真剣で英雄(えいゆう)と恋しなさい!
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6・交流、決闘
6・交流、決闘
六月九日(火)
その日も朝からワン子とのランニングをすませ、川神院で修行僧と組み手をし、少し休憩していると…百代、ルー師範代、そして元が何かに気付いたように顔を上げる。
「百代姉、気付いたか?」
「あぁ、誰かが面白そうな事してるなぁ」
元の言葉に型の途中だった百代が嬉しそうに答える
「こりゃ、モモ!、いまは稽古中じゃぞ、手を休めるな!」
其処に鉄心の声が響く、ルー師範代は一瞬何か考えたような表情だったが直ぐに普段の様子に戻った。
何時のように多馬川のほとりを皆で登校。
キャップは何か考えてるようで静か、大和は京をあしらいつつ歩き、モロとガクトは週刊誌を読んでいる。
クリスはワン子となにやら話しをしてるらしく、声がチラッと聞こえてくる。
「んで、まゆっちもあれ、きづいたか?」
「はい、一体誰と誰が戦ったんでしょう」
「誰でもいいけど、私も戦いたいナァ、なぁ元、まゆっち」
元の問いに答えるまゆっち、うずうずしている百代、言葉と同時に軽い突きを始めに放つ
「勘弁してくれ、こないだから街の中が只でさえ張り詰めてるってのに」
苦笑し、放たれた突きをこちらも軽く逸らして見せ、苦笑する。
「そもそも私は、それほどの腕では…」
謙遜するまゆっち。
「ちぇー、お前ら全力出せよー」
面白くなさそうに言う百代をなだめながら、登校していく。
で、昼休み…九鬼紋白が1年S組の数人と、井上準をつれ、2年の廊下を歩いている。
F組を暫く覗き込み、どうやらそのまま2年S組へ入って行ったらしい。
「英雄に挨拶かね、あれは」
「あとは、まぁ、学校内の案内かもな」
学食へ向かう元と大和はそんな事を言いながら学食へ、すると其処には義経と弁慶が座って食事中だったらしい。
大和に日替わり定食のAセットを頼むと、元は二人の方へ、対面に立って椅子を示しながら
「よぅ義経に弁慶、此処良いか?」
「元君か、もちろん大丈夫だぞ」
「あんがとな、大和っ」
定食を受け取った大和を呼び寄せ
「ん、あぁ義経に、弁慶、こんにちは」
大和と揃って椅子に座る。
「義経と弁慶は、B定食か…そいや好き嫌いとかあるのか?」
「美味しい物は好きだ、嫌いな物…いや、今の義経にはないぞ、うん」
「私は川神水がすきかな」
「弁慶はいつも飲んでるな」
元の問いに義経、弁慶が答え、弁慶の答えに大和が苦笑する。
「元君と直江君はどうんだ?」
「………」
「直江君?」
「あぁ、それ呼びなれない呼ばれ方に感動してるだけだから、んで俺は嫌いな物はないな、肉は好きだけどな」
呼ばれ方に動きを止める大和に変わり元が答え
「っと、ごめん…俺も特に嫌いなのはないかな」
再起動した大和も答える。
「というか川神院じゃ栄養を考えた食事をワン子が中心になって考えてるしな」
「島津寮も作れる人がそこ等辺考えてくれてるし」
「そうなのか、義経たちも九鬼では栄養を考えた食事だぞ」
「私はそのほかに川神水だけどね」
そんな話をしつつ食事終了。
「そいや大和、放課後は?」
「あぁ、ヒゲ先生といつもの所だ」
「なるほど」
放課後の予定を聞いていると
「大和は義経の決闘みないのかい?」
「見ても良く判らないしね、ゆっくりするよ」
「へぇ」
弁慶がそんな事をきいて、興味深そうに微笑む。
「俺は義経の決闘を見させてもらうかな、楽しみだ」
「む、その期待にこたえられるよう全力で頑張るぞ」
元の言葉に微笑む義経。
そして放課後、200人くらいのギャラリーが見守る中、義経との決闘が始まるが…初戦の生徒会長…南條・M・虎子、骨法の使い手で、色々とエキセントリックな少女…をかわきりに皆瞬殺されていく。
そして、軽い休憩を挟みつつ、本日最後はどうやらワン子が相手らしい。
お互いに構え…ワン子が先手で薙刀を打ち込めば、それを義経が弾き、返す刀で義経が打ち込むと、ワン子もそれを弾く。
段々とお互いの動きがはやくなり、あたりにはキンッ、キンッと金属が打ち合う音が響き、少し後…ワン子が義経の一撃をかわし一旦距離を取り、上段から強く切り下す。
「あ、それじゃっ」
元の言葉の間にモ振り切られる薙刀…それを紙一重で後に少し飛んでかわし、着地の瞬間一気に踏み込んで義経の一撃っ!
