ビビリな最強最悪少女の転生記
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転生するビビリ
白い空間に二つの影がある、一つは成人男性程度の大きさの影。もう一つは、小さくうずくまりガタガタと震えて何かに怯えている顔を下げているため顔を見ることは出来ないが髪の長さ、そして胸に少しある膨らみから少女と推定される。
成人男性程度の影はよく見るとイケメンと言われる部類の中でもかなり上位に入るほど整った顔立ちをしている。しかし、その整った顔は非常に困った顔になっている。それは、始めての事で焦っているとも取れる。
そして、その原因に対してイケメンは話しかけた。
「君は僕達のミスのせいで死んだんだよ」
そう、優しく語りかけてもそのうずくまった少女には全くの聞こえていない。うわ言のように唯呟いていて全く話は聞こえていない。
「おかしい、私は車にはねられて死んだはずなのに。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで、おかしいおかしいおかしいおかしい、理屈が分からない、理解できない、わからない、わからない、わからないわからないわからないわからないわからない、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…」
まるで呪詛を唱えるように怯えながら呟いているだけ。それを見てイケメンはため息を吐きながら考える、どうしてこうなったと。自分は神で、最近神々の中でミスが見つかりそれで死んでしまった者を転生させる事になった。そして、自分にも数名割り当てられ、最後の一人として出てきたのはずっと怯えている少女だ、最後の最後で厄介なのが出て来たと神は思っていた。まぁ、今までが転生出来ると言う事実でテンションが上がった連中や物わかりのいい連中だったからすんなり行けていただけだが…
「何故、何故、何故、何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故、生きている?いや、生きていない?私は死んだはず、なら此れは夢?幻?それとも現実?わからないわからない、目の前の男は何者?わからない、この白い空間は何?ここまで白以外の色が無く広い空間はあり得ないやはり夢?ねぇ、貴方は何か知らない?」
「えっ」
少女はそう言いながら顔を上げた。その顔は髪に大部分が隠れていたがその間からでもわかるほど可愛らしく人形のように整っていた。しかし、常人にはそれが可愛らしいとも美しいとも思えないだろう。何故なら髪の隙間から覗かせる眼にただならぬ狂気を感させるからだ。そしてそれは神で在るはずの男すらもそう感じて少し恐怖を憶えた。
(いきなり話を振られるとは思わなかったが僕の事に気づいてなかったわけではないようだ。でも、話を聞いてはいなかったんだ。それにしてもなんて眼をする人間なんだ)
しかし男は曲がりなりにも神だ、その程度のことで思考を辞めることはない。
「ああ、勿論知っているよ。君の疑問は全て僕が説明できるものだよ。」
「本当!なら教えて怖いから早く早く…」
「先程も言ったように君は僕達のミスで死んでしまったんだ。」
それを聞いた少女は
笑った、心底愉快そうに。
「クククククク、アッハハハハハハハハハハなんで死んでるのにここにいるの?ミスで死んだ?それなら貴方はあの車の運転手?それとも別の人?でも車の運転手以外で私を殺した人はいないと思うけどなぁ。それにしてもミスかぁ、怖いなぁ。」
男は心底嫌になった、このタイプは初めてだった。さっきから可笑しな言動で他の転生者とは毛色が一味も二味も違う事がわかったが、この返答も他の転生者と違うところだった。今までの中で一番多かったのは事情を説明すると頭がおかしいのかと聞かれることだった。まぁ、普通と言えば普通だろう、突然ミスで死にました、と言われたらそう言いたくもなる。次に多かったものは半信半疑だがそのまま話に流されていく、または状況が読み込めず流されていく。いきなりの事だからミスで死にました、では理解できない、又は信用出来ないのも理解ができる。一番少なかったのは、予備知識でこう言った転生を知っていたものだ。まぁ、似たようなシュチュエーションを知ったりしていればそうと思えるかもしれない。まぁ、もう少し考えた方がいいと思いはするが。
しかし、彼女は違った。まぁ、死んでいるのに何故ここにいるかと言う質問は良くされたが。それ以外が他とは異質、他の転生者の中にこの話をされて笑った者はいなかった。そして、ミスで自分を殺したと言っている者は何者なのかと聞いた者はいたが、何者なのかと推測しようとした者はいなかった。男は簡単な説明だけで如何にかできないかなーと言う希望を捨てた。
