Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル外伝 少女アイリンの物語
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<少女アイリンの物語>
前書き
ハルカ・クロニクルから十数年後。
今回の主人公はハルカではなく、彼の娘です。
DQ2を意識しているところもあったり。
Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル 外伝
<少女アイリンの物語>
1.とりあえず簡単な紹介。
私、アイリンといいます。10歳です。
私はローレシア王女で、2人のお兄ちゃんがいます。
お父さんはローレシア王で、ロトの血を引く勇者、そして、竜王を倒した英雄です。お父さんとお母さんはそのとき、出会ったと聞きました。
お母さんは元ラダトーム王女で、お父さんと一緒に旅に出て、お兄ちゃんたちが生まれた時に、ローレシア王国が誕生したそうです。
お父さんは国王となった後でも、サマルトリア、ムーンブルクを建てるために奔走していました。でも、私たち家族のことも大切にしてくれました。
「ルーラ」という魔法のおかげでいつでも帰ってこられるそうです。そしてお土産もたくさんくれました。
そして、私が3歳のときに、サマルトリア国、ムーンブルク国ができました。
私は将来、ここを離れて、ムーンブルク国の王妃になると聞きました。
楽しみな反面、不安もあり、寂しさも感じます。
私たち家族はとても仲がよいのです。
2.春のあたたかいお話。
寒い気候からだんだんと春の便りが届いてくるアクアマリンの月。
私は城の中がなんだか準備で忙しいのに気がつきました。
「あ、そうか」
「アイリン、気がついた?もうすぐ僕達の父さんと母さんの結婚記念日なんだよ。だからみんな忙しいんだね」
たまたま物を運んでいたアーサー兄ちゃんが笑いながら、私に話しかけてきました。
「何してるの?」
「えへへ、僕とレイヤ兄さんと一緒に2人で準備していたんだ。良かったらアイリンもどう?僕達のお手伝いする?」
「……」
少し考えました。お兄ちゃんたちのお手伝いをするのもいいと思いましたが、私はあることを思いつきました。
「あのね……私はいいかな。思いついたの。私、お父さんとお母さんのためにお菓子作りたいの」
「おお、アイリン、大丈夫か?お前、簡単な料理しかできないだろ?」
アーサー兄ちゃんの後ろから、レイヤ兄ちゃんが顔を出しました。ちょっと意地悪だけど、本当は優しいんだよ。
「こら、兄さん!アイリンだって自分なりに頑張って父さんと母さんをお祝いしたんだ。やらせてあげようよ」
「アーサー兄ちゃん……。うん、私、頑張る!……自信ないけど」
「無茶するなよ?何かあったらオレ達に言ってもいいからな」
レイヤ兄ちゃんもうなずいて私を見た。「じゃ、オレ達は行くからな」
「うん!」
お兄ちゃんたちは物(木箱)を楽しそうに運んでいました。お兄ちゃんたちも心を込めて何か作るのかな。
そのためにこっそりと準備しているんですね。私も負けてられません。
「よーし、私も頑張るよ!お父さん、お母さん、待っててね!」
まずは練習です。試作品というものです。
調理場のメイドさんに話を聞いて、練習をさせてもらうことにしました。
「あら、ハルカ王とローラ王妃のためにケーキを?それはいいアイディアですわ。特にローラ王妃は甘いお菓子が大好きです。きっと大喜びしてくれますよ」
メイドさんたちも私の考えに賛成してくれました。
「でも、お怪我はしないようにね。さあ、作り方を教えましょう」
ローレシア専属の“パティシエ”も私に手取り足取り教えてくれます。
私は結婚記念日本番まで、毎日練習をしました。
失敗もしましたが、だんだんとうまく作れるようになりました。
「アイリン王女、だいぶ上手に作れましたね」
そう褒めてくれます。
ちなみに、私が作った試作品はメイドさんたちやローレシア兵のみんなが食べてくれました。
「王女様、とても美味しいですよ」
と兵士さんたちも褒めてくださいます。
そんなこんなで、お父さんとお母さんの結婚記念日が近づいてきました。
いよいよ明日です。
「おや、アイリン、何こそこそしてるんだい?」
偶然お父さんに会ってしまいました。
「あ、お父さん……。ううん、なんでもないの。私はいつも通りよ」
「そうか。最近、調理場に通っていると聞いてね。時々ならあるんだけど」
誰かが見てしまったのでしょう。私の心はドキドキしました。
「ううん、なんでもないの!」
「そうか。アイリン、明日は僕達のこと、お祝いしてくれるよね?」
「うん!……楽しみに……あっ」
私のプレゼントかばれてしまう。私は慌てて口を手で隠しました。
「ん?」
お父さんは笑顔で何も言わず私を見ていました。
「……楽しみにしてるよ」
「あ」
ばれてしまったのでしょうか?
お父さんは私に手を振って、いつもの王座のある間に戻っていきました。
「まあ、父さんも母さんもオレ達がお祝いのプレゼント用意してくれてるって予想しているだろうな」
レイヤ兄ちゃんが私の話を聞いてそう言いました。
「それだけ楽しみなんだよ。兄さん。父さんと母さん、今でもラブラブだし、僕達のことも大好きでいてくれるし」
「そうだな!アイリン、明日が楽しみだぜ!オレ達もラストスパートだ!行くぜ!アーサー!」
「あ、待ってよ兄さん!」
お兄ちゃんたちは自分たちの部屋に帰っていった。とても楽しそうな顔で。
……よし、私も明日のために準備をしようっと!
