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久遠の神話

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第九十話 家族の絆その五

「間違いなくね」
「それでは」
「もう貴女は仕掛けたから」
「では私の為すことは」
「終わったわ」
 無論智子もだ、賽は投げられたというのだ。
「後はことの成り行きを見守るだけよ」
「わかりました、それでは」
「戻って来て」
 日本、今彼女達がいる国にだというのだ。
「そうして見守りましょう」
「後は私達がすることはそれだけですね」
「熱の剣士についてはね」
「では」
「帰ったら。お茶を飲みましょう」
 智子はここで声を微笑まさせた、そのうえでの言葉だった。
「そうしましょう」
「お茶ですね」
「いい紅茶が入ったわ」
 智子は微笑まさせた声のまま豊香に告げる、その話をしながら自分はコズイレフの部屋の前から去っている。
 そうしながらだ、こう豊香に言うのだ。
「それを飲みましょう」
「それでは」
「お茶菓子もあるから」
 茶には絶対に欠かせないそれもだというのだ。
「チーズケーキがあるわ」
「あのケーキですか」
「チーズケーキ、好きだったわね」
「大好きです」
 豊香は声を弾ませた、そうしながら彼女もコズイレフの家族の家つまりアパートの一室を後にする。そうしながらだった。
「日本に来て驚きました」
「そうね、日本のケーキは相当な美味しさよ」
「甘さは欧州のケーキに比べて控えめですが」
 それでもだった、そのケーキは。
「素晴らしい味ですね」
「甘さは忘れられない味よ」
 一度味わえばだとだ、智子はコズイレフの部屋がある寮を後にして左右に緑が豊富にある道を進みながら豊香の脳裏に直接話す。
「一度知ればね」
「神話の頃からですね」
「ええ、贅沢といえば」
 それの話にもなる。
「まずは餓えがないこと、そしてね」
「甘さを知っていることですね」
「神話の頃、古代の頃は」
「人は今よりも遥かに貧しかったですね」
「そう、それが為にね」
 餓えとは常に隣り合わせだった、そうした中ではだ。
「人は甘さもね」
「とても知ることは出来ませんでしたね」
「果物があったけれど」
 林檎や葡萄、オレンジがあった。だがそうしたものも。
「この時代と比べれば遥かにね」
「甘さは弱く」
「そして少なかったわ」
「そうした時代でしたね」
「その頃と比べたら」
 今のこの時代はというのだ。
「全く違うわ」
「そうですね、本当に」
「お菓子というものなぞね」
 神話の頃はというのだ。
「滅多になくて。私達神々もそれ程知らなかったわ」
「しかし今は」
「ええ、多くのものがあるわ」
「そして甘さ自体もですね」
「強くなり、そしてね」
「美味しくなっていますね」
「人は進んだわ」
 智子は微笑んでこうも言った。 
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