(さっさと説明して転生してもらおうこの娘といると調子が狂う)
「なんで死んだのにここにいるかと言うと、ここは管理者の住む場所の一つで死んだ君の魂に生前の形を与えてここに呼んだのさ。そして、僕が何者かと言うとここに住む住人、あり大抵の言葉でいえば神が一番近いかな」
「神ねぇ、つまり神のミスで死んだってこと?怖いなぁフフ」
「僕が神だって事を疑わないのかい?今までの人たちは全員一度は言葉に出すか、信じてないって顔をしたんだけど」
それを聞くと何故か笑うのをやめた。
「だってこんな膨大な空間に二人しかいない時点で夢か、貴方が言ったとうり管理者の住む世界とやらとしか考えられない。まぁ、嘘かもしれないけどこの場合で貴方の言うこと信じないのは得策じゃない、信用はしてないけど…って何その顔」
男はとてつもなく驚いた顔をしていた
「いや、意外に物分りが良くてビックリした。まぁ、信じてくれるんだったらいいよ別に信用しなくても、所詮転生するまでの短い付き合いただからね」
「転生?仏教の輪廻転生のこと?やっぱりミスして殺したからそれの埋め合わせってこと?」
「まぁ、間違ってはないよ。輪廻転生とは別物だけど、簡単に言うと記憶を持ったまま人生をやり直せるってことだね。別の世界で」
「別の世界?」
別の世界、という単語を聞いた途端に男は少女の眼の狂気が深くなった気がした。
「そう、別の世界。厳密に言うとハイスクールD×Dって小説の世界だね」
「ハイスクールD×D?何それ。わからない、またわからない世界で始めから生きる?怖い怖い怖い」
「そんなに怖がる必要はないよ、ほぼ君のいた世界と同じだよ。まぁ、悪魔や天使などの神話に出てくる者たちがいっぱいいるけどね」
「悪魔?天使?神話に出てくる者たち?幻想の無い世界でも怯えて暮らしてきた私をもっと震えさせて恐怖に押しつぶしたいの?怖いなぁ」
その時、彼女の周りの空間が黒い何かに侵食されているかのような錯覚に男は見舞われた。そのことに男は…神で在るはずの者は恐怖した。
「怖くて怖くて仕方が無い」
「は、話を戻していいかな?」
「うん、いいよ。ところで私に恐怖してるでしょフフフ」
「じゃあ、話を戻すよ」
男は少女の言葉を軽く無視した。何故ならこのままだとこの少女の得体の知れない何かに呑まれそうだったからだ。
「転生する時にある程度の要望を叶えることができる。容姿だとか生まれる年代だとか。あぁ、後記憶を消したりもできるよ。そして、特典つまり能力を得ることができる」
「へー、気前が良すぎて逆に怖い。なんでも好きな特典がもらえるわけじゃないんだよねぇ」
「よくわかってるね、そうだよ特典の方はクジで決まる。クジを引ける回数は2〜6回までで引く回数が多いほどハズレが出やすくて2回だとほぼ確実に使えるのが出るようになってるよ。ここまで聞いて何か質問はあるかい?」
「そうだね、私は絶対に転生しなくちゃいけないの?私の他に転生者は?特典のハズレってなに?」
「ちょっと、まとめて聞かないでよ。一つ一つ答えてくから」
男は困った顔をしながらも先ほどの狂気が消えてることに安堵しながら少女の対応をしていた。
「まず、転生は絶対にしてもらいたい。僕たちのミスで死んでしまったわけだからそこらへんのケジメをつけなきゃいけないんだよね」
「つまり、私の意思は関係ないと、傲慢だねぇ」
「うっ、否定はできないね。次に行くよ、君以外に転生者は結構いる、僕が担当したのは30人だったけど神は他にもいるからね。まぁ、全員が君と同じ世界に転生するわけじゃないけど、君の転生する世界なら100人位居ると思うよ」
「本当に結構いるね、そんなにミスしたの?怖い怖い」
「いやいや、ミス自体は一つだけだよ。でも、その一つだけでかなりの人数の運命が崩れるからね。だから多いんだよ」
「そうなんだ、一つのミスで一杯死ぬんだ。震えてきちゃったなぁ」
そう言ってガタガタと少女は震え始めた
「そして、最後の特典のハズレなんだけど。此れはハズレって言うよりあまりもらっても意味のないものだね大体の人間は」
「意味がない?どんな特典なの?」
「その特典は平行世界で一番強い自分の能力を全て得るってものだよ」
「えっ、平行世界なら無限にあるんだから一番強かったらかなり強いんじゃないの?」
「そう、うまく出来てないんだよ平行世界も。例えば、女か男かの違いと最強か最弱かの違いだと前者の方が平行世界では起きやすい。つまり、性別が二つの世界で違うことがあっても最弱だった者が最強になることは世界が無限にあってもほぼあり得ない。そして、強い能力を平行世界で持ってるものなんてほんの一握りだけなんだよ」
