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第二章

「だから注意しろよ」
「ちょっとでも漏らすとそれがとんでもないことになるからな」
「動画とか出てな」
 スキャンダルの動画だ、それがネットに出回ってとんでもないことになった著名人は枚挙に暇がない程だ。
「だから注意しろよ」
「家のガードは万全だよ、車も事務所の方もな」
「だといいがね、僕も気をつけてるよ」
「彼氏とデートか」
「ははは、そうだよ」
 実はクレーシーはバイセクシャルだ、それで同性と交際しているのだ。
 それでだ、彼は笑って言うのだった。
「バイセクシャルであることは宣言しているけれどね」
「デートの中身まで盗撮されたらな」
「大変だよ、注意してるよ」
「俺もだ、注意してるよ」
「お互いに守ろうな」
「そうだね」
 こう話してそしてだった、グレイブは仕事もプライベートも充実して過ごしていた、だが。 
 その充実の中でだ、不意にだった。
 グレイブのところにだ、妻のカデリーン、豊かな金髪と青い瞳の長身の彼より幾分若い女性が彼に家で言ってきた。デズデモナを思わせるヨーロッパ系の美女だ。
 その彼女が怪訝な顔で自分の携帯に入れてある動画を見せて言うのだった。
「あなた、これは」
「?それは何だ?」
「私達よね」
 見ればだ、その動画は。
 今二人がいるリビングだ、そこでアフリカ系の男とヨーロッパ系の女が普段着で仲良く話していた。男の方はグラスでワインを飲んでいる。
 その男を見てだ、グレイブは驚愕している顔でこう言った。
「俺だ」
「そうよね、それでもう一人は」
 カデリーンも驚いた顔で言う。
「私よね」
「そうとしか思えないな」
「これ、友達に送ってもらったの。ネットに出回ってるって」
「おい、プライベートがか」
「どういうことかしら」
「この部屋を盗撮しているのか?」
 怪訝な顔でだ、グレイブは言った。
「まさか」
「それ以外に考えられる?」
「いや」
 全くだとだ、グレイブは強張った顔で言う。
「俺もそう思う」
「すぐに警察に来て調べてもらいましょう」
「そうだな、他の部屋にも仕掛けられていたらな」
「お風呂場とかベッドにあったら」
 それこそだ、そうした部屋にまで備えられていれば。
「このこと以上に」
「すぐに警察を呼ぶ」
 まさに瞬時にだった、グレイブは自分の携帯を取り出して。
 そのうえで警察を呼びそのうえで家の中を徹底的に調べてもらった、その結果仕掛けられていたのはリビングだけだった。
 このことはそれで終わった、だがそれでもだった。
 プライベートを盗撮されたことはグレイブにとってショックだった、何しろ彼が必死に守っているプライベートだからだ。
 それでだ、クレーシーにも昼食の場でこう言うのだった。
「誰がやったかな」
「わからないんだな」
「今家に呼んだことのある人間、入れたことのある人間を調べているが」
「おい、それだと」
 クレーシーは眉を顰めさせてグレイブに返した。
「僕も疑っているのか?」
「いや、それは」
「しかしそうなる」
 クレーシーはビーフステーキを切る手を止めて彼に言う。 
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