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八条学園怪異譚

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第五十九話 時計塔の話その一

                 第五十九話  時計塔の話
 愛実と聖花は茉莉也に泉のことを話した、三人は昼休みに茉莉也のクラスがある校舎の屋上に集まった、そこでだ。
 二人で茉莉也に学園の地下迷宮のことと泉のことを話した、茉莉也は話を聴き終えてから二人にこう返した。
「地下迷宮のことは知ってたわ」
「そこのことはですか」
「ご存知だったんですか」
「だって、私ここで生まれ育ってるのよ」
 それならというのだ。
「妖怪さん達から聞いてたわよ」
「あるかどうかもですか」
「聞いていたんですか」
「中に入ったことはないけれどね」
 それでもだというのだ。
「知ってたわ」
「そうだったんですか、地下迷宮のことも」
「ご存知だったんですね」
「いざという時の防空壕だったこともね」
 そのことも知っていたというのだ。
「理事長さんと博士だけが知ってることもね」
「いや、先輩もご存知じゃないですか」
「今仰ってますし」
「私は知らないことになってるの」
 そこはそうなっているというのだ。
「妖怪さん達から内輪で聞いただけだからね」
「ああ、そういうことですか」
「何も聞いていないってことですね」
「だから先輩は表向きはですか」
「知らないってことで」
「そう、私はそんな話は一切聞いたことがないのよ」
 茉莉也は微笑んで二人に話す、三人で屋上のベンチに座って話しているが茉莉也は二人を今も両腕で抱き寄せている。愛実が右、聖花が左で愛実の胸と聖花の脚をその手で触ってそのうえで楽しそうに話す。
「全然ね」
「そうなんですね」
「そういう設定で」
「設定にも表と裏があるからね」
 アニメのキャラクターの様なことも言うのだった。
「そういうことでね」
「わかりました、それじゃあ」
「地下迷宮のことはそういうことで」
「まあ何も起こらないことを祈るわ」
 地下迷宮を本来の目的で使う様なことはというのだ。
「間違ってもね」
「そのことは同感です」
「私もです」
 二人は抱き寄せられながらも負けていない、こうそれぞれ返す。
「戦争とか災害とか」
「絶対に嫌ですから」
「戦争より災害ね」
 そちらの方が怖いと言う茉莉也だった。
「地震ね、特に」
「思い出したくないけれど忘れられないですね」
「本当に」
 阪神大震災だ、これは神戸市民である三人にとてはとても忘れられないことだ。
「もう二度と起こって欲しくないです」
「あれだけは」
「全くね、私達はまだ産まれてないけれど」
 それでもだと言う茉莉也だった。
「あんなの沢山よ」
「ですね、地震だけは」
「起こって欲しくないですね」
 二人も暗い顔になり茉莉也に答える、抱き寄せられながらも。
「戦争より怖いですね」
「どうしようもないです」
「そうよね、東北の地震もね」
 東日本大震災のことだ、当時の政権の無能と不誠実もあり多くの嫌な事態が起こった、そうした意味でも忘れられない震災だ。
「絶対にね」
「地震なんて起こればいいのに」
「そう思いますけれど」
「地震はね、私もね」
 茉莉也も顔を曇らせて話す。 
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