魔法少女リリカルなのは ~黒影の死神~
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『第三十一話』~決着~
拓斗side
いつ以来だろうな、リミッターを外した全力を出すのは。
「クロノ。今すぐ全員を連れてアースラに戻れ。当然、アリシアをいれたポッドもな」
「で、でも!?」
「リニス!」
「は、はい!」
「コイツ等を連れて行け。後、プレシア」
「な、なに?」
「時の庭園を壊してしまったら許せ。後で弁償もする」
「壊しても別にかまわないわよ」
「そうかそれはよかった。では遠慮なくいかせてもらうとするか……さっさと行け!」
「そんな!」
「拓斗一人だけを置いて行くなんて!!」
「そんな事出来るわけないじゃないかい!!」
「心配無用。俺は大丈夫だから」
「し、しかし!!」
「クロノさん、拓斗さんの指示に従いましょう」
「リニスさん!?」
「拓斗さんのあの目……本気で怒っています、止めることは不可能です。それに、ここにいれば私達が危険です。ですから早く」
「…行こうみんな」
「クロノ!?」
「何言ってるんだい!?」
「正直、僕達は足手纏い以外の何者でもない。そんな僕達に出来る事は、精々彼が全力で戦えるようにする事だけだ」
「……そうだね、みんな、アースラに戻ろう?」
「エイミィ!! 拓斗達以外の全員を転移させてくれ!!」
『了解!!』
エイミィから通信が来る。
「拓斗君……信じてるからね!!」
「あんなヤツぶっ飛ばしちゃえ!!」
「キミに全てを託すぞ!!」
「アンタだけが頼りだからね!!」
「絶対に帰ってきて!!」
転移して行くなのは達。
「拓斗…ごめんなさい。私の所為で……」
「それは違う。全ては【邪】の者が引き起こしたことだ。お前に責任は無い」
「ふふっ、あなたは優しいわね……フェイトが惹かれたのもわかるわ」
「?」
そう言い残し、プレシアも転移する。
そして、時の庭園には俺と【邪】の者だけとなった。
俺は白夜を構える。
さぁ、始めよう。この戦いを終わらせるために。光に生きようとする奴等の為に。
アースラside
「ねぇ! アレ本当に拓斗君!?」
なのは達がアースラに戻ると、エイミィが怒鳴り気味でなのは達に聞いてきた。
「あ、はい。あれは拓斗君です」
「それがどうしたんですか?」
「こ、今後のことも考えて【邪】の者と彼の魔力値を測っていたんですが、【邪】の者はA+」
「まて、そんなにあるのか!?」
「クロノ君。驚くのはこの後だよ。それで、次に彼の方を測ったんですが……」
「どうなったの?」
「計測器が壊れちゃいました」
「「「「「「「……………」」」」」」」」
モニターを見ると、二つの黒の光がいまだにぶつかっていた。
拓斗side
『憐れみもあるし、同情もする。でも、自分たちの都合に無関係な人間を巻き込むのは違うだろ。それで不幸に突き落としたお前らは周りからみれば悪魔だ』
【ソレデモイキタカッタ! イキタカッタノダ! ナニモリカイデキズニシンダワレラノキモチガオマエニワカルカ!!】
『ふざけるな! 命は誰にだって一つしかない! その人生を悔いなく生きるために皆、後悔しないために必死に生きているんだ! こんな台詞言えた義理じゃないがな、お前等が行った行為は自分勝手すぎる。考えてくれ! お前らにもチャンスはあったはずだろ!』
【ダマレ!】
【邪】の者の叫びと共に、体から何かが吹き出す。
【オマエモシリョウのカテトナレェェェェェ!!】
真っ直ぐに俺に襲い掛かってくる何か。
「ソウル!」
[『シールド』!!]
――ギィィィィィィィン!!!
