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いつか必ず、かめはめ波を撃つことを夢見て

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第08話 挑戦!カリン塔

 アパは、聖地カリンを守る先住民族だ。原作でのボラやウパのご先祖様だろうか、インディアンによく似た格好をしている。年は20代ぐらいだろうか、身長も178cmあるナシゴよりも少し低いぐらいだった。見た目も好青年で好感が持てるような容姿をしている。
 ナシゴはアパに、格闘家としてカリン塔を訪ねたことを話した。アパとしては、今まで守るように言い伝えられてきた聖地カリンに人がやって来るなんて思いもしなかったので、最初は警戒していたがナシゴの話を聞いて警戒を解いた。

「それじゃあ、本当にこの塔を登るつもりですか?」
 アパが塔のてっぺんを見ようと目を凝らすが、どうやっても一番上まで見えないカリン塔を見て言う。
「あぁ、この塔の上にいるカリン様という方に師事するために登ろうと思っている」
 ナシゴは、身につけていた重りを一つずつ丁寧に外しながら言った。亀仙流を真似た、重りによる修行。だんだんと負荷を上げていき、今は全身に200kgの重りを身につけている。重りを外すのは、15年ぶりで、身体の奥底から湧き出る開放感を感じ取り、修行の成果を実感した。
「すまないが、この重りを預かってくれないか?」
 ナシゴは、一度重りなしの状態で登りきり、その後降りてきて次は重りありの場合で登ってみようと計画した。
「わかりました、っと、これとんでもなく重いですよ! こんなものを、よく身につけていましたね」
 ナシゴから受け取った重りを受け取り損ねて地面に落とすアパ。改めて持とうとすると、重すぎて何とか抱えることが精一杯なぐらい重い。

「とにかく、頑張って登り切ってください! そして仙人様に会ってくださいね」
 アパが応援をしてくれる。その声援を背中に受けながら、ナシゴは塔を登り始めた。
「がんばってくださ~い」
 登り始めても、いつまでも声援を送ってくれるアパ。ありがたいと感じながら、片手を上げてその声援に答える。
10分もするとアパの目には、ナシゴの姿が見えなくなった。

 ナシゴは考える。孫悟空でも最初は登るのに1日掛かったカリン塔。自分に登り切ることが出来るだろうか。しかし、この試練を乗り越えなければ、カリン様に師事して、さらなる強さを手に入れることができないと。そして、かめはめ波を撃つためには、その試練を乗り越えなければならないと。

 塔には模様? があり、取っ掛かりがたくさんあるので、手や足を引っ掛けるのは意外に楽にできる。

登る、登る、登る。

 まだまだ体力に余裕はあるが、精神的にくるものがある。どのぐらいの高さがあるのかどうか、最後まで体力が持つのかどうか。その全長が分からないので、体力配分はかなり重要になってくる。

「まだ、てっぺんまでは遠いのかな」

 落ちれば、助かりそうにないところまで登ってきた。見れば、丸い地平線が見える。こう見ると、本当に地球は丸いんだなぁと見当違いな感想が頭に浮かんできたが、今はそれよりも登ろうと、手足を動かした。

 日が落ちて、暗くなり始める。しまったなとナシゴは思った。夜になれば、筋肉が冷えてしまう。時間をずらしてスタートを朝の時間にしておけばよかったと、いまさらに後悔する。

 原作の悟空は、夜は塔にへばりつきながら睡眠を取っていたがナシゴには、そんな器用な事はできないので、そのまま登り続けた。

 本格的に寒くなってきた。今のナシゴの格好は、かなり使い込まれた道着しか着込んでおらず、服の隙間から冷気が入り込み、身体が冷える。さらに、流した汗で筋肉が、冷えてしまう。ナシゴは、ペースを上げることで筋肉を冷やさないように対策した。

 朝が来た、徹夜はお手のものだが、夜通し塔を登りながらという条件がつくとかなりつらいものがあった。

「見えた!」
 ナシゴは、とうとうカリン塔の頂点を目にした。大きな円になっていて底に4つの穴が空いている建物だ。

 ナシゴは、やっとの思いでカリン塔の頂点へと到着した。まだまだ、体力は残して登り切ったナシゴは、少しだけ休憩して息を整えると上へと続く階段を歩いた。

「大したものじゃ。よう、登ってきたのう」
右手に杖をつき、ニッコリと笑う顔を崩さずに言うカリン様が出迎えてくれた。

「はじめまして、カリン様。私、ナシゴという者です。カリン様に修行を付けていただきたく、カリン塔を訪ねました」
 ナシゴは、現れたカリン様に向かって礼をしてから、お願いを言った。

「ふむふむ、礼儀正しいやつじゃ。それに、不思議な奴じゃのう」
 カリンは、ナシゴの心を探り不思議な記憶を読み取った。ナシゴの生前の記憶、田中竜二としての記憶、ドラゴンボールという漫画。そこに登場する、カリン様という自分という存在。
「いいじゃろう、せっかくカリン塔を登ってきたのじゃ、鍛えてやろう。といっても、お主かなりの力と技術を持っておるから、後はそれを繰り返し伸ばすしのがいいじゃろうが。まずは、組み手といこうかのう」
 カリンとナシゴは、組み手を開始した。ナシゴにとって久しぶりの強者との手合わせに心躍った。また、カリンも久しぶりの自分の能力に迫る力の持ち主との手合わせに、ナシゴと同じような気持ちになった。
 
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