美しき異形達
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第二話 目覚める炎その四
「飲めるのならさ、もう何でもな」
「じゃあビールも」
「大好きだよ、ただどっちかっていうと強い酒が好きでさ」
「強いって」
「ブランデーとかウイスキーとか」
そうした洋酒からだった、薊が挙げていく酒は。
「老酒とかバーボンもいけるしさ」
「日本のお酒だと焼酎よね」
「あれも好きだよ、ラムとかも好きでさ」
それにだった。
「ウォッカもさ」
「そっちも飲むのね」
「ウォッカいいよな」
実に楽しそうな言葉だった。
「あれな、氷を入れてぐいってさ」
「いや、ウォッカはね」
「ちょっと」
「あれは」
「幾ら何でも」
裕香だけでなく他の面々もだった、ウォッカについては困惑を隠せない顔で述べるのだった。それは
何故かというと。
「あれは強過ぎるから」
「アルコール度が滅茶苦茶強くて」
「そうそう飲めるものじゃないから」
「だからね」
それでだというのだ、クラスメイト達は。
「私達もお酒好きだけれど」
「ウォッカになるとね」
「流石に無理よ」
「飲めないわ」
「まあ他のも飲めるからさ」
とにかく酒なら何でもだとだ、薊は笑顔で言うのだった。
「ビールでも何でもさ」
「あっ、ビールだとね」
「誰でも飲めるからね」
「アルコール度も大したことないし」
「あれだと」
「ビールもいいよな」
ウォッカだけでなくビールについてもだった、薊は楽しそうに話す。
「大ジョッキでぐい、ってさ。つまみは枝豆かソーセージで」
「薊ちゃんそれおっさんだから」
「まんまじゃない」
「それって」
「あはは、だよな」
自覚していてだ、笑って言う薊だった。
「けれどそれが実際にいいよな」
「まあね、言ってる私達もね」
「ビールっていったら枝豆とかソーセージよね」
「冷奴とかベーコンもいいけれど」
「それか串カツ、焼き鳥ね」
「串カツなあ」
串カツと聞いてだ、薊は無知のものについて語る顔になった。そのうえで裕香達にこんなことを言ったのだった。
「関東にはないからさ、それ」
「そうよね、串カツって関西だからね」
「大阪名物の一つだからね」
「関東にはないわよね」
「あれは」
「お好み焼きとかたこ焼きはまだあるんだけれどさ」
そうしたものはある、横須賀にもだ。
「けれど関西が本場だよな、どれも」
「まあね、大阪ね」
「それか広島」
大阪のお好み焼きと広島のそれはまた別ものだ、互いに広島焼き大阪焼きと言ってそれぞれの地域では区別される程だ。
「お好み焼きはうちの学校五月蝿いけれどね」
「論争してるからね」
「大阪の人と広島の人で」
「女子寮でもね」
「へえ、広島の人もいるんだな」
薊はその話を聞いて目を瞬かせてから言葉を返した。
「うちの学校には」
「ええ、いるわよ」
「うちの学年だと宇野の智ちゃんね」
「あの娘広島出身よ」
「あそこの生まれよ」
「軽音楽部の小柄で垂れ目の娘ね」
その部活と外見についても話される。
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