いつか必ず、かめはめ波を撃つことを夢見て
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第10話 閑話!修行の合間の風景
「カリン様、今日のカリン塔、降り登り終わりました。……って何をしているのですか」
ある日、日課のカリン塔降り登りが終わったナシゴは、何やら作業をしているカリンを見て疑問に思い、そう聞いた。
「あぁ、今日は早かったの。ほれ、仙豆を作っておるのじゃよ」
鉢植えに何かの苗を埋めている様子のカリン。あれが、仙豆の苗なのだろうとナシゴは予測する。ふんわりした土を被せて、パンパンと軽く叩くと、右手に持っていたジョウロで苗に水をやっている。
「仙豆の栽培って、そうやっているのですね」
原作では描写がなかった仙豆の作り方。草木や野菜を育てるのと同じように、仙豆も植木鉢で栽培することが出来るのかと、ナシゴは思った。
「お主の記憶を読んで、未来に仙豆が足りなくなるような事態が起こるようじゃから、今のうちに作っておこうかと思っての」
カリンもナシゴの原作知識により、未来を知り、出来る限りの対策を取ろうと考えていた。
「そうじゃナシゴ、こちらに来て仙豆の作り方を学べ」
カリンは、ナシゴに仙豆の作り方を教えようかと考えついた。カリンはナシゴを一緒に鍛えて、一緒に食事をして、一緒に休息を取るなどと過ごすうちに、かなり信頼していて、秘術の仙豆の作り方についてのコツもナシゴに教えるぐらいには心を許していた。
「分かりました、カリン様」
「よし! まずはのう……」
ナシゴはカリンから仙豆の栽培の方法とコツを教えてもらった。以後、仙豆の栽培と管理はナシゴの仕事となった。これにより、将来仙豆が足りなくなるという事態は避けられたのだった。
――――
「そういえばカリン様、超神水ってココにあるのですか?」
ナシゴのいきなりな問いかけに、カリンは答える。
「お主は、原作というもので、超神水について知っておったのう」
インチキなただの水の超聖水。そして、本物の超神水。大昔から伝えられたものらしいが、原作では孫悟空を除いて、ただの一人も生き残ったものは居ないという猛毒である。
「挑戦させてもらえませんか? その超神水に」
「なんじゃと……?」
ナシゴは考える。あの水は、サイヤ人であった孫悟空が飲んだことで作用したから、普通の地球人である自分には効果が無いだろうと。しかし、大いなるパワーを手にすることができるという言い伝えと可能性には、かなりの魅力を感じていた。最近、修行が滞っていて、これといって成果が出せていない状態。ナシゴは何か違うアプローチによって強さを手に入れる方法が無いかと、日夜考えていた。そして、原作であった潜在能力を解放する一つの方法である超神水について考えが行き着いた。
カリンは考える。地球人としては考えられないぐらいに鍛えられたナシゴならば、もしかしたらカリンが見たことの無い初めての成功者になることが出来るんじゃないかと。超神水に見事打ち克つことが出来るかもしれないということを。
「ちょっと待っておれ、今持ってこよう」
カリンは、超神水の猛毒を克服する人間を見てみたいという思いで、ナシゴに挑戦させる事を許可した。
神と書かれたラベルが貼ってある急須に、湯呑みが掛かっている。カリンが湯呑みを立てて、その中に超神水を注ぎ込む。紫色のいかにも飲んではマズイ色をしている。
「本当に挑戦するんじゃな?」
「はい、カリン様。挑戦してみます」
カリンから受け取った湯呑みを覗きこむナシゴ。匂いは無臭だったが、見た目でためらわれるような色をしている。カリンは覚悟を決めて、湯呑みを口につけて、一気に傾ける。そのまま、一気に飲み込んだ。
「ぐ、うおおおおおぉぉ!」
飲んだ瞬間、喉の奥に鋭い痛みと、急に全身が暑いのか寒いのか分からない、肌の感覚が狂うような感じ。さらに上下感覚が狂い、立っていられずに、地面へと倒れこむ。勝手に喉に手が伸びて、痛みを和らげようと何とか手を添える。しかし、そんなことをしても痛みは増すばかりだった。
ナシゴは超神水を飲んでから数分を何とか耐えていたが、体力と精神力がほとんどすべて奪われて、限界ギリギリまでの状態となってしまった。
「ぐぅぅぅっ」
「無理なら吐き出すのじゃ! 死んでしまうぞ」
カリンは、ナシゴの体力精神力が限界に近いことを見抜き、吐き出すように言う。
「うぐぐっ、げぇぇぇ」
くぐもった声で、返事とも付かない声を返した後、ナシゴは超神水を吐き出してしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
超神水を吐き出すと、身体に感じていた異常がスッと全て消え去った。乱れる息を何とか整えようとするナシゴ。やはりダメだったかという、残念な気持ちでいっぱいになる。
「すまん、ナシゴよ。お主なら、もしやと思ったんじゃが」
「い、いえ、カリン様。飲んでみたいと言ったのは私です。カリン様が気に病む必要はありません」
結局、ナシゴは超神水の猛毒に打ち克つことは出来なかった。ナシゴは素直に修行を続けることが一番だと考え直して修行を進めることにした。また、こんな苦しい超神水を6時間も耐え抜いて猛毒を克服した孫悟空を、改めてとんでもなくすごい奴だと見なおした。
――――
「お主は、筋斗雲に乗れるかのう?」
ある日突然、カリンはナシゴが筋斗雲に乗れるかどうか気になった。
「どうでしょう? 自分は修行馬鹿ですが、筋斗雲に乗れるほど純粋かどうか」
ナシゴは、自分が修行に関しては馬鹿正直だと感じていたが、心のキレイな人しか乗ることができないと言われている筋斗雲に乗れるほど、自分を純粋だとは思っていなかった。だから、筋斗雲には乗れはしないだろうと感じていた。
「とにかく、呼んで試してみようかのう」
カリンは、ナシゴなら乗れるだろうと確信しており、ナシゴに筋斗雲を与えることを考えた。
「筋斗雲よーい!」
カリンの叫び声に、カリン塔の近くに、大きな黄色い雲が飛んできた。
「改めて見ると、大きいなぁ」
カリン塔のてっぺんの住居区域の何十倍もの大きさがある筋斗雲を見て、そんな感想を言うナシゴ。
「よっ、と」
カリンが、呼び出した筋斗雲の上に乗り、一人用ぐらいの大きさにちぎってカリン塔のてっぺんへと戻ってくる。
「よし、試してみろ」
ナシゴは、恐る恐る筋斗雲を触ってみた。
「感触がある!」
手に感触があるのを確認した後、ナシゴは思い切って筋斗雲の上に飛び乗ってみた。すると、ナシゴは筋斗雲をすり抜けることなく、雲の上に立ち上がることが出来た。
「乗れました! カリン様」
まさか、自分は乗れないだろうと疑っていたナシゴだったが、思わず乗ることが出来て、すぐに、乗り方のコツを掴んで、右へ左へ飛び回ってかなりはしゃいでいる。
「そうじゃろう、そうじゃろう」
カリンも、見立てが間違っていなかったことに満足して、その筋斗雲はナシゴに与えることにした。
その後、偶に筋斗雲に乗って世界を回ったりすることが趣味の一つになったナシゴであった。
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