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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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八章 幕間劇
  仕合×治療

ふむ、なぜこうなったのだ?俺は今二人の家老と説教を受けられていた。

「一真様、聞いていますか?」

「聞いているが、納得がいかん。そもそもなぜ俺なんだ?久遠にでも言えばいいではないか」

「はあ、久遠様もそうですけど、一真様もその態度ですか」

壬月と麦穂は、俺達が京に行った後に責められていたが俺にはちんぷんかんぷんだ。文句があるのなら、久遠に言えと言っているけどね。

「全く。久遠様にも困ったものだ」

「私達に何の相談も無しに自ら京にまで出向いてしまうなんて」

とこんな感じだ、無論俺は何も悪い事などしていない。ただ久遠について行っただけだからな、それに壬月と麦穂は俺の上司でもない。それに俺は人間だけど神でもある、大天使化が神の姿だとここにいる二人もそう思ってるけど違うんだよな。今の姿も本来の姿だけど、神の姿はもう一つある事は知っているだろう。あいつが出てこない限りはな。

「念のために言っておきますけど、私達は何も、小言を言うために呼んだ訳ではありませんからね」

「分かってるよ。心配してくれたんだろう?だが久遠ならともかく、俺は何も心配はいらんと言っておこう」

「はあ、まあご無事でよかったですが。ですがこれだけは言わせてください。旅先ではどのような事が起こるとも知れません。夜盗などに夜討ちをかけられる事もあれば、多勢に無勢という状況に陥るでしょう。それが戦場であるなら、傷を負い・・・・万が一、命を落としたとしても、武士として恥じる事もなく、名を残す事も出来るやもしれません。ですが、名を伏せた旅の最中でそのような事になれば、お二人だけでなく、国に残された我らも悔やんでも悔やみきれぬというもの」

「はー、あのな、神が死ぬ事なんてないだろう?俺には死者蘇生という力もある。もしそのような事になったとしても、蘇生させるだけだ。それに重傷を負ってもすぐ治る薬も持っているんだ。俺をこの時代の人間と合せないで頂こうか」

俺が言うと反論しようとしたが、俺の言う事が正論なので黙ってしまった。それに、重傷負ったり死ぬような病になったとしてもエリクサーで一発で治るからな。

「麦穂よ。それくらいでよかろう」

「壬月様?」

「久遠様も根っこの所はそう変わらん。結局、自分の信念に基づいて動いているのだから、周りが何と言おうが無駄と言うものだ。それに一真様がただの人間だったら、麦穂が言っている事でこいつは反省するだろう。だが、一真様は神仏の類の者だからな。例え多勢に無勢になったとしても、私達には想像も付かないような事されると思うのだが、まるで反省の色がないからな。少し灸を据えておこう」

「ほう。俺と久々にやるか?いいだろう、表に行こうじゃないか」

と言って、俺は表に出た。そしたら見慣れた斧を発見。確か金剛罰斧だったな。何か名前が似ているからパクリのような。確か恋姫世界で、華雄が使っていた武器は金剛爆斧。武器の形は違うけど。

「何だ?最初からやる気のようだな」

「出先で鬼と殺り合ったと聞いたぞ。お市様と手合せしたともな。今度こそ私が勝つ」

俺は空間から刀を取り出した。聖剣エクスカリバーだけど擬態によって隠しているから、いつか本当の姿が見せる時があったら見せたいね。斧を担ぐように持ち上げた壬月が、グッと腰を落として構えた。見覚えのある構えだったから、俺も受け止める態勢で構えた。構えると壬月の身体には、闘気が満ち溢れていた。

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

振り下ろされた斧は受け止めるようにして、刀を横で抑えたが前より違うな。これは少し本気を出しているのかもしれないな。

「ほう、随分と力を出しているではないか。前より力強いが、まだまだだと言っておこうか!」

と言って、斧を押してから一旦離れた後、俺は風術を発動させた。この世界の風は良いものだ、現代の風は汚染で汚れているからな。

「何だ?あの風は。だが、そんなこけおどしには私には効かんわ」

「言っていろ。これで決める」

と言って風の精霊を呼んでパワーを溜めた後に、俺は蒼い風刃として放った。壬月は、ただの風だと甘く見たのか避けなかったがそれはミスだ。刃は一旦壬月の後ろまで行くが、そこから小さな風刃となって360度の風刃となって壬月に襲い掛かった。