お父さんとお母さんの結婚記念日の朝。
私は早起きをして早速ケーキ作りに取り掛かります。
お手伝いさんも無し、私一人でケーキを作るのです。
「お父さんお母さん、待っててね…!」
順調にケーキ作りを進めていきます。
「よし、後もう少し……!」
……ところが、私はスカートのすそを踏んでしまい、転んだ拍子に……。
「あっ……!」
ガシャーン!!
食器がひっくり返り、ケーキは私の目の前にべちゃりと落ちてしまいました。
「あ……ケーキ……」
せっかく作った大きなケーキ。練習して上手くいきかけたケーキ。
大好きなお父さんとお母さんのために心を込めたはずのケーキ。
それが……一瞬で…………。
「う…………うわああああああんっ!!」
私は大声で泣きました。もう時間が無い。お父さんとお母さんにプレゼントできない……!
「ど、どうしたの!?アイリン!」
駆けつけたのはお母さんでした。
「あ……おかあさん……ひぐっ……おとうさんと……おかあさんの……為の……ケーキが……」
「まあ……アイリン……大丈夫?泣かないで。私は嬉しいわ。あなたが私やハルカのことを想ってくれた……それだけで嬉しいのよ。さあ、お風呂にはいってらっしゃい」
お母さんは優しい笑顔で私の頭をなでてくれました。
「お母さん……」
「ハルカもあなたが頑張ったと知ったら喜んでくれるわ。心配しないで」
「うん」
「ローラ王妃様、アイリン王女様と一緒にお風呂場へ。後は私たちにお任せください」
後で駆けつけたメイドさん達や兵士さんたちが私たちを見てうなずきました。
「ええ。行きましょう」
「うん。ごめんね、お母さん」
「いいのよ」
私は粉とクリームを浴びた体でお母さんと一緒にお風呂に入りました。
お風呂上り。私は新しいドレスに着替えました。
その時、お兄ちゃんたちに会いました。
「あ、お兄ちゃん達……」
「言わなくていいよ、アイリン。そうだ、オレ達の作品、まだ未完成なんだ。時間無いのにな。あのさ、手伝ってくれないか?」
「僕からも……お願いできるかな」
「うん!手伝う!」
「あ、アイリン笑ったぜ!」
「お父さん言ってたな……。アイリンの笑顔はお母さんにそっくりだって」
アーサー兄ちゃんの言葉に私は少し照れました。嬉しかったです。
「よし、間に合わせるぞ!」
「おー!」
そして式典が行われました。
私はお兄ちゃんたちと一緒に色紙やスパンコールを使って、お父さんとお母さんの大きな似顔絵を作りました。
下絵はアーサー兄ちゃん作で、上手でした。それを上から糊で貼っていくのです。汚れないように気をつけながら。
「おや、これは凄いね。ローラ」
「ええ。子供たちの合作なのよ」
「ありがとう、レイヤ王子、アーサー王子、アイリン王女。僕達は嬉しいよ」
レイヤ兄ちゃんは誇らしげに胸を張り、アーサーは照れくさそうに少し下を向いて微笑してました。私は少し泣きながら、笑ってました。
お兄ちゃんたちは私に向かってウィンクしてくれました。私も微笑みで返しました。
お父さんとお母さんは喜んでくれました。
ケーキ作りは失敗したけれど、お父さんとお母さんの結婚記念日式典は大成功でした。
「アイリン」
お父さんが話しかけてきました。
「話は聞いたよ。僕とローラのためにケーキを作ろうとしたんだって?」
「うん……失敗したけど……」
「それでも僕は、僕達は嬉しかったよ。僕達のために頑張ってくれたから」
お父さんは優しく私を撫でてくれました。大きな体、力強い手。
「あのね、お父さん。今度はうまく作れるように頑張るね」
「ああ。そういえば、ローラもケーキ作り上手だったぞ。一緒に作ったらどうだ?」
「お母さんと?……うん!今度頼んでみるね!」
3.その後のハルカとローラの会話。
「うふふ、ハルカ。アイリンがね、私に一緒にケーキ作りしたいって言ってきたの。あなたが教えたのね」
「ああ。いいだろう?君も好きだったし」
「そうね。今度一緒に作ろうかしら。そして、あなたやレイヤ、アーサーと一緒に食べましょう。楽しいに決まってるわ!」
「ああ、楽しみにしてるよ。それにしても、僕とローラの子供たち、立派に成長してるね」
「ええ。本当に可愛い子供たちよ」
後書き
<おまけというか>
アイリンは10歳、レイヤ、アーサーは12歳。
レイヤはローレシア王子、アーサーはサマルトリア王子、アイリンはムーンブルク王女にそっくりという設定です。
目の色は違いますが(レイヤはハルカと同じ色、アーサーは鮮やかな青、アイリンはローラと同じ緑)。
もちろん彼らは後のローレシア王子、サマルトリア王子、ムーンブルク王女の先祖となります。
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