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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos20-A騎士と魔導師の戦舞踏~3rd Encounter~

 
前書き
鉄槌騎士バスターVS高町なのは戦イメージBGM
魔法少女リリカルなのはA's-GOD-「逆巻く嵐」
http://youtu.be/EB68CRbbj0w

ちくしょう。次話の戦闘を書いていた時、ふとネットで調べたら・・・銃身と機関部を思いっきり勘違いしていた事に気付きました。アリサのデバイスの説明部分など全部直さなければ!

 

 
†††Sideヴィータ†††

今日もあたしとシグナムとルシルとで犯罪者狩りをして、適当にリンカーコアを蒐集し終えたところであたしら“闇の書”を収集したいって奴、ミスター・リンドヴルムが抱えてるロストロギア収集実行部隊が現れた。ま、そう労することなくぶっ潰すことが出来て、そいつのリンカーコアも蒐集できたから悪い話じゃなかったわけだが。
問題はその後だったんだ。このなんでもない世界が夕日に照らされ始めた頃に現れた高町な、の、は。すぐさまシグナムとルシルに、アイツが現れたことを思念通話で連絡した。

『こちらセイバー。私の方にはバニングスと月村、そして私を逃さないためか結界を展開、維持するための局員十数人が来た』

シグナムの話に、あたしは周囲の気配・魔力反応を探ってみる。シャマルやルシルほどの精確さは無いけどな。そんで判ったのが、ここにも局員が十何人と居るってことだ。たぶんシグナムんとこと同じ、結界担当だろうな。

『私の所にはフェイトとシャル。それだけじゃないな、まだ居る。私を墜とす為か、それとも足止めか。おそらく後者だが、前者も狙っていると見ていい。セイバーやバスターの援護には向かえないと思う』

『私の方に援護は無用だ』

『あたしの方も、だ』

ルシルの援護なんか必要ねぇ。あたしとシグナムからそう返されたルシルは『ヤヴォールだ。あー、あと注意1つ。戦闘前の確認は怠るな。以上だ』それだけを言って思念通話を切った。

「で? 何の用だよ、ご丁寧にバリアジャケットを着こみ、しかも・・・カートリッジシステムを搭載した新しいデバイスを持ってさ。完璧に戦いに来たって感じじゃん。なぁ、ベルカのことわざでこういうのがあるんだけどよ。和平の使者なら槍は持たない、ってな」

ん? ことわざだったっけか。まぁいいや。そんな話があったのは確かだしな。アイツは意味が解らねぇのか小首を傾げた。

「解んねぇか? 話し合いをするってぇのに、武器を持ってくる奴が居るか、って意味さ」

「・・・あっ、でもレイジングハート(コレ)はなんていうか、その・・・」

な、の、はの持つデバイスには前には無かったカートリッジシステムが付いてる。デバイスを強化までしてあたし、あたしら守護騎士の前に姿を現すってぇことはそういうことだろ?

「デバイスは確かに強化したし、こうして起動した状態で持っちゃってるけど、私はお話をしに来たの」

「話、ねぇ。そこいらに局員を隠れさせておいてよく言うぜ。あれだろ、油断させておいて捕縛、ってところなんだろ?」

「確かにバスターちゃんを逃がさないための結界を張ってもらう局員さん達が周囲に居るよ。でも話をしに来たっていうのは本当だよ、信じて」

アイツはデバイスを待機形態に戻して両腕を大きく広げた。ある意味、戦闘はしないって意思表示のポーズだとは思う。でもな、前にルシルが言ったようにこっちは話し合いで事を治められるような状況じゃねぇんだよ。

「つうかお前さ、局員じゃなかっただろ? それとも局員になったのか?」

「今でも局員じゃないよ、民間協力者。だからバスターちゃんを逮捕する、なんて権利も資格もない。でもだからこそお話しが出来る」

民間協力者、か。ま、局員でも同じさ。犯罪者じゃない以上はこちらからの一方的な戦闘行為は出来ねぇ。それはルシルやあたしらが決めた禁止事項だ。でももし、どうしても戦闘行為が必要だっていう状況に陥った時、あたしらはある確認を取り、相手がそれに応じた場合にのみ戦闘行為が可能になるよう決めてある。