障壁越しにそれを見るそれは人の顔の形をしていた。一人だけじゃない、たくさんの人の顔。性別も年齢も違う。一つだけ共通しているのは、全員が苦悶の表情を浮かべているところだった。
「お前…この人達は何だ? まさかと思うが……」
頭の中に一つの仮説が浮かぶ。
【ソウゾウノトオリダロウ。ワタシトオナジヨウニクルシミトトモニシンデイッタモノタチダ】
俺の仮説は見事に的中した。
「お前は何を考えているんだ! 死して尚コイツ等に苦しみを与えているんだぞ!?」
【邪】の者が俺の言葉を無視するように再び死霊を呼び起こす。その時、俺の耳に届く声があった
【…お母さん……】
「ッ!?」
その声を聞いた瞬間、俺の中の何かが切れた。
アースラside
アースラに戻ったなのは達は、モニターで拓斗の戦いを見守っていた。いや、なのは達だけではない、アースラに搭乗している全ての人間が拓斗を見ていた。
「拓斗君!!」
「どうして動かないんだ!?」
「まさか…さっきの攻撃で!?」
「で、でも…しっかり防いでいた気がするけど……」
「じゃあどうして動かないんだい!?」
「ぼ、僕に言われてもわからないよ!!」
「肉体ではなく、精神への攻撃だと言うの?」
「エイミィ!! 拓斗のバイタルデータは!?」
「正常です!」
「どうしたっていうの拓斗君? あなたがやられてしまったらあの男に対抗できる人間はいない。全てが終わってしまうのよ……」
その時、再び【邪】の者から黒い何かが噴き出した。
「さっきより大きい!?」
「あんなものを食らえば、いくら彼でも!!」
「拓斗君! 逃げてぇぇぇぇぇ!!」
「私、助けに行く!!」
「無茶だよフェイト!!」
「でも! このまま見殺しになんて出来ないよ!!」
だが、そうしている間に無情にもそれは放たれた。そして……拓斗は完全にそれに飲み込まれてしまった。
「「い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
なのはとフェイトが悲鳴をあげながら崩れ落ちた……
【邪】の者side
【オワッタカ……】
少年の姿は死霊達によって完全に見えなくなっていた。
【コレデワタシヲジャマスルモノハイナクナッタ……】
これで、私はアルハザードに行ける!
【サァ、ハジメヨウ……】
――ピキッ……
【ン? ナンダ?】
亀裂が入る音に目を向ける。そこには信じられない光景があった。
【ナ!? ソンナバカナ!?】
少年を覆っていた死霊の壁に次々に罅が入って行く。
――パリィィィィィィン!!!
そして、ついには甲高い音を残して死霊達は完全に消滅した。
「………」
【キサマ……イッタイ……ワタシノドウシニイッタイナニヲシタァァァァァァ!?】
拓斗side
俺は死霊の奔流にあえて身を任せた。あっという間に俺を飲み込んで行く死霊達。
[拓斗!? 何してやがる!? すぐにここから出ろ!!]
それでも動かない俺の耳に、またあの声が聞こえてきた。
【…お母さん……】
幼い女の子の声、それに続いて他の声も聞こえてきた。
【やめて…やめてよぉ……】
【なんで!? 何でこんなことに!?】
【に、逃げて……】
【死にたくない。死にたくない!!】
【お願い……殺さないで……】
(これは…【邪】の者が言っていた同志達の魂の声か?)
痛々しい声、戸惑う声、許しを請う声、後悔、無念、悲しみが伝わってくる。
(やはり……生前だけでなく、死して尚苦しみを味わい続けているのか……)
【…お母さん……】
俺の目の前に少女の顔が浮かんだ。
【お母さん…何処? 私を置いて行かないで……】
(この子の母親は死んでしまっていないのか)
【お母さん…私の事嫌いになっちゃったの? だから私を置いて行くの?】
「……それは違うよ」
【え?】
少女の頭を優しくなでる。
「お母さんはお前の事を大切に思っている筈だ。今は別の場所でお前を待っているんだよ」
【それ…本当?】
「ああ、本当さ。だから、早くお母さんの場所に行ってやりな」
そう言って空を指す。
【わかった。ありがとうお兄ちゃん】
「お母さんによろしくな」
【うん!】
笑顔で消えていく少女。
[拓斗……]
「辛かったろ、苦しかったろ。人生はいつでもそうだ。後悔と無念がある。それでもそれを乗り切り生き残ったものたちを恨んではいけない!」
そう言って俺が手をかざすと、腕をを漆黒の光が纏う。
「これで終焉にしよう。全ての苦しみを。お前達を天に導くために!」
残りの死霊達に語りかける。
【……あぁ、そうしよう】
「我、魂を誘いし者也
彼の者 一生を終えるも この世に残りし者
この者 いずれ生まれ変わる運命に有り
汝が魂 新たな生命の為 輪廻にて眠りを与えよ!!」
一人、また一人と昇天する死霊達、やがて完全に消え去り、俺は解放された。
【キサマ……イッタイ……ワタシノドウシニイッタイナニヲシタァァァァァァ!?】
【邪】の者が何か叫んでいる。いや、違うな。アイツは【邪】に一番同化しているんだろうな。
「お前も、何時までそうしているんだ?」
【ナニヲイッテイル!?】
「生き帰ったとしても、誰かを糧としたモノじゃ残るのは虚しさだけだ」
【ソンナコトハナイ! ワタシハ、イキルトイウジユウヲ!】
「お前を今でも想ってくれている人に気づかないのか!?」
【…!?】
