Element Magic Trinity
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火竜と灰竜、そして毒
「くっそー、邪魔だなアイツ」
「チームワークならオイラ達だって負けないよ」
「くくく」
起動したニルヴァーナを止めようと、操縦するブレインのいる王の間へと飛んだナツとハッピー。
が、その間に六魔将軍のコブラと相棒の毒蛇キュベリオスが立ちはだかる。
「コブラ、奴を始末しろ」
「あいよ!キュベリオスのエサに丁度いい!」
ブレインからの指示にコブラはキュベリオスと共にナツ達に向かって突進していく。
空を切り裂くように空を飛ぶキュベリオス。
「わっ!」
「おっと」
2人を食おうと大きく口を開けて向かってくるキュベリオスからナツとハッピーは距離を取る。
「火竜の・・・」
が、もちろん避けてばかりいるつもりもない。
ナツは右拳に炎を纏った。
「鉄拳!」
勢いよく振るった拳。
だが、コブラとキュベリオスはやはり攻撃が来るのを解っていたかのように軽く避ける。
「ぐほっ!」
そして避けた時の動作から、キュベリオスの長い尾がナツの顔に直撃する。
「言っただろ?テメェの動きは聴こえている。オレに攻撃は当たらねぇ」
「がっ!」
「うわっ」
長い尾を振り回し、更に攻撃を加えるキュベリオス。
その攻撃を受けたナツとハッピーは宙を数回回転し――――
「落ちろォ!」
「ぐああああ!」
コブラの打撃攻撃によってニルヴァーナ目掛けて落とされた。
どんどん地面が近づいていく。
「ハッピー!」
「解ってる!」
このまま落ちてしまったらナツは再びグロッキー状態だ。
ナツの言葉にハッピーは返事をすると、あと少しで地面というスレスレのところで体勢を立て直し、地面に激突する事を防ぐ。
「キシャアア!」
「わ!」
「うおっ!」
その2人を追って地面へとやって来たキュベリオスが大きく口を開けて背後から現れる。
それに驚きながらもナツとハッピーはピューッと都市の建物内に逃げ込んだ。
「待て、ハッピー」
「え?」
入った建物の中でナツが突然静止の声を掛け、ハッピーはピタッと止まる。
ナツは建物の隠れられそうな場所を指さす。
(そこに、隠れて、不意打ちするぞ!)
(あい!)
指さし、両手で顔を隠し、拳を前に突き出す。
そのジェスチャーだけで通じるのは相棒だからだろうか。
2人が物陰に隠れていると、建物の壁がみしっと音を立てる。
「来た!」
亀裂と音でナツはコブラとキュベリオスが来たと予想する。
そして物陰から2人が出てくるのを見計らう。
「そこだ!」
ドコォッと音を立てて壁が壊れる。
一気に飛び出し、炎を纏った右拳で攻撃しようとするナツだが――――
「「あれ!?」」
そこにコブラとキュベリオスの姿はない。
ただ壁に大きな穴が開いているだけ。
「聴こえてるぜ!」
「んがっ!」
すると、コブラが背後から現れた。
そのまま膝蹴りを放ち、ナツとハッピーは壁に激突する。
「くそっ!」
「何で攻撃が当たらないんだろ・・・」
毒づくナツとハッピーはそのまま飛翔する。
それを追うようにコブラとキュベリオスも空中へと飛んだ。
「ん?」
そして、コブラの耳が何かを捉える。
「ほう・・・なるほどな」
「?」
何が聞こえたのか、コブラは笑みを浮かべる。
突然の笑みにナツとハッピーが首を傾げていると―――――
「灰竜の・・・咆哮ぉぉぉっ!」
微細な塵を巻き込んだ灰色の風が吹き荒れた。
「キュベリオス!」
「シャアアっ!」
その風をコブラは綺麗に避ける。
外れたブレスはニルヴァーナへと直撃し、建物を1つ破壊した。
自分達より上空からの攻撃にナツ達は顔を上げる。
「「ココロ!?」」
「ヴィーテルシアさん、お願いします!」
「了解だ!」
淡い桃色のケープをはためかせるココロはヴィーテルシアの背中から・・・飛び降りる。
「何やってんだお前ー!?」
「危ないよ!?」
まさかの飛び降りにナツとハッピーは目を見開く。
が、ココロは全く動じずコブラに向かって落下した。
「灰竜の吐息!」
そして両手から微細な塵を巻き込んだ灰色の風の球を生み出し、放つ。
「無駄だ!キュベリオス!」
「!」
が、その球体はコブラに当たる前にキュベリオスの尾が叩き落とす。