「前に言っただろ。全てが終わったらちゃんと出頭するって。それまでは放っておいてくれよ。こちとらオーナーの命が懸かってんだ」

「待って! 闇の書が完成しちゃっ――」

「・・・構えろよ。話し合いで済まないって判ったんなら力づくで、なんだろ・・・?」

「バスターちゃん!!」

――広域多重結界――

“アイゼン”をな、の、はに向かって突き付けるとほぼ同時に結界が展開された。するとアイツは念話でもしてんのか空いている右手を耳に添えて苦い表情を浮かべた。この作戦の指揮を執ってる奴から、戦え、とか言われたんだろうな。

「ほら、局の方も戦え、っつってんじゃんかよ」

「違っ――バスターちゃん、お願いだからやめて!!」

「・・・お前に決闘を申し込む。あたしとお前の一対一の決闘だ。たとえ負けたとしてもそれは決闘を応じた自分の責任となる。あたしが負けた場合、大人しく捕まってやるさ。でもお前が負けた場合、被害届を出すな、慰謝料・治療費を請求するな、負けたのは自身が弱かったからだ」

決闘を受けるか否かの確認。それがルシルと決めた取り決めってやつだ。全ては自己責任っていうリスクがあるけど、自分の“力”に自信を持っている奴なら受けるはず。たった1人であたしんとこに来たんだ、少なくともあたしとまともにやり合えるって自信は持ってんだろ。
な、の、ははまた念話をしてんのか少しの間黙った後に大きく溜め息を吐いて「判った。その決闘、受けるよ」って言い、

≪Buster Mode≫

バスターモードっていう形態でデバイスを再起動させた。

「受けたな。ならここからはお互い、自己責任だ。じゃ、お前に指示を出してる奴に伝えろ。お前が負けた時、あたしを閉じ込める結界を解除して、あたしの離脱を見逃せ、ってな」

ルシルの方に戦力が集中している今、たとえ局員が襲ってきても所詮は並の局員、逃げられるだけの隙があるはずだ。でも抵抗するのには当然力が要る。無駄な力は使いたくねぇしな、だからそう言い放った。

「・・・・その話を受ける、って」

「懐の広い上司様で何よりだ。・・・楽園の番人パラディース・ヴェヒター、そして守護騎士ヴォルケンリッターの騎士、バスター。そして鉄の伯爵グラーフアイゼン。名乗れ、決闘の礼儀だ」

「・・・高町なのは、レイジングハート・エクセリオン。負けないよ、バスターちゃん!」

VS◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
鉄槌騎士バスターVS砲撃魔導師なのは
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦VS

――ショートバスター――

いきなりの砲撃。しかも発射・砲速ともに速い高速砲。幸いだったのはアイツとの距離があったこと。高速移動魔法のフェアーテを瞬時に発動させて射線から離脱。

「お返しだ・・・!」

――シュワルベフリーゲン――

発射姿勢のままでいるアイツに向かって魔力を付加させた物質弾フリーゲン8発を“アイゼン”で打ち放つ。と同時に接近開始。ルシルの話じゃアイツは射砲撃に特化した魔導師だって話だ。なら距離を開けてやってアイツに有利な戦い方をさせる義理はねぇよな。
アイツはフリーゲンの回避に移った。飛行速度は前回の衝突ん時と大差はねぇ。迫り行くフリーゲンをどう対処すんのかって接近しつつ眺めていると、アイツは急降下。フリーゲンをアイツについて行かせてからあたしも降下。そこから少しの間追いかけっこ。

(飛行速度は互角だから追いつけねぇな・・・)

――シュワルベフリーゲン――

さらに4発追加、計12発のフリーゲンとあたしがアイツを追う。

「いくよ。ディバイィィン・・・バスタァァァーーーーッッ!」

と、アイツが急に止まって足元に魔法陣を展開、こちらに振り向いて砲撃をぶっ放した。今さらになって気付いた。アイツとフリーゲンとあたし。一直線に並んでいるって事に。始めから狙ってやがったんだ、あたしとフリーゲンをまとめて落とすのを。

