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不老不死の暴君

作者:kuraisu
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第四十八話 新たな目的

セアはベルガの鎧を外して、体を調べた。

「げっ・・・」

ベルガの体の右胸辺りを中心にミイラ化してしまっている。
それにあちこちに石の破片が右胸から円を描くように体に食い込んでいる。
おそらく人造破魔石を右胸あたりに埋め込んでいたのだろう。

「体に人造破魔石を埋め込んでたみたいだ」

セアはそう言うと倒れているアナスタシスの方を見る。

「大僧正は?」

バルフレアに問いかけると首を横に振った。
どうやら既に事切れていたようだ。

「ねぇ、ラーサー様は?」

アナスタシスの遺体を置き、パンネロが尋ねた。
が、その答えはここにいる七人以外の人物から返ってきた。

「ジャッジ・ガブラスが連れ帰った」

カナートの肩を借り、アルシドが光明の間に入ってきた。

「アルシド!?」
「奴も来ていたのか」

アルシドは腰を下ろすとここまでの状況を話し始めた。

「ラーサーは争いごとを避けようとおとなしく従ったんですが――ジャッジ・ベルガが暴発してね。取り巻きのジャッジどもの相手をするのが精一杯だった」

強さで言えばベルガが率いていたジャッジ達とアルシドが率いてきた部下達は大した差はなかった。
だが、ベルガ達が約80人に対しアルシド達は15人。
数の差に押し負けてしまったのである。

「で、姫――あなたをロザリアに亡命させたいんですが」
「守ってやるとでも?」
「お望みとあらば命に代えても。もっとも、あなたの方がお強いでしょうが」

アルシドはベルガにまったく歯が立たなかったのでそう言った。
実際にはベルガは倒したのはほぼセアの功績なのでアーシェよりアルシドが弱いということはないだろうが。
というかそれはアルシドもわかっているはずだが・・・

「ヴェインを恐れるあまりうちの軍部じゃ、先制攻撃論が主流で。将軍連中が勝手に戦争を始めないように姫を利用して裏工作をしかけます。それにクライスさんも手伝ってくれればありがたいのですが――」
「やだ」
「そうですか・・・姫はどうです?」
「お断りします。私はこちらで仕事があるので」

そう言うとアーシェは立ち上がり宣言する。

「【覇王の剣】で【黄昏の破片】を潰します」

それは聞いたアルシドは少し納得したような顔をした直後、少し気まずそうに言う。

「石の在処はわかってませんが?」

それはアルシドの諜報網を持ってしても探りだせなかった。
それも仕方ない事だとアルシドは思っている。
何故なら破魔石を何処で管理しているかなどアルケイディア帝国の機密事項だろう。
それの在処を知っている人物もヴェインが信頼している人物しか知らないだろう。

「見当はつく」

が、あっけなく破魔石が在りそうな場所を知っているとバルフレアは言った。

「帝都アルケイディス、ドラクロア研究所。帝国軍の兵器開発を一手に仕切ってる」

仮説に過ぎない筈だが、バルフレアは破魔石がそこにあると確信しているように言った。

(そういえば・・・)

アルシドは6年前にアルケイディア帝国の名門の家の子どもが一人、家出したという情報を手に入れた。
かなりアルケイディア帝国上層部に関わりがある家だったのでなんとか捕らえて情報を手に入れることができないかと考えたことがある。
だが追跡を振り切られ続けた為、断念したが・・・
もしバルフレアが家出した人物だとすればありえない話ではない。

「オレが案内する」
「行きます。そちらの国での工作は、あなたが」
「こっちはこっちでどうにかしろと? ご期待に添えればいいんですがね」

カナートに支えられてアルシドが立ち上がった。

「そういや、お前どうやってロザリアへ帰る気だ?」

セアはアルシドに問いかける。

「南は聖ヲルバ騎士団国とアルケイディア帝国の植民地。西はヤクトだぞ」
「とりあえず西のヤクト・ディフォールに入って南西に向かえばロザリア帝国の属庭アレイアにつきます。アレイアの領主は皇帝派なので安全に本国に帰れます」
「アレイアって確かケルオン大陸の西の海岸に接する地域だろ?その体で大陸横断なんてできるのか?」
「大丈夫です。まだ優秀な私の部下がいますから」
「・・・一応優秀な部下を直属にしたってのは嘘じゃなかったみたいだな」
「ええ」
「念のために聞いておくが優秀な女・の部下だけを直属にしたんじゃないよな?」
「・・・・さ、さぁ?・・・・・・・・なんのことでしょうか?」

アルシドの挙動不審さにセアは仮説が事実だと確信した。
アルシドもここ居づらくなり、カナートに支えてもらいながら外へ出ようと歩き出した。
そして途中でなにかを思い出したように振り返った。

「ああそうだ。ラーサーから伝言です。
 『国と国が手を取り合えなくても人は同じ夢をみることができる』」

アルシドはそう言うとカナートの胸元からサングラスを取り出しかけた。

「――では失敬」

アルシドはそう言うと光明の間から出て行った。  
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