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万華鏡

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第五十七話 全てが終わってその十一

「西武もね」
「またシリーズで会いたいわよね」
「ええ、というかシリーズにも出たいし」
 阪神がだ。
「阪神も変わったから」
「西武もね」
「変わるのね、本当に」
「何でもね」
 万物がそうなのだ、人間も野球チームも。
「だから琴乃ちゃんもね」
「いい方に変わっていかないと駄目なのね」
「そう、頑張ってね」
 母は微笑んで娘に告げた。
「休んでまた起き上がってね」
「シリーズね、応援するわ」
 阪神をだというのだ。
「それでハロウィンのことも聞いてね」
「頑張ってね」
「テストもあるしね」
 ここで琴乃は自分から言った。
「そっちも頑張って」
「テストは大丈夫なの?」
「平均点はね」
 いけるというのだ。
「大丈夫だと思うわ」
「そう、けれどね」 
「油断するなっていうのね」
「そう、勉強も油断したら」 
 それでだというのだ。
「大変なことになるから」
「落ちるからね、油断したら」
「特に琴乃ちゃんの場合は」
 自分の娘だからよく知っている、それで言うのだった。
「調子の波が激しいからね」
「学校の成績はね」
「ちょっと油断したらね」
 それでだというのだ。
「一気に落ちるから」
「自分でもわかってるわ、そのことは」 
 琴乃も自覚はあった、こうしたことを自覚出来る娘なのだ。
「だからね」
「そう、油断しないでね」
「そっちも気を抜かないで」
「というかすぐにそっちはね」
「気合を入れてよね」
「しないとね」
 勉強もだというのだ。
「文武両道よ」
「私軽音楽部よ」
「じゃあ文楽両道よ」
 武ではなく楽になるというのだ、言うまでもなく音楽の楽だ。
「それでいきなさい」
「文楽ね」
「そう、学校の勉強も部活もね」
 その両方もだというのだ。
「やるからにはね」
「気を抜かずによね」
「そう、やるのならやる」 
 母は自分の信条も話した。
「そしてやらないのならね」
「やらないよね」
「徹底的にやらないと」
「学校のお勉強も?」
「悪いなら徹底的に悪い方が気持ちいいでしょ」
 尚琴乃はそれなりにいい。八条学園のレベル自体がそれなりだ。その中でもそれなりにいい成績なのである。
「そうでしょ」
「徹底的に悪いって」
「そう、どうしようもない位にね」
「全く勉強しない人みたいに」
「噂では清原がそうだったのよ」
 学校の成績は極めて悪かったというのだ。
「授業中は寝てばかりだったらしいから」
「そうなれっていうのね」
「勉強をしないのならね」
 それこそだというのだ。
「もうそこまでなるのよ」
「ううん、清原みたいになることは」
 嫌いだからだ、このことは。
「嫌よ」
「そうよね、それじゃあね」
「やれっていうのね」
「やる気が少しでもあれば」
 そのやる気を増やしてだというのだ。
「やるのよ。コツは教科書なり参考書を何度も繰り返して読んだり問題を解いていくのよ」
「それもお母さんが昔から言ってることね」
「お母さんそれで大学もストレートで入ったからね」
「そう、八条大学にね」
 言うまでもなく琴乃が通う八条学園高等部の上の大学である。
「そこにね」
「私もあそこ目指してるし」
「だったらね」
 それならというのだ。 
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