少年少女の戦極時代Ⅱ
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オリジナル/未来パラレル編
第14分節 ゴハンは大事
咲は階段を駆け上がり、チーム鎧武の……もといガイムグループのガレージに飛び込んだ。
「おつかれさまですっ。は~」
「お疲れ様。走って来たの?」
ガレージには晶しかいなかった。咲は息を切らしながら肯いた。
紘汰とザックはいない。晶に所在を尋ねると、外に仕事に行った、と答えられた。
「インベス退治? じゃああたしも」
「ううん。今日はただの土地の調査だから大丈夫よ」
咲はほっと息をつき、自分の(だと晶に教えてもらった)デスクに座った。
ガイムグループの仕事には、インベス退治とヘルヘイムの植物駆除の他にも、不動産の手伝いのようなものがある。
平たく言うと、インベスの相手はアーマードライダーしかできないから、売地にインベスが隠れ住んでいないか、ヘルヘイム汚染が進んでいないかを、業者の代わりに調べるのだ。
(今インベスが出たら行けるのあたしだけね。気を引き締めなくちゃ)
ナップザックの中身を確かめる。ちゃんとある。ドライバーと変身用のロックシード。
ほんの少しの安堵に、デスクチェアの背もたれに背を預けたその時――
きゅう、と咲の腹が大きく鳴いた。
「――――」
「――――」
「ああああのっ、今のは、えと、だから、空気圧、そう空気圧です! 急に姿勢を変えたせいでおなかに溜まった空気が」
「咲ちゃん、今日のお昼は食べた?」
「……食べてない、です」
通用しなかった。さすが、この会社の縁の下の力持ちな最年長女性。
「昨日は?」
「た、食べてません」
「おとといは?」
「食べてません……」
すると晶は彼女のバッグからラッピングされた塊を3つ取り出し、それを咲の席まで持ってきた。
塊は、おにぎり、だった。
「紘汰がね、きっと今日も咲ちゃんは食べて来ないだろうから、何か作ってやってくれって。咲ちゃん、気づいてなかった? 頬、こけてる」
晶が柔らかい手つきで咲の豊齢線をなぞった。自分ではよく分からない。21歳の自分を直視できなくて、鏡を見るのを最低限に留めたのが良くなかったか。
――職を持っている、仕事をしている、と意識するだけでも12歳の精神になってしまった咲には苦痛であった。
結果、体は現実への拒否反応のように食事を受け付けなくなった。昼食を抜いて出勤するのが当たり前になっていた。
――その変化を、紘汰は気づいてくれた。
「ずっと食べてないなら、最初はこのくらいがいいかと思って。食べられそう?」
紘汰の姉の厚意を無下にするなど咲にはできない。気は乗らなかったが、食べられると答えた。
「いただき、ます」
「はい、召し上がれ」
咲はおにぎりの端をちびっと齧った。塩と米の甘味が舌に広がって脳天まで突き抜ける。二口目、咲はおにぎりにかぶりついた。食べられる。咲は三口目でさらにおにぎりを頬張った。
ちゃんとした食事をしたのが久しぶりに感じられた。
後書き
ストレスで過食に走るか拒食に走るか。咲は後者の気がしての描写です。
そりゃ12歳でいきなり会社放り込まれたら辛いですよ重いですよ飯も食いたくなくなりますよ。ちなみに私は新卒4か月目で白米以外食べれない症状に陥りました。ごはん以外は食べても吐くんです。その時の経験を参考に書かせていただきました。
みんなご飯は大事だぞ! 食える時に食え!
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