紫と赤

第四章

「何処もそれだけは奇麗なんだよ」
「そして共産主義もまた」
「あそこまでいくとペテンだね」
　こうまで言い捨てる。
「完全にね。平等とは言いながら階級主義だった」
「特に北朝鮮はそうだね」
「あそこはまた論外だよ」
　アメリカは北朝鮮を正式にテロ支援国家と認定してきたしその非道さも卑劣さもよく知れ渡っていた。彼等もそれを知っているのである。
「大体世襲だよ、世襲」
「王制みたいにね」
「他のどんな共産主義者もそれはしなかった」
　最低限それだけは、であったのだ。
「けれど彼等はそれをした」
「しかも出生により身分を決めているね」
「そのまま大昔の封建国家さ」
　チャーリーの批判の言葉は鋭くなる一方だった。
「あそこはそもそもそういった共産主義者でもないよ」
「だから余計に論外になるんだね」
「その通りだよ。元々の共産主義だって酷いものだっていうのに」
　話を共産主義に戻すチャーリーだった。
「あれじゃあ。とてもね」
「そうだね。確かに」
「共産主義の赤は僕が望む赤じゃない」
　このことをはっきりと言うのだった。
「血の赤にしろ生きている赤なんだ」
「生きているなんだね」
「そうだよ。間違っても誰かを殺す赤じゃない」
　これはチャーリーの己の絵画に対する考えでもあった。あくまで絵画は人を感動させるものであり殺したりするものではない。こう考えているのである。
「だから今の赤もそういう赤なんだよ」
「そうだね、やっぱり」
　またチャーリーの言葉に頷くコリンだった。
「とにかくさ。応援してるよ」
「有り難う。とりあえずは」
　チャーリーはここでまた少し考えそのうえで述べた。
「化粧品を調べてみるか」
「そこに行くんだね」
「色々な赤があるんだよね」
「数え切れない位ね」
　こうまで言ってみせるコリンだった。これは彼が本当に知っているからこそ言える言葉であった。彼はそれを見てきたのである。
「あるから。ひょっとしたらね」
「赤だけを見ても駄目かな」
　ふと思ったコリンだった。
「やっぱり。ここは」
「赤だけじゃ駄目っていうと？」
「紫がかった赤なんだよ」
　チャーリーが言うのはそこだった。あくまでそこである。
「だからね。あえて」
「紫もだね」
「そういうこと。それでどうかな」
「いいんじゃないかな」　
　コリンもこのことに賛成した。どちらにしろチャーリーにとって悪いことにはならないしひょっとしたらという考えもそこにはあったからだ。
「それでさ」
「よし、じゃあ」
「うん、そうするんだね」
「そうするよ。これで見つかればいいね」
　答えはしたがまだ楽観視はしてはいないのだった。
「まあ、ヒントだけでも見つかればいいとしようか」
「そういうことだね。それじゃあ」
　コリンは話が一段落ついたところでまた彼に言ってきた。
「食べようか」
「食べるって？」
「おいおい、今僕達は何処にいるんだい？」
　素っ頓狂な調子のチャーリーの言葉に思わず苦笑いを浮かべてしまっての言葉である。
「ハンバーガーショップじゃないか」
「ああ、そうだったね」
　実際にそのことを言われて思い出したチャーリーだった。話に夢中でそのことを完全に忘れえしまっていたのだった。迂闊と言えば迂闊であった。