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凡人? 天才? それとも……。

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第五話【策士は策に溺れてくれ】

 
前書き
ヒーローは遅れて登場するんだZE☆

遅くなって申し訳御座いませぬ。
次こそは早め早めを心がけていきまする! 

 


「俺、体育嫌いなんだよなぁ。なあ、大地。俺とギャルゲーしないか?」
 B組(逃げ隠れする方)の俺は開始二分三十秒で廊下を隣で歩いている快が鬼ごっこに飽きたみたいでポケットから携帯ゲームを取り出して電源を入れながら言う。
「無理。俺は今凄く、リアルを楽しんでいるんだから」
 快の隣でかなり周りを警戒しながら歩く。
「別にクラスの人と親睦を深めるより。ギャルゲーした方が絶対楽しいってなぁ。どうせ、仲良くなったって無駄だなぁ」
「知らん。俺は今日こそ初日の黒板消しのミスを帳消ししてやる。ここでクラスに貢献して、勝利の美酒を味わうんだ」
 あの忌々しい黒板消しで悪くなった印象を挽回する絶好のチャンスをみすみすとギャルゲーのために見逃してたまるか。そんな意志が俺を駆り立てているんだよ。
「まだ、そんなこと考えているのかぁ。……鬼だぁ」
 快が指を指した方にはC組(現在、鬼の方)の加藤君がいる。快は鬼の加藤君を見つけるなり、鬼の加藤君の方へ猛ダッシュをしだす。少し戸惑って俺も快を追いかける。
「おい、快。なんで自ら鬼の方へ行くんだよ!」
 走りながら快に問いかける。ギャルゲーでやった、挟み撃ちだぁ。と一言返して快は廊下の真ん中で待ち伏せしている加藤君を華麗に抜き去る。なにっ! と快に気を取られた隙を衝いて加藤君を避けて俺もそのまま走り抜ける。
「おい、快。確かこの先から行ける場所は……」
 加藤君を抜いて走っていると階段が見えてくる。現在二階、比較的広い一階に行くか。我がクラスのある三階に上がるか? 
「快。どうする目の前に階段があるし、一端降りる?」
 登ったとしても、三階は逃げるルートが少ないため捕まる確率が上がる。
「……登るかなぁ」
 少し考えて決断を下す。俺も少し考える。
「了解。目的は三階か? でもいい隠れ場なんてなさそうだぞ」
 階段を一段抜かしで登っていく。後ろから、加藤君が携帯で誰かに『上に登った』と言っているのが聞こえた。三階を通り過ぎる。
「お前、どこいくつもりだ?」
 キープアウトテープを越えて、重い扉を開けて、屋上に行く。そして、扉を閉める。
「で、どうする? ここに逃げ場は無いぜ」
「ギャルゲーするに決まっているじゃんかぁ」
 即答して、携帯ゲーム機をポケットから取り出し、ギャルゲーをしだす。
「そんな、暢気なことやっても大丈夫なのかよ。屋上って見つかったら終わりだろ」
 廊下を全力並みで走ったせいで服装が乱れていたので乱れた服装を正しながら聞く。
「立ち入り禁止だし、ここに居るって気づかないだろぉ」
 ルール的に大丈夫か? まあ、反してはないけど。でも、ここで時間まで過ごすぐらいなら、タイムアップになるまで鬼ごっこを楽しまないと損だな。
「快。俺は今から降りて、鬼ごっこを楽しんでくるぜ」
 快は、俺を見ずに携帯ゲームの画面を見ながら、俺のことは言わないでくれよなぁ。と言っていたのを聞いたが、敢えてなにも言わずに階段への扉を開ける。
「分かった。同じチームだから言わねぇよ」
 嫌がらせは信頼関係が成り立ってないと友達を無くし兼ねないことを思い出して慌てて言う。
「分かっていた」
 冗談や嫌がらせ出来る仲だろう、俺達はなぁ。とにっこり笑っている快に、じゃあ。と言って階段を駆け下りる。

