IS-最強の不良少女-
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二学期
長いようで短かった夏休みが終わり、最初の日の放課後、響は生徒会室に顔を出していた。
室内にはなにやら書類とにらめっこをしている楯無と、彼女の隣で端末を操作している虚、そしていつものように机に突っ伏したまま寝息をたてている本音の姿があった。
すると、楯無が書類を机の上に放り投げながら大きく伸びをした。
「んー……くぁー。流石に一時間以上書類整理してると目が疲れてきちゃうわー。虚ちゃんお茶にしましょう」
「わかりました。ほら本音、準備するわよ」
「うー……りょーかーい……」
虚に起こされ目を擦りながら立ち上がった本音はフラフラとした足取りでお茶を準備しに向かった。
それを見送った響は楯無を横目で見やりながら問うた。
「楯無よぉお前、今日一夏になんかちょっかい出しただろ」
「あらばれちゃった?」
「そらばれるだろ、授業に遅刻してきたかと思ったら、見知らぬ女子に捕まってましたって妙な言い訳したし。まぁそのあと箒に惨殺されそうになってたけどな」
頬杖をついている響はかなり呆れた様子だが、楯無はクスクスと笑い笑顔のまま告げた。
「それは織斑君には可哀想なことしちゃったわね。けどなかなか可愛い反応しててお姉さん的には嫌いじゃなかったわー」
「そうかい。つーかお前が見てた書類ってなんだ?」
「ん? あぁこれね。今度開かれる学園祭の日程決めとか、各出し物の配置とかそういう感じ。生徒会長ともなるとこういうのも決めなくちゃいけないから大変よ」
「ふーん。そういや夏休み中に話してた一夏争奪戦は結局やることにしたのか?」
「もちろん。彼には色々がんばってもらいたいし」
悪戯っぽい笑みを浮かべる楯無に響は肩を竦ませた。その後、本音と虚が持ってきたお茶とケーキを食べお開きとなった。
寮に戻った響は軽く部屋で過ごした後、夕食をとるため食堂へと向かった。
食堂に着いた響は食券を買うため券売機の前に立つが、顎に指をあて悩んでいた。すると、同じく食堂にやって来たシャルロットが響に声をかけた。
「響? なにやってるの?」
「ん? おー、シャルロット。なんつーかあれだ、カツ丼を食うか、から揚げ丼を食うか悩んでてな……」
「なんかどっちも凄い高カロリーな気がするんだけど……」
揚げ物のカロリーの高さをよく知っているのか、シャルロットは微妙な表情を浮かべた。しかし響はそんなことは全く聞いていないのか、腕を組んだ状態のままうんうんとうなっている。
「うーむ……。よし決めた!!」
響は手をポンと叩き券売機のボタンを押した。同時に券売機から券が発行されるが、発行された券は二枚あった。
「あれ? 二枚でてきたけどなにか飲み物でも頼んだの?」
「いんや? カツ丼とから揚げ丼頼んだだけだ」
「……Quoi?」
「急にフランス語に戻るなし」
響の特殊な頼み方にシャルロットはかなり驚いてしまったのか、言葉がフランス語に戻ってしまっていた。響はそれを治すためシャルロットに軽めのチョップを打ち込んだ。
「あうっ! ……ごめんごめん。響が凄い頼み方するから戻っちゃった」
「そんなに驚くことか?」
「そりゃあ驚くよ……。だってどっちも揚げ物だし、かなり高カロリーだよ? 響ってカロリーの心配とかしないの?」
「あんまし気にしたことはねぇな。それに私食っても太らない体質だからな」
あっけからんとした様子で言い放った響だが、それを聞いていたシャルロット、そしてその他の女子生徒がその場にがくりと膝をついた。