「そんな人たちを想ってるなら。早いとこ成仏してさ……」
【………】
「今度こそ幸せに生きろよ」
そう言うと腕に纏ったままの光が伸びて【邪】の者を貫く。
【………ありがとう】
そういう声が聞こえた。
アースラside
「終わったの?」
なのはがそう言った。だが、
『残念ながらここからが本番だ』
そう言うと、拓斗の眼がより一層鋭くなった。
その前にいたのは【邪】の者だった。だが、今までの人の声は聞こえてこない。代わりに、
【GAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaAAAAAAAA!!!!!!!!!】
この世の終焉のような咆哮が聞こえた。
『ふぅん…【邪霊】の第二形態か。それにしては影響がすごかったな……まぁいい、あの魂たちの思いを、テスタロッサ家の運命を踏みにじった償いをしてもらおうか!』
そういって彼は、鎌を振るう。
『これはフェイトの分!』
――ザシュッ
最初の一振りは、左肩に入り、
『これはプレシアの分!』
――グサッ
腹に入り、横腹を切り裂く。
『これはお前に喰われ、苦しみ続けた魂達の分!』
――ズバッ
首と胴体を斬り離す。
だが、それでも、【邪】の者はうごめいていていた。
『まだ生きるか、以外とタフだな。でもまぁ、プレシアから許可はもらっているから久々に行くか』
そう言うと拓斗は空高く飛び、詠唱を始める。
「我が描きし物語」
彼の身体から考えられないほどの魔力が出てくる。
「土は盛り 命を包む箱となる」
大地が大きく割れ、茶色の魔力球が現れる。
「水は満ち 命を育む流れとす」
割れた大地より噴き出した大量の水が集まり、青い魔力球ができる。
「風は吹き 命を運び箱へ導く」
風は一ヶ所に暴風のごとく集まり、緑の魔力球が。
「雷は轟き 命に試練を与える」
空が雷雲に覆われそこから降ってくる黄色の魔力球。
「火は支え 命に可能性を成す」
大地から噴き出す紅蓮の中から現れる赤い魔力球。
「光は導き 命に進む道を示す」
光の粒子が集まり造り出される白い魔力球。
「闇は与え 命に安息の眠りを」
周囲の影という影が集い造り出される黒い魔力球。
「全ては集いて命の 魂の物語を」
赤、青、緑、黄、茶、白、黒の光の球が彼の前に渦を巻くように集い、虹の球になる。
「詩編を織りなす」
そして、相手の物語を
「『ノヴァ・ストーリア・ファンタズム』ウゥゥゥゥゥゥーーーーー!!!!」
放たれた虹色の巨大な砲撃が【邪霊】と、時の庭園を消し去った。
「あのバカ! あんなことをすれば余波がこちらに来る!」
クロノがそう言うと、リンディが全員にショックに備えると同時に防御展開を命ずるが、それが一向にこない。すると、
『その辺の準備はとうの昔にしてある』
そう言ってその辺の準備にぬかりの無い拓斗だった。
「か、艦長大変です!」
「どうしたのエイミィ?」
「時の庭園並びに虚数空間消滅!! さらに、次元震停止しています!」
「な!? ……もうなにも驚かないと決めていたけど、これはいくらなんでも………」
そう言って驚いていたリンディに、プレシアが、
「彼の辞書には不可能という文字が無いのかしら」
「「「「「「「「「無いんだろうな………」」」」」」」」」
と、皆が思っていたらしい。
『さて、最後の仕事だ』
「最後の仕事? なんだそれは」
『見ればわかる』
拓斗の言葉に全員がモニターに注目する。
モニターに映し出される拓斗によって作られた荒野。その中に小さく光っているものがった。
「あれか? エイミィあそこを拡大してくれ」
「うん」
拡大されたモニターに映ったモノは。
「……人魂?」
紫色の光を発する人魂だった。
「なんだい? あの気味悪いものは」
『ソウル』
『はいよ』
拓斗は白夜を人魂に向ける。
『邪魂拘留!』
拓斗がそう言うと、邪魂は白夜に吸い込まれた。
『これでよし……エイミィ。アースラに戻りたいんだ。転移してくれないか?』
「あ、はい! すぐにします!」
そう言って。すぐに準備し、数秒後にはアースラについていた。
拓斗side
「「「「「「「「「えええええええええええええええええええええええええ!!?」」」」」」」」」
アースラに着いた後、俺の言った事で全員が叫んだ…………うるさいな。
「も、もう一度言って貰えないかしら?」
「何度も言わすなよプレシア………アリシアを蘇生させると言っただろうが」
後書き
~あとがき雑談会~
作「決着!」
プ「勝ったのは拓斗だったわね」
拓「当然の結果だろ、流れ的に」
作「まぁね~、でも戦闘描写頑張ったんだよ!」
拓「まぁ、それなりじゃないか?」
プ「そうね、平均以下だけど読めるレベルではあるわね」
作「うわぁ……厳しいな」
拓「それくらいのほうがいいんだ」
プ「そうした方が伸びるからね」
作「そうか……勉強になったよ」
拓「そろそろ閉めるか。予告はプレシア頼む」
プ「分かったわ
戦いが終わり数日
なのはとフェイトは一時の間別れることとなる
次回 魔法少女リリカルなのは ~黒影の死神~『名前を呼んで……もう呼んでるけど』」
作「それじゃあ次回に」
作・拓・プ「「「トリガー・オン!!」」」
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