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一方通行恋愛

作者:恋影
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月と月

 
前書き
見てください!

面白いかどうかは保証できませんが(笑) 

 
好き。貴方がとても。苦しい程に。

だけど、貴方はあの子が好き。
あの子も貴方が好き。

・・・・ああ、私の恋は一方通行。





いつからだろう。
アイツを、銀時を一人の男として見てしまったのは。
自分は女を捨てた身でありながら、女としての感情を抱いてしまった。

自分は素直じゃない。可愛くもない。女らしくもないし、茶だって汲んだことも無い。
良いとこなしだ。

・・・・奴の惚れた女とは違う。

奴の惚れた女は、可愛らしく、女らしく、ちょっと素直じゃない。だがその女の淹れた茶は美味いらしく、銀時は絶品だとか言っていた。

悔しい。上手くいかないでくれ。
・・・・自分を見てくれ。

そんな最低な感情が、次々と浮かび上がってくる。

自分に嫌気がさし、はあ、と溜め息を一つつく。

夜空に浮かぶまん丸い月を見上げ、月詠は煙管を吹かした。

「・・・・奴の惚れた女は太陽の様な女じゃ。奴は、月に照らされるより太陽に照らされる方が良く似合う。

銀時も月の様な男じゃ。月と月が重なる事はありんせん。

・・・・最初から、無駄じゃったんじゃ」

ツー、と傷の上を、一筋の涙が流れていく。

何を泣いている?

ごしっと涙を拭い、もう一度月を見上げた。

「・・・・終わりじゃ。奴を想うのは。わっちは、百華の頭。死神太夫」

そう言い聞かせるが、全く無駄。涙は溢れるばかり。

ああ、会いたい、銀時。会いたい、会いたい・・・・。銀時、会いた--

「月詠?」

ビクリと肩が揺れた。
聞き慣れた低い声。

「ぎ、銀時・・・・?」

何故個々に、とわざと冷たく言い放つ。
本当は嬉しい。

「いやよお、俺の優しい彼女がオメーにな、会いてえっつーんだ」
「わっちに・・・・?」
「あー、俺いっつもオメーの話してたからさ。悪ィな、こんな遅くに。明日はどうも予定が合わなくて」
「そうか。気にするでない」
「・・・・サンキュ。おーい、入っていいぜー」

障子に映っていた華奢な影がゆらりと動く。
しゃなりしゃなりという音が合うような綺麗な歩き方。高く結んだ髪、白い簪。美しいピンクの着物。凛々しい表情。

「紹介するわ、コイツが俺の彼女の志村妙。新八の姉貴な。

お妙、コイツが月詠」
「ど・・・どうも」

煙管を口から放し、お妙の近くに歩み寄った。
見れば見る程美しい娘だ。
 
「貴方が月詠さんでしたか。私はお妙です。

銀さんから良く聞いていますよ。俺の知っている女じゃ一番良い女だ、と。

酷くないですか? 彼女がいるくせに、他の女性が一番良い女だなんて」

失礼しちゃうわ、とクスリと微笑む。
美しい。

「そ、そうなのか」

カアー、と顔が赤くなる。
嬉しい、と素直に喜べない自分が嫌になる。

「お妙、誤解しないでよ。恋愛的な意味じゃないから。

俺の一番は永遠にお妙だから」
「さあ、どうだか」

チクリ、と胸が痛む。

壊したい、この二人を・・・・。

「・・・・のう」

壊したい・・・・。

あ?と顔をこっちに向ける銀時。

「・・・・幸せにな」

壊せ、ない。壊したいのに--

「サンキュー・・・・お前こそ、幸せになれよ」
「ああ、もちろんじゃ。お妙、修羅の道になると思うが、この不器用で馬鹿な銀時を、一番側で支えてやってくれ」

お妙は一瞬驚いた様に眼を見開いたが、すぐに
にっこりと微笑み、

「勿論です。浮気なんてしたらぶっ殺しますから」

なんて言っていた。

「銀時も・・・・女は兎じゃ。寂しいと死んでしまう。デリケートじゃしな。

わっちは女を捨てたからわからんが、サプライズやらが好きらしい。

たくさん話して、たくさん喧嘩して、幸せになりなんし」

ああ、と銀時からの短い返事が聞こえ、また煙管に火を付けた。

「・・・・ぬし、籍を入れてもヤンチャする気じゃろう?嫁さんを泣かせるでないぞ」
「泣かせねーよ。まあ・・・・ヤンチャは控えるけど、巻き込まれたときゃあな・・・・」

