Element Magic Trinity
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想いの力
ナツとティアが、淡い光に包まれる。
「ドラゴンフォースと竜の双眼!?」
それを見たゼロは目を見開いて驚愕した。
2人は自分の今の状況を確かめるように掌を見つめる。
「この力・・・エーテリオンを喰った時と似てる・・・」
「楽園の塔の時・・・あれもこれだったのね」
「スゲェ・・・自分の力が2倍にも3倍にもなったみてえだ」
「・・・まさかこの私が、一族の力を使って戦うとはね・・・」
ティアが自分の手を見つめ、忌々しげに呟く。
(でも今はそんな事言ってられない。利用出来るものは全て利用してアイツを倒す)
ぎゅっと拳を握りしめる。
青い瞳に闘志と殺気が宿った。
彼女は目的の為なら手段を択ばない。
今の目的はニルヴァーナを止める事。その為ならば、一族の力だろうと何だろうとこの世の全てを利用する。
(滅竜魔法の最終形態!その魔力はドラゴンにも等しいと言われる、全てを破壊する力)
信じられないものを見るようにナツを見ていたゼロは、次にティアへと目を移す。
(世界を創造したというカトレーンの一族。その“巫女”と呼ばれる女だけが使用を許された星の竜殺しの力。全てを創り滅ぼす竜の力)
そこまで考え、ゼロの脳裏に2つの言葉が過る。
にたぁ、と邪悪な笑みを浮かべ、その言葉を脳裏で繰り返す。
(破壊・・・滅ぼす・・・)
破壊を好むゼロ。そのゼロにとって破壊とは何よりも好む言葉。
破壊と滅ぼすは結果として全てを“無”にする・・・。
「面白い」
ゼロが笑みを浮かべたまま呟く。
「これなら勝てる!」
「やるしかないわね」
ナツとティアはゼロを鋭く睨みつける。
そして―――――
「来い、ドラゴンとカトレーンの力よ」
「行くぞォ!」
新たな力を得た2人は、ゼロへと向かっていった。
最後の戦いが、今始まる。
3番魔水晶。
作戦決行まであと5分の時・・・ルーシィとハッピー、ルーは到着した。
「ルーシィ、ルー。大丈夫?」
2人についてきたハッピーが問う。
が、ルーシィはへたっと座り込み、ルーは立ってはいるが壁に凭れ掛からないと座り込んでしまいそうな状態だった。
「見えとか張ってる場合じゃないのに・・・『できない』って言えなかった」
声を震わせ、ルーシィは俯く。
その頬を涙が伝い、落ちる。
「もう・・・魔力が全くないの・・・」
ただ星霊を召喚しただけなら、消費はあるがそれなりの魔力は残っている。
が、エンジェルと戦った際、ルーシィはヒビキに与えられた知識により、超魔法『ウラノ・メトリア』を放っていた。
ウラノ・メトリアで全魔力を使い切ってしまったルーシィの魔力は既に空であり、ゼロにやられた傷も含めてとてもじゃないが魔水晶を壊せるような状態にはない。
そしてルーシィはティアのように蹴りで何かを壊せる訳でも、ナツのように拳で何かを壊せる訳でもない。唯一鞭があるが、それでは魔水晶は壊せないだろう。
「それでもウェンディ達のギルドを守りたい。俯いていたくない」
これだけの絶望的な要素が並びながらも、ルーシィは諦めない。
立ち上がろうと、力を込める。
「だからあたしは最後まで諦めない」
痛みを堪えながら壁を利用してルーシィは立ち上がろうとする。
すると、ずっと黙っていたルーが口を開いた。
「・・・ルーシィ」
「どうしたの?」
「一か八かだけど・・・僕の全魔力をルーシィにあげる」
よろよろと1歩1歩足を進め、ルーは微笑んでみせる。
だが、ルーシィは知っていた。
ルーの魔力も、1人を完全に回復させる事さえ不可能なほどに少ない事を。
今日だけで盾を張り、短剣を作り、翼を生み出し空を飛び、傷を治してきた。
元々多くないルーの魔力はそれだけの事でも、まともな回復さえ出来なくなるほどに減る。
「何言ってんのルー・・・ルーも魔力が」
「僕は大丈夫。大丈夫・・・だから・・・」
「ルー!」