「そんな……」
「なんでや……」
「神は不公平だと思う……」
口々に落ち込んだ言葉を漏らす皆の様子に響は肩を竦ませ呆れたような表情のまま、食券をカウンターに持ていった。
数分後、カツ丼とから揚げ丼を受け取った響は未だに四つん這いで落ち込みをあらわにしているシャルロットに告げる。
「先に席取ってるからなー。なるべく早く立ち直れよー」
そのまま響は窓際の席に去って行った。
その後、何とか立ち直ったシャルロットも食券を買い響が座っている席までやって来た。
因みに後にやって来たセシリアとラウラにシャルロットが同様のことを告げると、セシリアはかなり落ち込んでいたが、ラウラはさほどでもなかった。
翌日、今日は朝から全校集会があるとのことだったが、響は例によって屋上でサボっている。時折大あくびをしながら眼下に広がる風景を俯瞰してみるが、何か面白いことはこれといって何もない。
「あー……暇だ。かといって集会に行きたくねーし」
ゴロンと仰向けになり、澄んだ空を見上げるが響はつまらなそうにしている。
「つーかやることなんざわかってるのに出席する必要もねぇんだよなぁ」
楯無の話では今日の全校集会で学園祭のことや、学園祭での一夏争奪戦を全校生徒に告げるらしい。しかし、響は既にそれらの情報を知っているため出る必要がないのだ。
「それに言ったってうるせぇだけだし」
と、響がそこまで言ったところでホールがあるほうから黄色い歓声が上がった。屋上なのでそこまで大きくは聞こえないが、ホール内ではすごいことになっているだろう。
しかし、一回おさまった歓声はまたしても上がった。いや、今度は歓声と言うよりも雄叫びと言ったところだろう。
「……はぁ、行かなくてよかった」
響は呟くとそのまま目を閉じた。
同日の放課後、クラスでは出し物を決めるために生徒達が残っていた。響はサボろうとしたのだが、セシリアとシャルロットがダメだというので渋々と残ることにした。
「えーっと……とりあえずいろんな意見が出てきたけど……」
一夏が微妙な表情のまま黒板に書かれた案を見るが、すぐに皆の方を見ると、
「うん。却下」
その瞬間、クラスにブーイングの嵐が舞う。響はこうなることを予測したように耳をふさいでいた。
……まぁ確かにアイツが却下したくなるのもわからんでもないか。なんだ『織斑一夏のホストクラブ』って、アイツ一人しかいねーじゃん。酷使されすぎだな。
呆れた様子で溜息をつく響だが、そこへ一夏が響に声をかけた。
「ひ、響!! なんか意見ないか?」
「……あぁ? 何で私が……」
急に響に意見を求めた一夏を響が睨んだ。それを見た周りの生徒、そして睨まれた一夏も若干萎縮するが、
「チッ……。じゃあ喫茶店でイインジャネ?」
「喫茶店か……みんなはどうだ?」
響の意見を聞いた一夏が皆に問うと、皆は少し悩んだ表情を浮かべる。すると、一人の生徒がおずおずとした様子で響に聞いた。
「えっと……鳴雨さんに聞きたいんだけど……それって衣装は何でもいいってことなのかな?」
「衣装なんざ何でもいいだろ。アレでもいいんじゃねーの、今流行のメイド喫茶的なヤツ。そんで一夏にゃ執事服でも着せとけ」
半ば投げやりに答えるが、響のこの意見が女子連中にヒットしたようで、
「執事服織斑君か……それいい!!」
「それで行こう!!」
「ナイスアイディアだよ鳴雨さん!!」
「お、おう」
周りの席の女子数名に響は手を握られ、一瞬たじろいだ。しかも、彼女達の瞳には響に対する恐怖心が見られなかった。
