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八条学園怪異譚

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第五十九話 時計塔の話その七

「すき焼きもね」
「辛いんですよね」
「関東風だと」
「やっぱり関西よ」
 茉莉也は生粋の関西人として話す。
「そうでないとね」
「すき焼きもですね」
「駄目ですね」
「そう、すき焼きもね」
 すき焼きだけに限らないと言うのだった、何気にだが強く。
「関西風じゃないと」
「それじゃあ私達が泉を見つけた後はですか」
「輸入肉を使った関西風のすき焼きで宴会ですね」
「お酒もかなり用意して」
「それとお菓子も」
「そう、ガンガン飲んで食べるわよ」
 こうも言う茉莉也だった。
「いいわね」
「はい、わかりました」
「じゃあ行ってきます」
「そうしてね、とにかく最後だから」
 これでだというのだ、時計塔の最上階で。
「まあ時計塔っていう場所もこういう話が出やすいわよね」
「そうですね、確かに」
「怖いお話も」
「時計塔の幽霊ね」 
 具体的には日下部がそうだがこの学園以外でもだ。
「夜の十二時とかに出て時計を鳴らすとかね。夜な夜なそこに来た人を悪魔の生贄にするとか」
「ヨーロッパにですよね」
「結構ある感じですよね」
 時計塔は元々欧州からだ、だからそうした時計塔にまつわる怪談話も欧州にあるものが多いのも当然である。
「まあうちの学園は違いますけれど」
「そういうお話が多いですよね」
「他にはね」
 さらに言う茉莉也だった。
「時計塔のところで殺人事件があったとか」
「ですね、そんな話もありますね」
「それでまた出て来るとか」
「時間を知らせる特別な場所だしね」
 しかもだった。
「後こまごまと機械も多くて」
「ゼンマイとかも一杯あって」
「そこで戦うとかも」
 今度はゲームの話である。
「モンスターとか出て来て上に登るか下に降りるかして」
「障害物も沢山ありますね」
「悪魔の城とかね」
 茉莉也は具体的には吸血鬼が悪役のゲームを出した、とはいってもこの学園にいるドラキュラとは別人である。
「あるわよね」
「けれどこの学園ではですね」
「そうしたお話はないですね」
「ないない、有り得ないから」 
 茉莉也は笑ってオカルト話を否定した。
「結界のお陰でね。しかも実は結界は博士や皆がいつもチェックしてるから」
「皆っていうと妖怪さんや幽霊さん達ですね」
「あの人達がですね」
「そう、魔術とかの知識や妖力でね」
「そうしたものを使ってですね」
「いつも修理してるんですね」
「そうよ、ちゃんとね」
 結界も人が作っているもので綻ぶものだ、人が作っているものは必ず綻んでいき壊れていくものなのだから。
「強くもしてるし」
「だからですか」
「悪い妖怪や悪霊はですね」
「入られないわよ、例え天使でもね」
 俗に善そのものとされているこの存在であってもだというのだ。
「悪意や害意があればね」
「その時はですね」
「入られないんですね」
「そうよ、天使であろうともね」
 天使に悪意や害意がないと考える人間はかなり減ったであろうか、様々な小説やゲームではそうした天使が多くなっている。漫画やアニメでもである。 
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