「くっ・・・そ!」

目の前でフリーゲン全部が消し飛ばされたのを見た。回避に全力を注ぐ。あたしのすぐ側を通り過ぎて行く砲撃。バサバサとスカートがはためく。“アイゼン”を持つ右手でスカートを押さえ、左手で帽子を押さえる。

「あっぶねぇ・・・!」

ギリギリ回避に間に合った。あと少し回避が遅けりゃ直撃していたことに肝を冷やす。そんですぐにアイツへと目をやる。けど、「居ねぇ・・・?」さっきまで居たところにアイツは居なかった。

――アクセルシューター――

「シューット!」

頭上から聞こえてきたアイツの声。あたしは見上げる前にフェアーテを発動、その場からすぐに離れる。距離を開けつつ振り向いて頭上を振り仰ぐ。アイツの姿を確認。で、あたしに向かって来ているすげぇ速い魔力弾が12発。一斉発射したアイツに「馬鹿か! そんなに制御できるわけねぇだろ!」言い放つ。

「アイゼン!」

――シュワルベフリーゲン――

振り向きざまにフリーゲンを4基と打ち放つ。相殺し合ってまずは4発の魔力弾を潰すために。だけど、「うおい!?」あたしのフリーゲンとアイツの魔力弾が衝突し合ったら、あたしのフリーゲンだけが粉砕された。魔力弾はそのままあたしに向かって飛んで来た。

(マジかよ。あんなちゃちな魔力弾にどんだけの魔力が込められて・・・!)

速度で僅かに負けている以上、下手に逃げに回っても意味はねぇ。だったら向かってってやるよ。直線的に向かって来る魔力弾6発を“アイゼン”で打ち弾きながら接近開始。他6発は曲線を描きながら向かって来る。威力も速さも申し分ねぇ。でもやっぱ足りねぇな。

「射撃の制御中、砲撃は撃てねぇみたいだな・・・!」

――テートリヒ・シュラーク――

それだけじゃなくて移動も出来ないらしい。そりゃ12発も操作するってんだから当然だな。固定砲台ってわけだ。一対一の戦いには不向きだぜ。魔力弾が追いついて来る前にアイツに最接近、“アイゼン”を振るう。完璧なコースとタイミングだ。だというのにアイツの表情からは緊迫さを感じない。

「レイジングハート!」

≪Protection Powered≫

直撃する前にあたしとアイツの間にバリアが張られた。射撃制御はコイツが、障壁展開はデバイスが担当してるみたいだな。役割を分けりゃ出来るらしい。

(このまま押し切ろうとすんのは悪手だな。しゃあねぇ・・・!)

一瞬でバリアの強度を計ったあたしは攻撃を中断して急上昇、迫って来ていた魔力弾12発の射線から離脱。下をチラッと見れば魔力弾が追撃して来てんのが見える。防御力に自信が有るあたしだけど、ありゃ防御に回ると圧倒されるな。だったら、防御を捨てての特攻だ。

「(避けて、避けて、避けまくってやる)おらぁぁぁぁーーーーーッッ!!」

今度は急速降下。魔力弾の間を縫うように降下し続け、「アイゼン! カートリッジロード!」を強襲形態のラケーテンフォルムへと変形させる。ブースターを点火、一気に距離を詰める。

「ラケーテン・・・ハンマァァァーーーーッッ!!」

――プロテクション・パワード――

さっきと同じバリアが張られた。通常のハンマーフォルムじゃ突破できなかったけど、ラケーテンならきっと・・・。“アイゼン”がバリアと衝突、激しい火花を散らす。ふと、横目で周囲を見ると、コイツの放った魔力弾が周囲で停止してるのが判った。あたしの後方から迫って来る魔力弾を利用してやろうと思ってたんだけどな。ギリギリで回避して、魔力弾をコイツにぶつけてやろうってさ。つうか、「硬ぇ・・・!」んだけど、コイツのバリア。

