不老不死の暴君
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第四十九話 セアの過去
「それで帝都まではどうやって行くんだ?」
「それより前にお前に訊きたいことがある」
セアの問いにバルフレアはそう答えた。
「俺にか?なんだ?」
「お前のさっきの力はなんだ?」
「ああ、不老不死になったときに手に入った力だ」
「不老不死?ヘネ魔石鉱で聞いた話じゃ不老ってだけのはずだが?」
バルフレアの言葉にセアは顔を顰めた。
そしてアーシェの方に一瞬見ると鋭い舌打ちをした。
「ああ、あの時の話は半分くらい嘘だよ」
「なんで嘘ついたんだ?」
ヴァンが状況を掴めていないのか純粋に不思議そうな声で訊いてきた。
セアは馬鹿弟子の頭のできに内心溜息をつきつつ、バッシュに話しかける。
「そういえば、なんで俺が神都に付いて行くのか疑問に思ってましたね?」
「ああ、そうだな」
「何故嘘を言っていたか、それもこの旅に付いてきた理由に繋がるからそれもついでに説明します」
「では、君は何故不老不死に?」
「それは本当です。本当に何故そうなったのか俺自身よくわかってない。ただ不老不死になったのは300年前よりもっと前だ」
「もっと前?」
「今の時代で言う言葉で言うならば古代ガルテア時代と言えばいいのかね」
古代ガルテア時代とは700年以上前の時代ことだ。
多くの国が興っては滅びていった群雄割拠の時代。
その時代に終止符を打ったのが覇王レイスウォールである。
「まぁとにかくその時代にバレンディア西部にあったグレキアって国の人間なんだよ。俺は」
「へぇ~」
ヴァンが感心したような声を出した。
「戦続きではあったけどそれなりに生きがいのある生活をしていた。だが・・・バレンディアで急速に力をつけていた小国が台頭してきた」
「その小国って・・・」
「おそらくあなたの想像通りですよ王女様」
「・・・」
アーシェが気難しそうな表情をする。
それだけで周りもなんとなく察したのだろう。
・・・馬鹿弟子はなんか不思議そうな顔をしているから微妙だが。
「後に覇王となる男の王国とグレキア王国は戦になった。当たり前だグレキアの庇護下にあった諸国を荒らしまくってくれたんだから。だが、どういうわけか我が国は連戦連敗した。当時はどうしてかわからなかったが化物が敵軍にいたと喚いていた兵士もいたからベリアスを軍事利用していたんだろう。まぁその辺はどうでもいいか。とにかく俺たちは遂に首都まで追い詰められ、俺たちは徹底抗戦を決め込んだ。そして・・・」
「・・・そして?」
「敵軍が現れた途端に気を失ったことは覚えている」
「なぜだ?」
バッシュが不思議そうに言った。
何故敵軍が現れた途端に気を失ったなど尋常ではない状況だ。
「さぁな、ただ目が覚めると首都は破壊され、ミストが視認できるほど濃くでていた」
「まさか――!?」
「ああ、今考えれば破魔石を使ったんだろうな」
「嘘よ!!」
アーシェが叫ぶように言った。
「そんな敗北が確定しているような国に破魔石を使うなんてレイスウォールがするはずないわ!!」
「お前になにがわかる?現実にその男の所業を見ていないお前がなにを偉そうに」
アーシェの言葉にセアは睨みながら答える。
だが、そこにバルフレアが疑問を挟む。
「だが、理解できないのは確かだぜ。緒戦に使うならともかく虫の息の敵を倒すのにわざわざ破魔石を使う意味があるとは思えないが?」
「政治的な意味があったんだろう。グレキアは今のアルケイディアやロザリア程ではないが大国だった。その大国をあの男は一方的に蹂躙してみせたのだ。そうなればどうなると思う?」
「周りの国は下手に出るようになるってか。まったく嫌だね政治ってやつは」
「概ね正解だ。グレキアの滅亡後、奴の下に馳せ参じる国があとを絶たなかった。グレキアと互角の大国であり今のアルケイディアの原形であるキャメロット王国も、だ」
「そうして自分に従う諸国の軍と魔人と破魔石を使ってイヴァリースは統一されレイスウォールは覇王になったってか」
「ああ、バルフレアの言うとおりだ」
セアはそう言うと再びアーシェの方を睨みつける。
「俺から言わせれば覇王もヴェインも大した差はない。どちらも圧倒的な力で敵対する者を排除して理想を実現させる、な」
「そ、そんな言い方・・・」
「お前はアルケイディアに夫と父と祖国を奪われたそうだが、俺の場合に比べれば遥かにましだ!部下も友人も家族も皆殺しにして祖国を物理的に消滅させてくださった覇王に比べればヴェインなど俺には後光がさしているように思えるぞ!!」
セアはアーシェに向かって吐き出すようにそう叫んだ。
その姿を見てヴァンとパンネロは驚く。
セアがこのように激怒している姿など見たことがなかったから。
「しかしいったいどうして君は破魔石の力の直撃をうけて無事だったんだ?」
バッシュがセアに疑問をこぼした。
「さぁな、ただ気を失って目を覚ましたら不老不死になっていた。ただあの時俺は自棄になってたから深くは考えていなかった」
「なるほど」
「それになんでこんな体になったのか調べるにあたってこの旅はなにかと新しい情報が手に入りそうだったんでな。俺は同行することにしたのさ。これであんたの疑問も解決だな」
「・・・ああ」
バッシュがそう言った直後、ン・モゥ族の長老が話しかけてきた。
もう時間も遅いので一泊した後、神殿から出て行って欲しいとのことだ。
なんでもアナスタシス大僧正が殺され神都は喪に服すそうだ。
それに帝国の襲撃で物資もあまりないとのこと。
今回一番損害を受けたのはキルティア教会だなとセアは思った。
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