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八条学園怪異譚

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第五十八話 地下迷宮その四

「俺は酒は駄目だ」
「かなり飲めそうですけれど」
「実際はそうなんですね」
「その代わり甘いものはだ」 
 そちらだというのだ。
「かなりいける」
「牧村君は喫茶店でお菓子を作るアルバイトをしておる」
 博士がこのことを話してきた。
「マジックでな」
「あっ、駅前のお店ですね」
「イギリス風の雰囲気の」
「大学を卒業した後は本格的に料理の専門学校に入り修行をすることになっておる」
「じゃあ就職先決まってるんですね」
「もう」
「そうじゃ、将来は喫茶店の菓子職人兼マスターじゃ」
 博士は二人に笑顔で話す。
「可愛い娘さんと一緒にお店をやっていくのじゃよ」
「あっ、そういえばあそこの娘さんって」
「そうよね」 
 愛実と聖花もここで気付いた。
「うちの大学の人でね」
「小柄で可愛い人よね」
「アイドルやれる位に」
「小柄で垂れ目で」
 二人も喫茶店の娘のことは知っていた、この辺り地元だけはある。
「三人姉妹でね」
「三人共小柄で可愛いのよね」
「そうそう、特に長女さんがね」
「あの人がね」
「町の天理教の教会の娘さん達と親戚なのよね」
「あちらも三姉妹でお互いそっくりで」
 この関係についても話される、二人共よく知っている。
 そうした話をしてだった、四人は地下迷宮への扉を開けてそこに入る。自転車は妖怪達も手伝って中に入れた。
 そしてそれにそれぞれ乗ってだった、博士が牧村を入れて三人に言った。
「ではな」
「はい、今からですね」
「行きますね」
「そうしようぞ」
 こう言ってだった、自転車を進ませて。
 四人で地下迷宮の通路の中を進んでいく、地下迷宮の中には灯りがなくコンクリートの暗い通路が続いている。
 四角い世界の中には四人の他には誰もいない、しかし愛実は自転車の灯りで前を見つつ進みながら前にいる博士に尋ねた。
「ここ通路だけじゃないですよね」
「部屋も一杯ある」
「そうですよね」
「そして今はおらんがな」
「妖怪さん達もですね」
「時々いてな」
 そしてだというのだ。
「遊んでおる」
「そうした場所ですよね」
「妖怪や幽霊の諸君はここもまた遊び場にしておってな」
「宴会をしたりですか」
「迷路を進んで遊んでおる」
 直角の道や分かれ目が続く道を進みながら話をしていく。
「今のわし等の様にな」
「こうしてですか」
「そうじゃ」
 見れば扉も多い、右に左にある。
「今のわし等は言うならば探検じゃがな」
「遊びで、なんですね」
「迷路を巡るのもまた楽しいのう」
 実際にテーマパーク等でもある、特に鏡合わせの迷路は難易度も増して進むだけで面白いものがある。
「それでじゃ」
「皆もそうしてるんですね」
「そういうことじゃよ、ただな」
「ただ?」
「幽霊の諸君はあえて壁とかは抜けぬ、ここの話ではないが」
 幽霊は実体ではない、それで壁やそうした場所を抜けられるのだ。離れた場所に瞬時で行くkとも出来る。
「あえてな」
「この自転車と同じですね」
「うむ、そうすると迷路を進む意味がないからな」
 迷路を楽しむことを考えてだというのだ。 
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