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FAIRY TAIL 友と恋の奇跡

作者:紺碧の海
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第167話 運命の歯車 

 
前書き
07でございます!!
今回は大魔闘演舞1日目が終わり、その夜妖精の尻尾(フェアリーテイル)は・・・とある酒場で宴の真っ最中!そんな時・・・
ナレーション風です。
それでは、第167話・・・スタート!! 

 
ここはクロッカスにある森の小川(フォーレストブルック)という小さな酒場。ここでは今、

妖精全「乾パァァァァァァァァァァイッ!!!」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士全員が集まって宴をしていた。ギルドでやる宴はうるさすぎるほど賑やかだが、大魔闘演舞で良い結果を残せた喜びでいつもの宴の100倍以上賑やかだった。

マカ「今日は騒げっ!食べれっ!飲めっ!踊れっ!歌えっ!バカ騒ぎじゃあああああっ!!」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の6代目ギルドマスター、マカロフも嬉しさのあまり酒を飲みながら踊り出す。

ル「す、すごい賑やかね・・・」

ショ「ここの酒場、大丈夫か・・・?」

シャ「ついていけないわ。」

ウェ「アハハハハ・・・」

ト「でも皆さん、すごく嬉しそうですよ。」

あまりの迫力と賑やかさに圧倒されるルーシィ達は端の方でその光景をただ眺めている事しか出来ない状態。ショールは酒場が壊れてしまうんじゃないかと心配になる。現に、酒場の柱が微かにミシミシッと呻き声を上げている。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の賑やかさは、建物1つ破壊してしまうほどの威力があるのか・・・?