一瞬目を見開いたココロだが、すぐに次の手に出る。
「なら・・・灰竜の螺旋燼!」
落下したまま、ココロは両手に螺旋状に回転する風を纏い、両手を合わせ竜巻の様にして放つ。
が、コブラは全く慌てない。
「聴こえてんだよ、その動き」
「っ!」
「おらっ!」
「きゃああああっ!」
いつの間にかココロの背後に回ったコブラはココロに蹴りを放つ。
空中でそれを喰らったココロはそのままニルヴァーナに向かって落下し―――――
「とうっ!」
「す、すいません・・・ヴィーテルシアさん」
「気にするな」
危ない所でヴィーテルシアに助けられた。
すると――――――
「オレを無視すんなあああああああっ!」
「ア?おっと」
完全に無視されていたナツは表情に怒りを浮かべながらコブラに殴りかかる。
が、やはりコブラには軽々と避けられてしまった。
「ナツさん!ここは共闘・・・」
「ココロォ!俺の獲物に手ェ出すんじゃねぇ!」
「え、ええっ!?」
共闘しようと言おうとしたココロを遮ってナツが叫ぶ。
理不尽以外の何ものでもない言葉に、ココロは戸惑ったようにオドオドと瞳を揺らした。
「おいナツ、今はそれどころではないだろう」
「それどころなんだよ!アイツと戦ってたのはオレだ!だからアイツはオレが倒す!つまりオレの獲物だ、横取りは許さねぇぞココロ!」
「そ、そんなワガママ言わないでくださいよっ!相手は六魔将軍なんですよ!?ナツさん、ずっと思ってましたけど連合軍の意味解ってます!?」
「ココロも何気にヒドイ事言うね」
敵がいるにも拘らずギャーギャー喚くナツ達。
それを見ていたコブラは大きく溜息をついた。
「ギャーギャーワーワー・・・騒がしい奴等だ」
「何だここは?」
「街みたいね」
「かなり古いねー」
「古代都市・・・ってトコかしら」
ナツとココロがギャーギャー喚いている頃、ルーシィ、グレイ、ルー、ティアの4人はニルヴァーナ本体への潜入に成功していた。
「その通りデスネ。幻想都市ニルヴァーナ」
『!』
辺りを見回していると、背後から声を掛けられる。
4人が一斉に振り返ると―――――
「そなた達もここにいたとは、心強い」
「ん?何だルー、ルーシィとペアルックか?」
「リオンとこのオッサン!」
「ジュラさん!」
「アルカ!」
「・・・と、六魔将軍!?ええ!?」
そこには蛇姫の鱗のジュラ、妖精の尻尾のアルカと・・・敵である六魔将軍のホットアイがいた。
しかも戦いの途中、とかではなく、普通に並び立っている。
「案ずるな・・・彼は味方になった」
「コイツいい奴だぞ。危害加えねぇし大丈夫だ」
「世の中愛デスネ」
「うそぉ!?」
「あのオッサン、悟りの魔法でも使えんのか!?」
「まー、アルカが言うならいい人だね!」
「ニルヴァーナの影響でしょ。騒ぐほどの事じゃないわ」
敵であったホットアイが味方になった事にルーシィとグレイは目を見開いて驚愕し、ルーは呑気に笑い、ティアは至って冷静に呟く。
「で・・・幻想都市ニルヴァーナっていうのは何?説明なさい」
味方だと言われてもやはり警戒心は解けないのか、鋭い目でホットアイを見るティア。
ティアの言葉にホットアイは説明を始めた。
「ここはかつて、古代人ニルビット族が住んでいた都市デス。今からおよそ400年前、世界中で沢山の戦争がありました。中立を守っていたニルビット族はそんな世界を嘆き、世界のバランスを取る為の魔法を作り出したのデス。光と闇をも入れ替える超魔法。その魔法は『平和の国 ニルヴァーナ』の名が付けられましたデスネ」
ホットアイの説明が終わる。
と同時にグレイが口を開いた。
「皮肉なモンだな・・・平和の名を持つニルヴァーナが今・・・邪悪な目的の為に使われようとしてるなんてよォ」
「でも・・・最初から『光を闇に』する要素を付けなきゃ、いい魔法だったのにね」
「仕方あるまい・・・古代人もそこまで計算していなかったのかもしれん」
「強い魔法には強い副作用ってのがお約束だからな」
グレイに続くようにルーシィ、ジュラ、アルカが口を開く。
すると、黙って聞いていたティアが呆れたように肩を竦めた。
「にしても、ニルビット族っていうのもバカね」
「ティア?」
ルーが首を傾げる。
「魔法は無敵の力じゃない。魔法で全ての事が解決出来るなんて有り得ない。世界のバランスを取れるのは世界に生きる人間だけよ。魔法でバランスを保てるほど、世界は簡単なモノじゃないでしょ」
