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八条学園怪異譚

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第五十六話 鼠の穴その七

「わし等が開けるから」
「それで中に入ってよね」
「そうしてよね」
「そう、ここまで案内するから」
「脚立も用意してくれて」
「それでなの」
「そうするからね」
 鉄鼠は二人にこう話していく。
「じゃあそういうことでね」
「ええ、それじゃあね」
「今夜ね」
 二人も鉄鼠の言葉に頷く、そうしてだった。
 二人はこの日の夜に早速また泉の候補地に行くことになった、二人は十二時前に学園内の動物園の前に来た。
 するともうそこにだ、鉄鼠が本来の大きさで立っていた。
「こんばんは」
「はい、こんばんは」
 二人は同時にその鉄鼠に挨拶を返した。そのうえで彼にこう返した。
「それじゃあ今からよね」
「あそこに行くのね」
「そうだよ、もう宴会の用意もしているから」
 そちらの用意もしているというのだ。
「まずは確かめてね」
「泉であろうとなかろうと」
「宴会ね、今夜も」
「飲もうね」
 もう飲むつもりの鉄鼠だった。
「盛大に」
「というか鼠さんもお酒飲むのね」
「兎さんやリスさん達も」
「飲むよ」
 実際に飲むとだ、鉄鼠は二人に答えた。
「だって妖怪だから」
「妖怪さんだと飲むのね」
「それも普通に」
「甘いものも好きだしね」
 そちらもいけるというのだ。
「お饅頭とかね、まあ甘いものもやっぱり固いものが好きだけれど」
「じゃあおこしとか?」
「あとクッキーとか」
「そういうのが好きなのね」
「固いっていうと」
「そうそう、胡桃とかが入っているとね」
 特にだというのだ。
「好きだよ」
「そうなの、それじゃあ」
「今から」
「うん、行こうね」
 まずは泉を確かめてそうしてだった。
 二人は鉄鼠が妖力を使って開けた動物園の扉を潜ってそのうえで中に入った、そのうえで夜の動物園の中を進む。動物園の中は夜行性の動物以外は皆寝ている。
 その動物園の中を進みながらだった、愛実は聖花にこんなことを言った。
「ねえ、夜の動物園もね」
「慣れたわよね」
「ええ、何度か入ってるから」
 これまで泉を探す中でだ。
「もう慣れたわね」
「そうよね。ただね」
「ただって?」
「いや、夜の動物園もね」
 聖花はその愛実に動物園、その夜の動物園の中を見回しつつ話した。
「独特よね」
「そうよね、お昼の時とは違って」
「何処も昼と夜でね」
「同じ場所だけれど」
 時間が違うと全く違う、二人はこの時もそのことを感じるのだった。
 そしてその中でだ、聖花はライオンのコーナーを見た。その中にいるライオン達は皆だらしないと言っていい格好で寝ている。 
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