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久遠の神話

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第九十一話 戦いでも得られないものその二

「邪魔だ」
 それ以外の何でもないというのだ。
「どいていろ、巻き添えになった責任は受け付けはしない」
「では」
「織りたい奴は降りればいい」
 加藤の目は荒んではいない、燃えてはいるが。
 その野獣を思わせる目でだ、竜を見て言うのだ。
「俺は戦うだけだ」
「わかりました、それでは」
「では貴方はです」
 声はここでもコズイレフに対してその声をかけた。
「三日後にです」
「僕の最後の戦いですね」
「それに生き残られたなら」 
 その時にだというのだ。
「戦いから降りて下さい」
「わかりました、それじゃあ」
「それなら私も言うことはありません」
 全くだというのだ。
「降りられて下さい」
「それが僕のこの戦いのけじめですか」
「そうもなります」
 その意味もあるというのだ。
「私も力を集めたいですし」
「少しでも多くですね」
「それ故に」 
 コズイレフに最後に一戦してもらうというのだ。
「こうしたことを言えた義理ではありませんが健闘を祈ります」
「有り難い言葉ですね」
 コズイレフはそこの声の心を見た、それは決して悪いものではないとだ。
「そのお言葉受けさせてもらいます」
「では三日後、場所は」
 声はそのことも話した。
「動物園で」
「八条学園のですね」
「その中にします」
 声は場所も指定した。
「それではまた」
「はい、それでは」
 コズイレフも応えた、そしてだった。
 声は伝えることを全て伝え終わるとそれで気配を消した。コズイレフはそれを全て聞き終えてから場を後にした。
 だが、だった。声は彼のところにだけ赴いてはいなかった。聡美達のところにも赴きその場においてコズイレフのことを伝えた。
 聡美達は三人の家にいた、そこで声の話を聞いて言った。
「わかりました」
「では三日後の十二時に学園の動物園で」
「そこでまたお会いしましょう」
「はい、しかし」
 声は三人の言葉を聞いてだ、こう言ったのだった。
「貴女達はどうしてもですね」
「そうです」
 聡美が毅然とした声で答えた。
「私達はあくまでお姉様をお止めします」
「この戦いを終わらせます」
 智子も言う、やはり毅然として。
「何としても」
「そうなのですね」
「お姉様、もうこうしたことはお止め下さい」
 聡美は声がする方を見上げて言った。
「彼等を解放して下さい」
「神話の時代の罪を今も背負わせて戦わせることを」
「もうお止め下さい」
 そしてだ、こうも言うのだった。
「お姉様ならもうおわかりの筈です」
「彼のことですか」
「例えあの方が目覚められても」
 それでもだというのだ。
「喜ばれません」
「彼は優しい人、その為に」
「この様な、誰かを犠牲にしてまで神となられても」
 喜びはしないというのだ、彼は。
「ですから」
「私に。諦めろというのですね」
「諦めろとは」
 そこまでは言えなかった、聡美は。 
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