義経の一撃が隙の出来たワン子を弾き飛ばし、勝負あり。
ワン子と義経はお互いの健闘を称えあっている。
暫くしてギャラリーも引けた頃、大和と弁慶もやってくる。
「残念だったなワン子」
「一寸焦っちゃったね」
「うん、でも負けたけど良い経験になったわ」
大和と京の言葉に頷くワン子。
「しかし、義経は身軽だな、飛燕の如くだ」
「見切りも良いし、一瞬の判断力も高い、強いな」
褒めるクリスと元に
「一子殿も凄いな、義経は感激した」
答える義経。
「さて、皆もちったしそろそろ帰るか?」
「うむ、そうしよう」
元が声を掛け、義経達も門を出て行く。
其処へ丁度取り巻きをつれた紋白がでてきて、皆に挨拶をしている所だった、隣にはヒュームではなくクラウディオ…眼鏡をかけた万能執事、ふくよかな女性が好み…だ。
それを見ていた義経が
「凄いな紋白は、義経はいたく感激した」
「おお。義経か、何がだ?」
「なじむのがとても早い、義経達は、あそこまでまだ皆と仲よくなっていない」
「フハハ、お前は決闘で忙しいからな」
「それをいい訳にしてはダメだと、義経は戒める…ぐぬぬ…戒めた…」
そんな義経に
「んー、てか義経」
「む?」
元が声をかけ、義経が不思議そうに振り返る
「義経はもうバイバーイっていえる連中いるでしょ?」
ワン子が胸を叩き、クリスが頷き、元が苦笑する。
「…そうか、ありがとう!」
微笑む義経
「戦いを通じて知己から学友へ…さすが我が主」
「俺たちなんか、川神水飲んで仲良くなったのにね」
「ま、そういうのもありで良いと思う、個性個性」
大和と弁慶がそんな事を言っている。
「これで後は与一の問題だけだな」
「主の監督不行き届きで申し訳ない」
紋白の言葉に謝る義経、紋白がそれを慰め
「さぁさぁ、ここの連中を紹介してくれ」
話題を変える
「あ、あぁ、紹介するこちら川神一子さん」
「よろしくね!」
「兄からいつも話しは聞いている川神一子」
義経の紹介に挨拶するワン子、紋白もこたえ、ワン子はそれに苦笑し、何か口走ろうとした所でクラウディオの咳払いでそれをやめる。
そして
「こちらは椎名京さん、弓の名手だそうだ」
「それほどでも苗字は椎名…ま、よろしく」
と挨拶する京に、九鬼へのスカウトをする紋白、クラウディオ曰く、紋白の趣味はスカウトだそうだ。
そして、次にクリスの紹介、大和の紹介を過ぎて。
「こちらが八坂元さん、無手での武術を継承しているそうだ」
「よろしくな、紋様」
「うむ、義経から幾度か聞いているぞ、与一も含め助けてもらったと、ありがとうな…それで、八坂だったか、お前も九鬼で働く気は無いか?」
「九鬼でか……それはそれで、色々と面白そうなんだが」
義経の紹介に挨拶し、スカウトされる元…ちらりとクラウディオを見て微笑みながら
「まぁ、考えとく」
名刺だけ受け取った。
「紋様、そろそろ帰りませんと」
「もうそんな時間か、それではな皆」
クラウディオがそういうと、紋白は挨拶して歩き出し
「義経達も帰ろう弁慶」
「うん、そうだね、それじゃ、また」
義経と弁慶も歩き出す、途中義経は何度も振り返り手を振っていた。
その少し後でまゆっちが合流、そのまま其処にいた皆で帰る途中、橋の下ですっきりした顔でピーチジュースを飲む百代を発見。
「いやぁ、楽しかったー、決闘に次ぐ決闘で満足だ」
こちらに気付くとそういってくる
40人ほどの挑戦者らしき人間が川神院の修行僧により運ばれている
「てか、結構いたなぁ…で、いけそうなのは?」
「何人かいたけど、暫くうごけないからなぁ」
「あぁ…なるほど」
「強いとそれだけ被害が増えるのか」
元の問いに百代が答え、大和が苦笑する。
「本気の相手に手加減は失礼だからなぁ」
百代もそういって、ジュースを飲みきり。
「ギャラリーの皆は?」
ワン子の問いに、すっと現れた執事が
「帰っていただきましたさっきまで大勢いましたけどね」
「わ、びっくりした」
「余り橋で騒ぎすぎても近隣に迷惑ですから」
「そこのにーちゃんは決闘がスムーズに行くように、しきってくれてたんだ」
「これしきの事お安い御用です」
そういって執事は去って行く。
それを見ながら一瞬大和が怪訝な表情を浮かべるが、次の瞬間、ヒュームが近づいてきて、百代となにやら話をして去って行く。
なにやら気合の入った百代と、ワン子が
「よし、早速帰ってトレーニングするかワン子、元」
「押ーー忍!!、じゃあねー皆ーーー」
「ん、了解いくか」
呼ばれたワン子と元、百代が一瞬にして皆を置いて走り去っていった。
ちなみにその日のトレーニングは普段の倍くらいの内容だったとか。
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英雄達との交流や、決闘見学です、本気で元が戦うのはクライマックスの方になると思います。
また、ある程度期間が飛ぶ辺りはオリジナル展開を入れる予定です。
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