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戦国異伝

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第百五十四話 北ノ庄その四

「そんな者おりませぬな」
「町にもおらぬしな」
「はい、有り得ぬことです」
「では何者じゃ」
「ううむ、一向宗であるとしても」
「顕如なら知っておるか」
 信長は本願寺の法主である彼ならと思った、ここで。
「若しや」
「ではです」
 ここでは増田が言って来た、彼女が言うには。
「ここはまず加賀を平定して」
「そうしてじゃな」
「はい、摂津に赴きましょう」
 その顕如のいる法主にだというのだ。
「そうしましょう」
「そうじゃな、ではな」
「加賀攻めですな」
「この越前を収めてからな」
 まさにだ、それからだというのだ。
「そうするぞ」
「それでは」
「軍を幾つかに分ける」
 これが信長の今度の戦い方だった。
「権六、牛助、久助、猿、五郎左、猿夜叉、与三、勝三郎にじゃ」
 織田家で兵を率いることに長けた者達の名が挙げられていく。
「そして鶴千代、十兵衛」
「それがしもですか」
「そうじゃ、御主もじゃ」
 己の名を聞いて声をあげた明智に答えた言葉だ。
「それだけのものがあるからな」
「有り難きお言葉、それでは」
「うむ、そして最後は」
 これまで十人挙げた、そしてさらに一人だというのだ。
 信長が顔を向けたその者はというと。
「十二郎」
「それがしですか」
「御主にも兵を授ける」
 そしてその兵でだというのだ。
「働いてもらうぞ」
「何と、それがしもですか」
「わしは力のある者しか用いぬし使わぬ」
 だからだというのだ。
「御主にも兵を率いてもらう」
「わかりました、それでは」
「それぞれ一万の兵を預ける、それで収めて参れ」
「わかりました」
 名を挙げられた十二人がそれぞれ応える。
「わしは残りの兵を率いて加賀との境に向かう、そこで加賀から来る門徒達に備える」
「では護りは我等が」
「我等が務めます」
 毛利と服部はいつも通り二人の周りを固めるというのだ。
「ですから殿のことはご安心を」
「我等が必ず」
「うむ、頼むぞ」
 柴田がその彼等に応えて言う。
「それではな」
「はい、では」
「何としても」
「ことが済めば後はじゃ」
 どうするかというと、今度は信長が言った。
「北ノ庄じゃ」
「あの地にですか」
「行きそれからじゃ」
 そうしてだというのだ。
「この目であの地が北陸の拠点に相応しいか見定める」
「そしてそのうえで」
「うむ、加賀じゃ」
 本願寺の総本山のその国にというのだ。 
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