銀河転生伝説 ~新たなる星々~
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第28話 幕間
――宇宙暦814年/帝国暦505年 3月10日――
先年にティオジア連星共同体を滅ぼしその所領を銀河帝国の版図に入れ、今年に入ってからはウェスタディアの女王ルシリアやシャムラバートのシェーラ王女など旧ティオジア加盟国の王侯貴族を己の嫁として側室に加えてこの世の春を謳歌している皇帝アドルフは、
「もうさ、週休6日とかでよくね? ……分かった、週休5日で我慢しよう。そこが妥協点だ」
今日も相変わらずバカな事をのたまっていた。
周囲の者も慣れたもので「はいはい、アドルフアドルフ」と誰も相手にしない。
しばらくして、無視《スルー》されていることに気付いたアドルフは「1週間は仕事しないからなー!」と捨て台詞を残し自室へと引き籠る。
帝都フェザーンは今日も平常運転であった。
・・・・・
昨年の冬、軍務尚書ロナルド・ダック・リーガン元帥と統帥本部総長トルガー・フォン・シドー元帥が退役。
代わって軍務尚書にエルネスト・メックリンガー元帥、統帥本部総長にオスカー・フォン・ロイエンタール元帥、宇宙艦隊司令長官にウォルフガング・ミッターマイヤー元帥、副司令長官にアーダルベルト・フォン・ファーレンハイト元帥が就任した。
また、新旧5つの方面軍の司令官は
オリオン方面軍司令官 ヘルムート・レンネンカンプ元帥
バーラト方面軍司令官 ウルリッヒ・ケスラー元帥
ガンダルヴァ方面軍司令官 マグヌス・フォン・フォーゲル元帥
ロアキア方面軍司令官 ガラハット・ガムストン元帥
ティオジア方面軍司令官 カール・グスタフ・ケンプ元帥
となった。
旧自由惑星同盟領に方面軍が2つも設置されているのは、ここが元々民主共和制国家であることと、帝都フェザーンに近いという理由からである。
他には、幕僚総監にシュタインメッツ元帥、近衛艦隊司令長官にミュラー元帥、親衛艦隊司令長官にアイゼナッハ元帥が就任しており、バイエルライン、ディッタースドルフ、ホフマイスターなどの上級大将も正規艦隊の司令官に任命された。
彼らは本来なら1個艦隊の指揮を任されてもおかしくない実力を有していたが、ミッターマイヤー、ロイエンタール、ファーレンハイト艦隊など有力な艦隊の副司令官を務めていたためその機会に恵まれずにいた。
だが、さすがにいくらなんでもこれ以上低い(?)地位に就けておくわけにはいかないということで、この度はれて1個艦隊を指揮することになったのである。
こうして見ると銀河帝国の人材面は一見順風満帆のようであるが、問題は次世代の――若手世代の提督たちであった。
彼らの能力が低いわけではない。
だが、どうしてもアドルフ等の世代と比べると見劣りしてしまうのだ。
もっとも、それも仕方のないことではある。
アドルフたちの世代は旧自由惑星同盟との戦争が激化していた時期であり、戦争経験は十分に豊富であった。
しかし、今の若手世代の提督たちにその手の経験は少ない。
ロアキアやティオジアとの戦闘経験を持つ者は多くいるが、これらの戦いはほとんど銀河帝国が戦力的に有利であり悪くても互角だ。
第二次ガイエスブルク要塞攻防戦という例外もあるが、銀河帝国側にガイエスブルク要塞があることを考えれば互角かやや有利だったといっても良いだろう。
ともかく、若手世代の提督たちが実戦の経験不足なのは否めず、それらをどう解決していくかが今後の課題といえた。
* * *
――???――
「前方にワープアウトしてくる艦影あり」
「ん、どこの船だ?」
「1隻ではありません艦影多数! 数……えっ!?」
「どうした?」
「数、10000隻以上!!」
「10000隻だと!」
「あ、あれは・・・・軍です!」
「ちぃ、至急本国に連絡を入れろ『遂に・・・・が牙を剥いた』とな」
宇宙暦815年/帝国暦506年8月10日、銀河のとある場所で1隻の偵察艦が撃沈された。
この出来事が巡り巡って銀河帝国まで辿り着くとは、このとき誰も予想し得なかった。
* * *
――宇宙暦816年/帝国暦507年 5月5日――
この日、ルフェール共和国にて宇宙艦隊の銀河帝国領出兵案が可決された。
――2年前、ミンディア星域会戦の敗戦責任を取って当時の政権は総辞職したが、代わって後を継いだ新政権はいきなり難問に直面することになる。
辺境十三国の尽くが銀河帝国に呑み込まれたため、これらの国々との貿易が途絶。
これが原因で多数の企業が倒産し、リストラの嵐が吹き荒れ、失業者が増大してルフェールは大不況に陥った。
新政権は雇用対策として若者を軍隊へと雇い入れる。
もちろん、これには『ミンディア星域会戦での損失兵員の補充』という裏の事情もあった。
だが、軍というものは膨大な金食い虫であり、軍それ自体は何も生み出さないという非生産的な存在である。
結局のところ、この政策はその場しのぎでしかなく、数年経てばその影響が目に見えて現れて来るのは必然と言えよう。
逆に軍備を削って経済再建の為の費用を捻出するという案もあったが、それでは銀河帝国に対抗できないという至極真っ当な意見の前に沈黙するしかなかった。
とはいえ、このような状況下では経済と軍備の両立など到底不可能である。
どちらかを優先すればもう一方が割を喰うのは至極当然であるのだが、新政権はどちらを優先するか決めきれず両立という最も選んではいけない選択をしてしまった。
案の定、時間の経過とともに状況は刻一刻と悪くなり、自然と支持率は低下していく。
それでも2年間も政権が持ったのは、『銀河帝国の脅威』これに尽きよう。
だが、それも限界であった。
一向に良くならない現状に国民は苛立ちを募らせており、支持率は政権交代ギリギリの線《ライン》にまで下がっていた。
追い込まれたルフェール首脳陣は一発逆転の方法を取る。
すなわち、軍の出兵とその勝利による支持率回復であった。
ルフェールの現政権は支持率獲得のため軍に「銀河帝国と一戦して打ち破れ」と出動を命じる。
軍のトップである統合参謀本部長フォルト・ゲイム大将、宇宙艦隊司令長官ロング・ニトラス大将の両名は揃って反対したが、これは政府による正式な命令であるため拒否はできない。
仕方無く、ニトラス大将は第三、第五、第七艦隊の3個艦隊36000隻に司令部直率の5000隻を合わせた計41000隻の艦艇を率いて出撃した。
時を同じくして、『ルフェール軍出動』の報を受けたティオジア方面軍司令官のケンプ元帥も麾下の艦隊とアイヘンドルフ、パトリッケン、ヴァーゲンザイル艦隊の4個艦隊50000隻を率いて出撃する。
両軍の接敵予想地点はグリニア星域。
この地で、今2度目の会戦が起きようとしていた。
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