大義
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第五章
第五章
「その前にここで」
「一掃するのか」
「そうです。そしてテロを防ぎます」
シンカランの言葉は強かった。
「何があっても」
「わかったさ」
「それじゃあな」
「まずはです」
「んっ!?」
シンカランはここであるものを出してきた。それは。
「そりゃ何だ?」
「催涙弾です」
こう二人に対して答えた。
「これを使ってまずは中にいる連中の動きを止めます」
「まずはそれでか」
「相手はまだ何も知らない筈です」
彼はまた言う。
「だからこそ。ここで」
「一旦動けなくするってわけだ」
「いいですか。何度も言いますが」
「容赦する必要はないってことだよな」
「それだな」
「そうです。射殺してもいいです」
まさに最終手段であった。相手がテロリストだけでこちらも遠慮することはない、本当にそう言っているのであった。
「何でしたら」
「わかってるさ、それはな」
「なら」
「はい。では皆さん」
言いながら己の携帯でメールを送る。するとアンバンの携帯もマナドの携帯も揺れ動く。これに備えてマナーモードにしていたのだ。これも打ち合わせで決めていた。
「いきますよ」
その言葉と共に屋敷の中に催涙弾を撃ち込む。それからであった。皆それぞれ一斉に屋敷の中に飛び込む。催涙弾が消えても相手はむせび込み動けなくなっていた。シンカランがその彼等に対して叫ぶ。
「動くな!」
まずはこの言葉だった。
「動けば容赦はしない。撃つ!」
本気であった。実際に銃も構えている。
「わかったら。手をあげろ。いいな!」
「くっ・・・・・・」
「抜かった・・・・・・」
テロリスト達の悔しさに満ちた言葉が聞こえてくる。彼等は次々に武器を取り上げられ拘束されていく。作戦はまずは成功と言ってよかった。
しかしだった。それで終わりではなかった。ここでシンカランは二人に対して言うのだった。
「それでですね」
「んっ!?」
「何だ!?」
「あらかた制圧してメンバーを拘束しましたが」
「ああ」
「まだいる筈です」
こう言うのである。
「逃れた者が。ですから」
「そいつ等を探し出してか」
「そういうことだな」
「はい」
シンカランは二人の言葉に対して頷いた。
「そうです。是非」
「わかった」
「それじゃあな」
二人は彼の言葉にすぐに応えた。そうしてすぐにその手に持っている銃を手にその残っているテロリストの捜索にあたった。このアジトは今は出入り口は全て塞がれている。よって調べるのは屋敷の中だった。屋敷の中に入ると既にかなりの部分が制圧されていた。残るは地下室だけだった。
「如何にもって感じだな」
「全くだ」
その地下への階段は暗く果てが見えないようになっている。アンボンもマナドもその見えなくなっている果てを見つつ言うのだった。
「だが。ここに入ってこそか」
「後は大体制圧して残っている場所はここだけだしな」
「行くか」
「ああ」
顔を見合わせ頷き合って降りることにした。懐中電灯は持って来なかった。光を出せばそれで場所がはっきりとわかってしまうからだ。己の目が馴れるのに頼っていた。
階段を降りきりまずは右の扉に手をかける。手をかけつつアンボンは扉の右、マナドは扉の左にそれぞれ位置する。そうしてその態勢で扉を開ける。もう目は暗闇に馴れていた。
扉を開けすぐに転がって中に入り寝転がった形で銃を構える。まずはそこには誰もいなかった。
「大丈夫だな」
「そうだな。ここには誰もいないな」
「誰もどころか何もない」
アンボンは言った。
「ここにはな。
「ただの空き部屋だな」
「そうだな。ここはもういいな」
「ああ」
二人は立ち上がって言い合った。
「それじゃあ次は」
「ここだな」
その部屋と向かい合っている左の部屋である。今度はそこに入ることになった。
また同じようにして中に入る。するとすぐに部屋のある場所から赤い光が出て来た。
「!?まさか」
「いる・・・・・・そこか!」
二人はその光が出たところで咄嗟に身体を動かした。
先に部屋に入ったマナドは右に、アンボンは左に動く。そのアンボンの右腕を何かが掠めた。
「マナド!」
「わかっている。そこか!」
マナドはアンボンの言葉に応えてすぐに今赤い光が出たその場所を撃った。するとそこで呻き声があがったのであった。
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