   ☆

 クラス対抗変則鬼ごっこ大会もいよいよ大詰めの第三回戦。要するにラストの戦いになる。俺達、B組はC組の代表同士の一騎打ちじゃんけんで鬼、逃げ隠れする方を決するじゃんけんに勝利。じゃんけん連勝のB組は無論逃げ隠れする方を選んだ。一方、陽奈、加藤君が率いるC組は渋々と鬼になった。この時点で士気は下がり逃げ切れると思ったが、ここでみんなを捕まえたら、あたしたちの勝ち。アイスはもうすぐそこ。と言って陽奈が士気を高める。
「五分五分の戦いになるな……これは」
「それにしても元気だよなぁ、大地は。だからギャルゲーをしようよなぁ」
 相変わらずギャルゲーをしている快と喋った俺がバカだった。
「まあ、悪いな。俺はこういう奴だからなぁ」
「快は今、考えていたことを分かったのかよ。凄いな、快は」
 携帯ゲームの画面から目を離し、今の独り言なぁ。と言ってまた目を向ける。
 ははっ! 流石、快さん。一勝一敗のこの状況で有利なのは分かるけど……だからこそ、交流しようぜ。一年一緒に過ごす仲間だから。
「ここらで、逃げ切ってアイスを貰ってB組に勝利に貢献しようぜ」
「そうだなぁ。まぁ、俺はアイスなんてどうでもいいしなぁ。それに所詮交流会だし、ギャルゲーと一部の友達がいれば大満足だしなぁ」
 快、今。サラッと悲しいこと言ったよな。
「寂しいぜ。やっぱり、交流会とかでクラスメイトに株上げて友達作っておかないと……なんかお前みたいになりそうで嫌だ」
 友達いなくて、暇になり。暇つぶしにゲームをやっている学校生活なんて真っ平ごめんだ。
「嫌とか言うなよ。それこそ、悲しいし、寂しいぜよぉ」
 俺がなぁ。と付け足し、ギャルゲーに戻る。
「どうでもいいけど、二人とも最後ぐらいは勝利に貢献してよね」
「当たり前だ。クラスのみんなにアイスを!」
 本音は、黒板消しによって悪くなったイメージをよくするためだけど。
「随分、やる気だけど。また捕まるんじゃない?」
 一回目に捕まらなかったからって、いい気になりやがって。
「なら、お互いのアイスを賭けて。どっちが先に捕まるか勝負といこうじゃないか」
「望むところよ、大地の吠え面が目に浮かぶわ」
 睨み合う二人。すると、そんな俺達三人の元に陽奈、加藤君が来た。
「凛。B組には絶対にアイスは渡さないから」
 ここに来てC組がまた戦線布告をしに来た。てか、どんなにアイスが大事なんだよ。
「それはこっちの台詞よ。勝のは、B組。覚悟はできているよね?」
「覚悟ならとっくの昔に出来ているよなぁ? 大地君やぁ~」
 この快の奴、さっき話した黒板消しの日の決意のこと言っているな。
「なら良かった。これで本気を出せる、交流会だからって手を抜いていたけど……もうそんなことどうでも良い。勝ちに行く」
「陽奈が本気でやるなら、私も遠慮なんてしないから」
 一応、交流会なんだし、仲良くやれよな……はあ。……前言撤回、やってやろうじゃないか。
「それでも勝のは、あたしたちC組!」
「「いいぜ(わよ)。その喧嘩、勝ってやる」」
 俺は手を抜くかもしれないなぁ。と言ってトイレに向かう快に、やれよ! と一喝する。
「みんな、準備はいい? 紅白鬼合戦大会。ラスト戦、はじめぇぇぇええ!」
 凛の宣言と共に紅白鬼ごっこ大会(過去)現、紅白鬼合戦大会が始められる。鬼が三十秒間止まっているのでその間に距離をとり、出来るだけ離れる。
「――29、30。みんな。まずは体力のありそうな人を片っ端から狙うこと」

