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八条学園怪異譚

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第五十八話 地下迷宮その九

「今から」
「そうして」
「そうじゃ、ではな」
 それではと言ってだった、二人は自転車から降りたうえでだった。
 扉の前に行き開ける、その時二人共ごくりと息を飲んだ。そのうえで愛実は聖花に顔を向けて彼女に言った。
「若しかして」
「そうね、可能性はね」
「半々ね」
 こう聖花に言う、緊張した面持ちで。
「ここかもね」
「若し泉ならね」
 どうかとだ、聖花が言う。
「ここからよね」
「そうみたいね、学園の外に出るのよね」
「そこが何処かも気になるわね」
「そうよね、何処かしらね」
 その出る世界も気になるところだった。
「一体ね」
「何処なのか」
「そこが気になるし」
「今からね」
 二人で話してそしてだった。
 愛実と聖花は開けた扉の中に入った、そうして。
 入った場所はというと、そこは。
 ただの部屋だった、四方がコンクリートに覆われた広い玄室だ、本当に何かのロールプレイニングゲームに出そうな。
 二人がこれまで通ってきた部屋だ、しかしだった。
 その部屋を目だけで見回してだ、愛実は言った。
「次でね」
「ええ、間違いなくね」
 聖花も言う。
「泉ね」
「ここじゃなかったからね」
「そうなるわね。じゃあ」
「ええ、それじゃあね」
「ここから出てね」
 そうしてだった。
「後はね」
「博士と牧村さんのところに戻って」 
 そうしてだった。
「ここから出ることになるわね」
「そうよね」
 二人で話してだった、玄室を出て博士と牧村のところに戻った。二人は自転車から降りた姿勢でそこにいた。
 その二人にだ、愛実と聖花は言った。
「次で最後です」
「時計塔に行きます」
「あそこじゃったか」
 博士も二人の言葉を聞いて真剣な顔で頷く。
「そうじゃったか」
「はい、そうなりますね」
「ここじゃなかったですから」
「そうじゃな。では行って来るのじゃ」
 その時計塔にだというのだ。
「次にな」
「わかりました、機会をあらためて」
「そうしてきます」
「わしは泉には行けぬからのう」
 博士は笑いながら二人にこうも言った。
「確かめて来るのじゃ」
「えっ、博士もですか」
「泉には行けないんですか」
 妖怪や幽霊達と同じくだった。
「ということはやっぱり」
「博士って」
「ほっほっほ、詮索は無用じゃ」
 博士はこのことについてはいつもの笑いで誤魔化した。
「そういうことでな」
「ううん、実体はありますし」
「それだと」
「仙人か錬金術師、若しくは」
「妖怪化してるとか」
「だから詮索は無用じゃ」
 余裕の笑顔であるがやはり答えない。 
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