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久遠の神話

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第九十四話 憂いが消えてその三

「時代が進まないと」
「このお茶にしましても」
「他の口にするものも」
「人は進歩してね」
 そうしてだというのだ。
「次々に美味しいものを出していくわね」
「はい、実に」
「私達が驚くまでに」
「人を侮るとね」
 どうなるかともだ、智子は言った。
「私達が痛い目に遭うわ」
「そうなりますか」
「私達が」
「ええ、そのことは貴女達もわかってきていると思うわ」
「そうですね、私達は神話の頃から彼等と共にいますが」
「常にですね」
 二人も智子の言葉に応えて言う。
「驚かされます」
「あらゆることに」
「そうね、私もね」
 智子もだというのだ、アテナである彼女も。
「神話の頃から彼等には驚かされてばかりよ」
「持っている力は私達よりも弱いですが」
「心は変わらなくてね」
 聡美にも言う。
「むしろ力が弱いからこそ」
「必死に何かをして」
「果たすわ」
「その果たすまでがですね」
「凄いものがあるのよ」
 そのことを見て驚かされるというのだ。
「彼等はね」
「そうした人間を侮るとですね」
「私達が痛い目を見るわ」
 神である彼女達がだというのだ。
「神と人の違いはね」
「老いず死なないことと力が強いこと」
「それだけよ」
「たったそれだけですね」
「心は同じだから。むしろね」
「その力の弱さをですね」
「人は補おうとするから」
 それで必死に闘う、あらゆることに。
 その人間の強さ、智子達はそのことを強く意識しながらそのうえで話すのだった。そうした話をしてそれからだった。
 智子は紅茶を飲みつつだ、二人に言った。
「来たわ」
「はい、お兄様がですね」
「この空港に降りられましたね」
「ではいいわね」
 微笑んでだ、智子はまた二人に言った。
「今からね」
「はい、それではですね」
「今からですね」
「会うことになるわ、彼と」
 そのアポロンにだというのだ。
「医療の神とね」
「お兄様がおられて助かりました」
 聡美はもう中田の家族が彼女の兄によって救われることを確信してそのうえで明るい笑顔で言うのだった。
「本当に」
「そうね、彼が医療の神でもあってね」
「私は医療については知りません」
 それを司っていないからだ、神は司っていないものに対しては何も出来ない。このことについては努力すれば得られる人間とは違う。
「ですから」
「ええ、私もよ」
「お兄様がいてくれてですね」
「助かるわ、これでまたね」
「セレネー姉様をですね」
「お止めする為に一歩進めるわ」
「そうなりますね」
 聡美は智子の言葉に明るい顔で応えた。 
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