    ☆

そんな命令が何故か今一緒にいる。快の耳に入っていた。
「あっ! そうだ。大っち、ここに来る途中に凄いことを聞いたなぁ」
 急に声を出すから、一気に周りを警戒してしまった。
「な、なんだよ。その凄いことって?」
「まあ、俺には関係ないんだけどなぁ。C組の作戦では、運動が出来る人から狩るみたいだぞぉ」
 快はこれ以上ないくらいの満面の笑みで言う。
 何処まで、人の不幸が嬉しいんだよ。と思ったが快が余りにも嬉しそうだったので言う気をなくした。
「快、どこで仕入れたの、その情報を? てか、なんで知っている?」
「トイレに行っている間にお前と凛が勝手に陽奈とかと盛り上がって、紅白変則鬼ごっこ対戦を始めるから出遅れた。だからなぁ」
「分かった。出遅れてトイレから出たら勢いを増した紅組がお前を無視して走っていったとかそんな感じだろ?」
「流石ぁ、我が親友。良くお分かりで、詳しく言うと紅組みんなが口々に運動できる奴を狩る。付き合っている奴を狩る。リアルが充実している村西と幸谷を狩るって、言って村西の所に行ったからなぁ」
「待って! なんで俺まで……。リアル充実組に入った覚えはないぞ!」
 スマホのバイブが数回振動するのに気づき、快はスマホをポッケトから取り出す。内容を確認してから俺に見せる。
 なになに、宛は陽奈で、変態と行動していると思うから送る。村西は捕らえたから。と絵文字ありで送られている。
「おい、大地。村西君が捕まったみたいだなぁ。どうする? 鬼がこっちに流れて来るかも知れないなぁ」
「次は誰を狙ってるんだ? 順番的には……」
「次はきっとお前だぁ。まあ、俺には関係ないけどなぁ」
 また、スマホのバイブがする。今度は俺で、中身は凛からだ。陸上部の北原君に弓道部の江上さん等々の捕まった人の情報が入る。
「やばいぞ。大分、捕まってきている。そろそろ、逃げた方が……」
「見つけた! ゲーマーの桜沢君にクラス委員の幸谷君です。みんな、幸谷君を優先にしてついでに桜沢君も捕まえましょう」
 あれは、一回戦で華麗に快に抜かれた。加藤君だ! 
 俺をついでにして快に集中しろよ。快があの場にいなかったら、俺は捕まっているから。と内心焦りながら加藤君に背を向ける。
 すると快は、俺、関係ないからなぁ、捕まってもいいやぁ。と言って加藤君の方に走って行く。出遅れた俺は罠と分かりながら階段を目指す。
掛かったよ。と大声で加藤君が叫ぶと目の前に二人のC組が立ちふさがる。
 
    ☆
 
一方、快の方では楽に加藤君やその他のクラスメイトを抜き。前にある男子トイレからの奇襲を予想して、トイレのドアを足で押さえる。中からドアを叩く音がする。どうやら、成功したなぁ。と内心思う。さっきは大地に関係ないと言ったがどうしたものかぁ。一応、逃げ切って大地に貸し一つとしようかなぁ。
「さあ、これからどうするかなぁ」
 向こうの計画だときっとここで捕まえるつもりだろうからなぁ。また、屋上に逃げてギャルゲーしながら時間を潰すかなぁ。
屋上に向かうルートを考えようと快に油断大敵、その言葉が快の耳に入いる。
 その言葉の主を確認する為に後ろを向くとそこには陽奈が。どこから、現れたぁ。と思ったが、すぐに出所が分かった。出所は女子トイレだぁ。男子トイレがあるなら女子トイレも近くにあるのは当然である。男子トイレからの奇襲は予想済みだったが、女子トイレからの奇襲は考えたが女子はそんなことしないだろと高を括っていたのが反省すべき点だぁ。それに男子トイレに隠れている鬼がドアの内から音を立てたのも納得出来るしなぁ。普通、中にいることを教えずにいないのかと油断させるとトイレより周りに警戒心が強まり、そしてトイレへの警戒心が薄れたところを狙うからなぁ。逆に内からドアを叩くと周りよりトイレに警戒心が強まる。だから、トイレを気にしすぎて周りから来る。鬼に気付けなかった。まさか、ここまで読める奴がいるとはなぁ。
「やるなぁ、陽奈も。まさか女子トイレに隠れるとはなぁ」
「そう? お兄ちゃん……快のことだから女子トイレは警戒網から外すと思って」
 陽奈はそう言って、タッチする。これで捕まった。
「我が妹にしては、頭をつかったなぁ。これ、陽奈が考えたのかぁ?」
「加藤(かとう)清道(きよみち)が考えた。快君にはこれくらいの罠を張らないと、って」
 大人しく教室へ戻ってよ。と言って陽奈は廊下を走って行った。
 やられた。陽奈の情報に加藤の罠かぁ。大地は無事に逃げ切れるだろうかなぁ? まあ、俺が見込んだ親友だからなぁ。
 少しはクラスメイトに興味が出た様だったが、すぐに携帯ゲームを取り出しギャルゲーをし出す。

