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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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七章
  京から小谷へ

京での情報収集も終わり、俺達は一葉と別れて美濃への帰路についた。今は、馬に乗ってゆっくりと進んでいる。

「堺といい、京といい、何か色んな事があったな」

「まさか生きている内に、公方様のご尊顔を拝める何て思ってもいませんでしたよぉ~」

「妹君に会う何て事も考えてなかったよねー。けど・・・・えへへー、双葉様、優しくって可愛くって、何かもう幸せーって感じだよぉ♪」

「なぜひよが幸せになるのかは分かりませんが。・・・・足利幕府と繋がりを持った以上、織田の動きも変わるでしょうね」

「そうだな。・・・・それより一真」

「何だ?」

「確か浅井の所に寄りたいという話だったが・・・・如何にする?」

そうだな、美濃を出た当初と今の状況は違う。俺の知っている歴史とは違うと思うけど、一応浅井には会いたいと思う。この目で確かめて、味方かどうかの区別を付けなければな。

「やはり今の現状より、一度浅井に会いたい。いいか?」

「構わん。ならば少し寄り道をするか」

「では今北より北上し、小谷を目指しましょう」

小谷・・・・浅井家の本拠地・小谷城のある山の事。小谷城そのものを指したり、小谷山の事を指したりする。

「ころ。浅井家はどういう家柄?」

「浅井は元々京極氏の被官でしたが、世の下克上の流れに乗って、主筋である京極氏を追い落とした、武闘派の家柄ですね」

京極氏・・・・近江源氏。古い家系であるが、戦国時代を生き抜き、明治時代には華族(子爵)となっている。

「十年程前までは、浅井家は近江で強勢を誇っていましたが・・・・」

「江南の佐々木氏・・・・正確には六角氏ですね。その六角氏との戦いに敗れ、臣従するようになりました。でもここからが浅井氏の凄いところ。先代・久政様の類い希なる外交力によって、何とか江北の領地を維持できるところまで復活した後、武勇優れる当代・長政様を家中の者達が担ぎ上げ、武力に物を言わせて六角氏より離反してしまったというのが、今の浅井氏の状況ですね」

「なるほど、いつも分かりやすい説明ありがとうな」

「へへー♪」

「今は我の妹が長政に嫁いでいる。よって織田と浅井は同盟関係にある。・・・・上洛する時の力となってくれるであろう」

ほうほうなるほど。そういえば、俺久遠の妹には、会った事ないがどんな子なのだろうか?

「久遠の妹はどんな子なんだ?」

「名は市という。・・・・そういえば一真の事を手紙で伝えたら、妙に会いたがっていたな」

俺の事を会いたがっていたのか。ならば今がちょうどいい。これから行くのだし。

「久遠様ー、小谷にはどれ程ご滞在されるお考えですかー?」

「五日程を考えているが・・・・何かあるのか?」

「えへへ、お市様にお会いするの、久し振りですから楽しみだなーって」

「そういえば市はひよの事を可愛がっていたな」

「はい!たくさん良くして頂きました。だからですねー、じゃーん!京でお土産を買ってきましたー!」

「・・・・・・・なんだそれは?」

「手袋なのか?それとも判子に見えるような」

「その通りー!お市様がいつも使っていた闘具の、京物の最新版をお届けするのですー♪」

「闘具!・・・・久遠、市ってどんな子なんだよ」

「市は活発な娘でな。子供の頃は壬月を相手にして、よく暴れ回っておった」

「壬月相手にねえ。それはガチでやったのか?」

「ああ、ガチでやってたぞ」

ガチかあー。俺とやった時は、確か本気ではなかったはずだ。あれより数倍となっても勝っていたと思う。というか闘具って事は徒手空拳でやっていたのか?まるで凪や貂蝉を思い出すな。凪は気で戦い、貂蝉は拳。しかもあのアグニの攻撃さえ無傷でいられるとかだったし。考えてもあれなので、会うまでは楽しみにしておこうと思いながら進むのであった。

「一真様・・・・小谷が見えてきましたよ」

詩乃の声に顔を上げると、遥か向こうに小さな城が見えた。望遠鏡で確かめると確かに城だった。

「美しい・・・・山々を覆う鮮やかな緑の中、慎ましげに姿を見せる城館は、まるで海に浮かぶ小舟のような・・・・」

「山の斜面をうまく使い、曲輪同士の連携も取りやすくなっていますね。それに死角も少なくなっている。まさに戦乱の申し子のような堅城。無骨ながらも、どこか匂い立つ美しさがありますね」

曲輪・・・・城の防御施設の一つ

「まるで詩人だな、詩乃」

「城とは軍略の粋を極めた芸術品ですから」

「分かります。大自然が生み出した芸術的な曲線を持つ山容と、その山容を理解した上で曲輪を配置し、連携を上げているところなど、感動的で・・・・。はぁ~美しすぎて、もはや言葉が出せません」

ふむそう来たか。まあいいとして、ひよところに先触れに向かわせて俺達はゆっくりと向かうそうだ。先触れと言うのは、今から行くよという報せをするのが先触れ。ひよところを送った後、俺達は景色を堪能しながら、ゆっくりと向かった。日が落ちる前に小谷城前に着いた。  
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