「バスターちゃん、話を聴いて!」

「今さら話すことなんてねぇ! 今は黙って見てろってんだ!」

「そんなこと出来ないよ! だって、だって完成しちゃったら・・・闇の書は暴走しちゃうんでしょ!」

「チッ!」

ラケーテンでも突破できないとなると厄介だな。フェアーテをまた発動してから攻撃中断、距離を開ける。と同時にアイツはバリアを解除してデバイスを向けて来た。それに魔力弾がまた向かって来たのも判った。でもな、「甘ぇ!」すぐさま最接近して“アイゼン”を振るう。

「あ・・・!」

――ラウンドシールド――

咄嗟だがシールドを張ったなにょは。だがそいつは魔力攻撃に優れた障壁だ。さっきまでのバリアよりは「砕き易いぜ!」シールドに打ち付けたまま最後のカートリッジをロード、ブースターを点火。

「あたしの脚に注意しなかったのがまずかったな。こいつが高速移動系の魔法だって気づいてただろ? こいつを発動してから距離を取った。この時点で考えられるあたしの行動は2つ。1つは一気に距離を取ってお前の魔力弾から逃れる。もう1つは今のように再攻撃に来る。お前はどちらにしろ、距離を取るべきだった」

「っ・・・!」

悔しそうに顔を歪めるな、の、は。“アイゼン”のヘッドの片側に付いてる突起の先端部分の衝突点を中心にシールド全体にヒビが入っていく。目を見開くな、の、は。そしてついにシールドを粉砕、「きゃぁぁぁぁ!!」その衝撃でアイツは真っ逆さまに落ちて行った。
消費しきったカートリッジを給弾して、アイツの反撃に備える。そういや「魔力弾は全部消えちまったな」誘導操作に意識を割けなくなったんだろうな、どこにも見えねぇ。目を凝らして眼下に広がる森林を見ていると、チカッと桜色に輝く光が見えた。

――ディバインバスター――

また砲撃。距離が十分すぎるから余裕で回避できる。と、「来たな」なにょはが飛んで来た。それにしてもアイツも大した防御力を持ってんな。ピンピンしてやがる。

「アクセルシューター・・・シューット!」

また魔力弾を、今度は8発と撃ってきた。数を減らしたからかさっきより弾速が速い。

「アイゼン!」

――シュワルベフリーゲン――

こっちも同じ数のフリーゲンを打ち放つ。今度は相殺なんて考えずにアイツを直に狙う。あたしとアイツの間で交差する16発の赤と桜色の魔力弾。

(あの弾速じゃぜってー回避しきれねぇ。なら・・・!)

一か八かの「パンツァーヒンダネス!!」を一点集中させた障壁を前面に展開しながら突っ込む。パンツァーヒンダネスは本来、全方位防御の魔法だ。でも今のように一点集中させることでさらに防御力を高めることが出来る。次々と着弾していくアイツの魔力弾。あたしのフリーゲンもアイツの展開したシールドで全弾防がれたのが見えた。

「アイゼン!」

――ラケーテンハンマー――

障壁を解除。カートリッジを1発ロードしてブースター点火、突っ込んで来るアイツへと高速回転しながら突撃。

「レイジングハート!」

≪Accel Fin≫

アイツの両足、くるぶし辺りから2対の翼が生えた。と思ったらこれまで以上の速度で突っ込んで来た。騎士であるあたしに対して砲撃魔導師が近接戦とか。馬鹿にすんじゃねぇぞ。

「ラケーテン・・・」

「フラッシュ・・・」

この一撃で墜としてやんよ、高町なにょは。

「ハンマァァァーーーーッ!」「インパクトッッ!!」

互いに得物を大きく振るって、そして衝突。耳をつんざくガキィィンっていう金属音と、両手に伝わる衝撃。さらに「まぶし・・・!」視界を潰す閃光、それと同時に「のわっ!?」強烈な衝撃があたしを襲った。目も見えねぇし、あたしはそのまま弾き飛ばされちまうことに。

(あのまま押し切りゃぜってー勝ってたのに・・・!)

フラッシュインパクト・・・閃光の衝撃、くそ、そのまんまじゃねぇか。もう少し注意してりゃこんな間抜けなことにならなかった。

「レイジングハート、レストリクトロック!」

(この魔法は・・・!)