    ☆

一方、大地の方では。
「ふぅーっ。あの柔道部の体格のいい富山君がいてくれて良かった」
二人のクラスメイトを根性と『あっ! UFO』で抜き。階段を登って二階に行ったら追ってきた、加藤君たちも二階に行くことを予想していたみたいで、二階に別働隊が待ち伏せていた。かろうじて別働隊を避ける。避けるのは成功したが逃げ切れた訳じゃない! その時に目の前から紅組に追われていた白組の富山君が現れた。富山君は俺とその後ろにいる加藤君含む、紅組小隊を見て逃げ切れないと悟って俺の盾となってくれた。富山君の捨て身の守りのお陰様で後ろの紅組小隊が少し足止めされたのを確認してから富山君を追って相当疲れ果てた紅組のクラスメイトを余裕で抜き、そのまま三階の階段へ走り出す。三階の階段を登り、近くにある男子トイレに入り身を潜める。
「これから一人か、快がいれば話し相手にでもなったのに……。考えても仕方ない、後。七分三十秒間頑張るしかねぇよな。それに捕まったら、アイスが凛のものに」
 男子トイレから出るとすぐそこに三階の階段を二階に下る、紅組のクラスメイト数人がいた。
『後、残り七人でこっちには陸上部が三人もいる。アイスはすぐそこだな』
『……それに加藤たちが狙っていた二人の片割れは罠に引っかかった』
『でも、もう一方は悪運の強さが尋常じゃないって』
 他のB組の仲間も同じような手でやられているのか。足音を立てずにこのC組のクラスメイトから離れるか。
 その後、単体で行動している鬼としか出会わないと言う、悪運の尋常じゃない強さ。そして、現在ラスト三分にまで至る。
 後、何人ぐらい残っているかな? と考えながら二階へ上がる階段に差し掛かったところで階段を見るとそこには……加藤君! 
「また、加藤君かよーっ!」
 加藤君は舌打ちをして階段をテンポ良く下る。廊下を走り、単体の鬼を見つけては避け、見つけては避け。そんなことをしているとやる気が欠けていた鬼達までも『待てやぁーっ!』とか『やるね、君』などと言って追いかけてくる。一瞬、これでクラスメイトに認識してもらえる。やったー。などと悦楽に浸っている間もなく、C組のクラスメイトに追われる。
 鬼=スタミナ∞でなく疲れるものだ、疲れて歩き追うのを止めていく鬼の中。奴は諦めずに俺を追う姿をしっかりと確認した。そいつは次々と倒れていく鬼達の想いを受け取り、俺を追う。
だからと言って、俺も捕まる訳にはいかない。俺もB組のみんなの想いを背負ってこの廊下を走っているのだから。まあ、それよりも凛に負けたくない。と言う意地の方が強い。
「加藤君っ! 俺達が逃げ切って勝利は頂くぜ。そして、アイスは俺達、B組が貰うからな」
 加藤君から逃げながら後ろも見ずに叫ぶ。
「それは困ります。こっちらもそう易々とアイスを渡せない理由もありますからね」
 と言って加藤君と俺の戦いが始まった。しかし、持久戦は大地が不利になりつつあった。
 残り六十秒。生き残り俺と凛と神(かん)凪(なぎ)さんの三人になっていたらしい。神凪さんは運動が嫌いなのか何処かに隠れているらしい。半数の鬼は神凪さんを捜して、後半数は俺と凛を捕まえようとしている。
 加藤君、結構体力あるのかよ! 見た目で人は判断してはいけないってこういうことか! 
「もう、諦めたらどうでうすか? 僕が力尽きても、他の鬼が君たちを狙ってくるんですよ」
 加藤君は問いかけるように叫ぶ。俺は叫びたい気持ちを抑え、全力ダッシュをする。
 するとついに加藤君が追いかけるのを諦めて歩き出す。
 これは逃げ切った。と思った時、加藤君の後ろからC組の鬼を連れて陽奈が全力で追いかけてくる。
 俺は悟った。俺が最後の生き残りだと、B組の最後の希望だと、逃げ切れば……B組の英雄だと! なら、逃げ切るしかない。
「そして、凛からアイスを奪ってやる!」
「それは、まだ分からないわよ?」
 目の前から凛の声が聞こえる。凛の後ろにもC組の鬼が!
「なんで、前から来るんだよ!」
 挟み撃ちとか、無理だろ?
「知らないわよ! 大地がそっちから来るからでしょ?」
「仕方ないだろ、加藤君に追いかけられていたんだから!」
 加藤君……。もしかして、これを狙って今まで必死に追いかけていたのか?
 チラッと後ろの加藤君を見る。加藤君は笑っていた。どうやら、俺は加藤君の手のひらで踊らされていたようだ。
 さて、どうする。目の前には凛と鬼。引き返そうにも後ろには、陽奈とか。ここは二階の廊下で当たり前だけど一本道。多くの人を交わせるスペースもない。そして、あの数から逃げ切るほどの体力は残ってないんだよ。
