神器持ちの魔法使い
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フェニックス
第13話 説教
「……僕がここまで来てようやく気配に気付くなんて……」
いつものようにオカルト研究部の部室がある旧校舎へアーシアと木場の三人で向かっていた俺こと兵藤一誠は部室前に立った木場が急に顔を強張らせたことに疑問を持った。
何かあんのか?そう思ったけど、とりあえず部室の扉を開けた。
……げっ!
見覚えのある銀髪のメイドが目に入った。
昨日の夜、裸の部長が部屋に入ってきたかと思うとそれを追うように来たのがこのグレイフィアさんだ。
いきなり下賤扱いされ、部長の眷属だと、赤龍帝の籠手を宿していると知った途端に品定めされるような目で見られた。
結局昨日のことはわけのわからないまま部長とグレイフィアさんの間で話が勝手に進んでいき帰って行った。
よくわからなかったが、おっぱいごちそうさまでたっ!
すぐさま視線を外したのがけど、部長は見るからに不機嫌そうだし、朱乃さんのニコニコ顔も雰囲気が冷たい。
そんな二人から距離を取るように小猫ちゃんは椅子に座っている。
「全員揃ったわね」
話があると言われ、最後に来た俺達はいつもの位置につく。
多分、昨日のことに関係するんだろう。
部長が何かを言おうとした瞬間、うお!? 部室の魔法陣が光り出した!
「―――フェニックス」
木場のつぶやきが聞こえた。
部室の床に描かれたグレモリーの魔法陣が形を変え、見たことのない魔法陣になった瞬間にそこから炎が噴き出した。
熱っ……くねえ?
「ふぅ、こっちに来るのは久しぶりだ」
炎の中から現れたのは赤いスーツを着崩した一人の男。
ワイルドな風格でチャラそうな感じだ。
「よう、会いに来てやったぜ。愛しのリアス」
「……呼んだ覚えはないわ」
射抜くような視線を向ける部長。
うわっ、部長の後ろにオーラが見える、マジで不機嫌度MAXっぽい。
男はそんな部長を軽く流して、今度は小猫ちゃんの方を向いた。
「……お久しぶりです、ライザー様」
「お前も元気そうだな、小猫」
ん? 急に表情が緩んだ?
そう思ったけどいつの間にかチャラさが戻っていた。
気のせいだったのか? というか!
「おい! お前は誰なんだよ!」
「あ? リアスや他の眷属から聞いてないのか?」
「言う必要はあるのかしら」
部長がキッパリそう言うと呆れた表情なる男。
「兵藤一誠様、この方はライザー・フェニックス様。古い家柄を持つ純血悪魔で、リアス様と同じく上級悪魔であらせられます。更にはリアス様の婚約者でもあります」
「な、なんだって!?」
グレイフィアさんの言葉に驚く。
こんなチャライやつが部長の婚約者!?
つか、あの小猫ちゃんがこいつに挨拶して、返ってきた労りの言葉はなんなんだ?
「じゃ、じゃあ小猫ちゃんがコイツに声をかけたのは……?」
「おいおい、それすらもリアスから聞いていないのか。悪魔になったばかりとはいえ、眷属のことを伝えないのはどうかと思うぞ。……それともなにかリアス、これもいう必要がなかった、とでも言うのか?」
「……言う機会がなかったのよ」
は? いったいどういうことだ?
今度はあのヤローが明確な非難の目を部長に向ける。
小猫ちゃんに秘密でもあるのか?
「……私は完全にグレモリー先輩の眷属ではないのです」
「そう、なのか?」
話した本人である小猫ちゃんを見ると、頷いた。
「……昔いろいろありまして、ルシファー様に助けけいただき、その後フェニックス家に保護されました。ルシファー様にグレモリー先輩の眷属にならないかと言われまして、いつでも眷属を抜けても構わないと言ってくれましたので、そう契約しました」
「何でそんな条件を……」
「……私は未来の主を決めていますから」
「それってまさか……こいつなのか!?」
指を突き付けて睨み付けてみるも、様子が変だ。
ヤローは苦笑のまま首を横に振った。
「俺じゃねえよ。まあ、フェニックス家に属しているといえばそうなのかもしれないがな」
「イッセー先輩も知っている人です―――秋人先輩です」
……は? 秋人?