ルシルから聴いていた捕縛魔法だと察したあたしはすぐさま急上昇。捕まってもいいように対処方法は持ってる。だが逃げられるなら逃げた方がいいに決まってる。ようやく視界が戻り始めた時、「もう逃げられないよ、バスターちゃん!」アイツのそんな声が足元から聞こえてきた。

「こいつは・・・!」

あたしの周囲を高速で動き回る魔力弾、その数12。下手に動きゃ一斉に襲ってくんだろうな。乗り切るにはパンツァーヒンダネスを本来の効果で発動させるしかねぇ、かな。

「バスターちゃん。お願いだから話をして」

あたしの目の前にまで上昇してきたアイツがそう言ってきた。

「・・・なんの話がしたいんだ?」

とりあえず話に乗ってみる。その前に「この弾幕結界、どうにかしてくんねぇか?」と言ってみる。するとアイツは「えっと、うん」弾幕結界を解いた。魔力弾が消失していく。素直で優しいのは長所だが、戦場じゃ短所だぜ、な、の、は。

――レストリクトロック――

その代わり捕縛魔法であたしを拘束した。すぐさまコレの構築術式(プログラム)の解析を開始、術式破壊(ブレイク)を割り込ませてやる。

――なのはの魔法で厄介なのは射砲撃だけじゃない、捕縛魔法の強度だ。だからヴィータ。あの子と戦う確率が一番高い君に与えよう。捕縛魔法破壊の術式を――

ルシルから貰った術式がコイツの術式を侵し始めた。

「最初の続き。闇の書が完成すると暴走して、主さんを取り込んで自滅するって聞いたよ?・・・バスターちゃん達の大好きな主さん、オーナーさんが死んじゃうんだよ・・・!?」

「そうだな。知ってんよ、それくらい」

というよりはつい最近知った。“闇の書”の管制プログラム、シュリエルから聴いたからな。

◦―◦―◦回想だぜ◦―◦―◦

「ふっざけんな!」

近くの街灯を殴りつける。あたしらは今、海鳴臨海公園へと来ていた。ルシルとシュリエルから、はやてに聞かれたくない話がある、ってことでこうして夜中に家を抜け出してきたわけだ。そんで聞かされたのが、“闇の書”のこれまで結末。
完成させたら主を取り込んで散々暴走した挙げ句に自滅するっていう、最悪なんてレベルをはるかに超越した絶望のエンディング・・・。あたしら守護騎士は完成前に消えることが大半だ。あたしらのリンカーコアを使って最後のページを埋めて完成させるのが常って感じだったからな。だから知んなかった。“闇の書”がとっくの昔に壊れていたことなんて。

「そんなの嘘、嘘よ! じゃあ私たちは一体これまでなんの為に戦って来たっていうの!!」

ベンチに座るシャマルが泣き崩れた。そんな中でも冷静なシグナムとザフィーラ。あたしはそんな3人から「ルシル・・・!」この真実を以前から知っていたって風なルシルを睨み付ける。コイツはいつもそうだ。いつも大事は話を黙っていやがる。お前がオーディンと同じ? 違う、テメェはオーディンと同じなんて言えるような奴じゃねぇよ。

「それでどうするのだ? 我々の唯一の希望が潰えた今、今後の我々はどうすればいい?」

シグナムが両拳を強く握り締めながらルシルに訊いたから、あたしの怒りが発せられることはなかった。

「闇の書が暴走するのは確実だ。だけどな。それがはやてにも適応されるかな?」

「ど、どういうこと・・・?」

「それはなシャマル。これまでの主は力に溺れただけの暴君に過ぎない。そしてはやてはそんな連中とは違う、ということだ。話そう。俺のシナリオを」

ルシルから聞かされた話は、正直言うと賭けのようなもんだった。曖昧だけど、信じ難いけどさ。でも、何故かそれが上手く行くような気がしたんだ。あたしらの大好きなはやてなら。そう思えるようなシナリオだったんだ。

「――俺ははやてを信じる。家族を大切に、大事にしているはやてがみんなに向けているその愛を」

「私もだ。これまで多くの主が私たち闇の書を使ってきた。そこに愛は無かった。ただ私たちを道具として扱う無感情。しかし主はやては違う。私たちのことを愛してくださっている。だからきっと、主はやては闇の書の永遠の旅路に終焉をもたらしてくださる・・・!」

