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久遠の神話

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第八十八話 強くなる水その一

                       久遠の神話
                    第八十八話  強くなる水
 上城は己の青い刃を振っていた、その相手はというと。
 双頭の犬だ、その後ろではスフィンクスが座っている。スフィンクスはその場から上城に対して言うのだった。
「この怪物はオルトロスよ」
「確かケルベロスの兄弟ですね」
「ええ、頭は二つだけれど」
 それに対してケルベロスは三つだ、スフィンクスはその頭の数から話すのだ。
「それでもね」
「強さはですか」
「あまり変わらないわ」
 そうだというのだ。
「何故ならオルトロスはね」
「炎ですね」
 上城は自分から言った。
「それを使うんですね」
「そうよ、オルトロスは炎を吐くわ」
 その口からだというのだ。
「七色の炎をね」
「その分がですね」
「オルトロスをケルベロスに匹敵する強さにしているわ」
 そうだというのだ。
「ケルベロスは無数の蛇の頭もあって毒を使うけれど」
「オロトロスは炎ですか」
「全てを焼き尽くす炎よ」
 それだけの熱さだというのだ。
「ただ赤いだけの炎よりも遥かに強いわよ」
「確か火は赤よりもですよね」
「青い方が強いわ」
「そうでしたね」
「赤い炎は弱いのよ」
 炎の中では最も温度が低い、このことは科学的に立証されている。
「けれど青い炎は強く」
「七色の炎もですか」
「ただの炎ではないからね」
 だからこそだというのだ。
「魔性の炎よ」
「魔性、ですか」
「そう、それだけにね」
 それ故にだというのである。
「白い炎よりもさらにね」
「白い炎は確か」
「そうよ、普通の炎の中ではね」
 魔性が加えられていない炎の中ではというのだ。
「最も熱いけれど」
「その白い炎よりもですか」
「さらに熱いわ」
「じゃあその熱さですと」
「若し受ければね」
 その身体にだ、そうなればだというのだ。
「一瞬で終わりよ」
「焼かれてですね」
「だからこそオルトロスは強いのよ」
「ケルベロスと同じだけ」
「用心して闘いなさい、そして」
「そして?」
「それだけの強さの相手を倒せたら」
 それが出来ればというのだ。
「貴方はそれだけの強さがあるということよ」
「そうなりますね」
「そしてさらに強くなるわ」
 その強き怪物の力を手に入れる、そのことによってだ。
「戦えば戦う程強くなるのが剣士だから」
「今以上にですか」
「そう、強くなるから」
「そしてその力この戦いも」
「終わらせるのよ。おそらく最強の怪物である」
 ここでスフィンクスが出す怪物はというと。
「テューポーンを倒せる様になれば」
「テューポーン、確か」
「知っているわね」
「はい、ゼウス神との戦った怪物ですね」
「怪物であり神でもあったわ」
 大地の女神ガイアと冥府の神タルタロスの間に生まれた神だ、その背は空に達するまでであり両手を広げれば世界の両端に達した。両脚は蛇の下半身であり全身に羽毛が生えていた。頭は百の大蛇であり全身から暴風を発している。 
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