「なっ何!!!!ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

勝負は俺の勝ちとなった、そもそも壬月の五臓六腑を受け止めてる時点で俺の勝ちは変わらなかった。壬月は風刃を受けた後、防御しないまま受けたので、傷だらけになった。主に服が。

「大丈夫か?加減はしたのだが」

「ただの風なのに、こんなにボロボロにされるとは思わなかった。さっきのは何だ?」

「これ?これは風術という。風の精霊の力を借りる術だ。それと服だけはやる前に戻しておくか」

指を鳴らしたら、壬月の服はやる前に戻った。これは神の力の一つで、時を操る力。これを使う時は、主に建物の修復とかに使う。あと回復の力もあるけど、今は使わないでおこう。

「一応手加減はしといたけどな。あとさっきの一撃はお家流なのか?」

「あれで手加減とは驚きです。あれは壬月様のお家流である五臓六腑です。ですが、受け止める時点で勝ちは決まっていました。どこかお怪我はありませんか?」

「あれがね。いや無いな。ところで麦穂はお家流使えるの?」

「はい。それはもちろん」

「ほう。どんな技何だ?」

「そうですね。説明するのは少し難しいのですが、軽く拳を作って、こう前に出してもらえますか?」

「こう?」

俺は言われた通りに手を握り、指の側が麦穂に見えるように軽く持ち上げた。すると麦穂も同じようにして握った拳を俺に見えるようにした。

「それで私が『せーの』と声をかけますので、指を一本立ててみてください」

「指を?分かった」

「ではいきますよ?せーの」

声に合わせて俺は人差し指を持ち上げる。それと同時に麦穂も人差し指を上げていた。同時ではないな、俺が上げる前には麦穂が先に上げていた。

「ん?どういう事だ」

「もう一度やってみますか?せーの」

と何度もやってみるが、俺より早く指を上げていた。

「それはあれか?気配で分かったのか」

「はい。今ので言えば、実際に一真様の指が動くより先に、動こうとする気配のようなものを感じて、それに合わせて私も指を上げてみせただけです」

「つまり、ほんの少し先の動きを読む、という事か。名前はあるのか?壬月の五臓六腑みたいに」

「私のは闇夜灯明と言います」

「へえー、それでも十分な技だと俺は思うな」

「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」

と言って、俺に身体を見るようにするが怪我はないので今度は壬月の番だが。麦穂は次はと言いかけたら、不機嫌な顔になった。

「そう言わずに。全身に風の刃を喰らったのですから、顔や手や腕に切り傷がありますよ」

「こんなもの唾でもつけておけばすぐに治るわ」

「駄目です。壬月様はそう言っていつも放っておくじゃないですか」

「麦穂よ。壬月の様子が変わったが、どうかしたのか?」

「ああ、壬月様は薬が苦手なんですよ」

「麦穂!」

「何です?本当の事を言っただけじゃないですか。怪我そのものではなく薬を塗られて染みる事に怯えるだ何て、どうしてこんな方が鬼柴田と呼ばれて恐れられているのか不思議で仕方ありませんね」

「くっ・・・・麦穂、貴様・・・・」

ああ、なるほどね。薬が染みるから嫌なのか。まあたまにいるよな、鬼軍曹な教官だったとしても注射器をする時は怖がる人みたいな感じか。からかうような麦穂の言葉に、壬月は怒気をみなぎるが全然怖くない。で、麦穂の手には薬の容器があるのを見て、悔しそうに後ずさりする。

「ええい、とにかく手当てなどいらんと言ったらいらんのだ!」

壬月はそう叫ぶと、踵を返して一目散に逃げようとするが、しかし。

「えいっ」

壬月が踏み出した最初の第一歩が地面に着く直前、麦穂が抜いた刀の先で、その足を払いのける。まあ俺がやってもよかったんだけどね。風で捕まえるとか地の力を使って壁を作るとか。

「うお!?」

地面に着くべき足が跳ね上げられ、バランスを崩した壬月はなすすべなく転んでしまった。

「感情的になっている時は動きが読みやすくなるのですよ」

「あははは」

「麦穂!余計な怪我を増やすつもりか!」

「素直に手当てをさせてくれない壬月様が悪いんです」

麦穂は涼しい顔をして言い返すと、まだ起き上がれずにいる壬月に近付いて行く。

「さあ、一真様も手伝ってください」

「任せろ、と言っても風で押さえておくから暴れても無駄だよ。壬月」

壬月の身体を浮かして、動けなくするようにした。これには麦穂も驚いていたが、やりやすくなったので傷の手当てを始めようとした。

「ええい、覚えていろよ。というか本当に体が動かん!」

「壬月様。一真様は壬月様の事を思って手を貸してくれているのですから、後で乱暴な事はなさらないで下さいね。ではいきますよ」

「ま、待て麦穂。まだ心の準備が・・・・くぁっ、ぅぅうううううう!」

「一真様のお蔭で、固定できましたからね」

「何度も言っているだろう。こんなかすり傷、唾でもつけときゃその内治るってのに」

「その内じゃ困るんですよ。明日、いや今夜にだって戦があるかもしれません。壬月様は織田勢の要。それをご自覚下さいませ。壬月様にはどんな時も万全の身でいて頂かなければならないのです」