「小猫ちゃん? 秋人ってまさかあの来ヶ谷秋人なのか?」
「そうです」
「はいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
閑話休題。
小猫ちゃんのことや秋人のことに話が大きく逸れてしまったので、グレイフィアさんの一言で元々話し合われていた部長の婚約に戻された。
とはいえ、話は平行線のまま。
どちらも主張を曲げずいつまでたっても話がまとまらない。
ならばとグレイフィアさんがひとつの提案を出した。
「レーティングゲームですって?」
「はい。このような状況なると容易に考えられましたので、あとはお二人のご意見次第です」
「……それはもう決まっているように聞こえるわ。別に構わないわ、ライザー、あなたをこの滅びの魔力で消し飛ばしてあげるわ!」
やる気満々の部長。
魔力だしてるし、なんか威圧感が半端ない。
ヤローも受けるみたいだ。
ふと、ヤローが俺達を見渡した。
なんだよ。
「雷の巫女に魔剣創造に小猫。悪魔に転生したての赤龍帝とシスター。潜在能力は確かに高いだろうがそれだけだ。これで勝つつもりか、リアス?」
「……なにが言いたいのかしら?」
「ハンデを付けてやると言ってるんだ。こちらは僧侶一つ以外のフルメンバーに加えてレーティングゲームでそれなりに成績を収めている。それに比べお前はもう一人の僧侶はわけありで参加できず、戦車と騎士は未だ空席だろ」
そういうと床が再びフェニックスの陣を描いて光り出す。
そしてその中に人影が浮かぶ。
「紹介しよう、俺の眷属だ」
光が収まるとそこにいたのは14人の美女に美少女……だとぉ!?
これが……ハレーム……クソッ、俺の、男の夢をこいつは実現してるっていうのかよ!!
「……お、おいリアス。なぜ赤龍帝が急に涙を流し始めたんだ……?」
心の汗でまともに顔が見えねえが、声からでもわかる。
マジで引いてる。
でも知ったこっちゃねえ!
すると部長がため息交じりに答えた。
「この子の夢がハーレムなのよ。あなたがそれを実現してるからいろいろ思うところがあったんじゃないかしら」
「ライザーさま、この人きもーい」
「きもーい」
「お前ら落ち着け。本当のことでも本人目の前にあまり口にしてやるな」
なだめるように双子の眷属を頭を撫でながらなだめる。
何かを思いついたようにヤローの女王を隣に呼び寄せた。
そして
「んなっ!?」
「お前にはこんなこと一生できないだろうな、ん?」
見せつけるかのように女王と濃厚すぎるキスするヤロー。
アーシアなんてあまりのエロさに真っ赤だ!
何てうらやま、ゲフンッ、けしからん!
「うるせぇ! ブーステッド・ギア!!」
赤龍帝の籠手を突き付ける。
「テメー、部長と結婚する気でいるんだろ! だったら他の女といちゃいちゃしてんじゃねえよ!! 」
「ああ? ハーレム志望の赤龍帝くんはこういうのに憧れてるんじゃないのか?」
そうです、その通りだよ!
けどな!
「部長の下僕として許せるか! 所構わず子種まき散らしてんじゃねえよ焼き鳥野郎!」
「……おい、リアス。下僕の躾がなってないんじゃないのか?」
知らないわといった部長は何も言わない。
小さくため息を吐くヤローの目には失望が写ったように見えた。
それに対してもイラついてヤローに殴りかかろうとした瞬間。
「……啖呵を切るのは構わないが、相手を考えろ」
一瞬にして部室の空気が変わった。
何だよこれ、体が震えて言うこと聞かねえ!
部長やみんなも俺と同じような状況になっている。
「お前が輝かしい功績を上げればリアスの功績に。失望させる行動はリアスの恥に。お前のすべてがリアスの評価につながる。そこらへん、ちゃんと考えるんだな」
「ぐッ!?」
「ライザー様、その辺でお納めください」
グレイフィアさんの一言にため息交じりに答えたら重圧が消えた。
「……申し訳ありません」
「わかってもらえれば結構です。では、ゲームの詳細に移らせていただきます。まず―――」
グレイフィアさんが話しているが全然耳に入ってこない。
クソッ、啖呵きったのに何もできなかった。
いや、させてもらえなかった。
俺が弱いせいで部長にもみんなにも迷惑をかけちまった。
なんて……なんて情けないんだ俺は……ッ!
結局、最後はグレイフィアさんが話をまとめて話し合いは終了した。
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