ル「そういえばショール、いつ大魔闘演舞に復帰出来るの?」

ショ「ポーリュシカさんの手当てのお陰で、明日にはまた出場出来るよ。」

ショールの体に「こんなにぃっ!?」と思うほど巻いてあった大量の包帯は頭に巻いている包帯以外はほぼ外れていた。明日になれば、頭の包帯も外れる事だろう。

エ「私と同じくらい、ショールも回復力が速いんだな。」

昨年の大魔闘演舞の3日目の競技パート、『伏魔殿(パンデモニウム)』で大怪我を負いながらも見事1位に輝いたエルザの回復力は圧倒されるほど速かった。

ナ「明日はぜってぇ~に!Bチームに勝つぞぉぉぉぉぉっ!!」

ハ「勝つぞぉぉぉっ!」

マ「明日もぜぇったいに!Aチームに負けないぞぉぉぉぉぉっ!!」

フ「負けないぞぉぉぉっ!」

ナツとマヤは口々に叫びながら酒場の中を走り回っていた。ハッピーとフレイは口々に叫びながら酒場の中を飛び回っていた。

ル「無駄なくらい元気ね・・・」

シャ「あんなに騒いで、大魔闘演舞の時間違って昼寝なんかしたらどうすんのよ。」

ウェ「その時は起こすしかないよ。」

ト「マヤさんだったら、「あそこに動物がいます!」って言えば、跳ね起きると思いますよ。」

ショ「それ、本当なのか?」

ト「試しにやってみますか?」

ショールが頷くと、トーヤは酒場の中を走り回っているマヤに向かって、

ト「あっ!あそこに動物がいます!」

すると、走り回っていたマヤの足がキキィー!と止まり、

マ「動物ゥ!どこどこどこどこぉっ!?ペンギン!?トラ!?それともクジラ!?」

ものすごい速さでトーヤの前に詰め寄る。流石動物姫(アニマルプリンセス)。恐るべし反射神経・・・

ト「あ、スミマセン。見間違いでした。」

マ「えぇ~。」

マヤは残念そうに声を上げる。

ル「(普通こんな街ン中にペンギンとかトラとかクジラがいる訳ないでしょっ!)」

ルーシィは心の中で叫ぶ。口に出したらマヤは「あ、そっかぁ~☆」と簡単に流してしまうからだ。

エ「す、すごいな・・・」

ショ「い、今、全く目で追いつけなかった・・・」

ウェ「何という反射神経・・・!」

シャ「感心してどうすんのよっ!」

エルザ、ショール、ウェンディは感嘆&驚嘆の声を漏らし、シャルルが突っ込む。すると、

グ「なぁ、ユモどこに行ったか知らねぇか?」

グレイが辺りを見回しながら歩み寄って来た。珍しく服を着ている。

ル「そういえば、さっきからリョウの姿も見えないわね。」

辺りを見回しても、緑色の着物を着たリョウと、水色のワンピースを着たユモのの姿は酒場の中にはどこにも無い。いつもならリョウはナツとグレイと喧嘩をしているはずだが、そのナツとグレイも珍しい事に喧嘩をしていない。ユモはルーシィ達と一緒に会話を弾ませているはずなのだが・・・

マ「ユモなら、さっき酒場から出て行ったよ。」

フ「「ちょっと涼んでくる」って言ってな。」

グ「そうか。」

グレイはマヤとフレイの答えに素っ気無く答える。

エ「やっぱり、ユモがいないと寂しいのか?」

グ「バッ///!そんなんじゃねぇよっ!・・・ただ・・・・」

ト「グレイさん?」

グレイの顔を覗き込んだトーヤの瞳に映るグレイの表情は、どこか不安でいっぱいだった。

グ「(あん時、俺の見間違いじゃなけりゃ・・・)」

グレイの脳裏に浮かぶのは大魔闘演舞の前日、初めて来るクロッカスの街を目を輝かせて観光していたユモと一緒に歩いていた時―――――















大魔闘演舞に出場している魔道士ギルド、海中の洞穴(マリーンケイヴ)に加入しているハルトとイレーネの姿―――――















その2人の姿を見て恐怖に怯え、小刻みに震えるユモの姿―――――















この2つの光景がグレイの頭にしっかりと焼き付いてしまっている。グレイは、この2人が以前、ユモにどんな思いをさせたのかをしっかりと覚えている。

グ「(忘れた事なんて・・・一度もねぇよ。)」

この2人が魔道士ギルドに加入した訳は、またユモに辛い思いをさせる為なのか?そんな考えがグレイの頭の中を横切る。

グ「(考えるな・・・!考えたら、余計に・・・・!)」

グレイはその考えを必死に拳を握り締めて抑える。その様子を、トーヤは隣で心配そうに見ていた。

ナ「リョウは酒場にはまだ来てねぇぞ。」

ハ「「ちょっと用があるから、先にバカ騒ぎしててくれ」って言ってね。」

ル「ふ~ん。」

ルーシィもナツとハッピーの答えに素っ気無く答える。

ショ「ルーシィもリョウがいないと心細いのか?」

ル「えっ!ち、違う違う///!そんなんじゃないわよっ!・・ただ・・・ね・・・・」

ウェ「ルーシィさん?」

ルーシィの顔を覗き込んだウェンディの瞳に映るルーシィの表情は、とても悲しそうだった。

ル「(リョウ、私達に、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に、何を隠してるの・・・?)」

そう。ルーシィは薄々感づいていた。リョウが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆に何かを隠している事。そしてその秘密が、















誰にも言えない秘密だという事も―――――















ルーシィは膝の上で軽く両手を握り締める。

ル「(大丈夫。リョウもいつか話してくれるはずよ。私ったら、なにバカな事考えてるのよ。リョウを信じなきゃ・・・!)」

さっき握り締めた両手を強く握り締める。その様子を、ウェンディは隣で心配そうに見ていた。

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                          『とある橋の上で―――――』

大魔闘演舞があった夜だとは思えないくらいしーんと静まり返った夜。月明かりが橋の上にいる2人の男女の顔を照らす。

リョ「調子はどうだ?」

ア「お陰様どす。」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士、リョウが問い、魔道士ギルド、幸福の花(ハピネスフラワー)のギルドマスター、アカネが答える。

