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八条学園怪異譚

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第五十六話 鼠の穴その十二

「じゃあ今度は」
「博士の研究室ね」
「そこに行こうね」
「そうね、それじゃあね」
 二人で話す、今回も泉ではなかったが気落ちはしていなかった。
 脚立を使って部屋位戻る、そのうえで鉄鼠に話した。
「ここでもなかったわ」
「残念だけれどね」
「そう、それじゃあね」
 鉄鼠もその言葉を受けてだった。
 前足の平でぽん、と叩いた。すると部屋の中に鼠や兎やリス達が出て来た。その彼等が瓢箪や皿やらを持っていた。
 その彼等を周りに置いてそのうえでだ、彼は二人に言った。
「じゃあ今からね」
「宴会ね」
「それよね」
「そう、飲もう」
 そして食べようというのだ。
「胡桃とかピーナッツとか揃えてるよ」
「ええ、それじゃあね」
「今からね」
 二人も応える、そうしてだった。
 げっ歯類の面々と集まって飲み食べる、その中でだった。
 愛実は濁酒、鼠達が入れてくれたそれを飲みつつ鉄鼠に尋ねた。
「ねえ、ちょっといいかしら」
「どうしたの?」
「残り二つの泉の候補地だけれど」
 尋ねるのはこのことについてだった。
「最初は博士の研究室にね」
「そこに行くの?」
 聖花が愛実の言葉を聞いて言ってきた。
「そうするのね」
「そうしない?知ってる場所だし」
「そうね、それがいいわね」
 聖花は愛実の提案を聞いて頷いた。
「それじゃあね」
「うん、それでその研究室だけれど」
 愛実は聖花との話を終えてあらためて鉄鼠に問うた。
「あそこってずっと本棚が続いてるわよね」
「先が見えない位にね」
「あそこどうなってるの?」
 そのことを問うのだった。
「一体」
「あそこね、実はね」
「実は?」
「異次元になってるんだよ」
 そうなっているというのだ。
「何処かのネコ型ロボットのポケットと同じでね」
「あの青い狸みたいなのと」
 かなり危ういキャラクターが話に出る、間違ってもここでありのままの映像を出してはいけない。モザイクでなければ。
「一緒なのね」
「そうなんだよ」
「じゃああそこの先が泉なのかしら」
「その可能性高いわよね」
 聖花も濁酒を飲みつつ愛実の言葉に応える。
「というか博士自体がね」
「そうそう、謎だらけというか怪人だし」
「そういう人のおられる場所だから」
「異次元になっててもね」
「不思議じゃないわよね」
「そうよね」
 こう話すのだった、二人で。
 そしてそのうえでだ、二人は鉄鼠にも尋ねた。
「鉄鼠さんもその果ては知らないの?」
「あの研究室の果ては」
「異次元になってるっていうけれど」
「それでも果てはあるわよね」
「果てがないものなんてないよ」
 それは絶対にないというのだ、どんな場所でも果てはあり無限という場所はないというのだ。例え異次元であっても。 
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