シュリエルが断言した。あたしとシグナムとシャマルとザフィーラは顔を見合わせる。そして頷き合った。

「いいだろう、その話に乗った」

「それが我らの新しい希望、か」

「だったら続けましょう、リンカーコアの蒐集を」

「だな。闇の書を完成させて真の主と覚醒したはやての家族愛で、闇の書の暴走してるプログラムを掌握させる・・・!」

感情論で“闇の書”が元に戻る、なんて馬鹿げた話だとは思う。だけどぜってー上手く行く。

「けどさ、ルシル。お前って何か大事な話を隠してばっかだな」

「・・・ふむ。ルシリオン。出来ればこういう話は早い段階で話してほしい」

「気を付けるよ」

ルシルは本当に申し訳なさそうに謝ったから、あたしらはそれ以上ルシルに何かを言う事はなかった。

◦―◦―◦回想終わりだぜ◦―◦―◦

「だからもう蒐集はやめて。オーナーさんの呪い、魔法や医療技術じゃ治せないって話だけど、きっと何か方法があるはずだよ! みんなが、誰もが犠牲にならずに済む方法がきっと・・・!」

なにょはが必至にそう呼びかけて来る。本当に良い奴だよ、お前。ルシルがお前たちをはやての友人にしようって決めた理由がよく解る。“闇の書”の真実の他に、あたしらはルシルからコイツらからリンカーコアを蒐集した本当の理由を聴いた。いんや、パラディース・ヴェヒターが犯罪者狩りを徹底させた本当の理由も、だ。
あたしら守護騎士が消えることなく無事に残った時、実刑じゃなくて保護観察・管理局従事っていう軽い処分にするよう仕向ける為に、犯罪者狩りを徹底して、局に好印象を与えた。あたしらは強い。万年人手不足の局にとっては喉から手が出るほど欲しい人材のはずだ。そんなあたしらが犯罪者狩りをしてりゃ、局も気兼ねなくあたしらを局に取り込めるだろう、って。

「ありがとな。そこまで必死に思ってくれて。でもな・・・」

「バスターちゃん・・・?」

はやてもまた“闇の書”の主としての魔法を扱う騎士になる。だけどはやてはまだ子供だ、だから管理局従事にはならないっていうのがルシルの見解だ。あたしらは局の仕事に従事することが多くなって、はやては独りあの家で過ごすことが多くなる。離れ離れの時間が多くなる。

――捕縛断ち――

「え・・・!?」

なにょはの捕縛魔法を破壊する。並の術式なら瞬時に破壊するってルシルは言ってたけど、コイツのはそれほど強力だったのか少し時間を食っちまった。目の前で呆けるなにょはに向かって“アイゼン”を振る。障壁が張られることなく、アイツ自身がデバイスを掲げて防御した。けどそれだけじゃ無意味だ。

「おらぁぁぁぁ!!」

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

全力で振り抜いて大きく弾き飛ばしてやった。アイツは地面に叩き付けられる前に体勢を立て直した。ブースターを利用しなくても強力な一撃だけど、デバイスにはどうやら傷一つとして付いてないみてぇだな。やっぱデバイス全体の強度も強化されてるってわけだ。

「どうして!?」

「言ったろ! オーナーを治す方法はもう・・・闇の書を完成させるしかないって!」

カートリッジをロードしてブースター点火。一気に距離を詰める。

「もう止まれねぇんだよ!」

そこで出て来るのがコイツらだ。魔法を知り、局と関わりを持つなにょは達。はやても魔法を持つことになるって未来が判っている以上、同じ世界の出身で魔導師な友達っつうのは優良物件だ。どの道はやてが局に入れば、遠からずコイツらと出会って友達になっただろう。でも普通に会っただけじゃ同僚に近いだけの友達で終わる。望むべくは広くも深い友達関係。
そこでルシルがはやてとコイツらを繋ぐ方法として選んだのが強烈な形での出会い。今のように全力で互いの思いをぶつけ、その果てに、断ち切れにくい絆を生み出そうとした。聴かされたときは結構無茶な手だとは思ったけどな。