「それにメイド服の鳴雨さんも見てみたい!!」
「だね!! いつもとのギャップを見たい!!」
しかし、段々と話が一夏から響の方に流れていった。
「お、おい! お前ら、私はホールにはでな――――」
「「「「「却下!!」」」」
「えー……」
流石の響もクラスの大半の女子に声をそろえられて言われると何も言えなかった。そのままポカンと口を開けた状態のまま響は固まっていたが、女子達は出し物についてかなりテンションが高いまま話し合っていた。
その後、響はまたしても生徒会室へと顔を出していた。
「まさか二日連ちゃんで呼び出されるとは思わなかったぜ……」
「まぁお嬢様は結構気まぐれだから」
「気まぐれすぎですよ。猫かっての」
響は虚と話しながら椅子にだらりと背を預けながら天井を仰ぐ。本音もいるにはいるのだが、例によって眠りについている。しかし、なぜかいつもいるはずの楯無の姿が見られなかった。
「そういや楯無はどうかしたんですか?」
「たぶん織斑君のところに行ってるんじゃないかしら。……ねぇ鳴雨さん? 前々から気になっていたんだけれど、なんで私の時は敬語なのかしら?」
「え……それは、なんつーか……。先輩ですし」
「それならお嬢様もそうだと思うのだけれど」
虚の素朴な疑問に響は眉間に皺を寄せ「うーん」と唸る。
「たぶん、虚さんの言葉遣いってーか雰囲気的な感じで自動的にこうなってるんだと思います」
「なるほど……鳴雨さんはけっこう敬語に弱いのね」
「そう……かもしれないッスね」
響がそこまで言ったところで生徒会室の扉が開け放たれ、響と虚はそちらに目を向けた。
「ただいまー」
「おかえりなさい、会長」
入ってきた楯無に虚が頭を下げて挨拶をした。そして、楯無に続くように入ってきたのは一夏だった。
「失礼しまー……って響!? なんで生徒会室にいるんだ!?」
「デケー声出すなうるせぇな、しばくぞ」
頭をガリガリと掻きながら机に足をのせた響は一夏を横目で見つつ、彼に言う。
「アレだ、私も一応生徒会の役員って事だ」
「いつの間になったんだ?」
「4月の最後の方だったかな。そこにいる会長サマにほぼ強制的に入れられたんだよ」
響は椅子に座る楯無を顎で指しながら告げるが、楯無は相変わらず笑みを浮かべていた。響はそれに溜息をしつつも一夏を促した。
「いつまでもそこに突っ立ってねーでテキトーに座れよ」
「あ、あぁ」
一夏は若干ぎこちない動きで空いている席に腰を下ろした。
すると、虚とそれに続くようにフラフラしながら本音がやって来た。二人はそれぞれトレイを持っており、ケーキとティーセットがのっていた。
「さて、まずは紅茶でも飲んでリラックスしましょうか」
そう言った楯無は紅茶の注がれたティーカップを傾け、一口口に含んだ。その姿はまさにいい所のお嬢さまと言った感じで、かなり優雅だった。
しかし、一夏の目の前にだらりとした様子で座る響は紅茶を音をたてて啜っているし、隣に座っている本音も本音でケーキにまかれているフィルムをぺろぺろと一心不乱に舐めている。
「さて、じゃあ何で一夏くんを学園祭での争奪戦の景品にしたかって言うとね。まぁ一夏くんが部活動に入っていないから、部活に入ってる子たちから苦情が殺到しちゃってねー。ねぇ響ちゃん」
「何で私に振るんだよ」
「だって苦情が書かれた書類整理したの響ちゃんだし」
「そういやそうだったな……。まぁ結構きてたぜ。吐き気がするぐらいには」
肩を竦めながらケーキを一口頬張る響に楯無が頷くと、
「こんな風に生徒会の仕事にも若干の支障が出ててね」