「ふーん、大体わかったわ」
男は少女の狂気が最初と同じくらいに収まってきたのがわかった。
「じゃあ、特典を決めるためにクジを引いてもらうけど何回引く?」
「もちろん2回、不確定要素は出来る限り低くしたいからね」
「わかったじゃあ」
パチンッ
男が指を鳴らすとガラポンが出てきた。
「はぁ、なんでガラポン?神なんでしょ、神なんだよね?もうちょっとイメージに合うものにしたら?血の気が引いちゃったじゃん」
「まぁ、仕様だからあまり気にしないで欲しいね。それじゃ回してください」
「わかったよ、怖いなぁ」
少女はそう言ってガラポンを回し始めた。
ガラガラガラガラ
ポンッ
まず一つ目の球が出てきて
ガラガラガラガラ
ポンッ
二つ目も出てきた。そして、その球を男が掴み上げ読みあげる。
「一つ目は、特典の強化」
「特典の強化ってどういうこと?」
「そうだね、元々が少し弱い能力でもハイスクールD×Dの世界の神滅具と同じくらいまで強くできるほどかな」
「ハイスクールD×Dの神滅具ってのは名前から神を滅することができる何かなのかな?怖いから詳しくは聞かないけど」
「まぁ、概ねハイスクールD×Dの神をも殺せる道具って認識でいいよ」
「そう、それじゃ二つ目も早くして欲しいなぁ」
そう言って初めて狂気のこもった笑みではなく、可愛らしい容姿にあった笑みを浮かべた。
「二つ目は、平行世界で一番強い自分の能力を全て得る」
「あーらら、私って実は運ないのかなぁ。ほぼ確実にいいものがでるクジでハズレを引くなんて」
「まぁ、まだハズレと決まったわけじゃ無いよ。君の平行世界を調べないとわからないからね」
男はそう言って見たが少女の平行世界の中には何かしらの能力を持った存在が居ると確信していた。
何もない普通の世界の可能性で神である自分を恐怖させられるなら能力のある世界ならどれほどなとかと男は思っていた。
「どれどれ、君の平行世界の中で一番強いのは…えっ、」
「どうしたの?何かあった?不安になって恐怖しちゃうよぉ」
「あぁ、君の平行世界で一番強いのは鬼神 阿修羅、ソウルイーターの鬼神 阿修羅だよ」
「鬼神…阿修羅?フフ、フフフフフキャッハキャハハハハハハハハ」
イキナリ狂った様に笑いはじめた。いや、元々狂っているのだからそれは本来有るべき姿で笑いはじめた。その狂気を直接喰らった男は少女に尋ねた。
「そんなに面白いことだったかい?」
「いや、そうだねピッタリだね。私ってかなりのビビリだから、怖いなぁ」
「それじゃあ、特典の確認だ。一つ目は特典の強化、二つ目は君の平行世界の可能性、鬼神阿修羅の力全て、ヴァジュラもしっかり付けてあるからね」
「そう、完璧だね。本当に恐ろしいなぁ、これから未知の世界に転生するんだから。震えるなぁ」
「それから、転生するにあたって細かい注文はあるかい?」
少女は考える素振りを見せると、笑ながら思い付いた様な顔をして言った。
「じゃあ、ここに来る以前の記憶を全て消して」
「はぁ?本気で言ってるのかい?」
「うん、だって転生するのに前世のことが記憶にあったら怖いから」
「どうしてここに来る以前の記憶なんだんだい?全ての記憶じゃなくて」
「だって、全部の記憶を消したら自分が消えそうで怖くて。記憶を消したのを忘れたら思い出せなくで怖いなんてことになりそうだから」
震えながそう言っている姿は男が少女が先ほどまでの狂気を放っていたことを忘れてしまうほど弱々しかった。
「それ以外はないかい?」
「うん、他に何もないよ」
「わかった、転生するけど生まれる年代は正直僕にはわからない。決めていないと特典に依存するところがあるからね、それじゃあ行くよ」
「わかった、怖いなぁ。新しい世界も、そこにある未知が、全てが恐ろしいなぁ」
「そう、僕は君がとても恐ろしかったよ」
「へぇ、私は貴方のことが何故かあまり恐ろしくなかった、結構話してるのは楽しかったよ。そんなこと考えてる自分が怖いなぁ」
「そうかい?それは何よりだ」
「思ってもないくせに」
「じゃあ、新しい人生を」
「本当に怖いなぁ…」
そう言って少女は光に包まれて消えていった。後には白い空間に佇む男ただ一人だ。
「はぁ、やっと行ってくれたよ。大変だったなぁ」
そう言ってはいるが男は笑っていた。
「これで僕の担当の転生は終わりかぁ。それにしても楽しかった、か」
男は何かを考え始めた。
そして、思い付いたのか笑始めると
「そうだなぁ、怖くて誰も信用出来なさそうだからちょっとサービスしてあげるよ、◼︎◼︎ ◼︎◼︎ちゃん」
転生して行った、ビビリ少女に対して言葉を放った。
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