「くくっ・・・相変わらず面白れぇ事言うな、お前は」
ティアの言葉にアルカが笑う。
その漆黒の目に一瞬狂いが浮かんだ。
「とにかく、これが動いてしまった事は大変な事デス。一刻も早く止めなければなりませんデスネ」
「当たり前だ」
「うん!」
「何が何でも止めてみせるよ!」
「・・・で、この動いてる都市を止める方法は?」
ホットアイの言葉にグレイ、ルーシィ、ルーが頷き、ティアが何処か面倒そうに問いかける。
「ブレインは中央の『王の間』からこの都市を動かしているのでしょう。その間ブレインは魔法を使えません。叩くチャンスデス」
「動かすって、どこかに向かってんのか?」
「おそらくは・・・しかし私は目的地を知りませんデス」
グレイが問うが、ホットアイは目的地を知らないようだ。
そんなメンバーを眺めていたティアにアルカが声を掛ける。
「目的地、解るか?」
「・・・何で私に聞くのよ」
「お前の事だ。連合軍参加を決めて、何の情報もなしに集合場所に来たとは思えねェ。多少の事は調べてきてんだろ?クロス使ってさ」
「使うとは失礼ね。ナイスタイミングで連絡が来たのよ・・・アンタの質問だけど、目的地は解らない。でもこのまままっすぐ進めば・・・」
「進めば?」
そこまで言って、ティアは沈黙した。
アルカは数秒ティアを見つめ、視線を逸らす。
こうなったティアの口を開かせるのは難しい、と長い付き合いで学んでいるのだ。
すると――――――――
「そうさ、父上の考えはボクしか知らない」
『!』
声が降ってきた。
「ミッドナイト!?」
「六魔将軍か!?」
「ずっと眠ってた人だ!」
「ああ!睡眠不足!」
「違うと思うぞ、ルー」
建物の上に腰掛ける六魔将軍の1人、ミッドナイト。
ミッドナイトは表情1つ変えずにホットアイに目を向ける。
「ホットアイ、父上を裏切ったのかい?」
「違いマスネ!ブレインは間違っていると気がついたのデス!」
その言葉に、ミッドナイトが反応した。
「父上が間違っている・・・だと?」
たっと地面に降り立つ。
そしてギロッとホットアイを睨みつけた。
「父上って・・・何だよそれ・・・」
「親子で闇ギルドな訳ェ?」
「ケッ、面白くねェよ」
アルカが詰まらなさそうに顔をしかめる。
「人々の心は魔法で捻じ曲げるものではないのデス。弱き心も私達は強く育てられるのデスヨ」
ミッドナイトを睨み、諭すようにホットアイは言う。
すると、ミッドナイトは右腕を構えた。
『!』
次の瞬間、ミッドナイトが右腕を横薙ぎに振るう。
その衝撃は近くの建物全てを真っ二つにし、倒壊させる。
ガラガラと音を立てて瓦礫が落ちていく。
「な・・・何が起きたんだ?」
「ひえー」
「あうー」
「ホットアイ殿が地面を陥没させ、我々を助けたのだ」
「た、助かったー・・・」
「・・・いいから全員退きなさいよ、重いんだけど」
間一髪のところでルーシィ達はホットアイの魔法で陥没した穴の中に落とされ、真っ二つにならずに済んだ。
ティアは5人の下敷きにされるという被害を受けているが・・・。
「あなた方は王の間に行って下さいデス!」
穴に背を向けるようにホットアイは立っていた。
そして叫ぶ。
「六魔導士の力は互角!ミッドナイトは私に任せて下さいデス!」
叫んだと同時にホットアイは柔らかくした地面をミッドナイトに直撃させる。
「君がボクと勝負を?」
が、ミッドナイトに目立ったダメージはない。
「六魔将軍同士で潰し合いだと?」
「何か凄い展開になってきたわね」
「まさかこんな事になるなんて・・・」
「ま、ここはお言葉に甘えて行かせてもらった方がよさそうね」
「ホットアイ殿・・・」
「ホットアイ・・・」
まさかの事態にグレイとルーシィ、ルーは困惑し、ティアはやはり冷静に呟き、共に行動していたジュラとアルカはホットアイの名を呟く。
「さあ!早く行くデスネ!」
力強く叫んだホットアイは――――――
「そして、私の本当の名は『リチャード』デス」
コードネームではない本当の名前・・・リチャードを、優しい笑顔を浮かべて明かした。
それを聞いたミッドナイトの目線が冷たくなる。
「真の名を敵に明かすとは・・・本当におちたんだね、ホットアイ」
「オラァ!」
ナツが拳を振るう。