「バスターちゃん!」

――アクセルシューター――

アイツが放った魔力弾4発を紙一重で避けていく。もちろん誘導操作弾だから通り過ぎて行ってもまたあたしに向かって飛んで来る。それすらも避けて、避けて、避けてやった。

――プロテクション・パワード――

――フェアーテ――

ブースターを停止、高速移動魔法でなにょはの背後に回り込む。ただ突っ込むだけがあたしの攻撃じゃねぇんだよ。最後の1発をすぐさまロード。あたしへ振り向こうとしているコイツの対処より早く「ラケーテンハンマーッ!」“アイゼン”を振るう。

――アクセルフィン――

アイツは急上昇することで直撃を避けた。でもまだだ。ブースターを維持、あたしも追って上昇する。いろんな軌道で迫り来る魔力弾。避けきれねぇヤツは“アイゼン”で破壊する

「ディバイン・・・――」

「撃てよッ、こいつは決闘だぜ!」

「っ・・・、バスタァァァーーーーッ!!」

ごめん、はやて。帽子が弾け飛ぶのを、歯を噛みしめて耐えて砲撃を紙一重で回避。砲撃発射の体制のまま硬直してるアイツに「終わりだ!」もう一度ラケーテンハンマーを打ち込む。今度は直撃だった。身近な悲鳴を上げたアイツはまた地面へと真っ逆さまに落ちていって、態勢を整える前に地面に叩き付けられた。ラケーテンハンマーの直撃だ、そう簡単に復活できるわけがねぇ。だからあたしの勝ち、だ。

「はぁはぁはぁ・・・」

残りのカートリッジ2発を給弾。結界が解除されるのを待つ。

(良い奴だからこそ、お前たちはまた向かって来るんだろうな・・・)

なぁ、ルシル。本当にこんなやり方で確固な友情が生まれんのか? やり過ぎるとかえってはやてとアイツらの友情が壊れちまいそうだぞ。とは言ってもここまで進めちまった以上、あたしじゃどうする事も出来ねぇけどな。

「おい、決闘はあたしの勝ちだ! 結界を解除しやがれ!」

空に向かって叫ぶ。でも結界が解除される様子はない。となれば考えられるのは・・・「まだ動けるってか」足元の森林に目をやる。

†††Sideヴィータ⇒なのは†††

バスターちゃんはやっぱり強かった。“闇の書”の守護騎士ヴォルケンリッター。何百年っていう長い時間、活動してきた歴戦の騎士。デバイスを強化したくらいじゃすぐに手の届く相手じゃなかったってことを思い知らされた。
でも、「まだ負けたわけじゃない・・・!」少し痛む体に力を入れて立ち上る。デバイスだけじゃなくてバリアジャケットまで強化されているからこそ、この程度のダメージで済んだ。ドクターやマリエルさんに感謝しないと。

『なのはさん。大丈夫?』

『リンディさん・・・。はい、大丈夫です。まだやれます!』

本作戦の総指揮を執るリンディさんから通信。まだ戦えることを伝える。消費しきったマガジンを新品に交換。モードはバスターへ。アクセルシューターでの弾幕でも越えて来ちゃうし。なら砲撃の必倒を狙った方がいい。

「レイジングハート。精密射撃(シャープシュート)、行くよ」

≪はい、マスター≫

“レイジングハート”を長距離狙撃モードにする。さっきも避けられちゃったけど、私に出来るのはやっぱり砲撃だ。マガジンを握ってブレをなくし、ひたすらバスターちゃんをロックオン。

≪Divine Buster Extension≫

カートリッジを2発ロードして、最大射程のディバインバスター・エクステンションを「シューット!!」発射した。砲撃は一直線にバスターちゃんの元へ。“レイジングハート”から砲線が途切れたと同時に空に上がる。

――シュワルベフリーゲン――

バスターちゃんの射撃魔法が4発と飛来してきた。ディバインバスターのバリエーションの1つ、高速砲撃の「ショートバスター!」を発射。射程と威力をある程度犠牲にしてチャージ時間を短縮したことで可能な高速砲撃だ。
基本、私の砲撃はその場で留まっての発射になる。そうでないと撃てないから。でもこのショートバスターは移動しながらでも撃つことが出来る。この砲撃を反撃の基点にしようと思う。バスターちゃんの魔力弾を砲撃で潰し、さらに接近を続ける。バスターちゃんもまた私に向かって突進して来た。