ふらりと足を進め、ドサッと崩れ落ちる。
ハァハァと息をする表情は苦しそうで、辛そうで、どこか悲しそうで―――泣きそうだった。
「ルー・・・?」
慌ててルーに駆け寄ったハッピーが顔を覗き込み、呟く。
苦しそうに息をしながらも、ルーは口を開いた。
「・・・ウェンディとココロは育ての親が行方不明で・・・ギルドの人だけが・・・家族って呼べる人達なんだ・・・アランは解らないけど・・・ギルドの皆が、大切だって思ってる・・・」
ぐぐぐ・・・と無理矢理体を起こそうとし、バランスを崩して膝をつく。
「家族とか、大切な人達が消える時の辛さを・・・僕は知ってるから」
住んでいた村は滅びた。
村に帰っても、そこには跡地と多くの墓しかない。
自分の事を温かく迎えてくれる家族も、村に住んでいた人達も、もうルーに会う事はないし会える事もない。
だから、ルーは立ち上がる。
「諦めたらそれは死に繋がる・・・だったら、苦しい思いしたとしても、諦めたくない。皆が頑張ってるからとかじゃなくて、僕が頑張りたいから頑張るんだ」
力強く、笑う。
それは小犬と呼ばれる愛らしい笑みではなかったけれど。
「やろう、ルーシィ。意地でもあの魔水晶を壊そう・・・万が一の時は、銃を抜く」
「・・・うん」
2人は頷き合い、まずは立ち上がる事から始める。
が、痛みが邪魔をしてうまく立ち上がれない。
すると―――――――
「「時にはその想いが力になるんだよ」」
『!』
後ろから声が聞こえた。
どこかで聞き覚えのある声に3人が振り返ると――――
「「君の想いは僕達を動かした」」
「ジェミニ!?」
「エンジェルの星霊!」
そこにいたのは、黄道十二門の1体、双子宮の星霊ジェミニ。
ルーシィと戦い敗北したエンジェルと契約している星霊が、何故かここにいる。
ルーは慌てて近くにエンジェルがいないか目線を彷徨わせるが、どこをどう見てもその姿はない。
「「ピーリッピーリッ」」
声を合わせ、ジェミニは踊る。
その瞬間、ポンッと音を立ててジェミニは変身した。
―――――――ルーシィに。
「僕達が君の意志になる。5分後にこれを壊せばいいんだね?」
突然現れた思わぬ助っ人。
その登場にルーシィ達は涙を流して喜んだのだった。
金色の炎を纏ったナツが体当たりをする。
「フン」
それを鼻で笑いながらゼロはガードした。
その隙をつき、ティアが両手に金色の光を纏う。
「ハァァアアッ!」
それを勢いよく振り下ろす。
が、ゼロは余裕の笑みを浮かべたままそれを回避した。
ゼロが両手を振り上げる。
「ダークグラビティ!」
「ぐあぁぁああっ!」
「きゃああああっ!」
ゼロの両手から放たれた、重力の衝撃波。
ズガガガガッと音を立て、2人は最下層へと落ちていく。
その衝撃波によってニルヴァーナの最下層の床に大きく穴が開いた。
「んが!」
「っと」
ナツは床に勢い良く叩きつけられ、ティアは持ち前の身体能力をフル活用して綺麗に着地を決める。
一瞬顔を歪めたのは、着地の際に足へと来た衝撃が大きかったのだろう。
「危ねっ」
「あと数cmで落下ってトコかしら」
ナツの倒れるすぐ真横には大きな穴が開いていた。
そこからはワース樹海が見える。
あと少しナツが右にズレて落ちてたら、ワース樹海へ真っ逆さまだっただろう。
「っ上!」
「!」
2人を追うように、ゼロも落下してくる。
そして落下しながら魔法を放った。
それをナツは足から噴出した推進力でバック転の様に後ろに大きく跳んで回避する。
「ゼロ・スラッシュ!オラァ!」
壁を蹴ったゼロは真っ直ぐ2人へと向かい、常闇奇想曲を鞭のように振るって攻撃を仕掛けていく。
「チッ・・・星竜の翼撃!」
向かってきたゼロの攻撃をナツは飛んで避け、ティアは両腕を薙ぎ払って魔法をぶち壊そうとする。
だが魔法は壊れず、縦横無尽に辺りを駆け巡った。
「ティア!」
「了解!」
器用にその攻撃を避けていたナツがティアに声を掛け、その意味を知った・・・というより察したティアは頷いて見せる。