が、変わらずコブラは解っていたかのように攻撃を避けた。
ちなみにあの後「コブラと戦うのはナツ。ココロはナツの補助係」という事で話がまとまった。
「くそー!何で当たらねえんだ!」
「私達の動きを予測してるみたいです・・・」
「アイツ・・・動きを読む魔法なのか?」
その言葉にコブラはご丁寧にも答えてくれる。
「いや・・・『聴く』魔法さ。心の声が聞けるから動きが解る」
「なるほど・・・俺達の考えている事は筒抜けか」
ヴィーテルシアが納得したように呟く。
「・・・」
「・・・」
すると、何を思ったか突然ナツがコブラを睨みつけた。
それに気付いたコブラも睨み返す。
「・・・」
「・・・」
しばらく2人は睨み合い―――――――
「ぷっ」
いきなりコブラが吹き出した。
「く・・・くそ!意外に面白ェギャグじゃねーか、うはははっ!」
「どうやら本当みてーだぞ、ハッピー、ココロ、ヴィーテルシア」
「心の中で何言ったのー、ナツー!」
「凄く気になりますよ!」
「今はそれどころじゃないが」
腹を抱えて大爆笑するコブラ。
ハッピーとココロはナツが一体心の中でどんなギャグを言ったのか気になって仕方なかった。
ヴィーテルシアは唯一冷静にツッコみを入れる。
「しかし厄介だな」
「オイラにいい考えがあるよ」
そう言ってハッピーはナツにひそひそと耳打ちするが――――――
「右に行くって考えながら左から攻撃」
『!?』
コブラにはお見通しだった。
「無駄だ。その思考のプロセスを聞けるんだぜ。テメェ等に勝ち目はねぇ」
「くぅ~・・・」
「お!いろいろ考えてるな?3つ・・・4つ・・・悪くねえ作戦もあるが筒抜けだ」
「ズリィぞテメェっ!」
考えるが考えた分だけコブラに聴かれる。
ことごとく思考を聞かれ、ナツは苛立たしげに怒鳴った。
「こうなったら正面から行くしかねぇっ!」
「あいさ!」
「え!?ナツさん!?」
考えても無駄だと悟ったナツとハッピーは作戦は全く立てず、ただ単純に正面からコブラに向かっていく。
「右フック、左キック、返しの右ストレート」
右フックを仰け反るように、左キックを屈んで避ける。
そして右ストレートは首を右に傾げるようにして避け―――――
「!」
右ストレートが、コブラの頬を掠った。
それにコブラが驚いていると――――
「いぎぃ!」
ナツの拳が完璧にコブラの顔面に直撃した。
「え・・・当たった!?」
「・・・なるほど」
「何!?ぐはっ!」
攻撃が当たった事にココロは目を見開き、ヴィーテルシアは何かに気づいたように呟き、驚愕するコブラの腹に一撃が決まる。
(バカな・・・!)
「うおおおおおおおおっ!」
先ほどまでは見事なまでに攻撃が避けられていたというのに、今は一撃残らず決まる。
(コイツ・・・!何も考えてねえっ!)
そう。
今のナツは無心。ただ目の前にいる敵を殴っているだけ。
先ほどまでが嘘のように、ナツの攻撃は直撃していった。
「つああああぁあぁ!」
炎を纏った右拳。
渾身の一撃を―――――コブラは右手で受け止める。
「こんな奴は初めてだぜ。なるほど・・・小細工じゃどうにもならんか」
コブラがそう言うと同時に、ふしゅう・・・と音を立てて紫の霧のようなものがコブラの手から噴き出す。
コブラの白コートの袖の一部が破れ、ナツの右拳の皮膚が軽く溶けた。
「うわっ!痛えっ!」
「ナツさん!」
咄嗟にナツは拳を引っ込め、ココロとヴィーテルシアが駆け寄る。
そしてコブラは鱗のようなもので覆われた両手を構え、言い放った。
「毒竜のコブラ。本気でいくぜ」
その腕と「毒竜のコブラ」という名。
それを見て聞いたナツとココロは目を見開いた。
「コイツ・・・まさか・・・!?」
「私達と同じ・・・」
「滅竜魔導士!?」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
ふふ・・・ココロが戦闘ですよ。灰竜、塵をブレスにとも思ったんですけど、風があった方が威力つくかな、と。
風が灰色なのは塵が多いから灰色に見えるのです。
感想・批評、お待ちしてます。
最近気づいた。ナツとティアが同じ場所にいない時の話は評価が低い、と。
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