――ショートバスター――

移動しながら砲撃を撃ち続ける。バスターちゃんは避けては魔力弾を打ち放ってくる。完全な拮抗状態。止まれば集中砲火を食らう。でも高速砲でもバスターちゃんを捉えることが出来ない今、どうすればいいか。

「レイジングハート。アレ、やってみよう」

≪アレ、ですか?・・・彼女の今のデバイスの形態であればおそらく上手くいくと思います≫

バスターちゃんの形態の1つ、突起とブースターのあるアノ形態じゃ破壊されるのが目に見えているけど、でも今の通常の鉄槌形態ならきっと・・・。そうとなればわざと砲撃の隙を作らないと。接近しやすいように。でも気取られないように。

「疲れちまったのか? なら降参するって手もあるんだぜ・・・?」

――テートリヒ・シュラーク――

「(来た!)降参はしないよ。バスターちゃんに勝って、全てを聞かせてもらうんだから!」

砲撃が途切れたその僅かな隙を突いて突進して来たバスターちゃん。ここで発動するのが、以前からシャルちゃんの指示で構築していた対近接戦術者専用魔法。

捕縛盾(バインディングシールド)!」

≪Binding Shield≫

私のシールドに衝突するバスターちゃんのデバイス。その瞬間、「あんだ!?」バスターちゃんが驚きの声をあげた。シールド表面から伸び出すチェーンバインド。それがバスターちゃんとデバイスを絡め取っていく。
バインディングシールド。近接攻撃をしてきた相手に対して反応する、カウンタータイプのシールドだ。シールドに攻撃を加えるとチェーンバインドが発動して相手が離脱するより早く捕縛することが出来る。

「レイジングハート!」

「マジか! くっそ、こんな手をまだ隠して持ってたなんて・・・!」

――捕縛断ち――

3本のうち1本の鎖が粉砕された。急げ、急がないともうチャンスは回ってこない。

「ディバイン・・・!」

「チクショー!!」

2本目が粉砕された。残り1本も徐々に解きかけてる。

「バスタァァーーーーッッ!!」

だけどその前に、砲撃ディバインバスターを放つことが出来た。ほぼ零距離。チャージ時間は短かったけど、確実に捉えることも出来たし、撃墜とまではいかなくても大ダメージは与えることが出来たはず。なのに・・・「アレ?」妙な光景が私の目に映った。

≪マスター。回避されました!≫

「っ、・・・やっぱり・・・」

着弾すれば何かしらの反応――爆発を起こすのに、それが起きずに砲撃はそのまま通過して行った。それが意味するのは着弾しなかった、ということ。でもおかしい。たとえバインドを砕き終えたとしても避けきることなんてまず不可能な距離・・・なはず。それに回避した姿を見ることもなかったし。

「バスターちゃんは・・・!?」

どこにも姿が見えない。きょろきょろ周囲を見渡していると、『なのはさん』リンディさんから通信が入った。内容は、バスターちゃんが転移魔法で結界内から撤退したということだった。

『たぶん、ヒーラーの転移魔法でしょうね。背後に現れた円盤から伸びて来た手によって引っ張り込まれていたから』

『そう、ですか・・・』

こうして私とバスターちゃんの決闘は、バスターちゃんの味方が行った転移による、バスターちゃんの離脱という形で幕を閉じた。


 
 

 
後書き
グッド・モーニング。グッド・アフタヌーン。グッド・イーブニング。
ようやく本格的な戦闘に入った八神家となのはフレンズ。決着はつきませんでしたが、続けていればヴィータが負けていたでしょうね。やはりなのはの魔力量や攻撃力は異常です。
スカリエッティら第零技術部の協力もあって現状でもエクセリオンモードが使えますが、ヴィータ相手に使ってはまずいだろう、ということで使いませんでした。やっぱり決戦で使ってこそのフルドライブでしょう!
次回も三騎士戦で対戦表は、シグナムVSアリサ&すずか、となります。

 
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