「麦穂・・・・」

「・・・・という訳で、一真様。しっかりと風で押さえておいて下さいね!」

「おうよ、というかだな壬月。唾をつけても治らんよ、逆に治りにくくなるだけだ。諦めよ」

「とか言いながら、腕の裾をめくるな!」

「ほら。ここにも切り傷がありますね。しかも沢山ですが、一応塗っておきましょう。さすが一真様の風の刃ですね」

「そ、そんなもん。傷の内に入らん」

「そんな事を言って。放っておいたら傷が化膿してどうするんですか」

「そうだ。せめて消毒液かけて包帯巻いたらどうなんだ」

「そ、そのくらい自分で出来る!」

「ダメです。自分で自分の腕にどうやって巻くのですか」

と言って、俺は空間から医療班がよく使うバックを取り出した。そして壬月の腕に消毒液を垂らしたら、叫んだけど。

「一真様のそれは水ですか?」

「いや消毒液だ。擦り傷とか出血しているところに付けると染みるが、よく効く液体だ。飲めないぞ」

「その箱には色々と入ってますが、薬箱ですか?」

「うーんと黒鮫隊がよく使う鞄だ。俺達のところは、色々あるが一応医療班を待機させている。あとこれは切り傷によく効く薬だから塗らないとな」

「げげっ!それは飛ばして包帯を巻くだけにしないか?」

「分からぬ事を。薬も塗らずに包帯を巻いても意味がないじゃないですか」

ここは任せろと言って我が隊がよく使う軟膏薬を、指に少し塗ってから壬月の腕に塗ろうとした。まあ暴れても無駄だけどな、それに先程の叫びもよかったしな。

「うわぁ!染みるっ、染みる!」

「まだ塗ってないぞ、壬月」

「・・・・あれ?」

「この童のように駄々をこねているのが織田の誇る、鬼柴田とは・・・・」

「し、仕方がないだろう!誰にだって苦手なものの一つくらいはあるだろうが!」

ん?これ、どっかで聞いた事あるような。

「あら?壬月様は苦手なもの何てお有りになりましたっけ?」

「ぐっ・・・・」

「あ、そうだ・・・・確かお茶とお饅頭と伺った事があるようなぁ」

「いつぞやの仇を取りに来たなっ!卑怯な!」

「卑怯とはどの口が仰るのかしら?」

とアイコンタクトで来たので、俺は咄嗟に切り傷があるところに塗った。

「ぎゃあああ!!」

塗ったら盛大に叫んだ壬月。おいおいこれでも染みないもの何だが、でも薬嫌いなら何でも染みるのか。

「し、染みっ・・・・染みるっ!!」

「何ですか、大袈裟な。戦場では矢傷も刀傷も恐れた事のない無い癖に」

「それとこれとは話が違うのだ!」

「その違い、私にはとんと分かりかねます」

と俺が塗った後に、素早く包帯を巻いて行く麦穂。話ながらだけど巻いて行くとはね。

「また『女子(おなご)』のように悲鳴を上げて。一真様も笑っているのですから」

「なっ、一真様っ!!」

「笑わない方がおかしいだろう。これだけの治療で叫ぶとはな、くくく」

「さすが、一真様。素直な感想ですね」

「があああああっ!!ちくしょう!」

「叫ぶのもいいが、そうやって叫んでいると何事かと思って部下が来ても俺は知らんぞ」

「お前達覚えていろ・・・・・くうううう!」

「はい、楽しみにしております♪」

結局、壬月は俺と麦穂が治療をしている間、ずっと文句言ってた。その口を押えたのは、薬を塗っている時だった。俺が塗ってから麦穂が包帯を巻く。結構連携プレイだろうな、これは。それに風によって動けなくしてる。それに麦穂に弱点を押さえられて翻弄される姿は、何だか新鮮だなと思ってしまったのは俺だけであろうか?  
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