ、女の子もいるにはいるが。
「もうね、おっさんみたいなOLさんか女子高生かおばちゃんか」
「だからおっさんじゃなくてね」
「はいはい、レディーね」
「そうなっていくことを勧めるわ」
 聡美も真剣に言う、そして鮎莉も彼女の言葉を受け入れてだった。
 とりあえず気をつけてみることにした、まずは花札や麻雀を止めて。
 酒もだ、聡美にこう言われた。
「胡座かいて日本酒を一升瓶でどん、とじゃくてね」
「他のお酒ね」
「ワインとかをカウンターかテーブルに座ってね」
 店ではカウンター、家ではテーブルだ。
「そうしてよ」
「飲めっていうのね」
「そう、いいわね」
「ううん、ワインねえ」
「嫌いじゃないでしょ」
「お酒は何でも好きよ」
 こう返す鮎莉だった。
「だからワインもね。けれどね」
「そのワインの飲み方もよね」
「やっぱり胡座かいてだけれど」
「そもそも女の子が胡座なんかかかないの」
 まずはそこからだった。
「ちゃんと女の子座りをして」
「お家でもよね」
「そう、そうして座ってね」
 そしてだというのだ。
「飲むのよ、いいわね」
「それでおつまみは」
「まあ冷奴とかでもいいけれど」
 それはこだわらない聡美だった、しかしこうも言うのだった。
「チーズとかをメインにして。しかも親父的な濃い味じゃなくて」
「普通の味ね」
「そう、普通よ」
 あくまでだというのだ。
「チーズだってそのままで食べるのよ」
「そのチーズで飲むのね」
「いいわね、そうしてね」
「ううん、堅苦しいわね」
「それが普通なのよ」
 女の子なら、というのだ。
「あとお好み焼きとかを食べてもよ。コテコテの濃い味にはせずに」
「普通に食べろっていうのね」
「そうよ」
「ソースべったり、マヨネーズたっぷりは」
「量を加減してね」
 そしてだというのだ。
「もうちょっとね」
「女の子らしくっていうのね」
「あんたどんなお花が好きなのよ」
「好きな花?百合よ」
 この花が鮎莉の好きな花だ、携帯に白百合の画像を入れていつも観ている程好きな花である。 
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