そして2人は同時に頬を大きく膨らませ―――
「火竜の・・・」
「星竜の・・・」
「「咆哮!」」
同時にブレスを放った。
2つのブレスが炸裂し小規模の爆発を起こす。
「!」
「っ来る!」
しかし、ゼロはほぼ無傷だった。
その状態でブレスを突っ切る。
ナツが目を見開き、ティアが表情を歪めた。
「でりゃああ!」
突っ切ってきたゼロは押し潰す様に高密度の魔力を2人目掛けて放つ。
「ぐっ・・・!」
「星竜の剣牙!」
押し潰されまいと踏ん張るナツ。
その魔力をぶった切るようにティアが両手から鋭い牙のような光を連続で放ち、魔力を切り刻む。
「ナイス!」
「気を抜かない!」
ナイスタイミングの攻撃にナツが言うが、返ってきたのは先ほどの鋭い牙のような光にも負けない鋭い言葉だった。
だが、確かにティアの言葉の通り。
「ダーク・デリート!」
続いて放たれたのは複数の魔法弾だった。
散弾の様にバラバラに放たれる。
それを視界に入れたティアは再び両手を構えた。
「星竜の剣牙!」
負けじとこちらも鋭い光を放っていく。
散弾には散弾を。
次々に光と魔法弾が相殺し、消えていく。
「ナツ!」
ティアの背後から飛び出したナツが右拳に炎を纏う。
目の前に迫り、炎の拳を振るった。
対するゼロも、魔力を纏った拳で迎え撃ち、2つの拳が直撃する。
「あと3分」
2番魔水晶に到着したグレイは呟いた。
「ナツ・・・ティア・・・」
5番魔水晶にいるエルザは2人の勝利を信じていた。
「でけぇなァおい・・・ま、やりがいがあるってモンだ、面白れぇ」
「ナツさんとティアさんは大丈夫でしょうか・・・」
「あの2人は大丈夫だ」
6番魔水晶とご対面したアルカは小さく舌なめずりをし、アランは不安そうに呟く。
「ティア・・・お前はお前の目的を果たせ。こっちは俺が片付ける」
ティアの代わりに7番魔水晶を破壊する事になったヴィーテルシアは相棒を信じて目線を上げた。
「どうやらその力・・・まだ完全には引き出せてねえようだなァ!」
「ぐはぁっ!」
直撃した2つの拳。
が、拳というのは右と左と2つある。
左拳をナツの拳とぶつけているゼロが右拳を振るった。
まさか右拳が来るとは思っていなかったナツは吹き飛ばされる。
「チッ・・・星竜の・・・!」
「常闇奇想曲!」
「っきゃあああああああああ!」
それを見たティアは地を蹴って飛び出す。
が、ティアが魔法を使おうとした瞬間、ゼロが放った常闇奇想曲がティアを容赦なく襲った。
「つ・・・着いた~!」
やはりブタの丸焼き状態の一夜は必死に体を動かし、4番魔水晶に辿り着いた。
「見せてやるぞ!我が力の香りを!」
「こんなモノか!?ドラゴンの力は!カトレーンの力は!太古の世界を支配していたドラゴンの力は・・・この世界を創造したというカトレーンの力はこの程度かー!」
「がはっ!ごあっ!」
「くっ!あぐっ!」
叫びながら、ゼロは足を振るう。
時に踏みつけ、時に蹴る。
倒れる2人に、何度も何度も容赦なく攻撃を決めていく。
「力を・・・もっと“天”の力を・・・」
「グラウアッシュ・・・力を貸して・・・」
ウェンディは天を喰らい、ココロは灰を喰らっていく。
「オレは六魔将軍のマスターゼロ。どこか1ギルドのたかが兵隊とは格が違う」
「うう・・・うぐ・・・」
「はぁっ・・・兵隊とは、言ってくれるじゃない・・・あぐっ」
息を切らしながら、2人は立ち上がろうとする。
「テメェ等ごときゴミ2人が相手出来る訳ねーだろうが」
ゼロは笑みを浮かべる。
だが―――ナツはそれに対し、ゆっくりと呟いた。
「2人じゃねえ・・・」
「ん?」
「伝わってくるんだ・・・」
ゆっくりと、立ち上がる。
金色の炎を纏って、痛みを堪えて。
「みんなの声・・・みんなの気持ち・・・」
その隣で、ティアも無言で立ち上がる。
瞳には揺るがない闘志と殺気、強靭な意志。
彼女もまた、連合軍の想いを背負っている。
「オレ達だけの力じゃねえ・・・」
ナツがウェンディ達を救い、エルザの解毒が出来たのは何故だ?