「それでアレってことですか……」
「そゆことー」
楯無はにっこりと笑顔を浮かべたままだが、楯無には妙な威圧感があった。
「勿論ただってことではないわ。交換条件として今日から学園祭まで鍛えてあげようと思ってね。ISもそうだし生身の方もね」
「遠慮しときます」
「あらら即答。けどいいじゃない、こーんな可愛いおねーさんに手取り足取り鍛えてもらえるんだから」
ウィンクをしながら楯無は言うが、一夏は少し引き気味だ。すると、響が小さく呟いた。
「……自分のこと普通可愛いとはいわねぇよなぁ……」
「何か言ったかしら響ちゃん?」
「いや何も? 空耳だろ」
平然とした様子で楯無の問いに返した響は相変わらずだらりとしたままだ。一夏はそれに少し驚きつつも紅茶を啜った。
「この紅茶本当にうまいですね」
「でしょう? 虚ちゃんの入れる紅茶は絶品なんだから。どうせならその調子で私の指導も受けてくれと欲しいな」
首を傾けながら楯無は言うものの、一夏は首を横に振ると、
「いや、だからそれはいいですって。大体なんで俺に指導なんか」
「それは簡単でしょ。君が弱いからだよ。生身でもそうだけど、ISを使ってもとてもじゃないけど強いとはいえないし」
一夏に対し、一切の遠慮もなくさらりと言い放った楯無だが、一夏はあまりにも唐突に言われてしまったからなのかキョトンとしたままだ。
しかし、そこで響が大きく吹き出した。
「クッ……ハハハ!! そうだな、確かに一夏お前はよえーわ。言っちゃ悪いが白式がなくちゃこの学校で最弱なんじゃねーの?」
腹を抱えて笑う響に一夏は怒りがこみ上げてきたのかムッとした。
「そんなに弱くないだろ! 確かに少しは弱いかもしれないけど――――」
「心は弱くないって? 馬鹿だねぇ、心がいくら強くたって体が強くなくっちゃ弱いんだよバーカ。それにラウラと戦った時だってお前打鉄に乗ってた箒と五分だったじゃねぇか」
「それは……」
痛いところを突かれてしまったのか、一夏はそこで押し黙った。すると、楯無が響を嗜めるように言った。
「こらこら響ちゃん。あんまりいじめちゃダメよ。確かに織斑くん滅茶苦茶弱いけどだからこそ、私が少しでもマシになるようにしてあげようとしてるのに」
「お前もフォローになってねぇけどな」
「あ、バレた?」
響のツッコミに対し、楯無は可愛らしく笑うものの、一夏はついに痺れを切らしたのか立ち上がると、響と楯無の方を向き。
「わかりました。じゃあ勝負しましょう」
「いいけど、気が変わっちゃった。一夏くんの相手は響ちゃんにしてもらってもいいかな?」
「私は別に構いやしないぜ。帰っても暇だしな」
響は言うと一夏を見据えながらニヤリと笑った。
生徒会室を後にした響と楯無、一夏はIS学園の中にある畳道場の中にいた。
3人は紺色の袴と、白い道着に身を包んでいた。
「さて、んじゃあはじめるか。ルールはどうすんだ楯無」
「ん、一夏くんが響ちゃんを床に伏せられたら勝ち。一夏くんが戦闘不能になったらそこで終了」
「りょーかい」
響は拳を打ち鳴らし、一夏を見据えた。しかし、一夏はまだ納得がいっていないのか楯無に聞いた。
「けど楯無先輩。そうするとかなり響が不利になるんじゃ」
「大丈夫だよ。響きちゃん強いから。でしょ?」
「おう。安心しろ一夏、お前に倒されることはねぇから」
笑いながら言う響に一夏はムッとするが、構えを取った。
「行くぞ響。手加減なんかしないからな」
「好きにしな。私も手加減する気もねぇし」
それを聞いた一夏は響との距離を詰めに入り、無防備な彼女の腕を取った。
……取った!!