リョ「何か、いきなり呼び出して悪かったな。」

ア「お気になさらず。」

しばらく沈黙が流れる。夜風が吹き、リョウの茶髪とアカネの赤い髪の毛を揺らす。最初に沈黙を破ったのは―――――















リョ「呼び出したのは他でもない。ユリを殺した愚か者の事だ。」















リョウだった。アカネは話の内容が分かっていたかのように悲しそうに小さく微笑んだだけだった。

リョ「何となくだけど、ユリを殺した愚か者を絞り上げたんだ。それを伝える為に呼び出したんだ。」

ア「えっ・・・」

これは予想していなかったのか、アカネは小さく驚嘆の声を漏らす。

リョ「これはあくまでも俺の推測。信じるか信じないかは、幸福の花(ハピネスフラワー)の魔道士次第だ。」

そこまで言うと、リョウは一度話を区切りゆっくりと目を閉じた。リョウとアカネの間を静かに風が吹き、それがまるで合図だったかのように、リョウは目を開けると――――――――――




















リョ「ユリを殺した愚か者は、大魔闘演舞の出場者の中にいる。」




















ア「!?」

アカネは目を見開き、口元に手を当てて声にならない驚嘆の声を漏らす。

ア「・・ほ、本当・・・どす、か・・・・?」

やっとアカネの口から出た声も微かに震え、歯切れが悪かった。

リョ「だから、さっきから「俺の推測」だって言ってるだろ。これが本当かどうかは俺にも、あんたにも分からねぇ。分かっているのは、ユリを殺した愚か者自身だけだ。自分が犯した罪は、自分が一番よく分かっているからな。まっ、そいつは『闇』の人間だから、何とも思ってねぇかもしれねぇけどな。ったく困った奴だぜ。だけど―――――」

リョウはため息交じりに肩を竦めて呟いた後、何かを決心したような瞳でアカネを見つめ、腰に差してある『嵐真剣』を鞘から抜くと、

リョ「人の命を簡単に奪う事の出来る『闇』の人間は、誰であろうとこの俺が裁いてやる。」

月の光に反射して、『嵐真剣』が銀色に光る。その姿はまるで、



これから(いくさ)に行く勇敢な武士そのものだった―――――



リョウは静かに『嵐真剣』を鞘に戻すと、

リョ「安心しろ。ユリの仇は、約束通り必ず俺がとる。俺は約束を果たさないと気が済まない性格なんでね。」

そう言うと、リョウはアカネに背を向けて歩き出した。

ア「ありがとうございます!」

アカネが頭を下げる。リョウの足が止まった。

ア「ですが―――――」

アカネは顔を上げると、リョウの逞しい背中に向かって―――――















ア「たとえユリの仇をとる為であろうと、約束を果たす為であろうと―――どうか!どうかリョウ様の命に係わる危険な行為だけは、お避け下さい!!」















リョ「!」

アカネは察したのかもしれない。



この男、リョウ・ジェノロは、約束を果たすもの、守りたいものがあれば、自らの命を捨ててまで成し遂げようとする事を―――――



リョ「おぅ。」

リョウは小さく返事をすると再び歩き出し、闇の中へと姿を消した。

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                     『夜のクロッカスの街の中で―――――』

コツ、コツ、コツと、シーンと静まり返ったクロッカスの街の通りに、靴の踵の音が大きく響く。それに重なるように、カツ、カッ、カツ、カッ、カツ、カッと2つの靴の踵の音が小さく響く。

