| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九十四話 憂いが消えてその五

「ところで空にいる間にも食べたけれど」
「お腹が空かれましたか」
「どうも。今何か食べられるかな」
「後でお弁当を売る人が来られると思います」
「売り子が?」
「はい、電車の中を行き来しておられるので」
「じゃあその人に頼んで」
「何かお弁当を買われて」
 そしてだというのだ。
「召し上がられて下さい」
「日本の料理だったね」
 今度は弁当についてだ、こう言ったアポロンだった。
「弁当というのは」
「お料理の一種ですが少し違います」
「違うとは?」
「お料理が幾つか箱の中に入っていまして」
「軍のレーションの様なものかな」
「そうです、そう思っていいです」
「レーションなら知っているよ」
 欧州の各国の軍、当然ながらギリシア軍にもあるからだ。アポロンもそう聞くとすぐに頭の中で理解出来た。
「成程な、ああしたものだね」
「ですが保存食ではなくです」
「その場で作ったものな、新鮮なもので」
「それがお弁当です」
 豊香はこうアポロンに話した。
「そして日本では列車の駅、駅によってあったりなかったりしますがお弁当がありまして」
「それはまた面白いね」
「駅弁といいます」
「じゃあこの列車の中では駅弁が出るのかな」
「そうです」
 まさにその通りだというのだ。
「列車の中にあるものはそれです」
「そう、それじゃあ」
「それでは駅弁をですね」
「貰うよ」
 アポロンは期待している笑顔になり豊香に答えた。
「是非共ね」
「はい、それでは」
 こうした話をして暫くしてだった、実際に売り子が来た。その前に色々なものを入れた車を置いて押している。
 その彼女を見てだ、アポロンは女神達に問うた。
「あの可愛い娘が」
「そうよ、お弁当を売っている」
「売り子だね」
「それで貴方は何を食べるのかしら」
「さて、駅弁といっても」
 どうかとだ、ここでアポロンはこう言うのだった。
「色々あるみたいだしね」
「はい、本当に駅弁の数は多いです」
 聡美も兄に話す。
「日本の駅弁というものは」
「日本独特のことかな」
「そうです、駅弁もまたです」
 それもまた然りだというのだ。
「日本独自のものです」
「日本独自の食文化だね」
「そうなります」
 まさにだというのだ、
「よし、それじゃあね」
「はい、今からですね」
「ちょっと聞いてみるよ、その売り子の娘にね」
 こう言ってだった、アポロンは早速売り子に彼自ら声をかけた。そのうえでこう彼女に対して尋ねたのだった。
「お勧めの駅弁は何かな」
「私のお勧めのですか」
 可愛い顔立ちの売り子の娘が早速応える。
「駅弁ですか」
「うん、何かな」
「そうですね、北海道の」
「そこの駅弁だね」
「海鮮駅弁はどうでしょうか」
 これが彼女のお勧めの駅弁だというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