その瞬間確かに一夏は確信した。同時にこのまま行けるとも思った。しかし、
「甘すぎだな」
そんな声が聞こえたかと思うと、次の瞬間、一夏は浮遊感に襲われた。だが、その浮遊感も長くは続かなかった。
ガンッ!! という音と共に彼は壁に背中から叩き付けられた。同時に一夏は肺の中に入っていた空気を全部吐き出し、一瞬息が出来なくなった。
「おいおい一夏よぉ。弱すぎだろお前、私投げたいならもっと力込めとけや」
平然とした様子で言う響だが、一夏は未だに自分がどうしてこうなったのかわからずにいた。
……どうして投げられたんだ? あの時俺は確かに響の腕を取ったはずなのに。
「わかってないみたいだから教えてあげようか一夏くん。響ちゃんは何の小細工もしてないよ。ただ君を投げただけ、君に掴まれたからそのまま力だけで君を壁までぶん投げただけだよ」
楯無の説明を聞いた一夏は驚きをあらわにしていた。それもそうだ、掴まれたからそれをぶん投げるなど普通ではありえないことだからだ。
「ホレどした、もう終わりか?」
「まだ、まだだ!」
一夏はゆっくりと立ち上がると、もう一度響対峙した。響もまたそれを面白そうに笑うと、
「んじゃあ今度はこっちから行くぞと」
彼女が言うと、彼女は先ほどの一夏とは比べ物にならない速さで彼に肉薄すると、一夏の鳩尾に強烈な拳を叩き込んだ。
「ガハッ!?」
先ほどの壁にたたきつけられた時の衝撃のほうが優しいのではないかと思うほど、響の拳は強かった。あまりの衝撃に一夏はその場に膝をついた。
「これで二回目だがどうする? もうやめてみるか?」
苦しむ一夏に響は冷然と言い放つが、一夏は膝をガクガクとさせたまま何とか立ち上がると、
「まだだ。これぐらいじゃ諦めない」
「いいねぇ。そういう負けず嫌いなのは嫌いじゃないぜ?」
響が言ってみるものの、一夏は先ほどまでとは比べ物にならないほど集中しているのか、無言で返した。しかし、鳩尾に喰らった一撃はいっこうにひくことはせず未だにズキズキと痛む。
……なんて力だ。力だけなら千冬姉以上かもしれない。それに響の攻撃が全く読めない。
一夏は響を見据えているものの、内心ではかなり焦っていた。普通、格闘技などではそれなりに相手の動きが読めるものなのだが、響の動きは読めないのだ。
そんな一夏の心を読んだかのように、楯無は笑みをこぼした。
……かなり焦ってるみたいだね一夏くん。そりゃあそうだよね、だって響ちゃんの戦闘方法って確かに殴る蹴るだけど、格闘技や武術みたいに型にはまってない喧嘩から派生した戦い方だもんね。
「喧嘩を本気になってしたことがないとアレは読むの難しいかもね」
楯無は呟くものの、恐らく一夏には聞こえていないだろう。
すると、一夏は二回大きく深呼吸をして呼吸を整えた。
……落ち着け、攻撃が読めないからって焦るな。響だって人間だ、何も魔物や妖怪と戦ってるわけじゃないんだ。
自分に言い聞かせた一夏は響を真っ向から見据えると、一気に駆け出した。響もそれとほぼ同時に駆け出した。彼はその時見た。いや、見てしまった。響が浮かべていた笑顔を。
「いい思い切りだけどまだまだなんだよなぁ。まぁ今回は残念てことにしといてくれや」
戦慄を覚えるような冷徹な響の声が聞こえたかと思うと、一夏の頬に響の拳が叩き込まれた。抉るように放たれた拳に一夏はなす術もなく、そのまま後ろに大きく吹っ飛ばされた。
「ほい終了。残念だが一夏、お前が弱いのは撤回しねぇぞ。それが悔しいなら楯無に鍛えてもらって少しはマシになってこいや」
響は壁に背を預けた状態で気を失っている一夏に言い放つと、くるりと踵を返し、楯無の元に行った。
「こんな感じでいいんだろ楯無」
「うん、十分だよ。ただ……ちょっとやりすぎちゃった感じはあるけども」
「平気だろ。アレでもかなり手加減したし。頬が腫れるぐらいだ、骨もイってねぇだろうし、歯も無事だろうさ」
「アレで手加減……」
響の発言に楯無は内心でゾッとしたが、すぐにそれを振り払うと、
「さて、じゃあ響ちゃんはもう帰っていいよ。一夏くんの手当ては私がしとくから」
「ああ。またな楯無」
響は言うと、そのまま更衣室で着替えると道場を後にした。
その後、楯無の膝枕で目を覚ました一夏は響の行ったとおり、頬の腫れと、口内を少し切った程度で済んだらしい。しかし、楯無の膝枕で目覚めたところを箒達に発見され、かなりの間追いかけまわされたようだ。
後書き
とりあえずはこんな感じで。
一夏ボッコボコですw
まぁしょうがないよね!!
君弱いし!! それに男の子だもんボッコボコになるぐらいにはなっとかないと!!
感想などありましたお願いします
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