ユ「もう出て来ても大丈夫だよ。」

ユモがワンピースの裾をひるがえしながら後ろを振り向く。だが、後ろには誰もいない。

ユ「大丈夫。グレイもいないから安心して出て来て。」

すると、建物の影から2つの靴の先がちらっと見える。

ユ「久しぶりだね――――――――――」

建物の影から2つの影が姿を現した。















ユ「ハルト。イレーネ。」















夜風でユモのワンピースの裾と、ハルトの黒髪、イレーネの薄紫色の長い髪の毛と、白いローブがなびく。

ハル「気づいてたのか・・・?」

ユ「うん。」

イ「いつ頃から・・・?」

ユ「酒場にいた時から。ハルトとイレーネったら、窓から覗いてるんだもん。」

ユモは笑顔で言う。だが、その笑顔は引き攣っていた。ユモは一度顔を伏せると、















ユ「私を・・・殺したいんだよ、ね・・・・?」















ハル&イ「!」

ユモに恨みのあるハルトとイレーネ。これまでに復讐する為ユモを殺そうとしたが、ハルトは全てグレイに邪魔され、イレーネは超魔法、ライジングシャイニーによって敗れた。

ユ「今は誰もいない。私を殺す、絶好の機会(チャンス)だよ。」

ユモは両手を広げた。そう。辺りには誰もいない。無防備な1人の少女を殺すのに対して、絶好の機会(チャンス)だ。だが、ハルトとイレーネは顔を伏せたままで何の動きも見せない。

ユ「2人共・・どうしたの?」

その2人の行為に疑惑を抱いたユモが首を傾げる。

ユ「さっきも言ったとおり、ここにはグレイも、他の妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔道士も、街の人達も、誰一人いない。私を殺」

ハル「違うんだ、ユモス。」

ユモの言葉を遮るようにハルトが口を開いた。

イ「私とハルトは、もう二度と、あなたにも、あなたの仲間にも手を出さない。」

ハルトの言葉に続くように、イレーネも口を開く。

ユ「えっ?」

ハルトとイレーネの言葉に、ユモは首を傾げる。

ハル「俺もイレーネも、海中の洞穴(マリーンケイヴ)に加入してから改善したんだ。」

イ「大丈夫。私達は、「もうユモスを恨まない。傷つけない。殺さない。」そう誓ったの―――」

ユ「・・・・・」

ユモは言葉を失った。

ハル「信じなくても構わない。何しろ、一度『闇』に染まった人間の言う言葉だ。信じられないのは当然だ。」

イ「立場は逆になったわ。今度はユモス、あなたが私とハルトを恨み、傷つけ、殺す番よ。」

ハル「俺達が言いたいのは、それだけだ。」

ハルトとイレーネはユモに背を向けて歩き出そうとしたその時―――――















ユ「信じるよっ!!」















ハル&イ「!」

2人が驚いて振り返ると、大粒の嬉し涙を流しながらも笑顔のユモがいた。




















ユ「ハルトもイレーネも、私の大切な友達だもん!恨む事も、傷つける事も、殺す事も・・・出来ないよっ!!」




















ハル「(変わらないな、ユモスは・・・)」

イ「(どうして、あんなに・・・優しいの・・・・?)」

ハルトとイレーネはユモに小さく笑い掛けると再び背を向けて歩き出し、闇の中へと姿を消した。ユモは右手で涙を拭うと、空を見上げた。金色に光り輝く月の周りを、色とりどりに輝く数え切れないくらいの星がクロッカスの夜空で瞬いていた。






























この時はまだ、誰も気づいていなかった――――――――――





6日後に、この街で起こる、予想も出来ない出来事の事を――――――――――





その出来事が、『絶望』、『憎しみ』、『闇』、『悪』、『恨み』、『残酷』、『悲惨』、『野望』、『欲望』、『死』の10拍子から成り立っている事を――――――――――





それと同時に――――――――――





運命の歯車が、逆回りしてしまった事を――――――――――





この時はまだ、誰も気づいていなかった――――――――――






























 
 

 
後書き
第167話終了ですっ!
リョウの推測は正しいのか・・・!?ユモ、ハルト、イレーネの因縁の関係は・・・!?6日後に起こる出来事とは・・・!?と、謎だらけのお話でした。
次回は大魔闘演舞2日目!2日目の競技パートは・・・えっ?(タワー)
それではまた次回! 
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