「君は! 諦めるのかい? 折角、僕から逃げ切ったのに、君は諦めてしまう器なのですか?」
 この声は! 加藤君? そうだ! まだ、逃げ切れない訳じゃないはずだ。なにか手があるはず。この残り少ない体力で出来るなにかが。
「みんな、残り三十秒を余裕で切った。陸上部の人は本気で大地と凛を捕まえて」
 もう、考える時間がない。陸上部のクラスメイト中心に走ることを得意とするクラスメイトがすぐそこまで迫っている。
 逃げ切る手はないのか? クラスメイトから逃げ切る手を! 考えろ、きっと何処かにあるはずだ! この状況を覆す活路が。……っ! こうなったら、やるしかない。
 俺は近くの窓を開ける。
 心の準備をする暇はねぇ。すぐに飛ぶしかない。飛んだ後のことは、空中ででも考えるとするか。
「まさか、ここは二階ですよ? ケガをしてもいいんですか! 僕は、窓から逃げられないように一階を避けておいたのに!」
 加藤君が驚く。俺は二階から勢いよく飛び降りる。空中でバランスを取り、手を着くが無事にケガ無く着地。
 ふう、これで逃げ切っただろう。二階から飛び降りる奴なんて早々いないだろ。と、腰を上げる。
「大地、どいて!」
 二階から凛の叫び声が聞こえてくる。直後に凛が髪をなびかせ降ってくる。正確には、飛び降りてくる。凛は俺よりも綺麗に着地する。
「あ、あぶねぇな!」
 男子ならともかく、女子はいくら他の二階の窓に比べて低いからって飛び降りないだろ!
「お前、いくら切羽詰まったからって、二階から飛ぶなよ。心配するだろ」
「大地に言われたくないわよ! それに私だけ捕まって、アイス取られるのも尺に障るから」
 まあ、パンツは見えていたけどケガなくてよかった。それと着地は俺より見事だったけど……。
「案の定、二人が降りましたよ。みんさん、後は頼みました!」
 二階から加藤君が叫ぶ。すると校舎の影から、C組の連中が姿を現す。
「まさかと思うけど……。加藤君は俺達が降りることも予想していたと」
 なら、さっきの、まさか、ここは二階だぞ。の件は三文芝居だというのか? 加藤……。加藤の奴! 策士だな!
「そ、そう見たいね。これは非常に不味いわね」
 流石の凛もこの数には圧倒されているみたいだ。俺と凛を目掛けて走ってくるC組の人たち。
 この数は、逃げ切れる量ではない。背中を向けて走ったとしても今の俺の体力じゃ、どうにもならない。
「私は右行くから、大地は左へ! 二人中良く一緒にいても絶好の的になるだけだから!」
 直ぐさま、凛が対応する。この状況でも諦めてない凛は凄いよ。凛も体力的に限界なのに。
 俺は最後の力を振り絞って左に走る。取り敢えず、あの量を分断して凛の負担を減らす! しかし、C組の追っ手がもう触れることのできる位置に!
「逃げ切りたい!」
 切なる思いをつい口に出してしまう。
「……避ければいい……と思います」
 ……避ける? そうか! 避ければいいんだ! まだ、希望の光は消えてない。
『よし、捕まえた!』
 伸ばした手を払い、手の主を避ける。そして、雄叫びを上げる! クラスの女子はビクッとして一歩引く。その隙に男子の手を払いながら避ける。
『おい! 反則じゃないか!』
 叫ぶ男子クラスメイトの言葉を無視して目の前の鬼に集中する。
「反則じゃないよ。これは暴力でもないし、タッチされた訳じゃないですからね」
 二階から加藤君が叫ぶ。フェイントを掛けて最後の一人を抜く。
 抜けた、俺の勝ちだ! いや、B組の勝ちだ! これで俺は初日の黒板消しから生まれた、ドジっ子属性がなくな――
「凄いよ。大地君はみんなを抜ききるなんて! でも、終わりだ」
 目の前に加藤君が降りてくる。そして、道を塞ぐ。
「これも計算の内って訳か……! 最後の最後までしつこいね」
加藤君は無言で笑う。俺は諦めずに今出せる全力で加藤君を抜こうとした時に後ろから、終わりだ、変態。と言う陽奈の声が聞こえて肩をタッチされる。
 ……終わった。
 タイマーの音が陽奈のポケットから響く。
 すぐに凛の方を見たがどうやら捕まっているようだ。凛の周りには、陸上部の人たちがいた。加藤君は、俺より凛を優先して狩りに行ったようだ。
 
 

 
後書き


もう少しでまともな話しを書きたい。

指摘・感想・誤字脱字がありましたらすみませんでした。
 
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