それは、グレイとティアがレーサーの足止めをしてくれたから。
「アイツ等の想いが・・・」
イカダに乗せられ滝壺に落ちたのにナツが無事なのは何故だ?
それは、ルーシィとルーが見捨てず助けてくれたから。
ナツがコブラと戦えたのは何故だ?
それは、毒に苦しみながらもハッピーが飛んでいたから。
「オレ達を支えて・・・」
大爆発を喰らいながらもナツが立っているのは何故だ?
それは、ジュラがナツ達を守ってたった1人で爆発を受けたから。
「オレを!」
「私を!」
コブラの毒を喰らい乗り物酔い状態だったナツが救われたのは何故だ?
それは、ウェンディが解毒の魔法+トロイアを掛けてくれたから。
付け加えると、解毒したのに苦しむナツに戸惑うウェンディにティアが乗り物酔いを教えたから。
「今ここに!」
「この場所に!」
この魔水晶のある部屋にいるのは何故だ?
それは、ヒビキが少ない魔力を使って念話を繋げ、ニルヴァーナを止める方法を伝えたから。
「「立たせている!」」
そして・・・2人がドラゴンフォースと竜の双眼を使用しゼロと戦えるのは何故だ?
それは、ジェラールが自分の全魔力である咎の炎と罪なる星空を与えたから。
全ては誰かが支えているから繋がる。
そして2人は―――――――力の限り、叫んだ。
「倒れる訳にはいかないのよ!!!!!私達の勝利を信じるバカ共の為に!!!!!」
「仲間の力が、オレ達の体中を巡っているんだ!!!!!」
金色の炎と、星々の輝き。
炎と光を身に纏い立ち上がったナツとティアはゼロを睨みつける。
「粉々にするには惜しい者達だがもう良い、楽しかったよ」
それに対し、ゼロは笑みを崩さない。
「貴様等に最高の“無”をくれてやろう。我が最大魔法をな」
魔力を纏った両腕を、円を描くように動かす。
不気味な笑みを浮かべ、ゼロは言い放った。
「「滅竜奥義・・・」」
ナツは両腕に金色の炎を纏う。
ティアは両手に金色の光を纏っていく。
そして―――――――
「紅蓮爆炎刃!!!!!」
「グランドクロス!!!!!」
「ジェネシス・ゼロ!!!!!」
3人それぞれの最大魔法が、放たれた。
「あああああああっ!」
「撃ち砕けえええええええっ!」
「消えよ、“無”の彼方へ」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
ティアの放った滅竜奥義「グランドクロス」ですが、名前はPSPのソフト『ポータブルギルド2』から使わせてもらいました。星々の光を収束し相手に放つ、という魔法です。ゲームでは。
こちらでは名前は一緒ですが、魔法の形は違いますね。
イメージ的にはシェリアの滅神奥義『天ノ叢雲』でしょうか。星の光を竜巻のようにし相手に放つ・・・あれ?結果として星々の光を収束し相手に放ってる?
感想・批評、お待ちしてます。
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