仕方ねえよ、とボソリと呟く。

全く、仕方無い奴だ。

「愛想尽かされても知らぬ! 少しはしっかりしなんし!」
「尽かされねーよ!」

これからも・・・・このままでいたい。
変わらぬまま。

「じゃあわっちはそろそろパトロールの時間じゃ」
「じゃー終わったら電話しろよ。三人で飲もうぜ」
「いや、すまない。パトロールが終わるのは大体深夜一時くらいじゃ。そんな遅くに危険な街、吉原に二人をブラブラさせるわけにはいかぬ」

そうか・・・・と銀髪をボリボリと掻く銀時を横目に、ふうと息を吐く。
すると、今まで黙っていたお妙が口を開いた。

「じゃあ銀さん、今日はゆっくりお二人で飲んできてくださいな。

最近全く休んでないでしょ? たまにはゆっくりしてきてください」
「でも・・・・」

月詠も口を開いた。

「良いんです。確かに月詠さんは私より胸が大きくて、美人だし・・・・不安でもありますけど。

さっき言ったでしょう? 浮気なんてしたらぶっ殺すって。それに--信じてますから、ね」
「・・・・!」

月詠は眼を見開いた。

なんと良い女だ。銀時には勿体無い。

「じゃあ・・・・なるべく早く帰るわ。まあ送ってく。月詠、パトロール終わったら連絡くれ」
「わ、わかった」
「じゃーな」







ガラリと万事屋の扉が開く。
お妙が居るはずだ。多分、あの餓鬼共も。

まあ理由は言ってないが、一応同棲している。
新八は不審がっていたが。

ただいま、とポツリと呟いてリビングのドアを開けた。

もう三時だ。いくらお妙でも、もう寝ているだろう--

「お帰りなさい」

不意に聞こえた、柔らかい声。

「えっ? お前起きてたの」
「ええ、当たり前でしょう?」
「・・・・あのさ、お妙」
「はい?」
 
いきなり真面目な顔付きになる。お妙はにっこり微笑みながら振り向いた。

「さっき、巻き込まれた時は仕方ねえっつったけど--」
「待ちます」

銀時の言葉を遮り、お妙が口を開いた。

「待ちます。待ってます。何年経とうと、何十年経とうと、私は貴方を待ち続けます。

そして・・・・貴方が帰って来た時には、笑って貴方を迎えます」

銀時は眼を見開いた。
自分より五、六歳下なのに自分よりしっかりしている。

「やっぱり俺の女だ。本っ当言い奴・・・・」
「あら、そんなの前から知ってたでしょ」
「そーいうトコも流石です・・・・」

つい敬語になる銀時。
きゅ、とお妙が銀時を優しく抱き締める。

銀時はお妙の腕の中で眼を瞑った。







月に背を向け、月詠はふー、と煙を口から出した。

そっと傷を撫で、月を見上げる。
そして煙管を口元に運んだ。

「月は・・・・幸せになれぬのか?」

ポツリと出た言葉。

「わっちは・・・・奴に本気だったんじゃ。もう他の奴なんて好きになれぬ」
「月詠姐ー!!」

ビクッと肩を震わす。

「清太!? こんな遅くに何をやっとるんじゃ!」
「だって月詠姐遅いんだもん・・・・」

そうか・・・・心配されていたのか。

「ありがとう、清太」
「ヘヘッ。オイラ将来、月詠姐を嫁にするんだー!」
「ほう、それは面白い。楽しみじゃな」
「相手にしてないだろ! 本気だからねっ」

真剣な清太の顔に、少しドキリとする月詠。

「月は・・・・幸せになる。
きっと・・・・きっとだ。」
「清太!? さっきの話聞いてっ・・・・」
「まあまあ気にしない気にしない! 月詠姐にはオイラがいるだろ?」
「ふふ、まあそうじゃな」







「朝です銀さん」
「んあー?」
「今日お仕事あるんでしょ?」

パッチリと眼を見開いてガバッと起き上がる銀時。

「やっべ!」
「全く・・・・。じゃあ気をつけて行ってきてくださいね」

銀時はふっと微笑み、お妙の頬にキスをする。

「行ってきますのチュー」

お妙は顔を真っ赤にしている。

やり過ぎたか?と口を開こうとした時、チュッと短いリップ音がする。

「行ってらっしゃいのチュー・・・・ですっ」

一方通行だった月詠も、幸せになれそうで。幸せな銀時とお妙は、互いに毎日微笑み合う。

'志村妙'が'坂田妙'に変わるのは、


もう少し先のお話し-- 
 

 
後書き
どうでしたか? 面白いと言って頂けたら幸いです。 
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