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八条学園怪異譚

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第五十九話 時計塔の話その十三

「女の子は身体冷やしたらよくないわよ」
「ですよね、本当に」
「冬も」
「私いつも冬になったら厚着してスカートの下はタイツ二枚とスパッツですから」
「私は厚いタイツと短パンです」
 二人はそれでそれぞれ装備しているのだ、防寒対策はまず足からである。
「靴下も分厚いのはいてます」
「それと手袋も」
「ううん、私も寒いとスパッツはくけれど」
 茉莉也は二人の話を聞いて少し微妙な顔になってこう返した。
「それはちょっと極端じゃない?」
「えっ、そうですか?」
「ここにまだカイロが必要ですよ」
 二人はまだ必要だった、冬には。
「毎日使い捨てカイロ使ってますけれど」
「それも極端ですか」
「あと寝る時は電気毛布使って」
「お部屋の中ではどてらかオーバーを着て」
「だから、どれだけ寒がりなのよ」
 茉莉也は二人の話をここまで聞いて思わず苦笑いになって返した。
「冷え性とはいっても」
「ですから寒いですから」
「そこまでして」
「防寒対策をしてるのね」
「そうです、毎年冬にはそうしてます」
「身体を冷やさない様にしています」
「確かに身体を冷やしたらよくないわ」
 このことはスポーツ選手だけでない、女は男に比べて冷え性なので特にこうしたことには気をつけなくてはならないのだ。
 だがそれでもだとだ、茉莉也はそのことがわかっていても二人に言うのだ。
「けれど極端だから、二人共」
「そうですか、極端ですか」
「私達は」
「そういえば二人共スポーツしないわね」
 かるた部で典型的な文化系だ、それでなのだ。
「それで余計になのね」
「スポーツは冷え性にいいんですよね」
「身体を動かすと」
「そうよ、いいのよ」
 それはというのだ。
「だから私冷え性は殆どないけれど」
「それで私達もですか」
「身体を動かせば」
「冷え性はかなりよくなるわよ」
 そうだというのだ。
「そうした防寒だけじゃなくてね」
「ううん、じゃあ温かいものを食べたりするよりもですか」
「身体を動かすことが」
「第一歩よ」
 冷え性解消のだ。
「そうなるけれど、あんた達運動は」
「ちょっと縁がないです」
「正直苦手です」
 二人は苦笑いで答えた、二人共である。
「体育の授業は出ていますけれど」
「それでも」
「つまり生粋の文化系なのね」
「そうなります」
「子供の頃からです」
「そうなのね、まあ無理強いはしないから」
 茉莉也はそうしたことはしない、だからアドバイスはしたがそれ以上は言わなかった。この辺り茉莉也のポリシーである。
「そういうことはね」
「そうですか」
「運動のことは」
「それだけが冷え性対策じゃないから」
 こう考えているからだというのだ。
「いいわ」
「けれど運動は、ですよね」
「冷え性にいいんですね」
「そう、このことはまた気が向いたらね」
 してみればいい、茉莉也はこう言うだけに留めた。 
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